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野球における打球処理技能の改善 :
VTR
を用いた行動的コーチングの効果
松澤 遼
問題
・先行研究(安生・山本, 1991 など)では、正しい フォームの形成に重点を置いた課題分析を行って いたが、反応の結果を重視した課題分析を行えて いない。 ・野球において VTR を用いるような即時的フィード バックによる行動的コーチングを行った研究がな い。
目的 VTR を用いたフィードバックと反応の結果にも重 点を置いたチェックリストを組み込んだ行動的コー チングを導入することで、野球における打球処理技 能を改善することを目的とした。
行動的コーチングとは
スポーツにおけるさまざまな動きを観察可能・操 作可能なレベルに行動的翻訳をし、正の強化、身 体的ガイダンス、モデリング、行動形成、行動連鎖 化、強化スケジュール、教示といった行動分析の技 法を組織的に用いることで、運動スキルの向上を めざすものである(杉山, 1987 )。
方法 被験者 府立高等学校の野球部に所属する生徒5名を被 験者とする。 材料と装置 ・硬式野球用のボール ・ビデオカメラ ・チェックリスト
方法
実験デザイン 被験者間マルチベースラインデザインを用いて各 独立変数の効果を検証する。 実験場面 同校敷地内の野球部のグラウンドで行う。
方法 従属変数 ・下位技能の正反応 チェックリストを用いて測定し、ビデオカメラで補完 する。 ・正捕球 一度グラブに触れたボールがこぼれずに処理され る。
方法
従属変数 ・正送球 (a) Very Good!
捕球者が肘を曲げたまま一歩も動かずに捕球できる場 合。 (b) Good!
捕球者が肘を伸ばして一歩も動かずに捕球できる場合。 (c) So-so.
捕球者が一歩動いて捕球できる場合。 (d) Bad!
捕球者が二歩以上動いたり、ジャンプしたり、捕球不可 能の場合。
方法 手続き ・ 10 試行で 1 セッション ・内野手が打球をさばいて一塁手に送球する場面 を想定する。 ・測定は実験者の視認とビデオカメラによって行う。 ・測定の対象は下位技能の正反応、正捕球、正送 球とする。
方法
手続き ①ベースライン 手続きどおりに測定を行い、方法以外の教示やモ デリング、フィードバックは行わない。 チェックリストは記録においてのみ用いる
方法 手続き ②チェックリストの導入 BLのデータ安定後に導入する。 チェックリストの配布と、モデリングとともに説明を行う。 正反応の下位技能 → 具体的に指摘して賞賛 不正確な下位技能 → 具体的に指摘、モデリング、教示 他の部員に下位技能の正反応率のグラフを公表する。
方法
手続き ③VTRフィードバックの導入 チェックリスト導入の後に加えて導入する。 各試行終了後にVTRを再生し、被験者に見せなが らチェックリスト導入時と同様の手続きを行う。 被験者の希望によっては、VTRの一時停止や再生 のやり直しは可能。 被験者が納得すればセッションを再開する。
方法 社会的妥当性 実験終了後、被験者に今回のコーチングについて の妥当性を問うアンケートを行う。
問題点
・問題についての妥当性として先行研究をもっと多く当たるべきであ る。 ・ビデオの撮り方と測定した記録の信頼性をより詰めるために実験 の協力者が必要である。 ・「手続き」においてまだまだ詰めが甘い。もっと細かく詳しく決める べきである。 ・打球処理技能の課題分析をまだしていないが、おそらくチェックリ ストの下位技能項目が多くなって、介入が絞りきれない。 ・結局、安生・山本( 1991 )の研究に VTR フィードバックを加えただけ のものでしかなく、オリジナリティがうすい。 → チェックリストによる介入をせずに単純に VTR フィードバックのみ を行ってその効果と反応遂行への般化をはかってみてもよいだろう。
文献 安生祐治・山本淳一 1991 硬式野球におけるス ローイング技能の改善-行動的コーチングの効 果の分析 行動分析学研究, 6(1) , 3-22 杉山尚子 1987 コーチングにも活きる行動分析, 武田健・柳敏晴共著,「コーチングの心理学」 行 動分析学研究, 1 , 50-54