敵対的企業買収と買収防衛策

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◎敵対的企業買収と買収防衛策
○M&Aの種類
• 合併:
•
被合併会社の法人格が消滅
• 買収:
• 株式を買い取ることによって
•
、
– 現金買収(TOB等)と株式交換
• 株式交換:現金で買収するのではなく、買収会社の株
式を対価として支払って買収
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○日本のM&A推移
資料:レコフ
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『金融先端用語
辞典』日経BP社
p.241
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• 現金買収の方法
• ①市場取引
– 株式市場で流通している買収対象企業の株式を
買い集める
• 株式保有割合が5%を超えると、大量保有報告書の提
出義務が発生
• ②
• 買付期間(20営業日以上60営業日以内、会社側が反
対の場合30営業日以上)、買付数量、買付価格を提示
する義務
– 株主に公平に株式売却機会を与えるための制度
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○日本におけるTOBの推移
資料:レコフ
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• 買収(続き)
– 友好的買収と敵対的買収
• 敵対的買収:
• 買収防衛策:敵対的買収を防ぐための手段
– 事業会社による買収と買収ファンドによる買収
• 事業会社による買収:事業の拡大・経営基盤の強化・
多角化を目的
• 買収ファンドによる買収:企業価値を高める余地の大
きい企業(経営上の問題で効率が低下している企業、
経営破綻企業等)を買収し、経営改革を通じて企業価
値を高め、株式売却によりキャピタル・ゲインを得る
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○ブルドックによる買収防衛策
• 経緯
– 07年5月16日:投資ファンド「スティール・パートナーズ」がブ
ルドックに対してTOB
• 期間:6月28日まで、数量:全株、価格:1株1584円(直近株価を20%
上回る(プレミアム))、
– 6月2日:スティール:ブルドックからの質問書へ回答
• 買収後も自ら経営を行う意図はない
• 現在のところ株式の最終的な売却計画はない
– 6月7日:ブルドック取締役会:スティールのTOBに反対、株
主総会に買収防衛策実施を諮る
– 6月13日:スティール:買収防衛策は「多数決の濫用」として、
買収防衛策の発動差し止めを裁判所に申請
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日経07.6.29.
・新株予約権:
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– 6月17日:スティール:TOBの期間延長、価格引
き上げ
– 期間:6月28日→8月10日、価格:1584円→1700円
– 6月24日:株主総会で買収防衛策実施可決
• 特別決議(出席株主の3分の2以上の賛成)で可決
– 6月28日:東京地裁:スティールによる差し止め請
求を却下
• 買収者への対抗手段の必要性の判断は株主総会に
委ねられるべき
•
ことを理由
に、株主総会が対抗手段が必要と判断したことは、合
理性を欠くとは言えない
• 買収者に適正な対価が交付されて、
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・ 6月28日:スティール:地裁決定を不服として、
高裁に即時抗告
日経07.6.29.
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○スティールのこれまでの株主行動
• 明星食品株への投資
– 2003年11月:スティール筆頭株主
– 2004年12月:スティールの在日代表黒田賢三氏を明星
の社外取締役として送り込む
– 明星食品の業績は改善したが、株価は低迷
– 2005年末~06年:スティール:明星経営陣に対して
MBOを提案
– 明星経営陣MBOに反対
• 株式非公開化による従業員の士気低下
• 負債増加による財務体質の悪化
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– 2006年10月26日:スティール:明星食品にTOB
• 期間:10月27日~11月27日、数量:全株、価格:700
円(直近株価の14.9%のプレミアム)
– 10月31日:明星食品の取締役会はTOB反対を
決定
– 11月15日:日清食品:明星との資本業務提携発
表、明星に対してTOB(スティールのTOBに対す
る対抗TOB)
• 期間:11月16日~12月14日、数量:1422万6000株
(持株比率33.4%の取得を目指す、買付には上限を設
けない)、価格:870円
• 日清食品が明星のホワイトナイトになるということ
– 11月27日:スティールのTOBは失敗
• 応募株式数ゼロ
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– 12月14日:日清食品のTOB成立
•
•
•
•
応募株式数:3676万4910株(応募株全てを買い付け)
スティールは保有株全てを応募して売却
日清の明星株保有比率は86.32%
明星食品は上場廃止の見通し
– 上場廃止基準:少数特定者(上位10株主、役員等)持株数が上場株
式数の75%を超える場合
– 結局、スティールは30億円程度の利益を獲得
• スティールのTOBは、ホワイトナイトを引っ張り出して、保有株を高
値で売却することが狙いか?
• スティールはアクティビスト・ファンドかグリーンメーラーか?
– ・
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○ 楽天 対 TBS
• 経緯
– 2005年秋:楽天:TBS株を買い集めて(15%)経営統合を
提案、TBSは強く反発
– 2005年11月:「休戦協定」締結
• 楽天の経営統合案取り下げ、楽天保有TBS株の議決権の一部
凍結、両社は業務提携の可能性を協議
– その後業務提携交渉は一向に進まず、TBSは安定株主
工作を進める
– 2007年:両社の関係悪化
– 2月28日:TBS取締役会:買収防衛策導入(
)
– 4月19日:楽天:TBS株20%超取得の意向を表明
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日経
07.6.15.
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• 防衛策の内容
– 企業価値を毀損する「濫用的買収者」と認定され
た買収者を除く、全株主に新株予約権を割り当て、
買収者の持株比率を下げる(ポイズンピル)。
• 防衛策が発動されれば、楽天は特別委員会
の独立性や防衛策そのものの正当性を問う
訴訟を起こす予定
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○買収防衛策導入企業の拡大
・導入企業数(2007年2月時点):197社、東証1・2部上場企業数2205社
日経夕刊
07.2.23.
・2007年6月の株主総会で買収防衛策導入を提案した企業数210社、
そのすべてで可決
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・事前警告型買収防衛策発動の流れ
大和総研「平成18年導入の買収防衛策の傾向と株主の反応」p.5
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○ 参考文献
• 佐山展生・藤田勉『新会社法で変わる敵対的
買収』東洋経済新報社 2005年
• 佐賀卓雄「戦後アメリカにおけるM&Aファイナ
ンスの変遷」『月刊資本市場』2005年6月
• 大和総研「平成18年導入の買収防衛策の傾
向と株主の反応」2006年7月
• 藤田勉「世界のM&Aと三角合併解禁の影
響」 『月刊資本市場』2007年6月
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