発光と発光励起スペクトルから見積もる 低次元電子系の

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’07 3/18 @ 鹿児島学会発表
発光と発光励起スペクトルから見積もる
低次元電子系のキャリア温度
Carrier temperature of low-dimensional electron systems estimated by
photoluminescence and photoluminescence-excitation spectra
東大物性研、CREST(JST)、ルーセント・ベル研
井原章之、吉田正裕、秋山英文、Loren N. Pfeiffer、Ken W. West
Outline
Ⅰ イントロ ~ 発光と吸収の関係について
Ⅱ 実験結果 ~ 基底準位のPLとPLEの測定
~ PLとPLEから温度を見積もる
Ⅲ 考察・まとめ
イントロダクション
低次元電子ガスの電子温度
→ 量子効果デバイスの研究・電子物性の研究における重要なパラメータ
フォノン散乱・電子-電子散乱
↓
移動度、緩和速度、均一幅
BCS ・ BEC ・ FES ・ BGR
Screening ・ filling
Fermi liquid ・ T-L liquid
格子温度とは独立に電子温度を測ると、、、
電流によるジュール熱の発生や
光照射による加熱
などの影響を調べることができる
C. H. Yang, Jean M. Carlson-Swindle, S. A. Lyon, and J. M. Worlock, Phys. Rev. Lett. 55, 2359 (1985).
K. Hirakawa, M. Grayson, D. C. Tsui, and Ç. Kurdak, Phys. Rev. B 47, 16651 (1993).
S. Komiyama and Y. Kawaguchi, T. Osada and Y. Shiraki, Phys. Rev. Lett. 77, 558 (1996).
光学スペクトルから2次元電子ガスの温度を求める方法
従来試された方法:
◆
◆
  

I ~ exp  

k
T
B


発光のテール から温度を求める [1]
有効質量近似でモデルフィッティングする [2]
[1] Jagdeep Shah and A. Pinczuk, H. L. Störmer, A. C. Gossard, and W. Wiegmann, App. Phys. Lett. 44, 322 (1984).
[2] R. Kuchler, G. Abstreiter, G. Bohm, and G. Weimann, Semicond. Sci. Technol. 8, 88 (1993).
今回採用する方法:
関係式
発光と吸収の比 から温度を求める
  

 exp  

A
k
T
B


I
1
 I 
ln    
   const
k BT
 A
傾きから温度が求まる
関係式が成立するための条件
① 線形応答である
② 準熱平衡である
  

 exp  

A
k
T
B


I
関係式は左の2つの条件さえ
満たせば厳密に成立する
by 浅野先生(阪大)
浅野-井原関係式の発見!
McCumber-Neporent relation
  
I

 exp  

A
k
T
B


Y. B. Band and D. F. Heller,
Phys. Rev. A 38, 1885 (1988).
Kennerd-Stepanov relation
Denise A. Sawicki and Robert S. Knox,
Phys. Rev. A 54, 4837 (1996).
     k B T
I PL 
eq
1
exp      / k B T   1
Kubo-Martin-Schwinger relation

S. Chatterjee, C. Ell, S. Mosor, G. Khitrova, and H. M.
Gibbs, W. Hoyer, M. Kira, S. W. Koch, J. P. Prineas,
and H. Stolz, Phys. Rev. Lett. 92, 067402 (2004).
光学測定系とサンプル構造
n型ドープ量子井戸に対して
反射配置でPL(発光)とPLE(発光励起)スペクトルを測定
Siドープ量
1×1011 cm-2
工夫① 励起強度の揺らぎが±1%程度。
工夫② 励起レーザーの偏光(P1)に対して
直交する偏光(P2)のみを検出。
工夫③ 試料を傾けて、さらにアイリス(I)で
励起光の散乱を空間的に遮断。
井戸幅 : 6.3 nm
2DEG濃度 (VDP測定値)
: 6×1010 cm-2
3つの工夫により、基底準位のPLとPLEの両方の検出が可能
基底準位のPLE測定 ~ 発光ピークと同じエネルギー領域を測定
散乱光を減らすことで、
基底準位のPLEピークを
測定することができた
次にチェックすべき点
① PLに非線形性が現われて
いないか? 準熱平衡か?
② PLEが線形の吸収
スペクトルとみなせるか?
励起強度依存性を測定し、
条件を満たすもので温度を求める
PLとPLEの線形性を検証
1~2000Wの範囲で励起強度を変えてPLとPLEをそれぞれ測定
PL
弱励起・共鳴励起ならば加熱や
非線形性の影響が小さい
10W共鳴励起のPL
を解析に用いる
PLE
50W以下であれば
非線形性の影響が小さい
10Wで測定したPLE
を解析に用いる
 1W励起はPL・PLE共にS/Nがあまりよくなかった。
PLとPLEから温度を求める
励起強度:10W 測定温度:5K
今回採用した関係式
  

 exp  

A
k
T
B


I
I  PL , A  PLE
1
 PL 
ln 
   const

k BT
 PLE 
傾きから温度が求まる
見積もられた温度は、、、
7.0±0.5K
補足 :
強励起や高エネ側励起のPLで解析した場合
共鳴励起
高エネ励起
⇒ 400W以上でPLの形状が非線形に変化
⇒ 100W以上でPLの形状が非線形に変化
共鳴励起 (2mW)
(7.5K±1K
)
×線形 ?加熱
+4meV 励起 (2mW)
×線形 ?加熱 ?準熱平衡
ヒーターで温度を変えた場合
 測定した温度の値は、5~200Kの
領域で温度計の表示にほぼ比例。
 測定精度は低温(5~50K)で
±10%程度。
 励起光の調整をうまく行うことで、
さらなる精度の向上が見込める。
先行研究との比較・考察
2DEGの発光だけから温度を求める実験 [1-3]
[1] Jagdeep Shah and A. Pinczuk, H. L. Störmer, A. C. Gossard, and W. Wiegmann, App. Phys. Lett. 44, 322 (1984).
[2] C. H. Yang, Jean M. Carlson-Swindle, S. A. Lyon, and J. M. Worlock, Phys. Rev. Lett. 55, 2359 (1985).
[3] R. Kuchler, G. Abstreiter, G. Bohm, and G. Weimann, Semicond. Sci. Technol. 8, 88 (1993).
厳密性・一般性の観点では、有効質量近似やI∝exp(-hv/kT)の式よりも、
今回採用した関係式の方が優れている。ただし、PLEは測定が難しい。
準熱平衡・線形応答の条件さえ満たせば、ピークの形状、温度、電子濃
度、ラフネス、系の次元に依存しないはず。これらの検証は今後の課題であり、
さらに関係式を利用した応用も多く期待できる。
量子井戸の発光と吸収の関係を調べた実験 [4]
[4] S. Chatterjee, C. Ell, S. Mosor, G. Khitrova, and H. M. Gibbs, W. Hoyer, M. Kira,
S. W. Koch, J. P. Prineas, and H. Stolz, Phys. Rev. Lett. 92, 067402 (2004).
8nm 6% InGaAs/GaAs
non-dope multi QWs (×20)
Eexciton = 1.471 eV @4K
彼らの実験では、KMS関係式が成立しない、という結果と
なった。しかし彼らはパルス光で非共鳴励起(13.2meV高エネル
ギー側を励起)しており、この場合は系が準熱平衡状態とみな
せないという主張なので、KMSが成立する今回の結果と矛盾す
るわけではない。
まとめ
電子をドープした量子井戸に対して
基底準位のPLとPLEスペクトルを低温で測定し、
それらの比をプロットしたところ、
光子エネルギーに対して指数関数で減衰した。
減衰率が温度の逆数に比例するという関係式を用いて
温度を見積もったところ、7.0±0.5Kという値が得られた。
ヒーターで試料を加熱しながら測定を繰り返したところ、
求まる温度は温度計の表示にほぼ比例した。
測定の精度は低温(5~50K)で±10%程度だった。
精度の向上、一般性の検証、応用が今後の課題である。