Transcript メディアと自己論
メディアと自己論 ■メディアをめぐる主題のひとつ 「メディア語り」 問い:「総表現社会」と言われる。 ひとはなぜ、メディアを使ってかくも 自己を語ることに飽きないのだろう・・・ メディア論と自己論のクロスする地平がある 5章(教科書『自己メディアの社会学』) ■ネット空間への理論的フレーム a〈二世界〉 b〈メディア自己論〉 c〈聖俗遊〉 d〈解放論〉 e〈救済・再生論〉 5章(150頁) ■態度選択〜以下からスタートしない ・単純なつながり論・関係性論 ・コミュニケーションを所与としない ・コミュニティを所与としない ・遊び論に与しない ・市民メディア論・社会運動論に与しない ・変身論・分身論に与しない ・自己=他者依存性仮説に与しない 5章(150頁〜) ■ふたつの態度選択 (1)情報縁=「親密性」論 ▼ 自己論から位置づけなおす必要があるのでは。 (2)2つのリアルというフィクション ①現実=〈対面・日常・秩序〉 ②〈ネット的リアル〉 2つともフィクション 5章(152頁) ■ヴァーチャル空間(152頁) ヴァーチャルという語 ・現実ではないが、「実質」 ・スクリーン上での表象(記号) →私たちに、めまい感覚や解放感覚を与える (「民衆の阿片」、「機能的な幻想」) 5章(156頁〜) ■ヴァーチャルと「解放」(155頁) 成田康明のヴァーチャルと「メディア化した自己」論 「メディア空間のなかに自己を転生」 「自己開放感」 「違った空間を生きる自己」 5章 ■メディアヴァージョンの自己 地位・役割、媒介的関係、制度的関係 ▼ 〈自己の準拠点〉の流動化 デジタル装置による 〈自己のヴァーチャル化〉 〈自己の表象化〉 5章(159頁) ■井上俊:自己の情報化論 ・演技論・上演論的自己論を提起 自己イメージ操作・自己演出・自己呈示 「他者をアイテムとして、自己が自己として演じ、自 己を操る世界」 ▼ ・デジタル次元での自己の情報化が、 〈自己のメディア化〉〈メディアヴァージョンの自己〉 5章(161頁〜) ■片桐雅隆の自己論と私化論 ①自己の構築は、シンボル・語彙で ②自己の構築は、物語で ③自己の構築は、相互作用で ▼ 〈自己の準拠点〉はどこにあるのか 相互作用を極めて非対称的なものと考える必要が あるのではないのか・・ 5章(163頁〜) ■小林多寿子:自分史論:自己にとっての他者 自分史論 「自分に向かって語って聞かせる物語」 「他者の承認も不可欠」 「自己と他者の双方に向かって同時に呈示される自 己の物語」 ▼ 「他者とは自己が自己としてあるためのアイテム」 5章(166頁〜) ■浅野智彦の自己物語とパラドックス 自己が自己を語ることの語り得なさ 語る自己 語られる自己 終わらない(パラドックス=矛盾) 5章(168頁〜) ■日記(ディディエ)の理論的考察 二重の自己自己対話 自分を見つめる自己 (心・頭の中) 行為する自己 (表現する自己) (身体) 語られた自己 (表現された自己) (スクリーン) 5章(170頁〜) ■いのちの電話 ・情緒的なコミュニケーション ・共有し、無限に受容する姿勢 「他者が語る物語を無条件で受け容れる」 ※相互行為=〈他者依存性仮説〉ではダメ 5章(172頁〜) ■「救済」「再生」というパラダイム 〈解放のメディア論〉〈救済のメディア論〉 「招き」→「払い」→「訪れ」→「離れ」 (書いて・公開して、コメントが来て、元気をもらう) メディア行為の3元図式 5章(176頁〜) ■ネット恋愛にみる「救済」と「再生」 ・二世界フレーム ・自己物語のリライト(「救済」と「再生」) 5章(179頁〜) ■ネット恋愛(「親密性」)物語構造 (1)ハル 〈制度的リアリティの相対化・逆転化〉 人生のリベンジ・敗者復活戦 メディアがもっている幻惑力、再魔術化力 ■5章 • • • 映画「(ハル)」が投げかけた主題 ネット空間こそがリアリティ…リアリティの逆転 匿名よりも、制度的自己からの脱却? ■二世界逆転劇 ◆「ほし」から「ハル」への二世界逆転 リアリティの比重反転=幻想 (×妄想) 「ハルとのメールには何か特別な物を感じていた のです。「私はハルにメールを書いたり、ハルの メールを読んだりすることで、少しずつ立ち直って きたのだなぁと思いました。」「私が毎日、何を考え どう過ごしているか解ってもらいたいのはハルだ けです。」 5章(182頁〜) ■ネット恋愛の物語構造 (2)WITH LOVE 〈制度的リアリティ〉 〈身体的リアリティ〉 への逆転の物語 5章(184頁〜) ■室田尚子のチャット恋愛学 ①イメージが理想化されやすい ②「ほんとうの自分」という感覚 ③見えない相手の性格があることを忘れる ▼ 自分にとって都合のよい相手を、勝手に理想化 〈自己都合型コミュニケーション〉 ササキバラゴウ:「わたしを成立させるためのあな た」=〈他者というアイテム〉 5章(187頁〜) ■ネット恋愛の物語構造 (4)電車男 相手ではなく、間接的・媒介的な支援・サポート ▼ 「救い」「再生」 かつての「まなざし」(差別・蔑視)の牢獄 →「まなざしの不在」の牢獄へ 5章(189頁) ■ネット恋愛の物語構造のまとめ 私を無限に承認する極私的なコンテクスト(文脈) 〈他者というアイテム〉を通して自己のリアリティが 獲得されるような非対称的で偏差のある関係 「私を私として成立されるあなた」による 「解放の物語」「期待の物語」