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2007年度旭川オープンカレッジ連続講座「あさひかわ学」(第1回)
コミュニティを形作るものは何か?
1970-80年代の日本の社会学における
コミュニティ論を手がかりに
角 一典(北海道教育大学)
なぜ、今、コミュニティなのか?
・防犯・防災の視点
→空き巣などの被害の多寡・震災時の死亡
率・ゴミだしルールの遵守などと、コミュニティ
のあり方に関係が見出されている。
・地域の『教育力』
→子供の健全な育成にとどまらず、大人の学
びにとっても地域は重要な役割を果たす。
・地域福祉の充実
→国家・自治体財政の窮乏により、福祉を公
共任せにすることが難しくなっている。
コミュニティの構成要素(一般的定義)
コミュニティとは?
「地域性と共同性という二つの要件を中心に構成さ
れている社会」(『社会学事典』)
→単なる人間の集合ではなく、集った人間同士
が「共同」することが重要な用件となる。
さらに、道具的結びつきを越えた、心情的なつながり
(Common Tie・Community Sentiment)も重要(MacIver)
・「われわれ意識」(we-feeling)
・「役割意識」(role-feeling)
・「依存意識」(dependency-feeling)
戦後日本とコミュニティ政策
高度経済成長下における社会変動
・労働力としての人口移動の激化
・拠点開発による労働力の集中
→都市における過密・農村における過疎の進展
→都市問題の発生
ex.人口の伸びに追いつかないインフラストラクチュア
都市化の進行にともなう非行・犯罪などの蔓延
個人の原子化にともなう諸問題(孤独死・自殺など)
郊外の住宅化にともなう新旧住民の「対立」
⇒コミュニティ形成が、都市問題の解決のために必
要とされるようになる。(ex.国民生活審議会答申‘68)
社会学者のみたコミュニティ①
松原治郎,1973,『コミュニティの社会学』
⇒コミュニティの『異質化』
・「大都市コミュニティ」(metropolitan community)
⇒「生産と消費の空間的分離を前提にし、生産点と
の距離(通勤距離・交易距離)を含」む。
(『夫・父型コミュニティ』・『異心円的コミュニティ』)
・ 「居住地区コミュニティ」(neighborhood community)
⇒「消費しかも定住の生活を場にした日常の消費の、
きわめて狭域な」圏域。
(『妻・子供・老人型コミュニティ』・『同心円的コミュニ
ティ』)
⇒それらが相互に激しく異質化するようになってい
る(のが、高度経済成長期のコミュニティの現状)。
コミュニティの存立条件(松原)
①人々の「経済的・環境適応的行為」が効率的に目標に到達で
きるような条件になっていること(Adaptation)
→財やサービスが適切に供給されること
②人々の「政治的・目標達成的行為」に関しての効率化
→政治・行政的に、目標達成のためのエネルギー配分や役割分担
も明確になっていること(Goal-attainment)
③人々の「社会的・統合的行為」の密度が高いこと
→住民の組織化が十分になされていること、住民の集合を可能にするよ
うな施設の配置が適切になされていること。(Integration)
④人々に「教育・文化的、内面水準維持的行為」が確保されて
いること(Latent pattern maintenance)
→人々の交流によって多様な価値の共存が可能となっていること、
また、より高い次元の充実・達成を可能にするための学習機会
が保障されていること。
⑤人々の「余暇的・リラクゼーション的行為」の欲求を満たせる
ようになっていること(Relaxation)
→余暇利用の時間や空間が適正に存在していること。
松原の「コミュニティ論認識」
「新たな近隣的なコミュニティ(居住地区コミュニティ)の意義が、
住民生活上の必要から増大してきている。一つには精神的
共同性への人々の希求から、今一つには生活防衛上の機
能的共同化の必要から、それへの期待が高まっているので
ある」
→存在概念(Sein)としてのコミュニティがあるかないかを
問 う の で は な く て 、 当 為 概 念 ( Sollen ) と し て の コ ミ ュ ニ
ティをいかに有らしめるかを考える
⇔そのための手段が広義の『行政的施策』や『イ
ンフラストラクチュア整備』へと偏重する傾向
→器だけではなく、中身の問題も重要
社会学者のみたコミュニティ②
奥田道大,1983,『都市コミュニティの理論』
→コミュニティ論が『べき』論と化している状況を批判
⇒現実のコミュニティが多様な存在であり、時代状
況とも関連しながら変化していくものであるという
認識を前提とすべき
→『ムラ社会』的な共同体から『新しいコミュニティ』
へと変化することが時代の「要請」
コミュニティの4類型
主体的
コミュニティモデル
普遍的
地域共同体モデル
特殊的
個我モデル
客体的
伝統的アノミーモデル
コミュニティの4類型の特徴
地域共同体
モデル
住民類型
伝統型住民層
住民意識
地元共同意識
住民組織
地域
リーダー
旧部落・町内
会型組織
名望有力者型
リーダー
伝統的アノ
ミーモデル
無関心型
住民層
放任・静観的
意識
行政系列型
組織
役職有力者型
リーダー
個我モデル
権利要求型
住民層
市民型権利
意識
対行政圧力団
体型組織
組織活動家型
リーダー
コミュニティ
モデル
自治型住民層
住民主体者
意識
住民自治型
組織
有限責任型
リーダー
奥田の『コミュニティ認識』
段階的に変化していくコミュニティ
;「地域共同体」→「伝統的アノミー」→「個我」
⇒「コミュニティ」への「単線的」発達
「総体として」コミュニティを把握
⇔「変化の力学」の不在
:「コミュニティがなぜ変化するのか」は不問
⇒コミュニティの「組織論」の必要性
社会学者のみたコミュニティ③
神谷/中道編,『都市的共同性の社会学
コミュニティ形成の主体要因』
→大阪府吹田市におけるアンケート調査をも
とに、コミュニティ内部の主体の差異に着目。
⇒コミュニティ活動に積極的な人とそうでな
い人の差がどこにあるのか?
⇒コミュニティは、単線的な発展を遂げるわけ
ではなく、まちづくりの核となるリーダー層を
いかに形成していくかが課題となる。
要
因
主体性
Ⅱ
Ⅰ
開放性
閉鎖性
Ⅲ
Ⅳ
客体性
権利・自治意識
仲間・役割意識
市民参加理念
住民参加への参与態度
政党支持
自治会への参与度
市
民
意
識
参の
加類
意型
識と
の
規
定
市民意識の類型
Ⅰ:高年齢中心の地付き層。近所づきあいも親密で、自
治会などへの参加度は高く、地域問題の解決に対して
も積極的に関わる。政治的には保守。
Ⅱ:比較的学歴が高く、職業は専門・管理職。国政への
関心は高いが、同時に不満も高く、政治的には野党支
持。地域問題解決に対する意志は強いが自治会等に対
しては消極的。
Ⅲ:比較的若い層に多く、居住年数が10年未満。集合住
宅(アパート・公営団地・社宅等)が多く、移転意志
が強い。政治的関心・自治会等への参加ともに低い。
Ⅳ:問題解決意志は弱く、あらゆることに対して総じて
無関心。
生活構造による類型化①
強 活性化軸
分立型(共民型)
統合型(主民型)
強
弱
地域性軸
孤立型(私民型)
周辺型(客民型)
弱
生活構造による類型化②
統合型:近隣ネットワークを核とし、幅広い交友関係
をセットし、多様な集団参与を含む社会的ネット
ワークを主体的・選択的に意味づけ、積極的に活性
化する志向を持つ。
→ex.自営業を営む高齢層・定住意志を持つホワイトカラー
層の一部
分立型:主体的に意味づけられたネットワークが非地
域的・脱地域的である。私的なネットワークや特定
の社会集団に限定される傾向が強いもののこれを活
性化させる強い意図を持つ。
→ex.居住地区近隣に職場を持つ中年層
生活構造による類型化③
孤立型:地域ネットワークを考慮しないと同時に、友
人交際も少ない。また、ネットワーク内にあったと
しても、それを活性化しようとする意志が欠落して
いる。
→ex.居住空間と労働空間・余暇空間が分離した層・若年層
周辺型:地域ネットワークは存在するが、それを活性
化しようとする意志を欠き、地域に対しては、かか
わりは維持するものの、積極的に動こうとはしない。
→ex.主体的参加意志の少ない中高年層・主婦全般
コミュニティを形作るもの
-簡単なまとめ-
①住み続けようとする意志
→それを強いものにするためには、「住みやす
さ」「住み心地」のよい空間を作り出すことが
必要。
ex.快適な住居・インフラストラクチュア・適度な人間関係
②「快適さ」を生み出す物理的要素の整備
→最低基準としての「シビルミニマム」はある程
度整った今日、「画一性」から脱し、自分たち
が「どんなまちに住みたいか」を前提としたイ
ンフラストラクチュアの整備が望まれる。
コミュニティを形作るもの(続)
③主体性
→「自分たちの住むまちは自分たちで作る」
⇒多様な仕掛けで・多様なきっかけを提供すること
で、住民に地域との関わりあいを持たせる
ex.地域の子育てサークル・花壇オーナー制度・リサイクル活動
⇒客体であること(行政依存)を脱し、自らが
「まちづくりの主人公」となるという意識
→すべての人が「模範的住民」になる必
要はなく、主体性にも濃淡があってよい
まちづくりへの部分的な参加(折り合えるところでの参加)
何が必要なのか?
*リーダー層の「開放化」
→コミュニティが「進化」するためには、常に「新
しい血」が必要とされる。
→新しいリーダーとなりえる人は、「定住意志の
ある」人である。
*適切な「役割分担」
→各人の事情に応じて、それぞれ固有の関心
事が存在する。 ex.子育て・趣味など
→関われそうな人を、適材適所で配置する。
*日常的な交流・情報交換
→「互いを知る」ことからすべてははじまる。
コミュニティの『新たな形』
従来のコミュニティ観
町内会などをモデルとした、近隣住民のネットワーク
⇔『慣行的な』地域の人間関係に対する拒否感
⇒「全面的」「総合的」な付き合いの忌避
⇔「農村共同体的な」コミュニティ形成は困難
新しいコミュニティ?
課題・テーマを核とした地域集団の形成
ex.NPO・サークル・コミュニティビジネス
⇒既成概念にとらわれない、新たなコミュニ
ティのあり方を創造する方向性