リスク把握

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Transcript リスク把握

事業リスクマネジメント学習支援教材
事業リスクマネジメント手法編 NO.1
個別リスクの把握方法
ティーチングノート
学習にあたって
学習のポイント
リスク把握、リスク分析の代表的手法とそのプロセスを理解する
学習するスキル内容
リスクの典型的な分類ができる
実務でよく利用されているリスク同定の手法を理解し、その適用性、手法の強み・弱みについて
コメントできる
リスクを同定でき、それらを適切に分類できる
組織内部の業務機能とリスクの特性について説明できる
事業内容・事業ステージごとのリスクの特性について説明できる
個別リスクの発生頻度・影響度の分析手法について説明できる
準定量的、定性的分析ツールについて説明できる
さまざまなリスクについて適切な所有者を判断できる
基本テキストで対応しているのは:
第2章、第3章 です。
1
目
次
1.リスク把握のアウトライン
・・・・・
3
2.リスク発見(洗出し)の実際
・・・・・
7
3.リスク選択の実際
・・・・・ 13
4.リスク分析によるリスク把握
・・・・・ 17
5.まとめ
・・・・・ 29
本ノートについて:
本ティーチングノートは、平成15年12月に開催された
「事業リスク評価・管理人材育成システム開発事業」実証プログラムにおける
株式会社三菱総合研究所野邊潤氏のご講義
「個別リスクの把握方法」
の内容を学習支援用教材に再編集したものです。挿入されております
図表等も原則として講師に提供していただいたものです。
2
1.リスク把握のアウトライン
(1)リスク把握と意義
 リスク把握とは

リスク発見(洗出し):対象とする組織やプロジェクトにおいて潜在するリスク
を認知・発見すること

リスク選択(特定):認知したリスクに対して、重要なリスクを見出すこと

リスク分析:特定したリスクについて、リスクの大きさを明確にすること
危機管理
(Crisis Management )
リスクマネジメント
(Risk Management)
リスクの
特定
リ
ス
ク
発
見
リ
ス
ク
選
択
リスク
アセスメント
リ
ス
ク
分
析
リ
ス
ク
評
価
リ
ス
ク
対
応
リ
(
危ス
機ク
発顕
生在
)化
(
発
見初
・
連期
絡対
・
対応
応
)
コ
ンダ
トメ
ロー
ージ
ル
復
旧
3
1.リスク把握のアウトライン
(2)リスク発見の意味でのリスク把握
なぜリスク発見か
 リスクを考えるということは、未来の不確実性を相手にしている。
過去の知見の整理だけではない。
 決まったリスクの内容・リスクファクターがある訳ではない。整理の
仕方があるだけである。
リスク発見のポイント
 専門的知見を持つ
 立場を変えて考える
 世の動きに鋭敏になる
 共通因子を探す
 発想を柔軟にする
4
1.リスク把握のアウトライン
(3)リスク選択の意味でのリスク把握
 リスク選択とは

自社、自組織にとって重大なリスクとは何かを見極め、深く検討するため
に必要な作業
– 実際にリスクの洗出しをすると。300~4000項目ほどのリスクが挙がる。
 選択理由、基準の明確化
– 例1:全社の状況チェック:持続的発展のために法令遵守は不可欠と考え、コンプライア
ンス関係のリスクを選択
– 例2:リスクの大きさ:経営に重大な影響(○○円以上の損失)を与えるリスクを優先的に
選択
 選択の結果、何を期待しているか(目的)も明確にすることが望まれる

当該リスクの原因とその対応策を知りたいのか

当該リスクの顕在化時の影響と対応策を検討したいのか
– 例1:法令に触れる可能性のある行為をすべて明らかにしたい
– 例2:法令に触れる可能性のある行為が顕在化した場合の影響と対応策を検討したい
– 例3:新規事業を実施する再に注意すべき個別リスクを把握したい
5
1.リスク把握のアウトライン
(4)リスク分析の意味でのリスク把握
 リスク分析はリスク構造を明らかにしてリスク算定すること

リスク算定:リスクの起り易さと結果を明確にする
 起り易さ

起り易さを知るには原因を知る、過去の類似現象を必要がある

起り易さの表現は、
– 数学的な発生確率:1/6、1/100
– 発生頻度:1年に10回、1000年に1回
– ランク:高、中、低
 結果


好ましいものから好ましくないものまで有り得る
結果は定性的にも定量的にも表現されることがある
– 金額、影響指標(死傷、損失時間、影響範囲等)、ランク
6
2.リスク発見(洗出し)の実際
(1)リスクの発見(洗出し)の概略
 リスク発見(洗出し)の主な方法:下表参照
リスク発見(洗出し)のポイント
これらの手法は、一長一短がある。組み合わせて利用する場合もある。
リスク対策(解決策)ありきで進めない。
方法
概要
適用
チェックリスト方式
事前にチェック項目を用意して、自社の状況が該当
するかどうかをチェックする。
自社の状況確認に適している
グループディスカッ
ション方式
社内の業務や事業に精通した少数のグループを作
り、懸念されるリスクファクターをディスカッションして
洗い出す
特定の分野のリスク洗出しに有効
アンケート方式
社内の関係部署等にリスクアンケートを記入してもら
い、包括的なリスク洗出しを行う
包括的なリスクの洗出しに有効
演繹的分析方式
大きなテーマ(避けたい事象)を設定し、その要因と
なるリスクファクターを演繹的に分解して洗い出す
特定の分野のリスク洗出しに有効
経験的抽出方式
他社の事例や類似事件などをもとに、自社の場合に
起り得ないかを検討してリスクを洗い出す
社会で問題事象が発生した場合に有効
時間が限られている場合に有効
比較的小規模な組織に有効
関係者の意識啓発になる
専門家により短時間で抽出が可能
類似業種で事例が多い場合に有効
7
2.リスク発見(洗出し)の実際
(2)チェックリスト方式
 チェックリスト方式の利用

下記のようなチェック項目を用意して、自社の状況が該当するかどうかをチェックする。

チェックされた内容をもとに、チェックされた項目に基づき改善計画を立てる(点数換算などする場合もある)。
 チェックリスト方式の長所&短所

長所:作業が行い易い

短所:万能なチェックリストは無く、自社固有の問題などが見落とされ易い
チェック項目
財務
指標
YES
NO
対象外
備考
売上高の著しい減少がある
継続的に営業損失が発生している
....
財務
活動
重要な債務の返済が困難な状況にある
給与、社会保険料、税金、配当等の支払遅延がある
....
営業
活動
市場シェアの急激な低下がある
撤退または中断方針の主要事業がある
....
その
他
内部統制の社内ルールが遵守されていない
特定の部門、人物に重要な権限が集中している
....
参考:日本公認会計士協会近畿会「継続企業の前提に関するチェックリスト」
8
2.リスク発見(洗出し)の実際
(3)グループディスカッション方式
 グループディスカッション方式

社内の業務や事業に精通した少数のグループを作り、懸念されるリスクファクターをディスカッションして
洗い出す

コーディネーターが議論を誘導して、リスクを多角的に洗い出す
 グループディスカッション方式の長所&短所

長所:効率的に洗い出すことが可能

短所:大規模な組織において広範なリスクの洗出しは難しい
 グループディスカッション方式のポイント

メンバー:事業リスク全体を考える上では各部署からメンバーを募る。

人数:大人数になるとディスカッションが進まない。4~6名程度とする。多すぎる場合はサブグループに
分ける。

ディスカッションの進め方例
– STEP1:自社状況の確認:主要事業現在・未来、外部環境、内部環境 等
– STEP2:状況が悪化することを想定する(What-if分析)
– STEP3:ハザードとリスク等に分類し、リスク間の連関を整理
– STEP4:影響の大きさと起り易さについて議論
– (STEP5):重要なリスクを取捨選択
9
2.リスク発見(洗出し)の実際
(4) アンケート方式
 アンケート方式

社内の関係部署等にリスクアンケートを記入してもらい、包括的なリスク洗出しを行う
 アンケート方式の長所&短所

長所:部署固有の問題や経営者が気付かないようなリスクも抽出される可能性がある

短所:リスク項目数が膨大になる場合があり処理が困難になる、判断尺度がばらつく
リスク洗出しアンケートのイメージ
番号
リスク内容
発生確
率
影響結
果
実施してきた対策
1
新規重点○○事業の資金調達が滞る可能性がある
中
大
2
経営会議資料等重要保管資料が、第三者に持ち出され
て、極秘情報が漏洩する
中
中
常時ロック。特に注意が必要な資料
は会議終了後回収。
3
A工場における保安体制 の合理化で、火災等の災害発
生の可能性が高くなっている
中
大
新体制でのマニュアル整備と訓練
4
納品物の品質不良でリコールとなる可能性がある
中
中
品質マネジメントシステムの徹底
5
売却予定の工場敷地において土壌汚染が発覚して、浄
化処理を余儀なくされる可能性がある
中
大
土壌汚染状況の調査実施中
6
新人採用を控えていたため、数年後に技術伝承が破綻
し生産力が低下する
中
大
7
組合員不払い残業(サービス残業)が発生する
高
中
8
海外の駐在員が地域紛争に巻き込まれる
中
中
9
ホームページが改竄される
中
低
情報セキュリティポリシーの策定
10
2.リスク発見(洗出し)の実際
(5) 演繹的分析方式
 演繹的分析方式

大きなテーマ(避けたい事象)を設定し、その要因となるリスクファクターを演繹的に分解して
洗い出す

本手法は要因の分類していく再の切り口に経験を要する場合がある
 演繹的分析方式の長所&短所

長所:効率的にリスクを洗い出すことが可能

短所:細かい部分が落とされる可能性が高い、既成概念にとらわれることがある
工場の操業停止
現在の社会体系での重大トラブル
通常時
違
法
操
業
社
員
不
祥
事
環
・・・ 境
負
荷
環
境
問
題
の
事
故
社会体系の変更に追従できず
事故時
慣習の変化
死
傷
発
生
の
事
故
反
対
勢
働力
き等
掛の
け住
民
へ
の
施
設
被
害
の
事
故
法規の変化
規
制
強
化
新
規
法
規
社会からの不当要求
競争力低下
マ
ー
ケ
ッ
ト
変
化
技
術
の
陳
腐
化
誤
解
を
招
く
言
動
企
よ業
るイ
反メ
対ー
運ジ
低
動下
に
不
当
ク
失レ
・・・ 敗 ー
ム
の
対
応
11
2.リスク発見(洗出し)の実際
(6)経験的抽出方式
 経験的抽出方式

他社の事例や類似事件などをもとに、自社の場合に起り得ないかを検討してリスクを洗い出す

他のリスク洗出し手法の補完的な作業として用いることが有効
 経験的抽出方式の長所&短所

長所:具体的なイメージが湧き易く、洗出しが比較的容易である

短所:他社事例や類似事件等の収集に手間がかかる場合がある
収集事例のイメージ
企業名
時期
概要
影響
S製鉄
(N製鉄所)
03年9月3日
タンク下部の数ヶ所
の亀裂から爆発。事
故前から亀裂。
15人負傷。操業停止で計50万トンの減産と
最大約300億円の減益
B社(T工場)
03年9月8日
ゴム練り機のモー
ター劣化。30年間交
換せず。
近くの住民5000人以上に避難指示。火災に
よる被害額(簿価ベース)-設備関係:13億
円、原料関係:10億円、撤去費用:7億円
Y社(M工場)
03年9月10日
塗装・乾燥用機械
が全焼
ホンダ向け「エンジンマウント」 の供給がス
トップ
12
3.リスク選択の実際
(1)リスク選択の概略
マネジメントの集中
 自社、自組織にとって重大なリスクとは何かを見極め、
深く検討するために実施する作業であり、人的資源の
効率的投入のために不可欠である。
リスク選択の基準
 経営ポリシーにより選択
 リスクの大きさで選択
 良く分からない(不確実性が大きい)ので選択
 その他
13
3.リスク選択の実際
(2) 経営ポリシーによる選択
 選択の視点

全社に共通するリスク項目を取り上げる

個別の懸案リスク項目を取り上げる
 ポイント

経営者がポリシーを示していることが前提となる。但し、リスクマネジメントを始
めるにあたって、経営者が検討して意思表示をしても良い。

一般に経営ポリシーに準じた選択では広い定義のリスクが選択されることが多い。
実際にリスクを見極めていくには更なるリスクファクターへの分解や分類が必要な場
合がある。
分類
例
全社に関連するリスク項目
 環境リスク(事故時・通常時、過去・現在)
 情報リスク
 コンプライアンス関連リスク
 顧客信頼性低下に繋がるリスク
個別の懸案リスク項目
 新規事業に関連するリスク
 重要顧客との取引リスク
 社会的に関心が増しているリスク(全社共通の場合もある)
14
3.リスク選択の実際
(3)リスクの大きさによる選択
リスクマップのイメージ
 リスクマッピング/リスクマトリクス

リスクを発生確率(または頻度)と影響の大きさによって表示するもの

リスクの大きさは主観的に評価されている事が多いことに留意する
 選択基準

基本的にはリスクが大きなものから選択する

影響の大きさと確率では影響の大きさを重んじる
●情報リスク
●取引先倒産
発
生
確
率
●交通事故
●大規模火災
●不買運動
●労働災害
●水害
●セクハラ ●不正行為 ●環境汚染
●地震
●契約不履行
●戦争・紛争
下図の通り
影響の大きさ
リスクマトリクスのイメージ
リスク取扱の基本的な考え方
起
り
易
さ
●PL
●ストライキ
リスク取扱いスタンス

●不良債権
タイプII
タイプI
リスク保有・(発生確
率)低減対象
リスク回避・低減
対象
タイプIV
タイプIII
リスク保有対象
リスク移転・(影響)
低減対象
起
こ
り
易
さ
高
・情報遮
断
・売上減少
・景気変動
中
・労働災
害
・品質不良
・リコール
・工場停止
・環境汚染
低
・人権侵
害
・技術力低
下
・提携失敗
・地震
中
大
小
被害規模
影響の大きさ
15
3.リスク選択の実際
(4)良く分からないので選択
 ポイント

より深い分析を実施して、不確実性を絞ることが前提となる

リスクによっては、選択しても十分に解明されるとは限らない
良く判らない例
そもそも良く分からない
–未知性が高く不確実性が高い:新規化学物質等
リスクの幅
–起り易さが低いのか高いのか検討がつかない:経験的には低そうだが、最近起ってもおか
しくない
–影響の大きさ:リスクが顕在化した場合、間接的な影響が多くありそうで影響が不明
シナリオの多様性
–リスク分類で捉えたが、リスクの要因や影響パターンが様々考えられる
シナリオの絞込み
リスクの幅
リスク
リスク
要因
要因
・
・
・
要因
事象
事象
・
・
・
事象
リスク
要因
事象
リスク
要因
事象
リスク
リスク
・
・
・
・
・
・
・
・
リスク
要因
リスク
リスク
・
・
リスク
事象
リスク
リスク
リスク
リスク
16
4.リスク分析によるリスク把握
(1) リスク分析の流れ
STEP1:分析検討するフレームを明確にする
STEP2:リスクの構造として、「発現メカニズム」「発現
影響」のどちらを(または両方)知りたいか明確にする
STEP3:リスクの構造を知るための情報収集や分析
STEP4:上記を用いてリスクシナリオを策定する
STEP5:シナリオに従ってリスク算定をする
17
4.リスク分析によるリスク把握
(2)リスク分析フレームの明確化
 検討する目的

対象とする課題(リスク大分類や避けたい内容)に対して求めることを明確にする
– 例:為替リスクの最適化、違法行為の抽出と対策検討
 検討する範囲

検討対象、検討部署や分析対象期間などを明確にする

「リスク選択」や分析に許される時間 などから決まる場合もある
– 例1:原材料不足リスク:製造工程における原材料のリストアップとその重要性
(対売上、対利益など)から優先的に検討する原材料を定める。
– 例2:工場の爆発リスク:爆発可能性のある工程をリストアップし、どの工程を
検討するか明確にする。
 検討する切り口

分析の指標や手法としてどのようにアプローチするかという切り口を明確にする
– 地震リスクに対する投資「額」(低減策+移転)と損害「額」の最適化
– 新規事業の選択オプションによるリスクをNPVで評価する
18
4.リスク分析によるリスク把握
(3) リスク構造分析
 リスク構造分析の種類
フレームの明確化
【原因追求】
リスクの結果事象は明確で、
その原因事象を検討する
+
【影響追求】
初期行為やトラブルは明確
で、その後の影響(結果)を
検討する
リスクシナリオ分析
原因追求:具体的な対策を検討する際に有効
影響追求:意思決定結果や初期トラブルの波及影響を検討する際に有効
19
4.リスク分析によるリスク把握
(4) リスク構造の原因追求
 現状のモデル分析:事業モデルや生産システムなど対象に正常状態を検討する

製品が生産不足になる原因、製品が売れない原因、等
 モデル逸脱の検討:正常な状態からの逸脱を個々の要素について検討する

原材料:原材料の供給量が減る、買付けが出来なくなる、納品がされない

自社工程:支払ミス、移送不具合、生産不具合、余剰生産、払出ミス、在庫不足(余剰)、出荷ミス、入金
されない

マーケット:需要が増加する、需要が低下する、輸送トラブル
 要因取捨選択:当該リスクに照らして、要因になりえるかどうかを確認する

製品不足:原材料の供給量が減る、買付け失敗、納品トラブル、生産トラブル、在庫不足

その他:需要低下、入金トラブル、在庫余剰、需要増加
 要因の分類:それらの逸脱の連関などを含めて要因分類をする

製品が生産過剰となるケース、製品の需要が低下するケース

内部的な要因、外部的な要因
輸送・受入
原材料
原料貯蔵
出荷・輸送
払出
移送
生産
製品在庫
関係企業・市場
小売
支払
買付け・支払
自社の工程
販売
商品
支払
マーケット
簡単な事業モデル図
20
4.リスク分析によるリスク把握
(5) リスク構造の影響追求
 現状のモデル分析:初期事象(意思決定、トラブル)を取り巻く事業モデルや生産
システムなどを検討する

関係するプレイヤーのリストアップ:ステークホルダー、機器システム

基盤環境のリストアップ(市場状況、競合)
 波及形態を考慮した検討

位置的波及:火災が発生し隣の建屋に燃え移る

系統的波及:金融システムダウンにより資金ショートする
人件費
ストライキ
製造のオート
メーション化
流通コスト
製造コスト
売上量
コスト
売上金額
バリューノード
市場シェア
ディシジョンノード
価格
市場規模
利益
設備投資
チャンスノード
影響関係
21
4.リスク分析によるリスク把握
(6) リスクシナリオの表現ツール
原因追求型:特性要因図、フォールトツリー等
影響追求型:イベントツリー、ディシジョンツリー、フロー図等
【結果から原因】
原因
【原因から結果】
原因
イ
ベ
ン
ト
原因
原因
原因
Yes
Yes
結果
原因
原因
原因
原因
原因
イ
ベ
ン
ト
原因
No
初期事象
(原因)
Yes
No
No
結果1
結果2
結果3
結果4
22
4.リスク分析によるリスク把握
(7)リスクシナリオ分析の補助ツール
 SWOT分析



企業の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)による
評価をSWOT分析と呼ぶ。SWOT分析は外部環境分析(機会/脅威の分析)と内部環
境分析(強み/弱みの分析)に分けられる。
外部環境分析:企業あるいは事業が利益をあげる能力に影響を与えるマクロ環境要
因(政治、経済、社会、技術、法規制、文化等)とミクロ環境要因(顧客、競合他社、流
通業者、供給業者)の変化について機会と脅威として分析するもの
内部環境分析:有利な状況、機会において成功するコンピタンスが自社の内部に存在
するかどうかを強み、弱みとして分析するもの
SWOT分析のイメージ
外部環境
内
部
環
境
/
自
社
状
況
機会(Opportunity)
・○○国の市場の伸び
・ ○○国の好景気
脅威(Threat)
・排出規制強化
・技術流出
強み(Strength)
・ 高い技術力
・環境対応力
・高シェア○○%
・当局とのパイプ
積極的攻勢
(強みで取込める事業機会の創出)
・ 環境対応企業としてのアピール
差別化戦略
(自社の強みで脅威を回避または
事業機会の創出)
・環境設備の導入
弱み(Weakness)
・コスト競争力
・ 安定雇用力
段階的施策
(自社の強みで事業機会を取りこぼ
さないための対策)
・雇用拡大と労働環境改善
専守防衛または撤退
(自社の弱みと脅威で最悪事態を
招かない対策)
・効率化によるコスト削減
23
4.リスク分析によるリスク把握
(8) 要因分析の例
 原油高騰のフォールトツリーの例
30$/Barに原油高騰
で製造費圧迫
頂上事象
OR
OPEC
の調整
原油供給減少
原油需要増加
他の影響
OR
OR
OR
他原産国
の政策
供給
支障
消費国
の経済
成長
季節
要因
OR
産油
国紛
争
プラ
ント事
故
OR
輸送
事故
暖房
需要
増
投機
的
買占
め
世界
的イ
ンフレ
米国
在庫
料減
ガソリン
需要増
24
4.リスク分析によるリスク把握
(9) 影響分析の例
 新規製品投入のイベントツリーの例
類小
似規
品模
のベ
販ン
ダ
売ー
市
場
の
拡
大
競
合
他
社
の
参
入
規
制
の
強
化
Yes
Yes
Yes
Yes
No
No
No
新規製品
の投入
Yes
Yes
初期事象
No
最終事象
大規模追加投資が必要
競争優位性を失う
期待する利益獲得
期待する資金回収失敗
Yes
中規模追加投資が必要
競争優位性を失う
No
期待以上の利益獲得
期待する資金回収失敗
No
No
進展キー
25
4.リスク分析によるリスク把握
(10) 半定量的算定の例 (その1)
 起り易さ

ランク評価区分数
– 2~5が一般的。あまり多いと主観的な判断ができない。

指標
– 基本的には確率または頻度を用いる
– 実感が湧かない場合は間接指標(経験の有無)などを用いる
発生確率ランク例1
発生確率ランク例2
ランク
表現
目安
ランク
1
殆ど考えられ
ない
1000年に1回以下、理論上ある
高
稀にありえる
1000年に1回以上、歴史的に
ある
2
(今後十分に発生し得る)
3
ありえる
100年に1回以上、他国で発生
4
時々起る
10年に1回以上、他社で発生
5
良く起る
1年に1回以上、自社で経験
中
(今後発生の可能性があ
る)
低
(発生の可能性が殆どな
い)
頻度
経験
5年に1回
以上発生
過去経験した事例あり。
海外場所・他社発生事例
あり。
20年に1回
以上発生
社内での発生事例あり。
50年に1回
以上発生
過去経験した事例あり。
海外場所・他社発生事例
あり。
26
4.リスク分析によるリスク把握
(11) 半定量的算定の例(その2)
 影響規模

ランク評価区分数
– 2~5が一般的。あまり多いと主観的な判断ができない。

指標
– 金額などは企業の体力に依存する
– 実感が湧かない場合は間接指標(影響範囲)などを用いる
– リスク内容によって指標を変えることもある(理想的には単一指標)
影響規模ランク例1
影響規模ランク例2
ランク
被害金
額
人的被害
3
10億円
以上
死亡者発生
全国紙TV報
道
3
死亡
重大で広範囲に
及ぶ環境影響
全損
1億円以
上
負傷者健康
被害発生
業界紙地方
紙・TV報道
2
重大な健康影
響
重大な環境影響
重大な損害
1千万円
以上
苦情発生
ブラック情報
1
軽微な健康影
響
軽微な環境影響
軽微な損害
(経営に重大な影響)
2
(経営に小さな影響)
1
(経営に殆ど影響ない)
社会的影響
度
ラン
ク
ヒト健康被害
環境被害
物的被害
27
4.リスク分析によるリスク把握
(12) 定量的算定の例
 イベントツリーによる定量的計算の例

結果事象の影響量については別途物理的モデルなどで算定する場合もある
巡
視
で
漏
洩
を
発
見
成
功
漏
洩
処
置
成
功
着
火
せ
ず
0.9
0.8
巡
視
で
火
災
を
早
期
発
見
消
火
装
置
で
鎮
火
成
功
潤滑油小規模漏洩(3.96E-4/年)
0.4
0.55
A :A以下と同様のツリー構造である事を示す
0.75
ボイラ設備小規模火災(1.32E-5/年)
ボイラ設備中規模火災(1.98E-5/年)
0.6
0.1
ボイラの配管
軸受油の漏洩
0.85
1.0E-3/年
0.2
失
敗
潤滑油中規模漏洩(9.35E-5/年)
A
0.5
0.75
0.5
0.15
0.45
ボイラ設備中規模火災(1.10E-5/年)
0.25
A
0.25
ボイラ設備中規模火災(6.19E-6/年)
ボイラ設備大規模火災(6.19E-6/年)
ボイラ設備大規模火災(4.13E-6/年)
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5.まとめ
リスク把握は、「リスク発見(洗出し)」「リスク選択」「リスク算
定」の意味で使われることがある。
リスク発見(洗出し)では、発見することが重要であり、多様
な視野と柔軟な発想が必要。また日々、リスクに意識を払う
ことも重要である。
リスク選択では、経営ポリシーなどに従って重要なリスクを
選び出すことで、選択理由・選択基準・選択してどうするか
を明確にする。
リスク分析では、検討フレームを明確にしてリスク構造を知
る所から始まる。リスク構造を明らかにするには原因追求
か影響追求かを明確にする。さらにリスクの算定では半定
量的な方法や定量的な方法を必要に応じて使い分ける。
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