syoukennsijyouron101201

Download Report

Transcript syoukennsijyouron101201

第3章.証券化 (7)証券化の将来
○証券化に対する規制強化
• 米国
• アレンジャー、オリジネーターへの規制
– 証券化商品の信用リスクの5%以上の保有義務付け
• →リスク移転が制限される
– 情報開示:ローン・レベルのデータ、業者の信用リスク保
有量、アレンジャーに対する証券化の原資産のレビュー
の義務付けと開示
• →証券化を行うコストが高くなる
– 会計上のオフバランスシート要件の厳格化
• →銀行は自己資本比率規制を達成するためより大きな自己資本
が必要となる
1
• BIS自己資本比率規制(対象は銀行)の強化
– 再証券化商品を別扱いとし、リスクウェイトを引上
げ:2倍から3倍
– 保有証券化商品についての包括的デューデリ
ジェンス(原資産のパフォーマンスの継続的把握
を含む)が行われていない場合、リスクウェイトは
最大の1250%
– →銀行による証券化商品保有を抑制する
• 日本
– 証券化商品のトレーサビリティの確保:
• 投資家が原資産の情報にさかのぼり、証券化商品を
評価できるようにする
2
○BIS自己資本比率規制
• 国際的に活動する銀行が維持すべき自己資本比率
• =自己資本/{信用リスク+(マーケット・リスク+オペ
レーショナル・リスク)×12.5} ≧8%
– 信用リスク=Σ(資産iの保有額×資産iのリスク・ウェイト)
– リスク・ウェイトはその資産の信用リスクの大きさに応じて異
なる(0%~1250%)
• 国債:0%、企業向け貸出:20~150%(格付の高さに応じて)、住宅
ローン:35%
– マーケットリスクの大きさは、各銀行が内部リスク管理に用
いるVaR (バリュー・アット・リスク)に基づくモデルで計算
– オペレーショナル・リスク(業務リスク)の大きさは、銀行の
粗利益に一定の掛け目を掛けて計算
3
• 格付規制の強化:米国の例(SEC格付規則、ドッド・
フランク法)
– 利益相反の防止
• 顧客対応部門と格付付与部門との分離の徹底
• 格付会社によるアレンジャーへの提案行為禁止
• 格付会社の従業員が退職後1年以内に格付対象証券の発行体
に雇用された場合、その格付をレビューし、必要なら修正
– 格付は民事訴訟の対象となる
– 格付手続き・手法の情報開示:原資産情報の検証やオリ
ジネーターの質の評価についての情報開示
– 証券化格付上利用された情報の他の格付会社への提供
• →証券化格付のコスト上昇→証券化格付料の上昇
4
• 金融危機以降、証券化活動は急ブレーキ、規制の
厳格化
• 証券化は金融の中の一時的現象で、持続的に存続
しうるものではないのか?
• ⇒
– サブプライムを巡る証券化の問題点噴出は、規制・監督
が不十分な中で住宅価格上昇に過度に依存ていたサブ
プライム証券化に特有という面が大きい
• 比較的新しい金融取引・商品に問題が発生し、一時的に市場が
急収縮するが、その後は発展する、という例(1990年代初頭の米
国のジャンク・ボンド市場)は金融の歴史の中ではよくあること
– 証券化の積極的役割
– 規制の厳格化
–・
5
・米国のジャンク・ボンド市場は、1990年代初頭に急収縮するが、
その後回復して、長期的には発展した。
・米国の社債発行額の推移:単位10億ドル
日本証券経済研究所『図説アメリカの証券市場2005年版』p.59
6
○日米個人金融資産の比較
日本1980 2009
米国1980 2009
預金
61%
52%
33%
17%
債券
3%
3%
10%
11%
株式
7%
4%
23%
20%
投資信託
1%
4%
3%
15%
年金
3%
12%
22%
31%
保険
11%
15%
5%
3%
7
○ヨーロッパ諸国の家計金融資産構成の推移
◎イギリス
1980
2006
2009
1980
2006
2008
預金
43%
26
29
預金
64
35
39
債券
6
1
1
債券
13
9
7
株式
14
12
11
株式
6
13
8
投資信託
1
4
2
投資信託
0
12
11
生保・年金
37
54
54
生保・年金
18
31
34
◎フランス
1980
2006
2008
預金
67
29
31
債券
10
1
2
株式
13
19
14
投資信託
3
9
8
生保・年金
7
37
40
◎ドイツ
8
第4章.金融危機
○今回の金融危機の経緯
• 2006年後半:サブプライムローンの不良化
• 2007年6月:米投資銀行ベアスターンズ傘下のヘッジファン
ドの破綻
• 7月:サブプライム関連証券化商品の格付け引下げが相次ぐ
• 8月:「パリバ・ショック」
– 仏大手銀行BNPパリバが傘下の投資信託の解約凍結
– 欧米の銀行間市場が信用不安に襲われ、中央銀行による大規模な
資金供給
• 冬:欧米の大手金融機関による巨額の損失発表
– 政府系ファンドSWFからの資本調達
• 2008年3月:ベアスターンズ実質破綻、FRBの支援を受けJP
モルガン・チェースが救済
9
• 2008年7-9月:住宅金融公社GSE2社(ファニー・メイ、フレディ
マック)の経営悪化、政府による救済
– 公的RMBSの保証:3.6兆ドル、保有住宅ローン:1.5兆ドル
– 米国の住宅金融の大黒柱
– 海外投資家も公的RMBSやGSE債を大量に保有
• 9月:「リーマン・ショック」
– 米大手投資銀行リーマンブラザーズ破綻
– 負債総額6130億ドル、アメリカ史上最大規模の倒産
– 金融危機が一挙に深刻化
• 保険大手AIGは米政府が救済
– 巨額のCDS保証提供(4000億ドル超、自己資本の5倍超)
• 10月:米国:緊急経済安定化法成立
– 資金枠:7000億ドル、銀行への公的資本注入
• 10月:欧州諸国(英独仏等):銀行への公的資本注入・国有化
• 10月:これ以降G7,G20で継続的に金融危機対策・金融規制
改革が議論される
10
○金融危機とは?
• 金融危機とは?
• なぜ金融危機は発生するのか?
–
→長期持続不可能→
行き詰まり(不良債権・投資損失の発生)→金融
機関の損失・破綻
– そのプロセスにバブルの発生・崩壊が伴うことも
多い
11
○従来の金融危機との比較
• 共通性
– 信用供与の行き過ぎと急収縮
– バブルの発生と崩壊
• 異質性
– 証券化市場が危機の中心・証券関連で大規模損失
• 投資銀行の破綻:ベアー・スターンズ、リーマン・ブラザーズ
– 損失の広がり:銀行以外、地理的広がり
– 市場危機
• 市場価格の暴落
• 流動性危機
– Shadow Banking System
– 市場型金融システムの広がりの中での金融危機
12
○信用供与の行き過ぎと急収縮
・
IMF, Global Financial Stability Report: Market Update, July 2009 p.3
13
・
世界の証券化商品発行額の推移
10億米ドル
商業不動産ローン担保証券
サブプライム住宅
ローン担保証券
プライム住宅ローン担保証券
その他の証券化
Bank of England Financial Stability Report April 2008 p.6
14
・
米国:個人住宅ローン供与額推移
億ドル
12000
10000
8000
6000
4000
2000
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
-2000
1990
0
-4000
FRB, Flow of Funds Accounts of the U.S.
15
・
サブプライムローン供与の推移
%
10億ドル
サブプライム
ローン供与額
(左側の軸)
サブプライムローン
の住宅ローン全体の
中での割合(右側の軸)
Federal Reserve Bank of San Francisco 2007 Annual Report ;The Subprime Mortgage Market p.8
16
・参考:バブル期の日本の不動産業向け貸出の激増
日本の不動産業向貸出実質増加率:国内銀行
40%
35%
30%
25%
20%
15%
10%
2000
1999
1996
1997
1994
1993
1991
1990
1988
1987
1985
1984
1981
1982
1979
1978
-10%
1976
-5%
1975
5%
0%
日本銀行「資金循環統計」
17
・
⇒危機後、借金のスリム化・返済のための消費節約
⇒アメリカ向けの輸出(アメリカの経常赤字)に依存していた
世界中の国に対して大きなデフレ圧力
米国家計:負債/可処分所得
1.5
1.4
1.3
1.2
1.1
1
0.9
0.8
0.7
FRB, Flow of Funds Accounts of the U.S.
20
06
20
08
20
00
20
02
20
04
19
96
19
98
19
92
19
94
19
88
19
90
19
84
19
86
19
80
19
82
0.6
18
・
2000年代の世界の信用拡大の特徴:家計向け信用の拡大
証券化は小口のローンを集めて、機関投資家の大口の資金を
呼び込むのに適している
家計負債残高の可処分所得比
%
英国
米国
ユーロ圏
ドイツ
IMF Global Financial Stability Report Oct. 2008 p.18
スペイン
19