目で見る一次変換 -計算ちょっとだけ-

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目で見る一次変換
河合塾 数学科 生越茂樹
オゴセ シゲキ
授業内容(90分×2+α)

線形性の大雑把な理解

「回転」,「回転∘拡大」 を表す行列

「対称移動 」 を表す行列

固有値,固有ベクトル
ソフトを使うメリット

「変換」が “瞬時に”見える

原像の変更が容易

行列の変更も容易

アニメーションも利用可能
1. 線形性の大雑把な理解
a b
の表す一次変換による像は
F 

c d
  1
x
 0
 1
 0
a
b 
F    F x    y    x F    y F    x    y  
 y
 1
 0
 1
c 
d 
  0
即ち,
a b
F 

c
d


 1   0
a b 
x    y   
x   y 
 0  1
c 
d 
 2 1
F 
は, A(1,0) と B(0,1) で張ら れた 網の目を,

1 1 
A'(2,1) と B'(-1,1) で張ら れた 網の目に変換する
∵例えば,C(2,1)のとき,



OC  2·OA  1·OB 
OC =2·OA  1·OB
F
y
y
C'
O
B'
C
B
A
x
A'
F
O
x
2‐1.「回転」 を表す行列
 cos  sin  
R( )  

 sin  cos 
は,原点を中心とするθの回転を表す行列
 cos  sin  
 1  0
 sin  cos  は,  0 と  1  で作ら れた 網の目を,
   


90
 cos    sin  
 sin  と  cos  で作ら れる 網の目に変える 変換

 

y
y
B(0,1)
B'(-sinθ ,cosθ)
O
A(1,0)
x
A'(cosθ,sinθ)
θ回転
θ
O
1
x
2‐2.「回転∘拡大」 を表す行列
は, 原点を中心と する 「  の回転」 と 「
の合成.
a2  b2 倍の拡大」


a
b
 但し cos  2 2 , sin   2 2 
a b
a b 

90度回転
90
Fは, 原点を中心と する  の回転と, 5 倍の拡大 の合成
y
y
B(0,1)
O
1 辺が1 の正方形
A(1,0)
1辺が 5
の正方形
B'(-1,2)
x
F
5
5
O
θ
A'(2,1)
x
3.固有値と固有ベクトル,標準形
x
x
A   k   ,
 y
 y
 x   0
 y    0
   
x
が成り 立つ時,  を A の固有ベク ト ル, k をその固有値と いう .
 y
a b
A
のと き , k は 次の方程式( 固有方程式) の解と なる.

c d
x2  (a  d ) x  (ad  bc)  0 ( *)
3-1. 実固有ベクトルが2個あるとき
(固有方程式が異なる2実数解を持つ.又はA=kE)
例1.
 2 0
A
のと き ,

 0 3
 1
 1
 0  0
A    2   , A    3 
 0
 0
 1  1
 1  0
(ア) 固有ベク ト ルは  と  で, 固有値は それぞれ2 と 3
 0  1
(イ) A の不動直線は, 「 x  0」と 「 y  0」の 2つ
(不動直線は 必ず 原点を通る)
 2 0
A
,

 0 3
 1  1
 0  0
A    2   , A    3 
 0  0
 1  1
x軸に平行な直線は 原点から の距離が3倍 に, y軸に平行な直線は 原点から の距離が2倍 になるので, 不動直線は 「 y  0」と 「 x  0 」
y
x=1
y
y=3
1
y=1
O
x
1
A
x=2
3
O
2
x
例2 .
1  4 2
A 
のと き ,

3  1 5
1
1
 2   2 
A   2·  , A   1· 
1
1
1 1
1  2 
(ア) 固有ベク ト ルは  と  で, 固有値は それぞれ 2と 1
1  1 
1
(イ) A の不動直線は, 「 y  x  k (k は任意)」 と 「 y   x」
2
(原点を通らない不動直線も 存在する!)
1  4 2
A 
,

3  1 5
1 1
 2   2 
A   2·  , A   1· 
1 1
1 1
1
1 に平行な直線は 原点から の距離が変わら ないので,y  x  k (k は任意)
 
 2 
1
は, A によ って動かない. 一方   に平行な不動直線は 「 y   x」 のみ.
2
1
1
3
y  x
2
2
y
1
y   x3
2
y=x+3
y
y=x+3
1
O
1
x
A
O
x
基底の変換
一般に,e1, e2 が一次独立のと き ,e1, e2 の A によ る 像が
 Ae1  pe1  qe2

 Ae2  re1  se2
①
と なったと する . まと めて,
 p r
A e1 e2  e1 e2 

 q s
   
 
ゆえに, P  e1 e2 と おく と
 p r
P AP  
①'

 q s
1
3-1-1. 標準化
(実固有ベクトルが,2個あるとき)
 p
r
A の固有ベク ト ルを e1    , e2    , 各々の固有値を  ,  と する .
q 
s
 p r
P  e1 e2  
と する と ,

 q s
 0 
1
P AP  

0



 
P1 AP は, A の表す変換 f を,e1 と e2 を使って表現し た 行列.
即ち,
 1
 
f
   =  e1 +0 e2 ,
 0  = e1 
 
 0
 0
 0
f
  = 0 e1 + e2
 1  = e2 
 
 
入試問題
a b
行列 A  
によ って定ま る xy 平面上の一次変換を f と する .

c d
原点以外のある点Qが f によってQ自身に移さ れるなら ば,
原点を通ら ない f の不動直線 l が存在する事を証明せよ.
ただし ,ad  bc  0 と する .
 
f OQ  OQ, OQ  0
(東大 S57 改)
【証明の概略】 A が xy平面の正則な行列のと き , 適当な e1, e2 を取り ,


P  e1 e2 と おく と ,A は次の3 種類に標準化さ れる .
(i) Aの実固有ベクトルが 2個 のとき
 0 
P AP  

0



1
(ii) Aの実固有ベクトルが 1個 のとき
1


1


P1 AP  
  



0 
1
(iii) Aの実固有ベクトルが 0個 のとき
 0 1  ずらし変換
 p q 
P AP  

q
p

 回転∘拡大
1
この問題では, (i) は既述. (iii) は実固有ベクトルがないので 不適.
「(ii) 実固有ベクトルが1個ならば,ずらし変換 になること」の証明が核心.