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(2)株式の流通市場
・株式取引において、米英に比べてなぜ日本ではPTSのシェアが
小さいのか?
・米国株式取引における各種取引市場のシェア(2009年4月)
・Nasdaq、Nasdaq TRF、NYSE
(ニューヨ-ク証券取引所)は
伝統的取引市場
・Dark Pools:証券会社の店内
付け合せによる取引所外取引
・上記及びOther以外はPTS
・PTSでの取引は機関投資家が
中心
清水葉子「レギュレーションNMS後のニューヨーク証券取引所の地位について」『証券レポート』2008年8月
1
・日本株取引におけるPTSの市場シェアはほんのわずか
深見泰孝「我が国のPTSの現状と課題について」『証券レポート』2010年8月
2
・株式取引において、米英に比べて
なぜ日本でPTSのシェアが小さいのか?
• 米国の状況
– 規制:2005年のNational Market System規制
• 考え方:市場間競争を促進しつつ、市場間リンケージ強化により全
体を1つの市場として機能させる
• 最良気配を提示する市場に注文を回送し、売買させる(最良執行
義務)
• 自市場に新しく注文を集める必要のあるPTSにとって有利な規制
– 機関投資家・証券会社の低コスト取引に対する意識の強さ
• 日本
– 規制:2005年証券取引法改正で最良執行義務が導入
• 証券会社が価格、スピード、流動性等を総合的に考慮し、最良執
行の方針を定めることとなっており、米英に比べて最良執行の義務
付けが緩い
– 機関投資家・証券会社の低コスト取引に対する意識がそれ程強くない
深見泰孝「我が国のPTSの現状と課題について」『証券レポート』2010年8月
3
(4)株式市場の役割
①資金調達の場
• ベンチャー企業は、株式市場を通じて活発に資金を
調達
• 成熟企業は、ほとんど株式市場を通じて資金を調達
していない。
• 成熟企業は、近年かなり大量に自社株買いを行っ
ている
4
・
・株式による資金調達
2000-06年
平均
非金融企業 -1798億ド
ル
-57
銀行
2007
2008
2009
-7868
-3360
-647
-237
3319
787
証券会社
323
1202
-324
4
FRB : Flow of Funds Accounts of the United States
5
• 株式による資金調達は、マイナス
• 株式による資金調達
• =
– ②の内容:自社株買い、現金によるM&A
• アメリカの企業全体を見ると、①より②が大きい
– 但し、ベンチャー企業は株式市場から資金調達、金融危機
において金融機関は自己資本増強のため株式市場から資
金調達
6
・部門別株式投資額
家計
海外
投資信
託
政府
2000-06
年平均
-3739億
ドル
817
1356
2007
2008
2009
-8528
-1110
413
2185
1100
1047
-559
1425
824
0
0
2563
6
・2007-08年の海外からの米国株式投資にはソブリンファンド
(政府系ファンド)による米国金融機関株式の取得を含む
・政府による株式取得は金融機関への公的資本注入
7
• 2000-06年(金融危機以前)の米国株式の
取引構造
• この取引構造は、基本的に1980年代後半
から続いている
8
・
日経07.10.11.
9
• 自社株買いと増資
– 2007年:4.5兆円、 2.9兆円
– 2008年:4兆円、 2.9兆円
– 2009年:8000億円、 6.8兆円
• 金融危機の中で日本の金融機関が自己資本増
強のために活発に増資2009-10
–
–
–
–
–
三井住友:1兆7509億円
三菱UFJ:1兆4544億円
みずほ:1兆3838億円
野村証券:7871億円
大和証券:2077億円
10
・自社株買い上位企業とNTTの自社株買い状況
日経09.10.14.
日経.08.5.28.
○NTTの自社株買いの理由
・手元資金に余裕があるが、有力な投資先がない。
・低迷する株価のテコ入れ
11
○自社株買いの理由
• ①企業の投資資金需要に比べて内部資金に余裕がある。
– 株主への利益還元策としては、配当に比べて弾力的に実施できる
• ②
• →株価引上げ
– レバレッジを高めて、収益拡大効果を実現
• ③経営陣から見て株価が割安の時、株価のテコ入れ。企業
の収益力・適正株価についての経営陣の見方を伝えるシグ
ナル。
• 米国での活発な自社株買いの背景
– 内部資金が豊富な成熟企業が多い
– 株主からの株価向上圧力が強い
12
②株式に対する流動性の付与
• 株式市場(取引所)の存在により、株式の現金化が
容易になっている
• 株式市場(取引所)が存在しなければ、一旦取得し
た株式を売却・現金化することは非常に困難
⇒
いつでも売買できる機会を
提供している。
・
・ネット証券会社もコストの面で株式の流動性を高めている。
・資産の特性:リターン、リスク、流動性
13
③株価のシグナル機能
• 株式市場(取引所)の機能:
–
• cf.前期講義第2章「情報生産」
– 株価:数多くの投資家の意見を集約(公正)。現在
の株価が割高と考える投資家は売り、割安と考え
る投資家は買い、そうした意見を集約して株価が
決定されている(適正)。
• 投資家に対する情報提供
– 投資判断上重要な情報を投資家に提供
14
• 企業に対する情報提供
– 投資・事業計画、経営戦略、現行の経営陣の質に
対する市場の判断を示す
– この企業の事業リスクに対する市場の判断(資本
コスト)→投資・事業計画の基礎的判断材料
• 資本コスト:株主価値を引き上げるために必要最低限の
事業投資(の期待)収益率:金利r+リスクプレミアムδ
• 事業リスクの大きい(小さい)企業は、資本コストが大き
い(小さい)
• cf. 福光・高橋『ベーシック証券市場入門』第6章、
• 井出・高橋『ビジネス・ゼミナール経営財務入門』第6章
15
④企業支配権の移転を促進
• 株式市場で株を買い集めることで、企業の支配権
を獲得する(or影響を及ぼす)ことができる。
• 株式交換制度を利用することによって企業の買収・
合併が容易になる
– 株式交換:
• 国有企業の民営化
– 国有企業の支配権を株式市場を通じて民間に移転
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○シティによる株式交換を使った
日興の完全子会社化
• 経緯
– 06年12月:日興コーディアル・グループの不正
会計問題発覚
– 07年4月:シティと日興との提携関係をベースに、
シティが日興にTOBをかけ、56%の株を新規に
取得
• TOB 価格1700円
• シティの日興株保有比率は68%
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– 07年10月2日:シティ、株式交換方式による日興完
全子会社化を発表(三角合併方式)
• 完全子会社化によるシティグループ全体の総合的戦略
の追求
• 日興株1株1700円と見なし、それと同等のシティ株と交
換
• 10月2日の日興株価は1462円だから、プレミアムは
16%
日経07.10.3.
18
– 11月5日:シティ、東京証券取引所に上場
– 12月19日:日興の臨時株主総会:シティの完
全子会社化を決定
– 08年1月18日:株式交換条件決定:日興株1
株=シティ株0.602株
– 1月23日:日興の上場廃止
– 09年5月:シティ、経営危機により日興証券を
売却、三井住友銀行が5450億円で買収
– 9月:三井住友銀行、大和証券は大和証券
SMBCの合弁解消
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○第1章参考文献
• 福光・高橋編『ベーシック証券市場論』第3
章、6章、同文舘出版
• 井出正介・高橋文郎『ビジネスゼミナール
経営財務入門』日本経済新聞社、第4章
• 日本証券経済研究所『詳説:現代日本の
証券市場2010年版 』日本証券経済研究
所
• 日本証券経済研究所『図説:アメリカの証
券市場2009年版』日本証券経済研究所
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