3章 東西平均した成層圏のありよう

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Transcript 3章 東西平均した成層圏のありよう

2章:中層大気の大循環(とくに、東西平均した中層大気のありよう)
2ー1:観測された大気場
中層大気の東西に平均した全球的な温度
構造をみておこう。対流圏とは異なる温度
構造(図は地表、対流圏から 120km までで、
冬と夏の季節)。
夏半球の50kmあたりが高温になっている。
これは太陽放射のオゾンによる吸収といわ
れている。さらにその上の約90kmの夏では
低温(日のあたらない冬で高温)になってい cold
て、これは放射だけでは説明されない。
太
陽
の
あ
た
り
方
極域の冬の下部成層圏では、北半球の方が
warmer(左図、北半球の方が山岳が多い)
<-惑星波の熱輸送の差と考えられている
warm
冬
夏
冷たく
cold
冷たく
colder
南半球
北半球
1月
7月
1月
7月
中層大気では対流圏とは異なる風系を形成し
ている。
夏半球で東風、冬半球で西風になっている。
弱風
自転がはやいので、地球大気の場合は東西平
均した東西風は、ほぼ地衡風が成り立つ
2  u sin   
静力学平衡の式:

z

西風

西風
y
東風
RT
東風
H
2つをあわせて、温度風の式で東西風と温度は
関係している
2  sin 
u
z
 
 
y z
 
R T
H y
左図が1月、右図が7月の平均東西風。成層圏の
冬の西風は南半球がつよい。
対流圏
冬
赤道域50kmで東風、80kmで西風、赤道域半年周
期振動をみている
90-110kmの高度ではその下の風系と逆センス
中層大気東西風の北半球と南半球の違いの図
北半球
2−2 成層圏放射をちょっとだけ
赤外放射の吸収係数 kνを波長によらず—定とし、上下の赤外放射エネルギーの流れの式は、吸収と放出を考えると(cf.
松野と島崎、成層圏と中間圏の大気、1981)
dF↑/dw = F↑ — B
dF↓/dw = —F↓+ B
dI    dz sec  ( k  I   e  )
dw   k  dz
ここで、B=∫0∞ Bν dν=σT4( ボルツマンの法則 )、wは光学的厚さ、矢はフラックスの向き


放射平衡の条件:Net の放射フラックスとして F↑net =F↑—F↓を定義して、これの鉛直方向の収束がないことで決まる
B (w)(温度)をきめる (収束があると温度が変化する)
式では、
d( F↑net )/dw =d(F↑—F↓)/dw=0
境界条件:大気上端で逃げるエネルギー F↑(0) を J0( これは入射する日射量( − 短波
反射 )であろう)で F↓(0)=0 、それが F↑net にも等しいとして (F↑net =—定= J0)
大気上端
始めの2式を変形して、d(F↑+F↓)/dw = F↑—F↓ 、これを積分すると、F↑+F↓=
F↑net w+C ー> 境界条件から、C=F↑top=F↑net = J0
また、始めの2式から d(F↑—F↓)/dw=F↑+F↓−2B=0 なので、
B (大気温度に対応)は
B=1/2 x (F↑+F↓) =1/2 x (J0w + J0 )
F↑—F↓=J0なので、
F↑=1/2 x(J0w+2J0 )
F↓=1/2 x (J0w)
のように決まり、右図のようになる(光学的厚さを鉛直座標として)
(大気上端近くでは(成層圏では)、下向きフラックスはゼロに近い)
w=2
地面の温度をTgとする。それを黒体温度としてBgとかくと、こ
れは地面でのF↑だろう
Bg( Tg )=F↑g=J0/2*(wg+2)
= B(wg)+J0/2
地面温度(左辺)と地面と接する大気の温度(右辺の1項)に
差がある。
光学的厚さwを高さに変換する:
吸収物質の密度は静力学平衡の大気密度とおなじように指数関数
で分布すると仮定
ρ(z)=ρ0exp (ー z/Hs)
Hsは吸収物質のスケールハイト
B(w)=J0/2(w+1)
B(z)=J0/2(wg exp (— z/Hs)+1)
右上は高さで表現した図:大気上層では等温の成層圏ができる<—
w≒0のところで物質密度が小さいので引きのばされて等温層にな
る
O3のない
地球
地球
外からみた地球大気の相当黒体温度は
B(Te)=F↑(0)=J0 だろう
一方、成層圏の温度は式 B=J0(1/2+w/2)から
B(0)=J0/2=B(Te)/2
と相当黒体温度に比べ低温になる
地球大気では成層圏でオゾンによる高温化、惑星によって異な
る ー>右下図参照
木星
金星
赤外放射のNewton冷却近似:
エネルギーフラックスの鉛直方向収束が大気温度の変化をもたらすので(現実には、右辺は周波数依
存性がある)、
ρa Cp dT/dt = - d/dz (F↑—F↓)
のようになるであろう。ここで、ρa (kg/m3)は大気密度、 Cp (J K-1 kg-1) は定圧比熱
右辺は
d/dz(F↑—F↓)= —k ρ( F↑+F↓—2B )
成層圏ではF↓は無視(大気の上端では0であった)、F↑、B は殆ど変化なしと近似されると仮定し、
r=ρ/ρaとすれば、上の式は
Cp dT/dt=—2k r B + k r F↑
のようになる。
放射平衡にあって、平衡から少ししかずれないとすれば、B=B0+ dB/dT・dT
みたいに書けるであろう。そうすると
Cp dT/dt=—(2k r dB/dT )・dT—2k rB0 +k r F↑
このような線形近似を、Newtonian coolingの近似とよぶ。
温度擾乱に伴う力学の議論でよく使う(熱的な散逸でこの近似をつかっている)
Dickinson (1973) の求めた値をしめしておく、この程
度の時間でもとにもどる——>10日くらいまたはそ
れより早い、これより早い周期の波動には、Newton
dampingはあまりきかない
左がNewton冷却係数(時間の逆数)で
右は平均的な冷却率を示す(K/dayの単位)
Wehrbein and Leovy, 1982, JAS による計算では、中
間圏で、もうすこし緩和時間は早いようである(数日)
ー>このようなdamping係数がよく使われる
中層大気大循環に関わる大気加熱について
太陽放射による大気加熱率と赤外放射による冷却率の鉛直
1次元分布(K/day)、London(1980)より、図はAndrews et
al. (1987)から。中層大気においては、太陽放射による加熱率
はオゾンによるものが—番大きく、赤外放射は二酸化炭素に
よる
中層大気では、オゾンによる
太陽放射吸収により大気が温められ、また赤外のcoolingが
あり(式の右辺ー>T)、それらが、熱力学的強制と考えられ
る。
大循環は、大気加熱の緯度的違いが重要であろう。
太陽放射加熱率の中層大気における緯度—高度断
面図を示す(O3, O2, NO2, CO2 の吸収が考慮されて
いる)。図の左が夏半球に対応、50kmで最大の大き
さ。 90kmあたりも大きな加熱率
 それにもかかわらず、観測結果は夏半球90km
あたりの温度は低い。
London(1980)より、図はAndrews et al. (1987)
の教科書から
短波+赤外放射(観測温度が考慮)の大気加熱率の緯度—
高度断面図:冬半球は赤外放射で冷却
放射のみによって決るらしい成層圏・中間圏の温
度分布。Wehrbein and Leovy(1982)
冷却率
加熱率
違い
違い
173
233
右上図は短波放射による加熱と赤外による冷却のバラン
T
スによって決る温度分布である。
 Q /c
t
p
のような力学の入っていない式を解いてもとめた。夏半球
は高温になり、極夜では赤外放射で低温になる。この図と

観測による温度図とを比較する。大きな差が存在する。こ
の差は力学の効果ということで、そのことを簡単なモデル
で考えよう。
観測されている温度
2−3:中層大気大循環を表す1つの方法
観測結果による東西平均をした中層大気の風
東西方向の運動方程式は、
のようであった。この式で球の効果を無視すると、
u
t
u
u
x
v
u
y
w
u
z
 fv  

x
となる。連続の式
u
x
ー>高度・緯度の2次元的理解と、東西非一様擾乱
波動による、東西平均の影響(効果)についての式を導出
しておこう。
大循環の運動は3次元であるが、中層大気の気象力学で
理解の1つの方法として使われる

v
y

1  pw
p
z
 0
を用いて東西方向の運動方程式を変形すると、
u
t


x
( uu ) 

y
( uv ) 
1 
p z
( puw )  fv  
運動量フラックスの形

x
物理量を
u  u  u'
f(x)を周期2Lの周期関数として、
(フーリエ分解的に見れば、直流成分+sin(kx)みたいな分離)
f (x) 
のようにする。 over-barの東西平均量は東西に一様であり、南北、高度、
時間の関数となる。 primeはそれからのずれを示す。
a0
2

 (a

n
n  1,2,...
cos
n
L
x  b n sin
n
x)
L
これらを東西方向の運動方程式に代入すると、

t

(u  u ' ) 
1 
p z

x

( u  u ' )( u  u ' ) 

y
( u  u ' )( v  v ' )
p ( u  u ' )( w  w ' )  f ( v  v ' )  

x
(   ')
この式に、さらにover-barの東西平均の操作をほどこす。このとき、primeとover-barの積の項を平均操作するとゼロ。結
果として
u
t
v
u
y
 w
u
z
 fv  

y
u' v ' 
1 
p z
pu ' w '
のような式を使って議論される。prime量が東西に非一様な擾乱で、それが相関として東西平均量に影響をおよぼすであ
ろうことを示している。

数学的にみれば、方程式が非線形のためにこのようなことが起こる:sin2kx = (1- cos2kx )/2 を平均して直流成分がでてく
る
ー> 東西平均場(今の場合、(角)運動量)と東西に一様ではな
い擾乱 を分離して調べることになる。
結果的に東西平均場の運動方程式は、
u
t
v
t
v
v
v
y
u
y
v
y


z
 
t z
w
w
1 
p z
 
 v
u
z
v
z
 fv  
 fu  

y

y
u'v ' 

1 
p z

y
pu' w '
v' 
2
一方、prime印の擾乱については、線形の運動方程
u
式(
が一定の場合は1章の議論が使える)が用
いられる。
1 
p z
pv' w '

pw  0
R
H
 u'
t
v '
t
 u'
T
 
y z
 w
 
z z
 w N  
2

y
v ' z ' 

z
x
w ' z '  Q
のようになる。左辺が東西平均場の変化の仕方をしめし、
右辺が波動フラックスの収束を表し、波動の東西平均場
への作用を表していると思ってよいであろう。波の作用は
波の特性に依存する。また、左辺は非線形項がふくまれ
れている。

成層圏の大気大循環は、このような式(運動量保存が理
解されやすいように変形した、transformed Eulerian mean
equationと呼ばれる式、これについては4章で述べられ
る)を用いて、解釈されることが多い。
u
u


z
(

t
 u'
x
v '
y

y
1 

' 
u
 w'
 fu '  
x
v '
u
 v'
p z
R
H
)
u
z
 fv '  
 '
x
 '
y
pw '  0
T'

x z
 ' v '
 
y z
 w '
 
z z
 N w '  Q '
2
例えば、線形の傾圧不安定波動の議論では、
  
y z


y
T
によって不安定擾乱が作られるであろうとして、議
論される(準地衡風近似のもとで)。

2一4:簡単な2次元モデルによる年振動の理解
東西に平均した東西方向の運動方程式は(平均場について線形とする、Holton, 1982, JAS)
(1)
右辺の第2項に鉛直方向の粘性を入れてある。また右辺1項に波の効果が書かれてある。
熱力学の式の大気加熱の評価
中層大気の放射による大気加熱は、
Q tot    dT  2 k r / c p  B 0  k r / c p F   q ozone
のようだろう。ここで右辺の1項はNewton 冷却を、2,3項は基本的な温度における赤外放射による非断熱加熱、4項は
オゾンの紫外線吸収による大気加熱をしめす。
ここで Qtot = 0 となるような、仮想的に決まる温度をTe(緯度、高度、時間の関数)とする。そうすると Qtot は以下のよう
になるであろう、
Q tot   (T  Te )
さらに、年平均としてきまる高さだけの温度 T0(z) を導入すると、
Q tot    (T  Te )   (Te  T0 ( z))   (T  T0 ( z))
 Q ( y, z, t )   T '
結果として東西平均した熱力学の式は以下のようになるであろう
(2)


H
T 
N
t
R
2
w  Q ( y , z, t )   T
Q は 放射による大気加熱の年振動、第2項は赤外放射のNewton 冷却近似である。左辺2項は、上昇流で断熱膨張し温
度が下降することを示す。この式で、波動の効果は考慮されていない。

このように、線形の強制問題にすると分かりやすい
南北方向の運動方程式としては地衡風の式を用いる。
(3)
連続の式は
(4)
最後に静力学平衡の式は
(5)
(1), (2), (3), (4) , (5) が以下の議論に使う基本方程式。決めるべ
き物理量は、東西風、南北風、鉛直流、温度、高度の5つである。
(2) の右辺の熱力学的な強制(放射によってきまる)のみが与えら
れ、粘性がある大気の条件で問題を解くことを考える —>結果と
して、風や温度偏差が決定される
f は—定、N2、α、νは鉛直のみの関数として、上の式を東西方
向の風 u のみの1つの方程式にする。
(6)
渦粘性係数νとしては図のようなものが使
われる(木田、高層の大気から)
2
2
2
  u
f

p  u 
f

p
u
f  
p

(

)
(
Q)

  
2
2
2
 t  y
p z N
 z 
p z N
z
p z y N 2

ここで
である。後でこのような項の重要性を示唆する

2
y
F 
2
x

2

u
p
z
 y2 p  z
1
Holton (1982) に従って次の様に南北方向に関数形を仮定する。
(年振動に伴なう最も簡単な南北モード)
u  U ( z ) sin ly
(7)
ここで、例えば 東西風は北半球のみを選んでいる。
f = 一定近似は赤道域ではおかしい。
—>球面の方程式を用いるべきであろう —>あとで
対応した放射加熱の形は
(8)
である。ここで L = π / l は半球のスケールに対応している。この様に仮定すると(6)式は以下の様になる( ここでN2 は—
定と仮定する )。
(9)

1 
l N
(


2
z
H z
f2
2

l
f
2
2
2
U
   z / H
l N
z / H
)
 e
( 
e
t
 z 
f 2

l2 N
( pQ ) 
p z
f 2
1
2
 )
 U 

 z 
2
Fx
ー>南北の変数を一つのモードで表し、鉛直と時間の関数の東西風変化の式となる。
Q(z,t) を与えて、鉛直と時間の変数として U(運動)を決めることになる。
この式は右辺を与える(今の場合はQ:放射加熱)と適当な境界条件を与えることにより数値的に簡単に解くことが出来る。
上端の境界条件として適当に高い所で
(10)
また下端の境界条件としてここでは
とする。熱力学の式を思い出すと、
地衡風の式と南北構造の仮定からUについて
(11)
Qの前はl(Lの小文字)
またニュートン冷却率として図の実線の25 km
“boxcar” という記号のついたようなものを選ぼう。
これで境界条件(式10、11)が揃ったので Q , Fx が与えら
れれば解くことが出来る。時間積分については例えば Holton
and Mass(1976) のsemi-implicit 法を使って解く
Q のみが与えられたときの解を求めよう。まえに太陽放射の
緯度−高度断面図を示した。図は50kmにピークがあり、南
北には 近似的に cos 的な形をしており、振幅は8K/day ほ
どである。そこで Matusno(1982)に従ってQを以下の様な形に
仮定する。
(12)
Wehrbein and Leovy,1982. JAS
結果:
南北のスケールとして7000km、下端z=0km、上
端z=120kmとして計算した結果を図に示す。秋の
equinox を時間t=0として、初期条件はt=0でU=0と
した。1年を360日としてあり、2年間はしらせた。西
風、東風が交互に繰り返している。このことは観測図
の夏半球での東風、冬半球の西風と対応している。し
かしこの図と観測図は風の定性的構造が全く異なっ
ている。観測では約90km近くでほとんどゼロの風に
なっており、—方この図では60km近傍の風が高さと
ともに減少せず、—定になっている。
観測での東西風の変動(40N)
図:計算された平均東西風の時間変化
高層に分子粘性やイオンdragが入った計算:上層がすこ
し弱くなっている(Matsuno, 1982, JMSJ)
f—平面の議論では赤道域でおかしくなるので、球面ということを考慮したモデルを見ておこう。
線形近似をおこなうと、東西平均した式は
u
1 
u
 2  sin  v  Fx 
( p
)
t
p z
z
2  sin  u  
 
a 
 cos  v
1 

( pw )  0
cos 
a
p z
1
 
 
 N 2w  Q  
t z
z
 
RT

z
H
球面上の式では南北方向が緯度の複雑な関数になる。
Matsuno(1982)に従って、
またこのモードの変数分離の定数(固有値)はSM
により、
h= -10.82km
と、変数分離の方法を用いて、
L ( n ) 
1
1

cos  
1
(
n) 
n
2 2
2
4  a cos   sin  
gh n
のように南北成分をとりだしてみよう。ここで hn は1章で述
べた、南北と鉛直を分離するさいの変数分離定数と呼ばれる
もので、hn は等価深さである。
中層大気の年振動モードは、Sawada and Matsushima(1964)
が求めていて、赤道に対しての最低次の反対称モード(赤道
にたいして
の形が北半球が正のとき、南半球は負になる
モード)と考えられる。
そのモードの南北構造の形は右図のようである:(u は赤道に
関して反対称で、v は対称である)
の負の値として求められている。
(9)式
(
2
1

l


z2
H z

l
f
2
N
f
2
2
)

l2 N
( pQ ) 
p z
f 2
1
2
U
   z / H
l
N
z / H
 e
e
( 

t
 z 
f 2
2
 )
 U 
 z 

2
Fx
をみると、Newton冷却の項と運動量の鉛直拡散の項は同じ形。ここでは鉛直拡散の項を無視し、平衡を仮定した解(年振
動はゆっくり変化していて、Newton冷却の時間に比べて無視できるであろう)を見てみよう。
鉛直流を無視すると(Fxを考えず、鉛直拡散を無視、東西風の変化は南北風で生成される。東西風の変化を無視する近
似は南北風=0であろう、そうすると連続の式から鉛直風=0とおいていいであろう)、熱力学の式は
で、加熱に対応して
Geopotentialが積み
あがっていく。その
圧力南北勾配に
従って、地衡風にな
るから、右のような
東西風になる。この
結果は前に示した
数値計算と同じに
なっている。
これは観測の風と
全く異なる。

東西風を減速する
のに東西非一様な
擾乱によるforcing
が重要な役割を果
たしているようであ
る。
弱風層ではない
低温
弱風層
高温
東風
夏
西風
冬
候補としての中間圏の重力波
50km〜90kmの中間圏高度では、温度は高さとともに減少している.しかし水はほとんどなく,温度勾配も緩やかなの
で,対流不安定が起こる条件ではない(g/Cpより勾配は小さいから)
しかし、対流圏から鉛直に重力波が伝わってきて,そこで振幅が大き
くなり,不安定が起こっているところがある(中間圏は結構ぱたぱたし
ているよう).波が壊れたり(局所的に乾燥断熱減率を超える温度勾
配)、散逸があると—>平均東西風の変化をおこす。
中間圏の重力波に伴う温度変動:
9/2000-9/2001、インドネシア中間圏の
OH airglowで観測された重力波
(Nakamura et al., 2003, GRL)
重力波のBreakingの例:Lindzenの教科書から
<— 時と場所による
重力波の詳しい話しは6章で
惑星波動による加速
現状の大気大循環モデルの結果の1つ
1章でしめした、primitive方程式を直接解いた結果。
西風加速
東風加速
西風
Watanabe et al., JGR, 2008、水平分解能は50km程度、
鉛直は300mの分解能モデル
重力波のはたらき
2−5:さまざまな平均東西風の変化
赤道域の50kmあたり、および80kmあたりに、半
年周期振動が存在する。
コリオリがゼロになると
のようになり、赤道域ではForcingが東西風を直接変化さ
せているらしい現象も存在する。
ー> 波動の役割については、11章で
高緯度:
赤道下部成層圏の準2年振動、shade部分が西風
1979, 2月26日の平均東西風、高緯度で東
風になっている ー> 8章
火星大気:
観測された温度と、地衡風で評価された東西風 <ー> 地球大気
温度
冬半球
夏半球<ー>冬半球
~60km
warm
東西風
~60km
東風
西風
Smith et al., 2001, JGR
風の分布は、地球の夏と冬の成層圏の風によく似ている。火星の大気量は成層圏と同程度である。火
星の自転速度や赤道傾斜角も地球と似ていることが関係しているであろう
金星成層圏大気の全球的温度構造
Walterscheid at al., 1985, JAS
金星の成層圏で速い風が吹いている。10
0m/s程度の風。自転周期は243地球日、
自転速度は1.5m/s
旋衡風バランスから評価
地球大気と異なった大循環の様子であるが、このような風系に東西に非一様な擾乱
の角運動量輸送が重要な役割をはたしているよう ー> 13章
木星赤道域成層圏で準4年振動があるらしい—>地球の赤道域下部成層圏の準2年振動と類似の長周期振動
late 2000 - early 2001
南北方向の運動方程式に於いて、地衡風(コリオリ力と
圧力勾配力のバランス)が成り立つとして
f u = ー d Φ/dy
—>すると温度風 f du/dz = - d/dy (RT/H) から温度
差は風の鉛直shearに対応している。
20hPa
10hPa
緯度
Leovy et al., 1991, Nature
より詳しい観測結果、準4年振動 Flasar et al., 2004,
Nature、温度は観測 ー> 500hPaの風は雲の追跡から、
その上層は温度風