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○資産変換の復習:
銀行による資産変換
・資産変換:資金提供・受入の条件・契約内容の組替え
(
資
企
業金
不
足
主
体
)
株式・債券
銀行のB/S
借入
証書
貸
出
預
金
預金
証書
(
資
家金
計余
剰
主
体
)
・銀行は、借入証書という流動性の低い資産を預金証書
という流動性の高い資産に変換している(流動性変換:
資金の出し手に対してより流動性の高い資産を提供している)。
1
○流動性(が高いこと)の
メリットとデメリット
• メリット
– 資金提供者が手持の資産を現金化しやすい
• デメリット
• その資産の流動性が高く、いつでも売買できると、買
いが買いを呼び、売りが売りを呼ぶという一方方向
の動きが生じることがある
• cf. 第1章.金融システムの比較:市場型と相対型
2
– 現金化を求める動きが集中する危険性
• 市場価格の暴落
• 銀行取付け
– 一斉に預金の引出しが生じること
• その銀行に対する何らかの不安要因が発生
• →早く預金を引き出せば満額引き出せるが、遅れ
ると銀行が破綻し預金が減額される恐れがある
• →多くの預金者が我先に預金引出しに走る
3
• 銀行は預金取付けに弱い
– 預金引出しに備えた支払準備金は、預金全体のほんの僅かの
比率
• 日本の銀行の支払準備金18.3兆円(現金5.7兆円、日銀預け金
12.6兆円)、受入れ預金612兆円、準備率3% (2010年3月末)
• 銀行取付けに備えた制度
• 一時的な資金不足に陥った銀行に対して緊急に資金を供給
– 銀行取付けの原因:その銀行自体は健全であるが預金者に不
安心理が発生 or その銀行の資産に問題があり実質上債務超
過状態
– 後者が原因であれば、中央銀行の最後の貸手機能だけでは不
十分で、銀行の破綻処理が必要
4
○中央銀行の最後の貸手機能
中央銀行
インターバンク市場
銀行B
銀行A
預金
預金者:
a
b
c
d
e
f
・取引の構造は、本質的に店頭取引市場と同じ
5
○サブプライム問題と流動性危機
• サブプライムローンのデフォルト増大、サブプ
ライム関連商品の不透明性、格付不信
• →
– 市場に買手不在で資産の現金化ができない。無
理に現金化しようとすると極端に安い価格になる。
– 市場流動性:流通市場の働きによってそこで取
引される資産に与えられる流動性
6
・市場流動性の枯渇
• ベアー・スターンズ傘下のヘッジファンドの破綻2007
年6月
– 投資対象:AA格以上の高格付けのサブプライム関連の
CDO(債務担保証券)
• CDO(債務担保証券):ジャンクボンド(投機的債券)、高金利のロー
ン、低格付の証券化商品を束ねて証券化
• サブプライムRMBSを束ねたCDO(ABSCDO)が近年急拡大、サブ
プライム関連商品は格付の割に高利回りであった
–
:10数倍かそれ以上
• cf. ヘッジファンドの運用方法:
– 高格付商品にレバレッジを効かせて投資(上記ヘッジファン
ドはこちらの投資スタイル) or ハイリスク・ハイリターン商品
に投資
7
・ サブプライム住宅ローンの証券化RMBS(住宅ローン担保証券)
・RMBSを再度証券化した CDO(債務担保証券):ABSCDO
IMF. Global Financial Stability Report April 2008 p.60
8
・証券化商品格付への不信
・米国民間RMBSの
格下げ状況
09.08.07現在
発行当初AAA(05-07):
格下げ率:63%
BB以下への格下げ:
52%
・ABSCDO(再証券化商品)の格下げ状況
IMF, Global Financial Stability Report,
Oct.2009, p.93,88
9
• 事態の推移:
– サブプライ関連金融商品価格下落
– →借金の追加担保提供か借金の一部返済を求められる
– →保有CDOを売却 or 貸手による担保の処分売却
→CDO価格下落→損失拡大
– →更なる追加担保か借金返済の要求→破綻
・ 6月19日:リーマン・ブラザーズが担保のCDOを売却、
売却価格は額面の50%
・ 6月22日:メリル・リンチが8億5000万ドルの担保のCDOを
競売にかけるが1億ドルしか売れず。無理に売れば、額面
の30~50%でしか売れず。
10
・
・MBS:住宅ローン担保証券、 ・Agency MBS:住宅金融公社発行MBS
・Jumbo MBS:大型住宅ローンを担保とするMBS、 ・Alt-A MBS:Alt-Aローン
(プライムとサブプライムの間)を担保とするMBS、 ・ABX AAA, ABX BBB:
サブプライム住宅ローン担保証券の中の格付AAA部分とBBB部分
IMF Global Financial Stability Report Oct. 2008 p.13
11
・サブプライム関連証券化商品の市場価格は、市場流動性の枯渇
により急落、
・RMBSの市場価格下落による評価損は、ローンの推定損失率から計算した
満期保有時の損失を大幅に上回る:3100億ドル対1950億ドル
Other:市場価格下落による評価損マイナス満期保有時の損失
Bank of England Financial Stability Report Oct. 2008 p.16
12
(Funding Liquidity Risk)
– cf. 信用リスク、市場価格変動リスク:主として手持ちの資産
に関するリスク
– 預金の取付けは銀行にとって最も重要な流動性リスク
• イギリスの銀行ノーザンロック(住宅ローンの証券化で伸びてきた銀
行)で大規模な預金取付けが発生2007年9月
– 短期債務への依存度が大きいほど、流動性リスクは大きい
– 流動性リスクが現実化し、資金面から経営危機に陥ること
13
・米国投資銀行ベアー・スターンズの
流動性危機
• ベアー・スターンズは流動性危機に陥り、経営破綻
2008.3.16.
• ベアー社に対する信用不安の高まり→取引先(銀行・
ヘッジファンド)・レポ市場による資金引き上げ
• 証券化商品市場の市場流動性の枯渇→ベアー社は大
量のMBS,CDOを持っていたが、それの売却もそれを担
保とした借入も難しかった
• 破綻処理:
– ベアー社保有のMBS,CDO300億ドルを切り離し、ベアー社本体
をJPモルガンが救済買収(1株10ドル、cf. 3月12日時点の株価
65ドル)
– 300億ドルの資産は受皿会社に移し、時間をかけて回収。受皿
会社に対しJPモルガン10億ドル出資、残り290億ドルはFRB(米
連邦準備理事会)が特別融資
14
・ベアースターンズの流動性危機
Bank of England, Financial Stability Report, April 2008
15
・短期金融市場(マネー・マーケット)
• 1年以内の短期の資金が取引される市場
• インターバンク市場とオープン市場から構
成される
• インターバンク市場
– 取引参加者は銀行のみ
• コール市場、米国ではFF(フェデラル・ファンド)市場
• オープン市場
– 銀行だけでなく企業等も取引に参加
• レポ市場(債券担保の資金取引)、政府短期証券
TB市場、CP(コマーシャル・ペーパー)市場
16
19
50
19
53
19
56
19
59
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19
92
19
95
19
98
20
01
20
04
20
07
・
・証券会社のレポ調達比率(レポ調達/負債)推移
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
-0.1
-0.2
-0.3
-0.4
17
・
FF・Repo市場規模/GDP
0.18
0.16
0.14
0.12
0.1
0.08
0.06
0.04
0.02
0
70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08
19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 19 20 20 20 20 20
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• 2008年9月のリーマン・ショック前後には、
ベアー・スターンズ以外の他の投資銀行も
流動性危機に陥る
• リーマン・ブラザーズは破綻処理、メリル・
リンチはバンク・オブ・アメリカが救済買収
• ゴールドマン・サックスとモルガン・スタン
レーは銀行持株会社に転換
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・市場流動性低下と流動性リスクとのスパイラル
サブプライム
ローンの
不良化
金融機関・投資ファンドの
損失が発生・拡大
資産価格
下落
借入返済
・取付け
資産の一斉
投売り
CDOの
不透明性
・格付不信
手持資産の
売却難
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・流動性リスクと金融システム危機
サブプライム
ローンの
不良化
金融機関の
損失発生・拡大
貸借相手への
不安・不信増大
資産価格
下落
借入返済
・取付け
短期金融
市場の
機能麻痺
資産の
投売り
CDOの
不透明性
・格付不信
手持資産
の売却難
金融
システム
危機
金融機関の
連鎖倒産の
危険性
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• 第4章.参考文献
• 竹森俊平『資本主義は嫌いですか』第Ⅱ部
3,第Ⅲ部1、日本経済新聞社2008
22