意思決定会計論A_06

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意思決定会計論A
第6回
原価管理と標準原価計算
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広義の原価管理
 コスト・マネジメント(cost
management)
 利益管理の一環
 経営諸条件の変革を伴う
 原価計画と狭義の原価管理
 標準原価計算、予算、OR、IE、価値分析、特殊
原価調査、直接原価計算など
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狭義の原価管理
 コスト・コントロール(cost
control)、
原価統制
 現場管理者による業務管理
 経営諸条件所与
 変動予算、標準原価計算
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標準原価計算
 Standard
costing
 実際原価計算に内在する計算の遅延や原価の
変動性という欠陥を克服し、現場の作業能率を
高めることを目的に、20世紀初頭アメリカにお
いてテイラーにより提唱された科学的管理法の
考え方を原価計算に導入することによって誕生
した原価計算
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標準原価計算のプロセス
① 原価標準の設定と指示
② 標準原価の計算
③ 実際原価の計算
④ 標準原価と実際原価の比較による原価差異
の計算
⑤ 原価差異の分析
⑥ 経営管理者への差異分析の報告
⑦ 原価差異の会計処理
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標準原価計算の目的
 原価管理
 財務諸表作成
 予算編成
 記帳の簡略化・迅速化
『原価計算基準』40
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原価管理目的
 原価管理とは、所与の経営諸条件のもとに科
学的・統計的調査に基づいて設定された原価
標準により計算された標準原価を原価の実際
発生額が上回らないよう、経営活動を指導・統
制し、そのことによって原価能率を増進する改
善措置を講じることをいう。
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財務諸表作成目的
 標準原価は非能率や無駄を含まない真実の原
価であり、そのため標準原価計算は仕掛品や
製品等の棚卸資産価額および売上原価を算定
するための基礎を提供することができる。
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予算編成目的
 標準原価は科学的・統計的調査にもとづいて設
定されていることから、標準原価計算は予算特
に製造費用予算の編成にあたって信頼しうる基
礎を提供することができる。
 標準のタイトネス(tightness:厳格度)の修正が
必要になる場合がある。
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記帳の簡略化・迅速化
 標準原価計算を制度として実施することで、事
前に設定されている原価標準より計算された標
準原価を勘定組織の中に組み入れることにより、
記帳を簡略化し、迅速化することができる。
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標準原価の種類(改訂の頻度)
 基準標準原価(basic
standard cost)
経営の基本構造が変わらないかぎり改訂
されない長期間にわたって適用される標準
原価
長期的な原価の趨勢を認識する尺度
 当座標準原価(current standard cost)
そのときどきの経営の実情に合わせて必
要に応じ改訂される標準原価
原価管理、財務諸表作成のために適して
いる
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標準原価の種類(タイトネス)
理想標準原価(ideal standard cost)
理想価格水準、理想能率水準、理論的生産能力水準
または実際的生産能力水準
現実的には達成不可能、能率向上の究極的目標
 現実的標準原価(expected standard cost)
当座価格水準、達成可能高能率水準または期待実際
能率水準、期待実際操業水準
原価管理、財務諸表作成、予算管理
 正常標準原価(normal standard cost)
正常価格水準、正常能率水準、正常操業水準
財務諸表作成、原価管理

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原価標準の設定
 直接材料費
 直接労務費
 製造間接費
費目別に設定される。
 製品単位当たりの標準原価
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直接材料費標準の設定
直接材料費標準=標準消費量×標準価格
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材料消費量標準の設定
 製品単位当たりの標準消費量は製品の生産
に必要な各種素材、部品等の種類、品質、加
工の方法および順序等を定め、科学的・統計
的調査により決定される
 通常生じると認められる程度の減損、仕損の
消費余裕が含まれる
 生産工学的方法、経験的分析法、試作法など
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材料価格標準の設定
 将来の会計期間中に予想される価格を基礎に
して材料の種類別、品質別、規格別に予定価
格または正常価格として設定される
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直接労務費標準の設定
直接労務費標準=
標準直接作業時間×標準賃率
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標準直接作業時間の設定
 製品の生産に必要な作業の種類、使用機
械・治工具、作業の方法および順序、作業者
の等級等を定め、ついで動作研究・時間研
究その他の実情に応じた科学的・統計的調
査により各作業区分ごとに製品単位当たり
で設定される
 通常生じると認められる程度の疲労、手待
等の時間的余裕が含まれる
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標準賃率の設定
 直接作業の職種別、作業区分別あるいは部門
別に算定された予定平均賃率または正常賃率
をもとに設定される
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製造間接費標準の設定
 予算によって部門別に設定される
 固定予算と変動予算
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変動予算
 将来の一定期間に予測される範囲内における
種々の操業度に対して設定される予算
 原価管理に有効
 公式法と実査法
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標準製品原価(原価標準)の算定
 直接材料費標準
+直接労務費標準
+製造間接費標準
 標準製品原価表(標準原価カード)に記載され、
ファイルされる
直接材料費 @\200 2㎏
\400
直接労務費
@\100
3時間
\300
製造間接費
@\150
3時間
\450
合計
\1,150
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原価差異の分析
 標準原価(原価標準×実際生産量)と実際発生
額との差額を原価差異といい、その原因を分析
することにより、原価管理を行う
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直接材料費差異の分析
 標準原価による直接材料費と実際発生額の
差額
 価格差異と消費量差異
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直接労務費差異の分析
 標準原価による直接労務費と実際発生額の
差額
 賃率差異と作業時間差異
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製造間接費差異の分析
 製造間接費の標準配賦額と実際発生額の差額
 2分法、3分法、4分法
 3分法
予算差異、能率差異、操業度差異
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原価差異の原因分析
 現場管理者にとって管理不能な発生原因と、現
場管理者にとって管理可能な発生原因に分け
て把握し、後者に対しては適切な改善措置を講
じる。
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材料消費量差異の原因
 管理不能な原因
数量標準の適用の誤り
製品の仕様、生産方法などの変更に
伴う標準改訂作業の遅れ
厳しすぎる製品品質検査
など
 管理可能な原因
工員の失敗による仕損の発生
機械工具の整備状態の不良
使用すべき材料規格以外の材料の
間違った使用
など
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作業時間差異の原因
 管理不能な原因
作業方法の変更に伴う標準改訂作業
の遅れ
厳しすぎる時間標準
など
 管理可能な原因
監督の怠慢
工員の怠慢と努力不足
工員の作業方法の間違い
など
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標準原価計算の限界
 生産環境が急速かつ著しく変化し、また多様な
消費者ニーズに応えるために多品種少量生産
化が進展している経営環境においては、標準原
価計算は原価標準の設定にあたって所与の経
営諸条件のもとに製品、原材料、生産作業等の
標準化が困難になった
 生産技術、コンピュータ技術の発展に伴う工場
の自動化により機械作業が多くなったので、原
価管理上の重要性が低下した
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