日本を脅かす投資ファンド

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日本を脅かす投資ファンド
~ブルドックソースとの抗争からみる、
スティール・パートナーズ~
2007年9月27日(木)
04f1502 4年P組
小林 明誉
目次
はじめに
 スティールパートナーズとは・・・
 これまでのスティール社の主な動き
 ブルドックソース vs スティール
 抗争の結果
 おわりに
 参考文献

はじめに

今回この題材にした背景として、2003年から日
本企業を標的とする敵対的TOBを仕掛けてきた
スティールパートナーズ。2007年に入り、サッポ
ロHD、ブルドックソースをTOBという手段で標
的とし、力を緩めない。今回は、特に「ブルドック
ソース事件」を題材にあげ、スティール社の動き
を取り上げていくこととする。
スティールパートナーズとは・・・
スティール・パートナーズ(Steel Partners)は、
アメリカ合衆国に本拠地をおく、アクティビスト・
ヘッジファンドの1つの総称。代表は、ウォーレ
ン・リヒテンシュタイン。
 日本法人名は「スティール・パートナーズ・ジャ
パン株式会社」(SPJS Holdings LLC)で、2001
年11月に設立され、東京都千代田区丸の内22-1岸本ビル9階に本社機能を置いている。

出所:ウィキペディア
スティールパートナーズの保有銘柄

2007年7月現在ス
ティール社は株式を5%
超を持つ日本企業の銘
柄は30社以上あり、取
得金額は3,423億円で
ある。

食品メーカーの比較的
銘柄が多い。
出所:読売ウィークリー
スティール社がTOBを提案した主な企業
これまでのスティール社の主な動き①
 2003年12月
東証2部上場(当時)のユシ
ロ化学工業と毛織物染色業大手のソトー
に、日本で初めての本格的な敵対的TO
Bを仕掛ける。
→ユシロの経営陣は早々と1株配当金を200円
(前期実績は14円)とし、ソトーも200円配当
(前期実績は13円)と2006年3月期までに1
株当たり総額500円の配当中心の株主への
利益配分を表明する。
これまでのスティール社の主な動き②

2006年10月27日、東証2部上場の即席めん
メーカー、明星食品に対するTOBを行う。ス
ティールはTOBの実施理由を「純投資が目的」
と説明しているが、明星食品は「賛否について検
討中」としており、敵対的TOBになる可能性があ
る。
→日清食品が、業界4位の明星食品に対する友
好的TOBが成立する見通しとなり、日清は応募
のあった86・32%(議決権ベースで90・43%)
分のすべての株式を買い取り、明星を子会社と
する。
これまでのスティール社の主な動き③

2007年2月 ビール業界3位のサッポロビー
ルの持ち株会社であるサッポロホールディン
グス(HD)に対し、買収提案を行う。スティー
ルは、TOBによりサッポロHD株の66.6%取
得を目指すとする。
→2007年9月12日 買収を提案してい
るサッポロHDに、経営状況などを問
う2度目の質問状を提出。
これまでのスティール社の主な動き④

江崎グリコは5月1日、筆頭株主で発行済み株
式の14・44%を保有するスティール2007年3
月期の期末配当を、会社計画の5倍の1株25
円に引き上げる株主提案を受けたと発表した。
スティールは提案理由について、過剰な内部留
保を株主に還元するためとしている。
→江崎グリコは5月8日開いた取締役会で、筆頭
株主のスティールが、2007年3月期の期末配当
を当初計画(1株5円)の5倍の25円にするよう求
めていた提案に反対することを決めた。江崎勝久
社長は「株主の要望を取締役会で検討した結果
だ」としている。スティール側は「対応を検討する」
としている。
これまでのスティール社の主な動き⑤
アデランスの定時株主総会が5月24日、都内で
開かれ、アデランスが提案した新たな買収防衛
策が、賛成多数で承認される。防衛策を巡って
は、26・67%の株式を保有する筆頭株主のス
ティール社が反対を表明していた。

アデランスは昨年12月、30%以上の株式を保
有しようとする買収者が現れた場合、対抗措置
として全株主に新株予約権を発行し、買収者の
予約権行使は認めない防衛策を導入していた。
これまでのスティール社の主な動き⑥

5月23日、工業用刃物・のこぎり類メーカー、天龍
製鋸の全株取得を目指し、24日から TOBを始める
と発表する。現在の株価の15%高いプレミアムを
乗せて買い取る方針で、全株取得した場合の費用
は約275億円となる。
→7月5日、全株取得を目指したが、応募は2・69%にとど
まった。スティールは応募があった株式をすべて買い取る。T
OBの開始前、スティールは天龍製鋸株を9・04%保有する
第2位の株主だった。 TOBで保有割合は11・73%に上昇し、
社員持ち株会を上回って筆頭株主になり、投資を続ける意向
を示す。
これまでのスティール社の主な動き⑦

5月16日、ソースメーカー最大手ブルドックソースに
対し、全株の取得を目指してTOBを実施する方針
を書面で伝える。これに対しブルドックは同日夜、
「企業価値と株主利益の向上に資するのか、相当
の懸念がある」と、否定的なコメントを発表した。

スティールは「ブルドック経営陣の賛同がなくてもTO
Bを実施する」としており、敵対的TOBに発展する
可能性が強まっている。TOBの開始時期は未定。1
株当たり1584円で買い付ける。
最近のスティール社の動き
時期
該当企業
スティールの行動
結果
増配を要求
両企業とも増配
ソト2003年12月
ユシロ化学工業
2006年10月
明星食品
TOB
日清食品がホワイトナイトに
2007年2月
サッポロHD
TOB
現在も協議中
2007年5月
江崎グリコ
増配を要求
取締役会で否決
2007年5月
アデランス
買収防衛策を反対
株主総会で否決
2007年5月
天龍製鋸
TOB
TOBが失敗
2007年5月
ブルドックソース
TOB
?
ブルドック vs スティール
なぜブルドックが標的になったのか


手ごろな規模であるうえに財務内容が健全な
ので、買っても大損をする不安が無い。磨け
ば光る可能性がある。
ブルドックの2007年3月期連結決算で、自己
資本比率は75%で安全性が高いが、自己資
本利益率(ROE)は3%程度と低い。
ソースの市場

ブルドックは4分の1強
のシェアを握るソースの
最大手メーカーだが、
ソースの需要は頭打ち。
→少子高齢化や健康志
向などで、国内のソース
市場は縮小傾向にある。
スティール側の主張

「市場価格に大幅なプレミアム(上乗せ)を付
けた価格で(既存の株主に)売却する機会と
流動性を提供するもの」とTOBの正当性を主
張する。自らを「(取得した株式を高値で売り
抜ける)グリーンメーラーではない」
ブルドック側の主張

6月7日、米系投資ファンドのスティールによ
るTOBに反対することを正式に表明する。T
OBに対抗するため、6月24日に開かれる株
主総会で、新株予約権発行による買収防衛
策の導入を議案として提出する。
ウォーレン・リヒテンシュタイン代表が
世界初の記者会見

6月12日、スティール・
パートナーズ率いる、
ウォーレン・リヒテン
シュタイン代表が都内
で記者会見を行う。
スティールの反抗①-1

6月13日、ブルドックが計画している新株予
約権発行による対抗策導入の差し止めを求
め、東京地裁に仮処分を申請する。
株主総会での答えは・・・

6月24日、東京都内で定時株主総会を開催
した。総会でブルドックは、新株予約権を使っ
た買収防衛策導入を提案し、3分の2以上が
賛成する「特別決議」で承認された。ブルドッ
クは防衛策を発動する方針。
スティールの反抗②

TOBの価格吊り上げ
6月15日、1株1584円だったTOB価格を1
700円に引き上げるとともに、期間を延長し、
終了日を今月28日から8月10日に変更する
と発表する。
買収防衛策の内容

現在約10%のスティールのブルドック株保有
比率は3%以下に低下し、TOBで全株取得
を目指すスティールにとって大きな打撃となる。
スティールによるTOBは8月10日までで、1
株1700円で買い付ける。
スティールの反抗①-2

6月28日、ブルドックソースの買収防衛策差
し止め申し立てに関して、東京地裁の鹿子木
康裁判長はスティールの申し立てを却下する
決定をした。
スティールの反抗③

7月9日、ブルドックソースの買収防衛策差し
止めを求めた仮処分申請で、東京高裁は差
し止め申請を却下した。東京地裁決定を支持
し、スティールの即時抗告を棄却する決定を
した。
ブルドック 国内初の買収防衛策を発動

ブルドックは7月11日、全株主に対して新株
予約権を割り当てる国内初の買収防衛策を
発動した。
ブルドックの防衛策では、株主全員に1株に
つき3個の新株予約権を割り当てられる。
スティールの株保有比率は2.86%に低下
する代わりに、約23億円が支払われる。
スティールの反抗④

8月7日、ブルドックソースの買収防衛策発動
の是非をめぐる仮処分で、最高裁は防衛策を
支持し、スティールの抗告を棄却した。発動
に反対するスティールの申し立てを認めない
司法判断が確定した。
スティールの反抗⑤

8月8日、ブルドック株の買い付け価格を170
0円から4分の1の425円に引き下げると発
表する。8月10日を期限としていた買い付け
期間も23日までに延長する。
TOB終了

8月24日、ブルドックに仕掛けたTOBに、約
131万株(発行済み株式の1.89%)の応募
があったと発表する。全株取得を目指したが、
保有株の割合は4.44%にとどまる。
抗争の結果

スティールは現在も、ブルドックの経営権を握
る姿勢を撤回はしていない。(ブルドック株を
5・42%保有する筆頭株主)
スティールが再びブルドックにTOBを仕掛け
る可能性がないとは言い切れない。スティー
ルは、ブルドックの経営方針や事業計画を示
さなかったことが裁判に敗れた一因となった
ことを踏まえ、今後は経営方針などを明示す
ることも検討している。
おわりに

スティールは、ブルドックとの裁判に敗れただ
けでなく、日本の多くの株主からの反発も根
強い。今回調査したように、日本ではあまり受
け入れられる土壌にないようだが、実際TOB
を行うことで株価が上昇するということは、ス
ティールの動向が「悪い」と断定はできないと
いうことがわかった。スティールが、もっとブル
ドックに歩み寄って話をすれば、結果は変
わっていたかもしれない。
参考文献
「日本のM&A 企業統治・組織効率・企業価
値へのインパクト」 東洋経済新報社
宮島英明 編著
 ウィキペディア ホームページ
http://ja.wikipedia.org/wiki/
 Iza:イザ! ホームページ
http://www.iza.ne.jp
 読売ウィークリー
http://www.yomiuri.co.jp
