企業システムの進化と多様性 清水耕一

Download Report

Transcript 企業システムの進化と多様性 清水耕一

企業システムの進化と多様性
清水耕一
第2講
企業システムと利潤戦略
2-1 企業が直面する不確実性
国際体制
市場
国民所得の
成長・分配様式
企業
労働
2-2 企業が直面する不確実性
 市場の不確実性
 財・サービスが販売できるかどうか
 企業は中期的に利潤を確保して,競争に負けて倒産しないよう
にしなけらばならない
 販路,利潤源泉,新製品,新生産方法の追求
 市場は賃金を主な源泉とする所得(=購買力)に依存
 労働の不確実性
 与えられた条件のもとで財・サービスの生産を行うかどうか
 雇用されるためには必要な職能を持たなければならないし,ま
た移動(転勤)しなければならない
 技術進歩⇒職種間移動・地理的移動(配置転換)
 労働者が,要求される時間,品質,費用において要求される生
産を行うという保証は無い
2-3 市場の不確実性を減じる可能性
 有効需要(支払い能力に裏付けられた需要)の増加
 国民所得の分配と成長様式を,需要が量的・質的に成長するよう
にする
 企業間競争を制限する
 マクロの経済・社会的均衡をめざして資本主義を組織する
⇒所得分配の不平等を抑制する
⇒労使間妥協によって賃金水準の増加を実現する
 企業の競争優位の長期的確保
 製品における優位:価格,品質,多様性,新奇性,等
 生産における優位:賃金,生産手段,生産組織,等
 政府の役割
 自国企業の国際市場における競争力を維持できるように支援⇒販路の
拡大
 外国企業の受け入れ⇒国内市場の拡大と雇用・所得の増加
 企業も政府も,自由に政策を決定することはできない
 国際的な経済関係による制約
 成長源泉(成長の原動力)による制約
2-4 労働の不確実性を減じる可能性
 労使間の信頼関係を確立する
 労使間妥協⇒労使間交渉の制度化⇒インセンティブ付与
⇒従業員にチームワークを発展させ,ノウハウを高める
⇒従業員に製品や生産技術や生産性の改善に参画させる
 労働者の権限を制限する
 企業目的に反する労働者の権限や権利を制限
 分業⇒「知に関する分業」
 構想と実行の分離,等
 市場と労働の不確実の管理をする2つのドメイン
 国民的な経済・政治ドメイン⇒成長・分配様式
 企業ドメイン⇒利潤戦略と生産モデル
2-5 成長・分配様式
 競争型成長分配様式:イギリス
 所得分配は不平等で不安定⇒市場は細分化
 消費主導・競争型成長分配様式:現代のアメリカ
 所得水準は高いが貧富の差⇒需要の階層化
 競争的価格財輸出主導・競争型成長分配様式:アジア諸国
 競争的分配⇒分配の不平等⇒市場の階層化
 消費主導・調整型成長分配様式:戦後のアメリカ,フランス,イタリア
 所得分配は全国的に調整⇒所得水準は高いが格差も小さい⇒装備市
場の成長⇒需要の差別化へ
 特化財輸出主導・調整型成長分配様式:ドイツ
 所得分配は全国的に調整⇒高賃金⇒中・高級品市場の発達
 競争的価格財輸出主導・調整型成長分配様式:日本
 対外競争力⇒分配の調整⇒高賃金・低格差⇒消費需要の拡大
2-6 利潤戦略
 利潤源泉
量(規模の経済),多様性,品質,イノベーション,生産のフ
レキシビリティ,原価低減
 自動車産業において歴史的に観察された利潤戦略






品質戦略:BMW,ダイムラー,ボルボ
多様性・品質戦略:初期のメーカー(手作り),イギリス
量戦略:T型フオードのフォード,ビートルのVW
量・多様化戦略:GM,1970年代以降のVWグループ
原価低減戦略:トヨタ,プジョー
イノベーション・フレキシビリティ戦略:ホンダ,1990年
代のクライスラー
 1970年以降に経営危機を経験しなかった企業
 VW,トヨタ,ホンダ