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熱帯域中層大気力学と物質循環
対流圏の気象学との対比をおこないながら講義をおこなう:違いをみると理解しやすいであろう
例:対流圏は条件不安定<−>成層圏は安定である
新進の大学士たちは気圏のいちばんの上層
きらびやかな氷窒素のあたりから
すてきな化石を発掘したり
−宮沢賢治−
内容:
1章: 基礎方程式と中層大気のありよう
-時間の相も含めて気象を眺めるための道具対流圏とおなじ流体の運動方程式をつかう(平均自由行程がまだ連続体としてO.K.)
L ∝1/nσ 断面積σ=10(—16)cm2、nは数密度p=nkT、1気圧≒106dyn/cm2 k=1.38x10(—
16) だから、T=200K(mesopause付近) p=1(100km程度の高度)とするとn≒4x1013程度となり、nσ
=4x10—3の逆数=250cmの程度より大きければよいであろう。 さらに熱力学(局所熱力学平衡)とあ
わせて議論される。
中層大気の構造を眺める
—>大気のありようの特徴(対流圏との比較から—> 中層大気の特徴)
ここでの流れは: 東西平均した基本的な南北の温度構造など—>成層圏特有の風が吹いている
—>そのとき基本方針は基礎方程式を用いて理解したい
大気加熱の立場から—>大循環での東西平均の場をもとに整理する
赤道域と中高緯度の違い—>赤道上はコリオリ=0、中緯度は年振動が卓越で違いの説明
その説明のなかから—>東西に非—様な擾乱が、対流圏の対流や傾圧不安定と同じように大循環に大
きな影響を与えているらしい —>
対流圏の擾乱-->成層圏の 擾乱 の性質--> 働きなど --> Lagrange的も含めて、物質循環
2章: 赤道波(重力波も含めて) -擾乱表現の1つの方法成層圏は基本的には安定成層で、対流圏からの波の鉛直伝播が大事
観測例をいろいろ眺めること
赤道波について(コリオリ=0でスケールの大きな波も重力波として振舞える)
3章: 波の生成や シアー中の重力波について
4章: 赤道域での波の平均流への作用
—>大循環への役割としての準2年振動(QBO)などの話し
5章: 局所的な重力波
6章: 熱帯域の不安定について <-かき混ぜか
成層圏中の傾圧不安定、慣性不安定、K-H不安定
など
7章: 物質循環
流体粒子の運動について(ラグランジュ的な見方を含めて)
オゾンにからんだものの輸送形態
いくつかの成層圏における物質分布
下部成層圏の境界近くの物質分布
第1章:基礎方程式と中層大気のありよう
-時間の相も含めて気象を眺めるための道具-
あヽいヽな せいせいするな
風が吹くし
-宮沢賢治-
海面気圧場を示す、高気圧や低気圧が場の量として表現
運動にからむ基礎方程式を述べることにします。詳
しくは小倉先生の’気象力学通論’か Holton の’An
Introduction to Dynamic Meteorology ’をご覧下さい。
ここでは,式だけ書いておきます.前に述べたように
中層大気も連続体近似として、流体の運動を議論し
ますので。
基本の式が数個と言うのは気持ちはいい?
<−>水や化学成分をあつかうと個々の物質の連続
の式が成分として増えていく(個々の物質が運動でも
決まる).
大気の運動は流体力学の方程式によって表される。
—>例えばランダウの流体力学の教科書をみる。ま
ずは連続の方程式がのっている。大気を連続媒体と
見なして場の方程式を作る。そこでは,大気の運動を
表す流体の速度が必要である。これは v = v ( x, y,
z, t ) と表され、場の関数である。さらに2つの熱力学
量が必要である。例えば圧力 p = p ( x, y, z, t )と密
度 ρ = ρ( x, y, z, t ) が必要である。この5つの量
で流体の状態は完全に決定される(と書いてある)。
それで例えば温度 T = T ( x, y, z, t )は状態方程式
から決める。
中層大気までは空気はよくまざっていて、1つの密
度、圧力でいいであろう。オゾンなどは別に解く。
冬
夏
化学成分の1つである
オゾンなども場の関数
として現すとわかりや
すいかも?2002年は
変動パターンが普段と
異なる
基本方程式: <- これ(およびその変形)をつかって説明することになる
連続の方程式は質量の保存則を述べたもの。すなわち、ある体積中(固定)
の流体の質量 ρdV の単位時間あたりの変化はその体積中に流れこむ
(又は流れでる)質量流速に等しい。場の量の式で表すと、
(1)

 t
大気は浅い
 div (  v )  0
d
運動方程式は種々の近似をして以下のようになる。
は流体粒子に
dt
(2)
du
dt
(3)
(4)
dv
dt


uv
a
u
2
a
tan   
1 p
 x
tan   
dw
dt

 2  v sin   Fx
1 p
 y
1 p
 z

 2  u sin   Fy
 g  Fz
赤道上ではコリオリ項は消えることに注意
RT
p   RT 
理想気体(大気)の状態方程式、 R = 287 J / kg / K
熱力学の方程式
気象学では種々の非断熱過程(例えば潜熱放出や放射による)が重要である
cp
オイラー的 Grid Point 上で数値的に解かれる場合 ->場的にきまる

dt
p R / cp
 T( 0)
p
断熱運動では温位が保存される。cpは定圧比熱( = 1004 J / kg / K )
これらが流れについての基礎方程式である.非線形の方程式なので、
直接解くときは数値計算をする。線形的な話は後で。
p
大気大循環モデルでは(4)を静力学平衡
にして、
  g

z
式を解いている。
dT
変形して->

cp
d ln T
dt
dp
dt
R

d' Q
d ln p
dt
(5)
(6)
dt
 cp
d ln 
dt

d'Q
Tdt
ここではおもにスケールの大きな擾乱を議論する。
p−座標系における大きなスケールでの運動方程式
水平Scale が10km程度の対流や内部重力波については鉛直方向の加速度もきちんと考慮した方程式で議論しますが、
数10km程度以上では基本場といわず擾乱についても静力学平衡の式をつかう。擾乱についても静力学平衡がなりた
つ時には,圧力座標が用いられるので,ここで式を書いておく.圧力が高さの1価関数なので、運動を議論するときに圧
力を鉛直座標として議論する。むしろ等圧面で観測されるから?
uv tan 
u
 u
u
 u

 u
 v
 

 2  v sin   
a
 t
 x
y
p
x
2
v
 v
v
 v u tan 

u
v


 2  u sin   
a
 t
 x
y
p
y
 u
 v



 0
 x
 y
 p

  
 p
dQ
 T
 T
 T
 u
 v
 S p
 t
 x
 y

dt
cp
S
 
dp
dt
p 
g
1 
1 T
R

( ln  )    g (
 c p) 
S
 z zp
T p
p
T p
Log-p座標系での運動方程式:
対流圏のみの議論ではp−座標系がよく用いられる。しかし成層圏まで含めて議論するときは有限の範囲に閉じ込めた
p−座標系では物事を見失う恐れがある。(このことについての議論は松野・島崎の教科書参照)。圧力は高さに対して近
似的に exp 的に減少するので次のような log-p 座標系を導入するのが都合がよいだろう。
z   H ln (p / p 0 )
w 
dz
H dp
  p
dt
dt
ここでp0 は基準圧力(1000mb=100kPaにとる)、H = R T0 / g で T0 は全球平均の温度である。
u
u
u
 u uv tan 

u
v
w


2

v
sin



a
t
x
y
z
x
 u
 v
 w
w



 0
H
 x
 y
 z

RT

H
 z




(
 u
 v
)
 wN
 t
 x
 y  z
2
v
v
v
 v u tan 

u
v
w

 2  u sin   
a
t
x
y
z
y
2
dQ
R dt

H cp
N
2

R
H
(
T
z

R
T
cp H
)
1--1:大気の基本的構造を見ておく
構造とそれに関わる現象の形態学か?
<—現象の結果であろうから
大気の形態について
成層した大気 —>成層圏
対流による —> 対流圏
オゾン —> オゾン層
図は圧力,密度(,温度)で地球標準大気の平均的な
鉛直構造を示している.
p
  g
圧力p,密度ρについては高さとともに減少  z
静力学平衡と理想気体から—>密度の構造は成層圏
にとって非常に重要—>薄くなることで擾乱の速度の
振幅が大になる
1
 u'
2
鉛直伝播可能な波としては
みたいな量が理想的には保存的、primeは波にともなう
速度でexp的に大きくなる
波に伴う温度のampも同様に大—>波が壊れるように
なる。
( dT/dzも大きくなり、乾燥断熱減率をこえる )
2
地表は約290Kになっていて,それから温度勾配は
約6.5K/km程度で—様に減少 <— 対流圏
この領域ではよく対流が起こる.<— 約10kmまで
(全球平均で)
熱帯域では16kmくらい高度とともに線形的に減少し
ている
T(z)=T(0)−Γz
—>この式(1次元)を、熱帯対流圏の高度を
決めるときに使う議論がある(Held, 1980)
10〜20kmはほぼ等温的な層になっている.
そこらあたりからを成層圏と呼ぶ
対流圏と成層圏の境界は対流圏界面と呼ば
れる。2℃/km以下の温度減率がおこる最低
のlevelが対流圏界面:極域では約9km,赤道
域では約16km.緯度により高度が異なるこ
火星大気の成層圏温度構造
火星の g=3.72m/s2,半径=3397 km
Cp=800 とすれば、断熱温度減率g/cp=4/800=0.
5x10−2 MKS 5K/10(3)K/m=5K/1kmということで,
10kmで50K程度下がる,
実際は10kmで,20K程度しか下がっていない.
ずれは大気の中のDustの加熱といわれている
金星大気の温度鉛直構造)
金星のg=8.89(森山,大気の歴史),主成
分はCO2としてcp=842 J/kg/K g/Cp=0.01
K/m =10kmで100Kの低下
成層圏は等温的  火星にはDustはあるが、地球に
おけるオゾンみたいに上層が上がることはないよう。
金星の下層における温度鉛直分布をみると,
断熱減率に近い温度低下をしているようであ
る.金星の下層は対流調節が起こっているの
であろうか?
温度構造が鉛直に波的になっている。火星大気も波に
満ち溢れているよう。例えば加熱による大気潮汐
<-波の力学過程が重要であろう。
火星と同様、金星の成層圏らしきところは等温
的になっている。また、成層圏で波的な構造が
見える。
木星の温度構造
地球に似た対流圏−成層圏的な構造をしている.
木星成層圏の高温は:CH4や浮遊粒子の太陽放射吸収(島崎,松野)
g=9.8X2.37(安田), cp=12428
g/cp=0.0019K/m=1.9K/km 。
赤道と極の温度差が小さい大循環と大きく関わるであろう。
基本状態を南北にも広げてみたのが,Holton et al.
(1995)で使われている,緯度/高度を決めて,東西に地
球を—周した平均の図:93年の1月の平均
これには気象で重要な温位θが描いてある.緯度で
異なる対流圏の高さものっている。
Holton et al., 1995, Rev. Geophys.実線が温位を、点
線が温度である。断熱のとき、流体は温位面を動くで
あろう、中緯度で対流圏と成層圏がcrossしている。
結果としての対流圏/成層圏の区分として
の概念図<–物理過程がのっている。
熱帯域と中高緯度とは力学過程が異なる
様相?
最近の研究では、熱帯の対流は圏界面まで
は平均的には届いていないと言われている
対応した全球降雨分布:
熱帯域は対流がさかんで降雨がおおいことがみて
とれる。上が観測で下はモデル結果、Hack et al.,
1998, J. Climate、約2.8度(〜300km)おきに計算さ
れたもの、6月-8月で平均したものである->熱帯対
流圏は潜熱放出(
の1部)が大事になっている。
d'Q
dt

熱帯圏界面の高さ:水蒸気凝結の非断熱加熱から
水の入った大気で以下の式が近似的になりたつ。
d
dz
d ln   d ln T 
この式は
R
c p T ( d ln T 
cp
dT
dz

cp
RTdp
pdz
R
cp
d ln p
を使って,
d ln p )  dLw
 L
dw
(ln  
s at
 0
 0
s at
dz
dp   g  dz
cp
d
dz
dT
dz

RT
p
dw
g z  L
( c p T  gz  Lw
s at
s at
dz
 0
)  0
c p T  gz  Lw s at
(
c p T  gz
は飽和湿潤静的エネルギ−とよばれる.
は乾燥静的エネルギーと呼ばれる)
★Held(1982, J. Atmos. Sci.)の話し:
d
( c p T  gz  Lw s at )  0
の式を導いた.この
式をもとに熱帯域のtropopauseの高さを見積もる.
dz
保存的な量を用いた鉛直方向のみの議論  運動が
陽にでてこず、平衡状態の議論となっている
時間変動をみているわけではない
温度の鉛直構造と関係させる。
月平均の半球水蒸気分布(質量混合比)
は右のようになっている:
Lw
s at
c pT
)  0
上の式がなりたつとして,tropopauseの高さでは水は
ないとすると,
下端の→ c p T  Lw s at  c p (T   z )  gz ←圏界面では
Tはz=0の温度で,大気温度は
るとしよう.高度の式として
z 
Lw
s at
(g   c p )


の割合で減少す
Lw s at
g
cp (
 )
cp
2.5x10(6)x2x10(-2)/10(3)/3.3=15 km
となる.ここで L=2.5x106, w s at =2x10−2程度,

=6.5K/kmとする
z=15kmとなり,矛盾はしない数値となる.(ただし、
実際の値を使った議論である)、少し低いよう。
大循環モデル(Thuburn and Craig, 1997, J.A.S.)では
表面温度につよく依存と書いてある。(矛盾はしない)
中緯度は w s at が半分?とすれば,8km程度の高さ
にはなる(右図の実線で低い)。
→中緯度では傾圧不安定のPotential Vorticity一様
の力学が重要と言われている。
<-ただし、tropopuaseあたりはそうなっていないよ
う(Thuburn and Craig, 1997)
1—2:観測された東西に平均した中層大気温度
成層圏の全球的な温度
構造をみておこう。対流
圏とは異なる温度構造
(図は地表、対流圏から
50km までで4つの季節)。
夏半球の50kmのところ
があつくなっている。これ
は太陽放射のオゾンに
よる吸収でこのように高
温になっている。
極域の冬の下部成層
圏では、北半球の方が
あつい(左図、北半球
の方が山岳が多い)
<-力学の効果
4月の気層のひかりの底を…
まばゆい気圏の海のそこに
-宮沢賢治-
図でDashed lineは対流圏
界面、成層圏界面、中間圏
界面を示す。下図のWとE
は西風と東風を示す。これ
は気候値と呼ばれるもので、
風の強さは年々変動する。
この図は北半球,南半球の
区別はない。
85kmの夏では低温(日の
あたらない冬で高温)になっ
ていて、これは放射では説
明されない。
夏半球で東風、冬半球で西
風になっている。
成層圏(より正確には中層
大気と呼んだ方がいいで
あろう、成層圏と中間圏を
ともに含んだ領域)では対
流圏とは独自の風系を形
成している。
m/s
地球大気の場合は自転がは
やいので、東西平均した東西
風の場合、だいたい地衡風が
成り立つ
2  u sin   
1月
7月

y
静力学平衡の式:

z

RT
H
2つをあわせて、温度風の式
で東西風と温度は関係して
いる
2  sin 
u
z

 
y z

R T
H y
西風
成層圏の東西風の北半球と
南半球の違いの補足図:
西風
左図が1月、右図が7月
の平均東西風。成層圏の
冬の西風は南半球がつよ
い。80km以上の高度で
は異なる風系
至では赤道50kmで東風、
80kmで西風か(赤道の半
年振動)
熱帯域の下部成層圏は東
風になっている
東風
南半球
東風
北半球
類似性火星大気の全球的なようす:
観測の温度、東西風図と大気大循環モデ
ル結果(酒井他、2003)
風の分布をみると、地球の成層圏の夏と
冬の風によく似ている。火星の大気量は成
層圏と同程度である。また火星の自転速
度や赤道傾斜角も地球と似ていることが関
係しているであろうか?火星のDustがオゾ
ンと似たような役割をしているよう。
夏半球->冬半球
地球大気の東西風
夏半球->冬半球(下図はCCSR/NIES火星大気モデル)
1—3:中層大気大循環をおこす大気加熱について
中層大気の大循環についての考察をおこないたい。
太陽放射により大気が温められ(式の右辺-->T)、それに
よって大気が運動をしていると考えられる。
cp
dT
dt

dp
dt

d' Q
dt
->放射による非断熱加熱:成層圏オゾンによる短波吸収は
cosθ dIν/dz=— kνρ(Iν— Bν)
なる(散乱のない)放射伝達式で、近似的に、短波の場合はBν
は考えなくてよいであろう。
dIν/dz=— secθkνρIν
今の場合は太陽の天頂角をχとし、フラックスを下向きとすれ
ば、
dIν/dz= secχkνρIν
のようになるであろう(松野、島崎,1981参照)。
解は
Iν(z) = Iν(∞) exp ( —(∫z ∞ kνρ dz)secχ )
成層圏オゾンによる短波吸収の大気加熱率は
Q/ Cp =secχkνρIν / ρa Cp
ここで、 ρaは大気密度、 Cpは定圧比熱である。
太陽放射加熱率の中層大気における緯度—高度
断面図を示す。図の左が夏半球に対応。50kmで最
大18K/dayの大きさ。 90kmあたりもおおきな加熱
率  それにもかかわらず90kmあたり(夏半球)
の温度は低い
O3, O2, NO2, CO2 の吸収が考慮されている。
非断熱効果における赤外放射
放射エネルギーフラックスのたまりが大気温度
の変化をもたらすので、赤外放射フラックスを用
いて
ρa Cp dT/dt ← - d/dz (F↑—F↓)
のようになるであろう。ここでは、ρa =kg/m3を
大気密度としている。
右辺は、
d/dz(F↑—F↓)= —kρ( F↑+F↓—2B )
(kに1.5のfactorを含める、放射の教科書参照)
となる。 このような式を用いて赤外放射加熱
をみつもる。
太陽放射による大気加熱率、赤外放射による
冷却率の鉛直1次元分布(K/day)。
London(1980)より、図はAndrews et al. (1987)
から。図からわかる様に中層大気においては
太陽放射による加熱率はオゾンによるものが
—番大きく、赤外放射は二酸化炭素による
Newton冷却近似について
成層圏ではF↓は無視(大気の上端では0であろう)、F↑ は殆ど変化な
しと仮定、B も殆ど変化なしと仮定
r=ρ/ρaとすれば、上の式は
Cp dT/dt=—2k r B
+k r F↑
のようになる。
平衡から少ししかずれないとすれば、B=B0+dB/dT dTみたい
に書けるであろう。そうすると
dT/dt=—2kr/Cp(dB/dT)dT—2kr/Cp B0+kr/CpF↑
このような線形近似(右辺の1項)をNewtonian coolingの近似とよぶ
力学の議論でよく使う(あとの議論のいろいろの所でこの近似をつかう)
2kr/Cp dB/dT :Newton冷却係数とよぶ。
中間
圏で
はもう
すこし
緩和
時間
は早
いよう
であ
る(数
日?)。
左がNewton冷却係数で
右は全体的な冷却を示す(K/dayの
単位) Dickinsonの値をしめしている、
この程度でもとにもどる—>10日くら
いまたはそれより早い!
短波+赤外放射の大気加熱率の緯度—高度断面図:
日のあたらないところは赤外放射で冷却されている
放射のみによって決るらしい成層圏・中間圏の温
度分布。Wehrbein and Leovy(1982)
右上図は短波放射による加熱と赤外による冷却のバラン
T
スによって決る温度分布である。  t  Q / c のような力学
の入っていない式を解いてもとめた。日のあたったところ

が高温になり、日のあたらない極夜では赤外放射で低温
になる。この図と観測による温度図とを比較して欲しい。
かなり大きな差が存在する。この差は力学の効果というこ
とでこの節ではそのことを簡単なモデルで議論しよう。
p
観測されている温度
いつか巨大な配電盤は
交通地図の模型と変じ -宮沢賢治-
1 —4: 1つの方法(角運動量的にみる?)、東西平均をして物事を眺める
大循環の運動は3次元の運動であるが、成層圏の力学でよく使われる東西に平均した緯度・高度の2次元的な方法をみ
ておく。
東西方向の運動方程式は、
uv tan 
u
 u
u
 u

 u
 v
 w

 2  v sin   
a
 t
 x
y
 z
x
のようであった。この式で球の効果を無視すると、
u
u
t
となる。連続の式
u
x
u
x
v

u
y
v
y
w

u
z
 fv  
1  pw
x
 0
z
p

を用いて東西方向の運動方程式を変形すると、
u
t
物理量を


x
( uu ) 

y
( uv ) 
1 
p z

( puw )  fv  
x
この図も東西平均した図である
u  u  u'
のようにする。 over-barの量は東西に一様であり、南北、高度、時間の関数となる。 これを上の運動方程式に代入すると、

t

(u  u ' ) 
1 
p z

x
( u  u ' )( u  u ' ) 

y
( u  u ' )( v  v ' )
p ( u  u ' )( w  w ' )  f ( v  v ' )  

x
(   ')
この式に、さらにover-barなる東西平均の操作をほどこす。このとき、primeとover-barの積の項を平均操作するとゼロ。結
果として
u
u
u

1 
t
v
y
w
z
 fv  
y
u'v ' 
p z
pu ' w '
のような式を使って議論される。Prime量が東西に非一様な擾乱で、それが東西平均量に影響をおよぼす。
対流圏での平均東西風に東西に非—様な擾乱が大事だ
という話しがある。たとえば中/高緯度の傾圧波動が大
事だという話しがあります。
東西に非一様な擾乱が構造の決定に大きな役割をはた
している。
2次元軸対称モデルと3次元CCSR/NIES GCMの比較:
東西に非—様な擾乱を入れないと、中緯度の西風が強く
なる(Satoh et al., 1995, Tellus)
—>擾乱の重要性、熱帯域も大分ことなる。左が2次元、
右が3次元である。中が地球の回転の場合、下段は自転
を3倍にはやくした例
2次元
3次元
(角)運動量輸送の担い手(東西平均子午面循環、東西
非一様な擾乱で時間変動するもの、東西非一様な擾乱
で停滞性の擾乱)とそれらの輸送量
1 — 5:中層大気東西平均のモデル
適当な近似のもとで、東西に平均した東西方向の運動方程式は(平均場について線形にしてある)、
u
 fv  
1 
p u w  
1 
( p
u
)
t
p z
p z
z
(1)
右辺の第2項に鉛直方向のみの(渦、分子ではない)粘性を入れてある。また右辺1項は波の効果。
次に熱力学の式の大気加熱を考えよう。
成層圏における放射による大気加熱は、近似的に
Q tot    dT  2 k r / c p  B 0  k r / c p F   q ozone
のようになる。ここで右辺の1項はNewton 冷却を、2,3項は基本的な温度における赤外放射による非断熱加熱、4項は
オゾンの紫外線吸収による大気加熱をあらわしている。
ここで Qtot = 0 となるような、仮想的に決まる温度をTe(緯度、高度、時間の関数)とする。そうすると Qtot は以下のよう
になるであろう( Qtot の右辺のうしろの3つの項を一緒にするような形 )。
Q tot   (T  Te )
さらに、年平均としてきまる高さだけの温度 T0(z) を導入すると、
Q tot    (T  Te )    (T  T 0 ( z ))   (Te  T 0 ( z ))
u
 Q ( y, z, t)  T '
t
結果として熱力学の式は以下のようになるであろう
(ここで擾乱の項は入っていない)。  
2
t  z
 N w  Q  

 z
 2  sin  v  F x 
2  sin  u  
1
 cos  v
Q は Net の大気加熱の南北・鉛直偏差 、第2項は赤外放射
のNewton 冷却近似としたものである。ここで南北によらず高
さのみに依存する量は風には関係ないので基本温度場として
その効果はN2(z)の中に入るとする。
cos 
a
球面ということをきちんと考慮したモデルでまとめてみる。
線形の近似はなりたつとすれば、東西平均した式は

 
t z
z

RT
H
p z
( p

a

1 
p z
 N w  Q 
2
1 
( pw )  0

z
u
z
)
1 
Fx   p
p uw
 z
ここで、
L 
N2、α、νは鉛直のみの関数として、上の式を1つの方程
式に書き直す。
Matsuno(1982)に従って、Geopotential
と
の式になおす

  1
1   cos     1  p   
(
) 

 

 t 4  2 a 2 cos     sin 2     p  z N 2 z 

1 
(
p
p z N
2
Q) 
1   p  
1
 cos 
1 
( 2
)
(
Fx ) 
p z N z
2 a cos    sin 
p z
のように書かれる。ここで
hn
  1
1   cos    
 p
 2

2 2
 z 4  a cos    sin    
1
4
2
a
 cos 

2
  sin


1
2
cos 
 

  
とする。これは緯度方向の演算子である。鉛直
方向と南北方向を分離する方法を用いて、
 
のようにすると。

 n ( ) x n (z )
n
L (
n
) 
1
gh n
n
鉛直拡散係数は上
のような値が使われ
る。<ー作られた波
(振幅)の伝播と波の
壊れみたいなことで
決まってくる。
は南北と鉛直を分離するさいの変数分離定数と呼ばれるものである。
中層大気の年振動モードは、Sawada and Matsushima(1964) が求めていて、最低次の赤道に対しての反対称モード(赤
道にたいして n
の形が北半球が正のとき、南半球は負になるモード)と考えられる。
そのモードの南北構造の形は図のようである:
(u は赤道に関して反対称で、v は対称である)
このモードの変数分離の定数はSMにより、
h=-10.82km
と与えられている。
一方、f=一定平面のときは、u, v が sin ly の構造を仮定する。(た
とえは、Holton, 1982, J. Atmos. Sci. を参照)
v の構造が赤道域でまったく異なる。
f(コリオリ)=一定平面近似では
(

2
z2


1 
H z
l 1 
f p z
2

l N
( pQ ) 
2
)
f2
U
l2 N 2
f
2
t
e
z/H
 
e
 z 
2
 z/H
( 
l N
f
2
2
)
 U 

 z 
Fx
l は南北波数である。球の式と形が似ていることに注意。この式をみると、Newton冷却の項と運動量の鉛直拡散の項は
同じ形をもっている。-->数値実験の結果は右のようになる(Fx=0)。
鉛直拡散の項を無視し、平衡の形を仮定した解(年振動はゆっくり変化して
いて、Newton冷却の時間に比べて無視できるであろうから)について見て
みる。また、鉛直流を無視すると(Fxを考えず、鉛直拡散を無視すると、東西
風の変化は南北風で生成される。東西風の変化を無視する近似は南北風
=0であろう、そうすると連続の式から鉛直風=0とおいていいであろう)、
熱力学の式は

 
z
 Q
だから加熱に対応して
Geopotentialが積みあがって
いく。その圧力勾配に従って、
地衡風が積みあがることにな
るから、右のようになる。この
結果は数値計算とほとんど同
じになっている。
この図は上の式の数値実験結果
これは観測の風と全く異なる。

東西風を減速するのに東西
非一様な擾乱が重要な役割
を果たしている
観測での東西風の時間変化
波動が重要である −>下の式のForcingの項に寄与をする。
u
1 
u
 fv 
( p
)  Forcing
t
p z
z
中緯度ではコリオリ力が効いて
 fv 
1 
p z
( p
u
z
)  Forcing
的になる。一方、赤道ではコリオリがゼロになると
u
1 
u

( p
)  Forcing
t
p z
z
のようになるから、赤道域ではForcingが直接東西風を振動させ
ている現象が存在する。
擾乱の影響によって準2年振動が現れる、また赤道域成層圏界
面や中間圏界面には半年振動も存在すること
赤道下部成層圏の準2年振動
赤道域の50kmあたりに、(および80kmあたりに)
半年振動が存在する。
木星の赤道域成層圏で準4年振動があるらしい—>地球の下部成層圏の準2年振動とよく似ているらし
い
南北方向の運動方程式に於いて、地衡風(コリオリ力と圧力勾配力のバランス)が成り立つとして
f u = -d Φ/dy
—>すると温度風 f du/dz=-d/dy (RT/H) から温度差は風のshearに対応
風の向きが代わっているようである。
20mb
10mb
温度変動
Leovy et al., 1991, Nature
鉛直1次元モデルでの準4年振動 Friedson,
1999, Icarus
1 — 6: 熱帯対流圏の中の擾乱 擾乱が結構線形
波動的に見えることがある(線形の方法が使える)
コリオリ力が効くか効かないかは、気象力学的には決定
的であろう。熱帯域ではどんな擾乱になっている? 赤道
対流圏の擾乱を眺める。
右図は天気 1994, No. 4 にのっている、’日々の衛星画像 1
993年10月’なるひまわりの衛星画像である。どのように感
ずるであろうか? 赤道近傍に雲らしきものが多く見える。赤
道近傍といっても雲のあるところとない所がある。
–>雲が結構集団化されているようである
赤道近傍の渦から台風らしきものが生成されているようでも
ある (偏東風擾乱からの台風生成?というはなしなどもあ
る)
Brightness temperatureの統計
 対流活動の指標
Ricciardulli and Garcia, 2000,
JAS
上が定常、下が標準偏差、84年冬
 こんなデータを時間・空間別に
解析してみると変動成分が見えてく
る。  解析すれば、それがどんな
変動でどんな形をしているかで、そ
れが研究となる
スペクトル解析−>周期的な擾乱の図:数日周期で
結構振動しているよう(右).夏の期間の南北風につ
いての解析,左が140-150E、右が165-170Eで、上か
ら、10-7.5N、赤道、7.5—10S –>周期的なものは波
動として議論可能であろう、
太平洋上の偏東風擾乱 は、太平洋の西域と中
央域(スペクトルがはっきり)は異なったもののよう
である.
夏の3.1-5.4日周期変動成分の強度水平分布
(Takayabu and Nitta, 1993)、aがTbbで、b: 対称
を北に反対称を南半球にc(下図)は南北風
図の右の方(180Eあたり)はRossby-gravity波のようと言われ
ている(繰り返しが西に伝播している–>波動になっている)
右はR-G波の水平構造:基礎方程式で赤道域だけ考え、そ
の式を線形にして式を解いてみる波動論による(3章)
波または対流としての別例:熱帯対流圏のSuper Cluster
と Cloud Cluster の絵を示しておこう。このSuper Cluster
は、みてわかるように東進している。—方、Super Cluster
の中にあるのは,Cloud Clusterと呼ばれるものである。
Super Clusterのスケールは ~4000km程度らしい(中
沢の論文)。Cloud Clusterの方は1000kmくらいのス
ケールであろうか? 図は1980年、5-7月、0-5Nの範囲の
擾乱の経度-時間断面図、図のA, B, C, Dは同じものを示
す。
一方、西の方は渦? (あまり波
のようにはみえない)−−>台風?
<−−東とは別の話しのよう
西の方の擾乱のSchematicな図、
太線は赤道を示す。
対流圏でも、ある部分は波の構造をもっているようである。
水平渦と対流が水平と鉛直を結び付ける気象力学のテーマ
のようですが
—>
ここでは可能なものは波としてとりあつかおう。
やはり,結構周期的な運動をしている−>重力波的に
も見える−>これはあとで詳しく話そう −> 赤道成層
圏では決定的
多くの赤道波は対流圏で何をしているのだろう?
赤道域での重力波の鉛直伝播と考えられるもの
津田のしごと(Tsuda et al., 1994, J. G. R. ):重力波が
たしかに対流圏−>成層圏まで伝播している図、(イン
ドネシア、East Java, 1990, Feb. 27-Mar. 22 での観測)
成層圏で鉛直波長が2-2.5kmの重力波が見える。水平
波長は 2000km 程度らしい。
Ogino, Yamanaka, Fukao, JMSJ, 1995:西太平洋上
(150Eあたり)での観測、1991年の11月-12月の船上で、
温度、風のデータ。大体赤道域
成層圏の大規模擾乱:<-横からの熱帯域への影響
中層大気大循環において、東西に非一様な大規模擾
乱(成層圏では波動と考えたほうがいいかもしれない、
何故なら平均的には不安定がないから? しかし振
幅がおおきくなると?)が重要な役割を果たしている。
中・高緯度-->熱帯への、中層大気の大規模な渦の
様子に目を向けよう。図は10mbの水平断面図(下:
等圧面高度)を示す。地球規模の波動的擾乱(惑星
波、Planetary wave 又はロスビー波、Rossby wave )
をみることが出来る。
ppmv
↑1mb近傍における、水蒸気( ppmv)の分布図。1992年、1月
15日、17日、25日である。熱帯に近いところで波、波している。
南半球の波は波数3の2日波のよう。北半球では惑星波の中
に小さな擾乱がある。
1979年5月26日の南半球における10mbの、オゾン
(ppmv, 上図)とgeopotential height 経度/緯度図。赤道から
64Sまでの領域。赤道域と中・高緯度域の振る舞いが異な
る。Leovy et al., 1985, J. Atmos. Sci.、物質と波がよく対応
している。また、赤道の方に伝わっているように見える
金星成層圏における様子
金星の成層
圏で速い風
が吹いてい
る。100m
/s 程度の
風。
最近この程度に
は大気大循環モ
デル
(CCSR/NIES
GCM)で風が再
現されてきた。
(Yamamoto and
Takahashi, 2003,
J. A. S.)、地表
から 95km まで。
このような風系
に波動擾乱が重
要な役割をはた
している。