step9/メール交換の文化社会学
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■STEP9:メール交換の文化社会学
メール交換…既存の知り合い同士もそうだが、時
に恋愛に発展するメール交換のなかに、われわれ
のネットへの欲望のひとつの本質が垣間見えるの
ではないだろうか。
2015/9/22
◆忘れられた主題としてのメール交換
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美しいコミュニティの話(情報縁と新しい家郷)
社会を動かすインターネットの力の話(公共空間づくり)
暴走するインターネットの話(フラッシュモブや炎上・街宣)
…そうした社会・関係性の視点からみた議論が多い
1対1、親密性、自己にとっての他者
そうした私人の視点からネットへの欲望を読み解く必要
があるのではないのか。 舞台はメール交換
2015/9/22
◆メール交換の映画やドラマ
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話題となった映画やドラマがある
「○○のようなメール交換がしたい」
『(ハル)』(映画、1995)
『WITH LOVE』(テレビドラマ、1998)
『You’ve Got Mail』(映画、1998)
『電車男』(映画とテレビドラマ2005/2ちゃんねる
事件と書籍2004)
2015/9/22
◆親密性と二世界問題
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★〈物語の構図〉
・二世界のリアリティ逆転劇の物語
・メディア空間の他者によって救済される物語
対面空間(身体)
制度空間
ウソ・虚偽・欺瞞
ネット空間
非制度空間
ほんとう・真実・本音
2015/9/22
◆文字の“力(エンパワーメント)”
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★文字の力(リアリティ)の強調
仮想・虚偽・遊びの世界ではない…。
★対面しての落差・犯罪…にもかかわらず
文字が
「まっすぐな気持ち」「癒やし」「勇気」「支え」
「励まし」「自分が変わっていく」「立ち直る」
2015/9/22
◆『(ハル)』の場合
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構図
東京のビジネスマン・商社
アメフト・美貌の彼女
ハル(男性)
うまくいかない仕事
懐かしいアメフト
肉感的な女友達
盛岡のOL・彼氏の事故死
虚脱感・次々と転職
映画コミュニティ
→メール
交換
ほし(女性)
新幹線通勤
同居父の再婚
マンション一人暮らし
2015/9/22
◆『(ハル)』の場合
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構図
ハル(男性)
ほし(女性)
「メールの存在、ほしの存在が僕にとって毎日の支えでし
た。」
「こうやってメールを書くのって気分良いです。」
「真っすぐな気持ちになります。」
「ほしにメールを書くことが僕の日常なのです。」
「今までのメールの記録を見て自分が変わっていくのが解
りました。」
2015/9/22
◆『(ハル)』の場合
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構図
ハル(男性)
ほし(女性)
「ハルとのメールには何か特別な物を感じていたのです。」
「私はハルにメールを書いたり、ハルのメールを読んだりす
ることで、少しずつ立ち直ってきたのだなぁと思いました。」
「私が毎日、何をどう過ごしているか解ってもらいたいのは
ハルだけです。」
2015/9/22
◆『WITH LOVE』の場合
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構図
人気CM作曲家
銀行員
捨ててしまったバンド活動
日々のトラブル
肉感的な美貌のラジオパーソ
思いをよせるエリート社員
ナリティの彼女
hata
間違いメール
てるてる坊主
→メール
(長谷川天たかし)
(村上雨音)
交換
(ネットの中では…)
田舎の小学校の教員
(ネットの中では…)
パリに住む元OL
2015/9/22
◆『WITH LOVE』の場合
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構図
身体
文字
「いくつもの夜をあかして語りあっても、溶け合うほど身体を重ね
ても、何一つわかりあえない。何一つわかりあえなかったのは、
身体を重ねたせいかもしれない。」
「最初は身体だけの関係でも、そこから愛が生まれることはある
と思う。」
「文字の女がいいのね。ただの文字じゃない。」
「そちらのほうが現実なのに、こうしてパソコンに向き合ってメー
ルを書いている時間だけが、本当の現実のように思えます。」
2015/9/22
◆『WITH LOVE』の場合
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構図
身体
文字(ことば)
「hataさんの言葉が、癒してくれました。」
「てるてる坊主の言葉が、癒してくれた」
「勇気をくれました。」
「支えてくれました。」
「励ましてくれました。」
「hataさんのことば、いつも心にあります。」
「文字もそうですよね。言葉になって、文章になって…メッセージ
になる。…それが人の思いを伝えるんですよね。」
2015/9/22
◆説明フレームの模索
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問い
道具としての
ネット(俗)
遊びとしての
ネット(遊)
コミュニティや
群衆・公共と
してのネット
社会関係
としてのネット
2015/9/22
◆「自己物語のリライト」論
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第三の定義
救いとしての
メディア(聖)
自己の再生の場
としてのメディア
定義
ネット空間
2015/9/22
◆参照「自己物語」パラダイム
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井上俊「物語としての人生」
私たちは、自分自身の伝記の作者であり、それを承認てく
れる他者としての、人生の「道づれたち」がいる。
身近な他者との間で構築されていく自己についての物語が
私たちの人生にほかならない。私たちは「人生の物語を語
らなければならない」のであり、「自分の物語を他者に向
かって語りかけざるをえない」という。人生とは、他者によっ
て語り、構成し、意味づけられるものとしてある。
他者むけヴァージョンの自己→他者によって相対化される
2015/9/22
◆参照「自己の構築主義」
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〈構築主義的自己論〉2000年代に台頭〜
自己を所与・確定してものとせす
→シンボルによる構築物としての自己
(1)自己の構築は、シンボル・語彙による。
(2)時間幅をもった、物語によって整序される。
(3)相互作用のなかで創出される。
自己をあるものとして定義することは、他者の承認を伴ってい
る。「他者の承認による自己の構築」(片桐)「自己の表出は単
なる表現行為ではなく、交互行為を構築し、創出する。」
★加藤晴明の自己都合論・自己物語のリライト論
アイテムとしての他者=自己の肥大と他者の縮小自己都合的
な自己語りの肥大化(都合のいい他者が調達できる場)
2015/9/22
◆参照「上演論パラダイム」
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演技的自己
「人は演技的生き物」←メディア(テレビ)が増幅させてきた。
・発表会・恋愛・結婚式(「スポットライト症候群」)
・テレビに映りたがる。(ブーアスティン「幻影の時代」)
ドラマトゥルギーの主人公
輝いていたかつての自分(電話風俗のインタビューから)
「メディア・ドラマトゥルギー」(加藤晴明)
「上演論パラダイム(吉見俊哉)」
2015/9/22
◆自分を何者かにしてくれ場
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「総表現社会」、一人一人がマスコミ
ひとかどの発信者
日記・ブログを書く。
動画投稿する
メディア空間の主人公
メール交換
(承認の調達)
コメントをもらう。
アクセスがある。
賞賛される。
コミュニティ・掲示板で
ぶいぶいいわせる。
群衆行動(炎上・フラッ
シュモブ・街宣)で
ぶいぶいいわせる。
2015/9/22