メディア利用による制約の解消

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Transcript メディア利用による制約の解消

「メディア心理学」のまとめ
京都光華女子大学
人間情報専攻 酒井浩二
コミュニケーションとは?
• 対面型 人-人
– バーバル情報
– ノンバーバル情報:視線,ジェスチャ,顔表情など
• コミュニケーションの機能
– 情報伝達
– 感情伝達
– 人間関係の形成 など
• 非対面型 ①人-IT-人 ②人-IT
– 「メディア・コミュニケーション」
マスメディアとパーソナルメディア
受信者
• マス・メディア
送信者 メ
デ
人 ィ
ア
• パーソナルメディア
– ウェブ,ブログ,携帯など
– 双方向性のメディア,多対多
– 一般の人も公的に情報発信
• 膨大な人間どうしの情報交換
人
人
・・・
– テレビ,新聞,雑誌,など
– 一方向性のメディア,一対多
– 情報受信のみ
送受信者
人
人
人
・・・
・・・
メ
デ
ィ
ア
人
メディア・コミュニケーション活動
• パーソナルメディア利用による活動
– 遠隔授業 →教育
– ネット販売・消費 →経済
– 家庭型ロボット →生活
– テレビゲーム,オンラインゲーム →娯楽
– 携帯,ブログ →人間関係
• パーソナルメディアの可能性
– 誰もが容易に利用可能
– マスメディアに匹敵する影響力
メディアによる制約の解消
• メディアにより多くの制約が解消
• メディアの発達
– △対面/非対面の2極化
– ○対面・非対面を含めた使い分け
表1 メディアによる制約の解消(松尾(1999)を参考に改正)
対面 手紙 固定電話
距離の制約
×
○
○
対象の制約
×
×
×
時間の制約
×
○
×
移動性
○
○
×
記録性
×
○
×
豊饒性
○
×
×
同時性
○
×
○
携帯通話
○
×
×
○
×
×
○
携帯メール
○
○
○
○
○
×
△
PCメール
○
○
○
△
○
×
×
テレビ視聴に関する理論
• 認知能力
– 消極性理論
– ペース理論
– 置き換え理論
– 視覚化理論
• 暴力映像と攻撃行動
– モデリング理論
– 覚醒転移理論
– 脱感作理論
– カルティベーション理論
攻撃性への暴力映像の要因
• 映像要因
– 表現特性:現実性、残酷性、力動性
– 文脈特性:正当性、報酬姓
• 個人内要因
– パーソナリティ要因、性差
• 状況要因
– 視聴前要因、他者要因
メディア利用と対面活動の関係
• 通話とメールの特徴の違い
– リアルタイム性
– ノンバーバル情報の有無
– 情報を送受信する感覚器官
• メディア利用により対面活動が不得
手になるか?(表1)
表1.対面時間とメディア利用時間の関連
人と話す時間
電話(回) 携帯電話(回) 電子メール(回) テレビ(分)パソコン(分)
10分未満
10.1
4.8
3.3
203.6
18.6
10分以上90分未満
11.6
4.1
4
182.3
34.9
90分以上
12.1
6.6
6
166.7
44
電話でのやりとり
• 電話利用の4段階
安全
1分以内
用件
3-5分以内
カタルシス 数十分~1・
2時間
擬似環境 数時間
• コミュニケーション空間の構築
– 対面:物理的空間
– 電話:仮想空間
「対話の場」が重要
• オフライン対話の困難な要因
– インタラクティブ性の欠如
– リハーサルの負担
ケータイメールの特徴
• 手紙との違い
– 手間
– 単刀直入性
– 読み直しの有無
• パソコンメールとの違い
– モバイル性
– 即時性
– 文章の長さ
キューレス・メディア
• 「キュー」=相手を理解する手がかり
– 会話内容,表情,イントネーション,間,など
• 互いに「自己呈示」しやすい
– 自分も相手も印象をより高める努力
– 実際に会って以外,も多い
• 「投影」の傾向-相互誤解の一因
• 感情が昂揚しやすい
– 「フレーミング」の傾向
– 内容が記録されるため増幅
親しい関係維持の利用
• ①関係の維持の道具
– 度々のやり取りにより親近感→「単純呈示効果」
• ②フルタイム・インティメート・コミュニティの道具
– 常に誰かとつながる安心感
– メール返信が来ないと寂しい 「メール・ストレス」
• ③「自己開示」が高まる
– 言いたいことを表現しやすい
– 通話に比べて低い敷居
ネット利用による社会的適応
• 個人の資質の向上
– 対人不安
– シャイネス
– 孤立感
– ソーシャルスキル
• 社会性の向上
– 他者理解
– 新たな関係形成
– 関係維持
オンラインでのサポートグループ
• 心理的プロセスと利点
– 情報の提供-経験の共有,役割モデル(すでに
克服した人をモデルにする)
– 共感の提供-ソーシャルサポート
– 社会的比較-上方比較(行動指針),下方比較
(自尊心を向上させる)
– 自己開示
– 匿名性
– 接近可能性
オンラインでの印象形成
•
•
•
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•
•
対面とCMCの印象の比較
印象形成の近道
対面とCMCでの印象理解の比較
印象操作
個人ホームページでの自己記述
欺瞞を見破るのが困難
ウェブ日記の社会心理学
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ウェブ日記の開始動機
ウェブ日記の効用
読者からのフィードバック
ウェブ日記のタイプ
私的自己意識
自己表現満足
公的自己意識
ポジティブ・
フィードバック
自己効用
日記の継続意向
読者意識度
ネガティブ・
フィードバック
関係効用
被理解満足
テレビゲームの魅力点
•
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•
①ゲームの内容・レベルを自分で選択可能
②プレイのための創意工夫を要する
③完全なコントロール感
④主人公との相互作用が強い
⑤疑似体験できる
⑥随時性(好きなときにできる)と反復可能性
⑦精神的効用-ワクワク,スカッとする,など
テレビゲームの有効性
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CAI(Computer Assisted Instruction)
知覚運動能力の向上
学業不振の子どもへの適用
ボケ防止-遊びの創造
対人恐怖を除く-不登校の子どもに対して
ゲームを話題にカウンセリング
多様なロボット
• AIBO:「人との共存,人を楽しませる」
• ASIMO:「人と一緒に暮らし,人を助ける新し
い移動手段」
• ロボットコンテスト(ロボコン):競争により技術
力を高める.サッカー,相撲など
• レスキューロボット(地震,火災時など災害
時),地雷撤去ロボット
• 福祉・介護ロボット:本のページめくり,知的
車椅子,寝たきりの高齢者の介護サポート
ネット消費と人間関係
• ネット消費時代の価値観
– 合理的な節約行動
– 個性的生き方の尊重
– 心の豊かさを重視
• 企業が消費者との関係を深める過程
– 顧客が欲しがるものをつくる
– 顧客が欲しがるものを記憶する
– 顧客が欲しがるものを予想する
– 顧客の欲求を変える
パーソナルメディアの問題点
• 情報過多と時間的切迫感
– 情報を取捨選択し分析する能力
– 例:携帯での即時的なやりとり
– 仮説「メディアの普及により孤独感が高まる」
• 情報発信のモラル
– 「ネチケット」の重要性
• 情報格差
– 情報リッチ・プアの発生.情報リテラシの重要性
• テクノストレス
– テクノ不安症,テクノ依存症の危惧
授業のまとめ
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メディアは人間の道具
単なる道具ではない
人間の心理・行動,社会に大きく影響
3者の特徴を複合的に検討
– メディア
– 人間の心理・行動
– 社会・生活
• 知的・快適なメディアや活用法を提案・構築
– 人間,社会への大きな貢献
お勧め文献
• 坂元章2003『メディアと人間の発達』学文社
• 小林正幸2001『なぜ、メールは人を感情的に
するのか』ダイヤモンド社
• ジョインソン,三浦麻子ら訳『インターネットに
おける行動と心理』北大路書房
• パトリシア・ウォレス2001『インターネットの心
理学』NTT出版
• 山下清美・川浦康至・川上善郎・三浦麻子
2005『ウェブログの心理学』NTT出版
• 東嶋和子2001『ロボット教室』光文社