幾何構造を持つ量子ドットの近藤状態における電気伝導特性

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Transcript 幾何構造を持つ量子ドットの近藤状態における電気伝導特性

幾何学的構造を持つ量子ドットの
近藤状態における電気伝導特性
東京**大学*学部****学科
**研究室
******* ** **
発表内容
本研究のアウトライン
様々な量子ドットの幾何学的構造
近藤効果の出現について
近藤モデルの導出
磁場の効果
近藤温度の導出
電気伝導度の導出法
まとめ
研究背景
抵抗極小現象が、1933年オランダで実
験的に初めて観測される。
64年、近藤1がBorn近似の発展形で現象
の説明に成功。後に厳密解も求められた。
1J.Kondo:
Prog. Theor. Phys. 32 (1964), 37
量子ドット ⇄ 局在した人工原子・分子
最近、二重量子ドットの厳密解: 量子コン
ピュータ開発に絡んで、応用上重要
ドットの幾何学的配置は、近藤温度TK及
び電気伝導度G に、色濃く反映される
三重ドットへ
概要・目標
局在した3点ドット系の量子状態を適切に記述する
拡張されたAndersonモデルの導入
正準変換でAndersonモデルを、近藤モデルに書き換える
スケーリングの方法で、近藤温度2を求める
2近藤温度T
Kは、局在スピンが消える目安になる温度
種々の方法で、近藤状態の異常な電気伝導度を求める
その際、磁場の効果も考察する
量子ドットの幾何学的構造
Single Quantum Dot
Double Quantum Dot
( vertical type, parallel type, T-shaped, … etc. )
Triple Quantum Dot
( straight type, triangular type, … etc. )
下線のtriangular TQDに分類
される左図試料を想定し、解
析を行った(以下、単にTQDと
書く)。
ドットが3つになって初めて、面積が
出るので、磁場によるAB効果が期
待される。
伝導度に現れる近藤効果
観測量としての近藤効果
主にドット内の粒子数が奇数
のとき、近藤状態となり、伝導
度G =dI/dVsd が増大する。
クーロンブロッケードは、左図(b)
のように、ひし形で観測される。
近藤状態では、菱形内部に異常
伝導が起こる。
近藤ハミルトニアンの導出(1/2)
Schrieffer-Wolff変換3
拡張されたAndersonモデル
摂動項H1 をトンネル項にする
となるようにSを取ると、
有効模型は次の様になる。
正準変換の一種
Andersonモデル
↓ 2次の摂動
近藤モデル
※1 今回、ドットが3つ
あるので、j =1,2,3 の
分、複雑化
最後の交換関係を計算すると、
求めたい摂動の2次の項H2 になる。
3J.R.Schrieffer
and P.A.Wolff: Phys. Rev. 149 (1966) 491
近藤ハミルトニアンの導出(2/2)
Schrieffer-Wolff変換3
実際に計算すると4、
この有効ハミルトニアンが、近藤ハミルトニアン。
なお、一般的な合金の近藤モデルを追記しておく。
※2 座標のindex j =1,2,3
を、一般化の為ユニタリ
変換により j =A,E+,E- に
変更した
and P.A.Wolff: Phys. Rev. 149 (1966) 491
4T. Kuzmenko, et al.: arXiv:cond-mat/0509480 (2005)
3J.R.Schrieffer
磁場による縮退度の制御
磁場の効果
ドット内の準位間隔の制御が、磁場Φでできる。
近藤温度は、軌道縮退すると高くなる。
ハミルトニアンも変更を受ける。
ソースを上2本、ドレインを下1本とした同一の
系での伝導度は、チャネル毎の値が数値的に
求められている5。
5T.
Kuzmenko, et al.: arXiv:cond-mat/0602541 (2006)
近藤温度の導出(1/2)
近藤温度TKは、局在スピンが消える目安になる温度
poor man’s scaling6
伝導に関わる伝導帯のバンド幅を
段々狭めて、そのスケーリングで
不変な量を見る
計算の都合により、近藤モデルをやや拡張。
伝導に関与するFermi面付近のバンド幅をD →D -|δD | と狭めると、
結合定数も同じ様にJ →J +δJ と変化するという仮定を基にしている。
6P.
W. Anderson: J. Phys. Rev. C3 (1970) 2436
近藤温度の導出(2/2)
poor man’s scaling
※今回、スケール不変量は
温度の次元を持っているの
で、近藤効果の名前を取っ
て、近藤温度(Kondo temp.)
と呼ぶ。
を計算する事になる。G0 は摂動のないGreen関数。
計算の結果、δJ がδD で書かれる。
これを解くと、
TQDの場合にこの考えを応用すると、
磁場が印加されると、軌道縮退が起こり、
近藤温度は上がる(右図)。
電気伝導度の導出
コンダクタンス(電気伝導度)G をGreen関数を用いて求める手法。
Slave boson 法
ドット内の電子数を指定するために、bosonの演算子を組み込む方法。
U =∞のAnderson模型に対応している。
平均場近似により、演算子b をc数にする。そして、求めた透過率T
をLandauer公式に代入する事で、コンダクタンスを求める。
Nagaoka-Suhl 法
TQDではこちらを用いるようだが、進めていない。
卒論には計算結果も載せたいと考えている。
簡単そうに書いたが非常に複雑であり、
この系ではまだ解けていない。
まとめと課題
三角三点量子ドットに対するAnderson模型の拡張
S-W変換による近藤模型の導出
スケール不変量の近藤温度の導出
伝導度を求めるいくつかの方法
メイン:
近藤温度は縮退が起きると増大する
外場で軌道縮退を制御できる
近藤温度付近で、局在スピンが消失して見える
軌道縮退を起こさせると、近藤温度が上昇する
3点ドットを流れる電流を、磁場で制御する事ができる
TQDに対する伝導度の導出法が確立できなかった
おまけ
昼休み
何かある方は、服部教授まで by 本人
量子ビット(Qubit)
従来のbitは、[0,1] 。
固有状態 |0>,|1> を北極・南極に持つ球体中の南北2点しか、
使われていない非効率的で古典的な情報技術といえる。
固有状態 |0>,|1> を用意して、その重ね合わせの状態を作る
事で、一気に情報量が増す。