岐阜県立多治見病院・産婦人科 竹田明宏(ppt)

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岐阜県立多治見病院における
周産期医療の現況と問題点
岐阜県立多治見病院・産婦人科
竹田明宏
本日のキーワード
母体搬送:母体や胎児に異常が発生した時に、
高次の医療機関に妊婦を搬送すること
NICU(新生児集中治療室):未熟児や異常出
産の赤ちゃんを治療する部門
周産期母子医療センター:母体や胎児に異常
が生じた際に、その治療を行うセンター
県立多治見病院における周産期医療
の歩みと将来への展望
1995年:母体搬送体制の開始
1997年:NICUの開設
2007年:周産期治療部(中村浩美医
長)の開設と当直体制の開始(1年365
日24時間、安心安全な分娩を目指す)
2008年:東濃地域周産期母子医療セン
ターの開設を目指す
現在までに明らかとなってい
る周産期医療に関する事実
日本の周産期医療のレベルは、現在の所、世界最高レベルにある。
しかし、母体死亡や新生児死亡は、その原因が医療過誤であるかど
うかは別として、一定の確率で発生してくる(→努力しても改善で
きない部分)。
産科医や新生児科医が、少ない地方では、母体死亡や新生児死亡が
多い傾向にある(→努力することにより改善できる部分)。
この30年間の日本の周産期医療のレベル向上は、産科医や新生児科
医の献身的な努力に依存するところが大きい。
医療過誤報道等による医療現場への過剰ともいえる圧力や厳しい勤
務体系等の理由により、産婦人科医師の産科診療よりの撤退の加速
や新規産婦人科志望者の減少が起こり、予想以上のスピードで、日
本独自の周産期医療体制が、根本から崩れてきている。
東濃地方、特に東濃西部は、全国レベルでみても、比較的、恵まれ
た地方である。
妊産婦死亡率の国別・年次別推移
妊産婦死亡率(出生10万あたり)
50
40
日本
アメリカ
ドイツ
イギリス
30
20
10
0
1975年
1985年
1995年
2004年
全国での産婦人科医師数の分布(平成16年)
多い
少ない
平均値
東海地方は、産婦人科医の少ない地方である。
愛知:821人、岐阜:211人、三重:177人。
奈良:74人、大阪:1100人。
県立多治見病院における母体搬送の推移
(病院と開業医の競合の時代から分業の時代へ)
母体搬送件数
150
125
96
100
82
90
101 96
113
116 111
106 104
67
43
50
18
25
母体搬送体制の整備
NICUの整備
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
0
母体搬送依頼施設の分布と件数(2006年)
美濃加茂市(3件):木澤記念病院(3)
可児市(11件):とまつレディスクリニック(8)、岐阜社会保険
病院(1)、前田クリニック(2)
中津川市(12件):中津川市民病院(2)、林
メディカルクリニック(10)
恵那市(2件):恵那産婦人科(2)
瑞浪市(5件):塚田レディスクリニック(2)、
菱田レディスクリニック(3)
土岐市(5件):西尾産婦人科(4)
、土岐総合病院(1)
多治見市(52件):西川レディスクリニック(
18)、中西ウイメンズクリニック(21)、ケイ
レディスクリニック(13)
「県病院でお産をすると、
すぐお腹を切られる」というのは、
本当?
県立多治見病院における分娩件数の推移
総分娩件数と帝王切開件数
500
494
453 452
437 425 449
452 452
383 384
400
435
402
387
370
300
分娩件数
200
帝王切開
100
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
0
県立多治見病院における帝王切開理由(2006年)
前回帝王切開術
双胎
妊娠高血圧症候群
胎児発育不全
児頭骨盤不適合
胎児機能不全
骨盤位
筋腫核出術後妊娠
常位胎盤早期剥離
子宮筋腫合併妊娠
前置胎盤
前期破水
低置胎盤
絨毛羊膜炎
羊水過多症
1
品胎
0
2
3
5
7
8
8
10
12
21
21
20
19
30
35
49
帝王切開術患者受診経緯
30%
28%
普通
紹介
母体搬送
42%
10
20
30
件数
40
50
母体の救命には院内関連部門との連携が重要
ICU入室の理由(2006年)
妊娠子宮摘出後
1
4
前置胎盤
6
常位胎盤早期剥離
7
妊娠高血圧症候群
0
5
10
件数
搬送元→救急隊→救急外来
手術室
麻酔科
ICU
放射線科
産婦人科病棟
産褥救急搬送29件の内訳(1994-2007年)
膣会陰血腫
8
弛緩出血
3
けいれん発作
脳出血
2
肺塞栓(疑)
2
会陰裂傷
2
胎盤遺残
1
HELLP症候群
1
0
10
5
件数
10
県立多治見病院における分娩週数(2006年)
NICU管理
36週以前の
早産
帝王切開で
の出生
分娩前後の
経過に異常
が見られる
場合
4
4
26
27
0
28
4
29
2
30
6
31
4
32
7
33
13
14
34
35
43
36
95
37
51
52
38
39
56
40
19
41
1
42
0
25
50
件数
75
100
産科小児科カンファレンス
(隔週火曜日朝7:30より)
周産期センター概念図(厚生労働省)と
岐阜県での構想
飛騨地域周産期母子医療センター
(高山赤十字病院)
総合周産期母子医療センター
(人口100万あたり1ヵ所)
(岐阜県総合医療センター)
中濃・岐阜地域周産期母子医療センター
(長良医療センター)
西濃地域周産期母子医療センター
(大垣市民病院)
東濃地域周産期母子医療センター
(県立多治見病院)
全国の周産期母子医療センタ
ー
周産期センター整備計画の問題点
総合周産期センター未整備の県が、岐阜県を含
めて、全国に6県ある(→設置基準のハードルが
高く、産科医の少ない県では設置が困難となっ
ている)
早い時期に設置された周産期センターの中で機
能していないところが増えてきている(→特に
地域周産期センターレベルの病院での産科の閉
鎖が増加してきており、NICUがあっても、産科
が無い病院が増えて、周産期医療のねじれ現象
とでもいえる状態となっている)
総合周産期センターのシステムが無くても、鹿
児島や宮崎のように全国トップレベルの周産期
医療システムを確立している県がある。
東濃周産期母子医療センター設置の提案
診療部門
周産期治療部
病診連携部門
新生児科
東濃地域周産期情報センター
圏外の病院
母体胎児集中治療ベッド
NICU
(ICU内あるいは産婦人科
病棟内)
中津川市民病院
木澤記念病院
周産期部手術室
開業医
妊婦さん・患者さんに良く考えて頂きたいこと
生身の人間(医師)が行っている医療において、100戦100勝は、
可能でしょうか?
100点満点で、皆さん方の要求している医療の水準は、何点で
しょうか? 70点?95点?100点?
妊娠・出産は、自然現象であり、病気ではない。従って、異常
も起こりえないということは、あるでしょうか?
奈良のいわゆる「たらい回し流産」事件をどう考えますか?前
夜より出血があり、夜中に買い物をしている受診歴のない妊娠
7ヶ月の妊婦をどう考えますか?
当院でも、救急車で来院する受診歴のない妊婦の分娩が、年に
2-3件あります。分娩後は、当たり前のように、入院費を支払
わずに退院していきます。住所、名前が全て虚偽であった妊婦
もいました。
現在、患者さんの一部は、権利ばかりを主張し(いわゆる筋論
クレーマー)、病院全体でも、いわゆる苦情処理に振り回され
る傾向にあります。しかし、患者さんの果たすべき義務という
ものも、存在すると思います。
医療過誤報道
福島県・大野病院における前置胎盤帝
王切開術での母体死亡
奈良県・大淀病院における脳出血合併
妊婦のいわゆる「たらい回し」報道
福島県・大野病院の産科閉鎖→妊婦は、
片道2-3時間かかる磐城市の病院へ通院
→いわき共立病院産婦人科の閉鎖?
奈良県・大淀病院の産婦人科閉鎖→奈
良県・南部での分娩施設の消失
平成19年2月の柳沢厚生労働大臣の答
弁:産婦人科医が減っているのは、分
娩が減少しているからだ。
県立多治見病院産婦人科では、喫煙妊婦の診療は、
基本的にお断りしています。
日本産婦人科医会は、2010年までに妊婦の喫煙ゼロ
を目指しています。
ご静聴ありがとうございました。
不適切な表現や不愉快な内容が
ありましたら、ご容赦下さい。