解雇紛争対ç–ã

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顧問先の満足度を高めるため
の解雇紛争対策の実務
平成22年4月21日
千葉県社会保険労務士会東葛支部
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略歴
大澤一郎 弁護士法人よつば総合法律事務所 代表社員弁護士
千葉県柏市柏1丁目5番10号 水戸屋壱番館ビル4階
電話番号 04-7168-2300
FAX番号 04-7168-2301
メールアドレス
[email protected]
ホームページアドレス
柏・松戸中小企業法律相談http://www.yotsubasougou.jp/
平成8年 千葉県立東葛飾高校卒業
平成13年 東京大学法学部卒業
平成13年 司法研修所入所 司法研修所55期
平成14年 弁護士登録
千葉県弁護士会所属(登録番号29869)
平成20年度弁護士会松戸支部 幹事
同支部法律相談運営センター委員
セミナー・執筆
○2003年1月14日 あさひ・狛法律事務所所内研修会
「ジョイントベンチャーと金庫株の利用方法について」
○2004年1月16日 千葉県弁護士会松戸支部支部内研修会
「改正民事執行法について」
○2007年11月16日 千葉県弁護士会主催
「裁判員制度,刑事訴訟法改正について」
○2009年10月22日 千葉県税理士会松戸支部主催
「そんなとき、顧問先の問い合わせに即対応できる税理士が知っておきたい倒産・廃業時の実務」
○2003年4月26日 週刊ダイヤモンド
「経営よろず相談所」に早期退職優遇制度の条件に関する記事を執筆しました。
○2009年12月5日 朝日新聞朝刊全国版生活面
「不況を乗り切る11・借金」の記事の取材を受けました。自己破産のメリット・デメリットやおまとめローンの問題点等についてコメントしています。
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労働紛争増加が懸念される理由
• 裁判所の統計上個別労働事件の数が増加
傾向
• 従業員の権利意識の向上,インターネットの
普及による従業員の知識の向上
• 労働審判制度が平成18年4月1日から開始
されたことによりますます個別労働事件が増
加傾向
• 弁護士の増員による影響
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労働紛争の現状について
訴訟・労働審判の現場から
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弁護士の実感として解雇紛争が増加しているという印象
従業員の知識の向上に比べて会社の対策が不十分という偏った現状
労働審判が平成18年4月1日から開始されたことにより事件が増加
労働審判は訴訟と比べて裁判所での短期間の解決が可能
裁判所が解雇を有効と認めるラインと会社が考える解雇の認識に明らか
な差
解雇や残業代請求などの労働紛争をきっかけに就業規則の変更・給与
体系の変更を行う会社も増加
裁判所での争いになった場合でも早期の解決・早期の和解を求める傾向
解雇紛争における裁判所の和解案は退職を前提とした和解案がほとん
ど
労働組合等の団体運動は減少傾向,個別労働事件が増加傾向
従業員(労働者)か個人請負であるかという点が争いになる事案の増加
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解雇の事前相談の必要性
事案
税理士事務所(個人)が事務職員の勤務成績不良を理由に事務職員を解雇したところ,解雇の無
効を主張し,従業員の地位確認,賃金の支払い,慰謝料の支払い,弁護士費用の支払を求めて
千葉地方裁判所松戸支部に提訴した事案。当事務所は税理士事務所側を代理
解決
最初に相談を受けた段階より,解雇の要件を満たしていない可能性が高いという状態だった。しか
も,当事務所に相談があった際にはある程度訴訟が進んだ状態で,前の弁護士が辞任したため
に当事務所に相談があった事案だった。そのため裁判所での和解を試み,月額給与の半年分く
らいの提示があった裁判所の和解案に事務所側は応じる意向だった。しかし,従業員側がかたく
なに判決を求めたため最終的には判決となった。結果,解雇は無効という判決になってしまった。
判決後,弁護士より通知を送付し解雇を撤回したところ,従業員は再度の就労の意思はないとい
うことで,弁護士間で金額について合意をして退職となった。結局,月額給与の1年分以上の給与
を支払うこととなってしまった。慰謝料の支払い,弁護士費用の支払いは判決で否定された。
ポイント
解雇をする前に当事務所に相談していただければ,このような大規模な紛争にはならなかった。ま
た,訴訟が起こされた段階で他の弁護士ではなく最初に当事務所に相談していただければ,より
効果的な訴訟活動が可能だった。
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最近の労働審判の事例
事案
建設会社を退職した従業員が,割増賃金等の請求をしてきた事例。会社
では週45時間労働を前提とした賃金体系(月額給与30万円)をとってい
た。就業規則は平成3年が最後の改訂。従業員は月給30万円は40時
間分の労働の対価だとして毎週5時間残業したことを理由とした割増賃
金の請求を求める労働審判を千葉地方裁判所に提起
解決
1週間当たり5時間の割増賃金が発生してしまうことを争うのは困難な事
案。そのため,付加金がつかないことやその他細かい論点を指摘し,結
果としては請求額の4分の1程度の金額で和解
ポイント
就業規則・給与規定の整備をしておけば全く問題がおきなかった事案。
週5時間分の残業時間分も含めて月額30万円の給与にすることは制度
上可能。社長・人事担当者も就業規則の変更の必要性を十分に理解し
たために,就業規則の全体的な見直し,給与規定の変更を社会保険労
務士の先生に依頼するという話になった。
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解雇紛争の形態について
• 個別の従業員が直接会社と交渉する場合
• 個別の従業員が労働基準監督署へ行く場合
• 個別の従業員が弁護士に依頼し弁護士から
通知が届く場合
• 個別の従業員が労働審判を行う場合
• 個別の労働者が民事訴訟を行う場合
• 個別の労働者が労働組合に加入する場合
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事前予防が
最大の解雇紛争防止対策
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当事務所では顧問先には解雇はしないようアドバイス。解雇をする場合には必ず事前に相談するようアドバイス
解雇紛争が生じた場合の被害の甚大さを社長・人事担当者に説明すること
合意での退職を目指すためのアドバイスを重視 解雇の理由を従業員に説明した上での退職届の提出を促す
方法が望ましい
合意退職の際に,「会社と従業員は何らの債権債務がありません。」という書類を作成しておくと残業代請求予防
対策になる事実上の可能性もあり
従業員による退職届の撤回が認められなかった事案【大隈鉄工所事件(最高裁S62.9.18判決)】
一度解雇紛争に巻き込まれた会社は就業規則の整備・給与体系の見直し等の依頼を専門家にする可能性が高
い←弁護士が当該紛争の解決を担当して社会保険労務士の先生が就業規則の整備・給与体系の見直しを行う
ことが理想
解雇のためには「客観的に合理的な理由」であり「社会通念上相当」であることが必要(労働契約法第16条)←
日本食塩製造事件(最高裁S50.4.25判決),高知放送事件(最高裁S52.1.31判決)等の判決を条文化
上記の客観的に合理的な理由の検討は各解雇の理由ごとに個別に裁判例を参照にしながら判断の必要あり
(能力不足,勤務態度不良,欠勤,行方不明,遅刻・早退,協調性の欠如,私生活上の非行・犯罪,身元保証書
の不提出,入社後発覚の持病,試用期間満了後の本採用拒否,私傷病による労務不能,適格性欠如,守秘義
務違反・競業行為,兼業禁止義務違反,配転・出向・転籍拒否,経歴詐称・不正行為)
社会的相当性の判断は改善の機会を付与したか(注意・懲戒等),業務上の支障の程度はどの程度か,使用者
の態度に問題はなかったか等を総合考慮
解雇の客観的に合理的な理由及び社会通念上相当であることを証明する責任は事実上使用者側に存在
解雇の種類ごとに分類して検討することも必要(普通解雇・懲戒解雇・整理解雇・雇止め)
解雇の無効を従業員が主張できなかった事例(解雇から12年後の訴訟提起の事例 全電通長崎県支部事件
長崎地裁S60.2.27判決)
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解雇紛争の事前予防の例
事案
従業員50人の自動車部品の下請け工場が最近の不景気の影響により大量の人員削減を行わな
ければならないがどうすればよいかという相談。(当事務所顧問先)
解決
会社の会計上の数値の検討や,従業員ごとの雇用形態等を検討した上で整理解雇をすることに
決定。退職金の割増による早期退職優遇制度や1ヶ月程度の就職準備期間(従業員ではあるが
会社には出社する必要なし)等の措置をとった上で対象者に対して合意での退職を提案。合意で
きない場合には整理解雇になる旨も併せて告知。結果,1人を除いてほとんどの従業員が退職届
の作成に応じたか,または整理解雇に対する異議を述べなかった。無事,会社の規模を削減して
現在も仕事を継続することができるようになった。
参考判例
・ナショナル・ウェストミンスター銀行事件(東京地方裁判所H12.1.21決定)→整理解雇の4要
素説を採用(1)人員削減の必要性,(2)他の代わる手段の検討,(3)被解雇者選定の妥当性,
(4)手続きの妥当性の4つの要素を総合考慮。「いわゆる整理解雇の4要件は,整理解雇の範疇
に属すると考えられる解雇について解雇権の濫用に当たるかどうかを判断する際の考慮要素を
類型化したものであって,各々の要件が存在しなければ法律効果が発生しないという意味での法
律要件ではなく,解雇権濫用の判断は,本来事案ごとの個別具体的な事情を総合考慮して行う
他はない。」
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個別の従業員が
直接会社と交渉をする場合の対策
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この時点での対策が一番重要
解雇を一度通告した後でも,解雇の要件を明らかに満たしていなければ,一度解雇を撤回する書
面を相手に送付の上,合意による退職をめざす方法を検討
会社の社長・人事担当者がどれだけ理解をしてくれるかどうかがポイント
今後生じる負担を説明すると会社も納得してくれる可能性が高い(裁判になった場合の弁護士費
用、裁判になった場合の期間、裁判になった場合の準備の負担等)
個別の従業員が交渉をする場合でも弁護士や合同労組が後ろについている可能性あり←解雇の
通知書を会社に要求してきた場合,解雇の理由を記載した書面を会社に要求してきた場合は背
後に専門家が存在する可能性が高いので要注意
退職届は必ず書面で受領すること,口頭のみでは争いになった際に従業員の退職の意思を裁判
所に認定してもらえない可能性あり EX 藤沢医科工業事件(横浜地裁H8.4.30判決)
解雇を承認する旨の書面の効力は「被解雇者の行為を客観的・合理的に解釈して,解雇の効力
を争う意思を自ら放棄したと認められる場合に限って解雇を承認する旨の書面は有効」 盛岡市
農協事件(盛岡地裁S60.7.26判決)←解雇を承認するということの法的な意味はともかく,解
雇を承認するという書類を取得しておくことで事実上紛争が起こりにくくなる効果あり
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従業員との話し合いで解決した事案
事案
会社が新規の従業員募集のために面接を行い,1人を内定。しかし,内
定後,新規の募集の必要がなくなったためその旨を内定者に告知,内定
者から従業員として働かせて欲しい旨の要請があった事案
解決
内定取消についても規制があるため,このままでは裁判になった場合に
勝てないと判断した。そのため,内定者に対して内定取消の撤回を内容
証明郵便で送付した。他方,内定者に対しては内定取消は撤回したが勤
務にきても仕事がないので他の会社への就職をするのが望ましいので
はないかという旨を電話等で数回告げた。結果,就職する意思が本人に
なくなった段階で解決金として月額給与の半分程度の解決金を会社が支
払うことで合意して訴訟等のトラブルにならずに解決をすることができた。
参考判例
・大日本印刷事件(S54.7.20最高裁判決)
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個別の従業員が労働基準監督署に
行く場合の対策
• 労働基準監督署は弁護士に依頼して交渉中と言えば
強硬な態度に出る可能性は低い。
• 解雇事案の場合,解雇の有効性の判断は非常に難し
いので労働基準監督署は余り深入りしない傾向
• 労働関係法令違反で送検・起訴されるケースはごく少
数。解雇事案の場合には労働基準監督署に対しては
根拠を示した上で「解雇は有効」であると強気の姿勢
で臨むべき。「弁護士に依頼して交渉中」と言えばあ
まり労働基準監督署は深入りしない傾向あり
• 証拠の管理の徹底が重要(業務指示書・メモ・日報・
メール・注意の文書での指示書等証拠がある程度あ
ることが重要)
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個別の従業員が弁護士に依頼し弁護
士から通知が届く場合の対策
• 弁護士から通知が届く場合,通常は内容証明郵便にて届くことがほとん
ど
• 弁護士から通知が届く場合には,従業員は裁判までその弁護士に依頼
をする可能性が極めて高い。
• 弁護士からの通知が届いた場合,安易に書面で回答をしてしまうと,そ
の回答を後日従業員に有利に使用されてしまう可能性があるので書面
での回答はしない方が無難
• 解雇理由についての証明を求められた場合(労働基準法第22条)には
要注意
• 懲戒解雇事由の「後出し」はできないこと【山口観光事件(最高裁判所H
8.9.26判決)】
• 普通解雇の場合も「裁判での後出し」は望ましくない。「退職時等証明書
に記載のない事実については主張自体失当とまでは言えないが,事案
によっては,解雇当時使用者が重視していなかったと認定し,そのことの
みを理由に解雇することは権利の濫用である旨の判断する場合もあり得
る」との見解が主流
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個別の従業員が
労働審判を行う場合の対策
• 労働審判は平成18年4月1日施行の新制度
• 第1回期日は原則として申立から40日以内とされている(労働審判規則
13条)。実際の書面の提出は第1回期日の1週間位前まで。ただし,実
際の運用状況は異なっている。
• 第1回期日までに会社は主張・証拠を全て準備する必要があるために早
期の対応が必要
• 原則として3回以内の審理の原則(労働審判法15条)ただし,実際の運
用は1回または2回での終了が多い。第1回の期日から調停が行われる
ため有利なものは全て第1回の期日までに提出しておく必要あり
• 弁護士の代理が事実上必要(裁判所で裁判官から直接質問されるため)
• 会社代表者(及び会社の人事担当者)の出席が必要
• 解決までに短期間というメリットが会社にもあり
• 附加金については東京地裁労働部では付けない運用に平成22年現在
なっている。
• 専門的な手続きなので,弁護士を依頼する場合には労働審判手続きの
経験がある弁護士に依頼すべき。
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労働審判で円満に
和解できた事例
事案
会社は東京の人材派遣会社。人材派遣会社で働く正社員(コンサルタント)を勤
務成績不良により普通解雇したところ,東京地方裁判所に従業員の地位確認等
の労働審判の申立がされた事例。
解決
相談を受けた段階では労働審判が既に提起された状態。勤務成績不良の事実
について,(1)実績が低いことを他の従業員と比較して主張,(2)本人の過去の
年度の実績と比較して実績が低いことを主張,(3)協調性の欠如・会社の指導監
督に従わないことを主張。併せて,会社の業績不振の事実もあったため,予備的
な主張として整理解雇の通知を弁護士が作成して労働審判手続きとは別に再度
内容証明郵便にて郵送。結果として労働審判の第1回期日にて和解が成立した。
和解内容としては解決金40万円(給与の1ヶ月分)を2回(1ヶ月後及び2ヶ月後)
に分けて分割で支払うという内容。
ポイント
労働審判の申立がされた直後に当事務所に相談があったため,普通解雇の要件
について検討の上,予備的に整理解雇の通知を出すという方針が早急に決めら
れた。裁判所は普通解雇はできないが整理解雇の要件は満たしているという心
証だったと思われる。
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個別の従業員が民事訴訟を
行う場合の対策
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解雇をめぐる民事訴訟には正式な訴訟と仮の地位を定める仮処分が存在する。
正式な裁判の場合審理期間は半年から1年位が多数
仮の地位を定める仮処分の場合1ヶ月から3ヶ月前後の審理期間が多数,仮処分事件は減少傾
向,裁判所も仮処分を以前ほど認めない傾向
労働事件を弁護士に依頼する際に注意するポイント(労働事件の専門性,費用の目安)
事前予防としての変更解約告知 EX スカンジナビア航空事件(東京地裁H7.4.13決定)
就業規則の周知義務 EX フジ興産事件(最高裁H15.10.10判決)
普通解雇の有効性の要素(当該企業の規模・種類,職務内容,労働者の採用理由,勤務成績・
勤務態度不良の程度,回数,改善の余地があるか,会社の指導の有無,他の労働者との取扱に
不均衡はないか,規律違反行為の態様,規律違反行為の程度・規律違反行為の回数・改善の余
地の有無等)を総合考慮
大企業に比べて中小企業の方が解雇の要件がゆるやか EX 全国給食共同組合連合会事件
東京地裁H1.2.20判決)
能力不足の解雇については証明することが難しいこともあるので注意が必要 EX エース損害保
険事件(東京地裁H13.8.10決定)←客観的な書面・証拠を残す必要あり
スペシャリストとして採用した従業員は能力不足による解雇をしやすい傾向あり EX フォード自
動車事件(東京高裁S59.3.30判決)←労働契約書に必要とされる条件を記載しておくと証拠
化ができてよい
協調性不足による解雇については証明することが難しいことが多いので注意が必要←懲戒処分
や始末書等の証拠を残しておく必要あり,メールによる注意でも可
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民事訴訟の最近の解決事例
事案
当事務所の顧問先の社長の奥様が病院に勤務していたが,整理解雇となったた
めに従業員側で代理した事案。解雇の相談だったが,よく話を聞いてみると,残
業代の実際の支給が上限月10時間までと決められている等明らかに法律違反
の状態にあることが判明。従業員の地位確認を求める訴訟と残業代の未払を求
める訴訟を2つ千葉地方裁判所松戸支部に提起。とりあえずの生活費の確保の
ため失業保険の仮給付の手続きを行った。
解決
相手病院が本当に倒産状態となったため,残業代及び解雇期間中の賃金の一
部を受領して和解した。失業保険の給付と裁判で受領した解決金が矛盾しない
よう調整したので,結果的にはある程度満足行く水準での和解をすることができ
た。
ポイント
解雇無効の事案の場合,併せて残業代の未払の訴訟を行うケースが増加中。
今後,割増賃金請求が増えることが予想されるので,対策を行う必要あり。割増
賃金についてのトラブル発生←個別の案件の解決は弁護士に依頼,就業規則の
改定,賃金規定の改定等は社会保険労務士の先生が行う方法が望ましい
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個別の従業員が労働組合に
加入する場合の対策
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従業員が解雇に納得せず労働組合に依頼をするケースあり
合同労組からの通知が届いて社長がびっくりして相談すること多い
労働組合に対して社長個人、人事担当者のみで望むのは危険
団体交渉=労働者の集団又は労働組合が代表者を通じて使用者又は使用者団体の代表者と労
働者の待遇又は労使関係上のルールについて合意を達成することを主たる目的として交渉を行
うこと
不当労働行為=やってはいけないこと(団体交渉拒否、組合員であることを理由とした不利益取
扱、使用者が組合の運営などに介入・干渉すること)
労働組合との団体交渉では安易に書面にサインはしないこと
労働組合法は労働組合と誠実に団体交渉を行うことを要求しているが、合意することまでは合意
していない
労働組合の求める日時・場所で団体交渉を行う必要はない
社会保険労務士・弁護士等に相談した方が無難
解雇前の加入の場合と解雇後の加入の場合での労組の対応方法の違いについて
当事務所で関わった案件での労働組合の具体的活動事例(団体交渉,職場付近でのビラまき,
社長の自宅付近でのビラまき,労働基準監督署への指導依頼,税務署への告発,取引先への書
面送付,監督官庁への書面送付,職場内での分会の結成等)
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労働組合対策の解決事例
事案
東京の塗料工場での事案(当事務所顧問先)。従業員を整理解雇したと
ころ,従業員が合同労組に加入し団体交渉を求めるFAXが工場に届く。
社長が既に日時・場所を決めてしまっていたため,数日後,労働組合の
事務所にて団体交渉を行う。
解決
労働組合の関係者2名,従業員本人,社長,専務,弁護士が同席。労働
組合側は解雇撤回又は解決金の支払を要求。会社側としては法律上解
雇が有効である可能性が高いという判断だったため労働組合の要求を
拒否。労働組合側は工場前でのビラまきをすること,工場内で有志を
募って労働組合の分会を作ること等を暗にほのめかしてきたが,団体交
渉決裂後は何も動きはなかった。労働組合側は団体交渉の際に隠し撮
りで録音をしていた様子がうかがわれた。
ポイント
団体交渉前の事実調査により整理解雇の要件は満たしているという判
断だったので,労働組合に対して強硬な対応をすることができた。
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解雇紛争への対策を考えるに
当たって考慮すべき視点
• 解雇紛争が会社に与えるデメリットを十分に社
長・人事担当者に理解してもらうこと
• 解雇はせず,合意解約をするということを原則に
すること
• 合意解約の際は書面を作成すること(退職届・
辞職届等)
• 解雇をする際には専門家の意見を事前に聞い
た上ですること
• 解雇をする際には解雇理由となる事実について
の証拠を残すこと
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弁護士との顧問契約のメリット
(1)すぐに弁護士事務所に相談できる
(2)業務内容や内情の理解が得られる
(3)迅速な対応が期待できる
(4)よりよい契約交渉や紛争解決が期待できる
(5)信頼関係を構築しやすい
(6)法務コストの削減
特に、以下のような会社には顧問契約がお勧めです。
(1)売掛金の未回収が多い会社(少額・多数の売掛金の未回収が発生する可能性がある会社等)
(2)従業員と紛争になる可能性が高い会社(労働組合が強い会社等)
(3)株主間での調整が必要な会社(少数株主から訴訟を起こされる可能性がある会社等)
(4)継続的に法律問題(訴訟等)が発生している会社
(5)建物明渡訴訟・交渉が多い会社(不動産管理会社等)
→事業を行っていない個人の方の場合には、顧問契約ではなく、個別に弁護士にご依頼された
方がよいかとおもいます。他方、会社の場合や、事業を行っている個人の場合には、弁護士への
相談は、大きなトラブルになる前に早めに信頼できる気心の知れた弁護士に相談するのが一番
です。
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