女性的ファッションとジェンダーの関係 ー平等主義的

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Transcript 女性的ファッションとジェンダーの関係 ー平等主義的

2006年2月2日
女性的ファッションとジェンダーの関係
ー平等主義的性役割態度とジェンダー・
アイデンティティを比較してー
2005年度卒業論文 経営システム学科
田中厚江
堀が一部増補・修正(2006年5月)
1
1.はじめに
 女性のファッションの多様化
 フェミニン(女性的)なものからマニッシュ(男性的)なも
のまでさまざま
 被服に関する、社会・心理的着用目的
 ・自己の確認・強化・変容機能
・情報伝達機能
・社会的相互作用の促進・抑制機能
2
2.問題意識
 男性的なファッションや女性的なファッション
をする女性の被服の着装目的は何か?
・男女平等主義という考え方(情報伝達)
・自己の性の受容(自己の確認)
3
3.ジェンダーとは
 ジェンダー(gender)とは、男らしさ女らしさと
いった社会的・文化的からみた性差(神山,
1999)。ジェンダーは以下の3つの側面に分
類できる(飯野,1984)。
 認知的側面・・・平等主義的性役割態度
 行動的側面・・・性役割の実現度、実行度
 自己概念的側面・・・ジェンダー・アイデンティ
ティ
4
4.平等主義的性役割態度とは
 平等主義:それぞれ個人としての男女の平
等
を信じること。(鈴木,199
1)
 性役割態度:性役割に対して一貫して好意
的もしくは非好意的に反応する学習した傾
向。(鈴木,1991)
5
表1.平等主義的性役割態度尺度(鈴木,1991)
Q3_1 女性が社会的地位や賃金の高い職業を持つと結婚するのがむずかしくなるか
ら、そういう職業を持たないほうがよい。
Q3_2 結婚生活の重要事項は夫が決めるべきである。
Q3_3 主婦が働くと夫をないがしろにしがちで、夫婦関係にひびが入りやすい。
Q3_4 女性の居るべき場所は家庭であり、男性の居るべき場所は職場である。
Q3_5 主婦が仕事を持つと、家族の負担になるのでよくない。
Q3_6 結婚後、必ずしも夫の姓を名乗る必要はなく、旧姓で通してもよい。
Q3_7 家事は男女の共同作業となるべきである。
Q3_8 子育ては女性にとって一番大切なキャリアである。
Q3_9 男の子は男らしく、女の子は女らしく育てることが非常に大切である。
Q3_10 娘は将来主婦に、息子は職業人になることを想定して育てるべきである。
Q3_11 女性は家事や育児をしなければならないから、フルタイムで働くよりパートタ
イムで働いたほうがよい。
Q3_12 女性の人生において、妻であり母であることも大事だが、仕事をすることもそ
れと同じくらい重要である。
Q3_13 女性は子供が生まれても、仕事を続けたほうがよい。
Q3_14 経済的に不自由がなければ、女性は働かなくてもよい。
Q3_15 女性は家事や育児をしなければならないから、あまり責任の重い、競争の激
6
しい仕事をしないほうがよい。
5.ジェンダー・アイデンティティとは
 ジェンダーアイデンティティ:男性にとって
「男としての自分らしい生き方」を意味し、女
性にとっては「女としての自分らしい生き方」
を意味する。言い換えれば、自己の性を受
容した上で成り立つ自我アイデンティティ。
(土肥, 1999)
7
表2.ジェンダー・アイデンティティ尺度
(土肥, 1999)
Q4_1 恋愛することは人生で大切なことだ。
Q4_2 女ならでは、の人生の楽しみを見つけたい。
Q4_3 男として生まれた方が幸せだった。
Q4_4 好きな異性のことを相談する同性の友人がいる。
Q4_5 子供を産まなかったら、人生の重要な部分が欠ける。
Q4_6 子供を持つつもりはない。
Q4_7 男に生まれ変わりたい。
Q4_8 恋愛についての記事をよく読む。
Q4_9 私は女に生まれて損をした。
Q4_10 だいたいの出産プランがある。
8
6.ジェンダーを表すファッション
 従来、ジェンダーは、被服のシンボリックな
特徴、あるいはシンボリックな被服品目その
ものから表示されてきた。(神山,1999)
 男らしい被服品目・・・ネクタイ、スーツ
 女らしい被服品目・・・スカート、ハイヒール
9
表3.フェミニンな服装(行動指標)
Q1_1 フリルやレースのついた服を着る。
Q1_2 アクセサリーやピアスをつける。
Q1_3 髪をロング(肩を越す)まで伸ばす。
Q1_4 パーマや巻き髪などをする。
Q1_5 シンプルな服を好む。
Q1_6 香水を使用する。
Q1_7 ワンピースを着る。
Q1_8 異性の目を意識した服を選ぶ。
Q1_9 服に合わせて化粧を変える。
Q1_10 マニキュアをする。
Q1_11 色が暗めの服を着る。
Q1_12 大きめの(ラフな)服を着る。
Q1_13 自分をか弱く見せる服を着る。
Q1_14 シフォン素材などやわらかな素材の服を好む。
Q1_15 自分をかわいらしく見せる服を着る。
Q1_16 自分をかわいらしく見せるために常に化粧方法を研究している。
Q2_1 スニーカーを一週間にどの程度はきますか。
Q2_2 ピンク色の服を一ヶ月にどの程度着ますか。
Q2_3 ヒールの高い靴(5cm以上)を一週間にどの程度はきますか。
Q2_4 スカートを一ヶ月にどの程度はきますか。
10
7.研究目的
 性役割を好意的に受け止めるか、非好意的
に受け止めるかという個人的価値観は
ファッションに影響を与えるかどうかを検討
する。
 ジェンダー・アイデンティティの確立(自己の
性の受容)はファッションに影響を与えるか
について検討する。
11
8.仮説
【仮説1】
平等主義的な女性は、伝統主義的な女性
に比べ、女性的なファッションをしない。
【仮説2】
自己の性の受容度が高い女性は、受容度
が低い女性に比べて、女性的なファッショ
ンをする。
12
9.調査方法①
 調査期日 2005年11月21日~30日
 調査対象 香川大学経済学部の女子学生
135名と中国短期大学英語コミュニケーショ
ン学科の女子学生68名を対象に、授業中に
質問紙を配布により実施。有効回答数183
名。対象者の年齢は18歳~27歳。
13
10.調査方法②
 調査項目
 ファッションに関するアンケート(20項目、80点満点)を
作成し、→フェミニン(行動指標)
 鈴木(1987;1991;1994)の平等主義的性役割態度
スケール短縮版(15項目、75点満点)(認知指標)と
 土肥(1996)のジェンダー・アイデンティティ尺度の下
位尺度である女性用尺度の性の受容項目(10項目、40
点満点)(自己概念指標)
 を使用した。
14
11.図1.尺度間相関関係
 SPSSによる相関分析の結果
ジェンダー・アイ
ジェンダー・
ジェンダー・
デンティティ
アイデンティティ
アイデンティティ
0.390
フェミニンな
フェミニン
服装
-0.256
-0.123
平等主義的
平等主義
性役割態度
15
12.表4.重回帰分析結果
係数a
モデル
1
(定数)
平等主義的性役割態度
ジェンダー・アイデンティティ
a. 従属変数: フェミニンな服装
標準化係
非標準化係数
数
B
標準誤差 ベータ
19.404
6.204
-.022
.067
-.023
.700
.130
.389
t
有意確率
3.128
.002
-.326
.745
5.399
.000
ゼロ次
-.123
.395
相関係数
偏
-.025
.379
部分
-.023
.376
16
12.図2.標準化係数
 SPSSによる重回帰分析の結果
ジェンダー・アイ
ジェンダー・
ジェンダー・
デンティティ
アイデンティティ
アイデンティティ
0.389
フェミニンな
フェミニン
服装
-0.123
平等主義的
平等主義
性役割態度
17
14.図3.フェミニンな服装に対す
る偏相関係数(蛇足)
 SPSSによる偏相関の結果
ジェンダー・アイ
ジェンダー・
デンティティ
アイデンティティ
0.379
フェミニンな
フェミニン
服装
-0.025
平等主義的
平等主義
性役割態度
18
15.結果
【仮説1】
相関係数は-0.123となったが、偏相関の結
果、-0.025となりみせかけの相関(疑似相関)
だということがわかった。
→よって、仮説1は立証されなかった。
個人の平等主義的性役割態度は女性的な
ファッションをするかしないかに影響を与えな
い。
19
【仮説2】
相関係数は0.390(**)となり、また偏相関
の結果も0.378となったので、低い正の相関
関係がある。
→よって、仮説2は立証された。
自己の性の受容度は、女性的なファッショ
ンをするかしないかに影響を与える。
20
【重回帰分析から】
認知指標である平等主義性役割態度は単
純相関は行動指標であるフェミニンな服装
を着るという関係があるが、重回帰分析の
結果からそれは自我概念のジェンダー・アイ
デンティティとの関連するために生じている。
女性的服装は女性が主として女性という
ジェンダー・アイデンティティをもっているた
めにしている。
21
16.結果2
 ジェンダー・アイデンティティ尺度(カテゴリー
化したもの)を従属変数とし、ファッションに
関するアンケート20項目を説明変数として、
関連性を把握するためにCATDAP02による
分析を行った。結果、9つの項目に関連が見
られた。
 9つの項目においてクロス表を作成し、カイ
二条検定を行った。
22
表5.ジェンダーと有意に関連するファッション
説明変数
AIC
Q1_16 自分をかわいらしく見せるために常に化粧方法を
研究している。
-15.1
Q1_6 香水を使用する。
-8.72
Q1_15 自分をかわいらしく見せる服を着る。
-6.38
Q2_3 ヒールの高い靴(5cm以上)を一週間にどの程度は
きますか。
-4.25
Q1_8 異性の目を意識した服を選ぶ。
-2.57
Q2_1 スニーカーを一週間にどの程度はきますか。
-0.87
Q1_11 色が暗めの服を着る。
-0.63
Q1_4 パーマや巻き髪などをする。
-0.33
Q1_9 服に合わせて化粧を変える。
-0.13
----
0
23
表6.ジェンダーと関連しないファッション
説明変数
AIC
Q1_12 大きめの(ラフな)服を着る。
2.13
Q1_2 アクセサリーやピアスをつける。
2.22
Q1_3 髪をロング(肩を越す)まで伸ばす。
2.7
Q1_7 ワンピースを着る。
2.78
Q2_4 スカートを一ヶ月にどの程度はきますか。
3.72
Q1_13 自分をか弱く見せる服を着る。
4.01
Q1_10 マニキュアをする。
4.26
Q1_5 シンプルな服を好む。
4.34
Q2_2 ピンク色の服を一ヶ月にどの程度着ますか。
5.39
Q1_1 フリルやレースのついた服を着る。
6.06
Q1_14 シフォン素材などやわらかな素材の服を
好む。
7.78
24
表7
Q1_16 自分をかわいらしく見せるために常に化粧方法を研究している。 と gender3
q1_16 Q1_16 1 当てはまらない
自分をかわいら
しく見せるため
に常に化粧方
法を研究してい 2 どちらかといえば当
てはまる
る。
3 当てはまる
度数
調整済み残差
度数
調整済み残差
度数
調整済み残差
4 とてもよく当てはまる 度数
調整済み残差
度数
合計
効果量=0.277
gender3 NTILES of GENDER
1 低
2 中
3 高
40
40
20
71.4%
56.3%
35.7%
3.0
.4
-3.4
12
28
20
21.4%
39.4%
35.7%
-2.2
1.5
.6
1
2
10
1.8%
2.8%
17.9%
-1.9
-1.8
3.8
3
1
6
5.4%
1.4%
10.7%
.0
-1.9
2.1
56
71
56
100.0%
100.0%
100.0%
合計
100
54.6%
60
32.8%
13
7.1%
10
5.5%
183
100.0%
25
表8
Q1_2 アクセサリーやピアスをつける。 と gender3
Q1_2
アクセ
サリー
やピア
スをつ
ける。
1 当てはまらない
2 どちらかといえば当
てはまる
3 当てはまる
度数
調整済み残差
度数
調整済み残差
度数
調整済み残差
4 とてもよく当てはまる 度数
調整済み残差
度数
合計
gender3 NTILES of GENDER
1 低
2 中
3 高
18
15
6
32.1%
21.1%
10.7%
2.4
.0
-2.3
14
18
14
25.0%
25.4%
25.0%
.0
.1
.0
14
16
17
25.0%
22.5%
30.4%
-.1
-.8
1.0
10
22
19
17.9%
31.0%
33.9%
-2.0
.7
1.2
56
71
56
100.0%
100.0%
100.0%
合計
39
21.3%
46
25.1%
47
25.7%
51
27.9%
183
100.0%
効果量=0.164
26
Q1_15 自分をかわいらしく見せる服を着る。 * gender3
Q1_15 1 当てはまらない
度数
自分をか
わいらし
調整済み残差
く見せる
服を着 2 どちらかといえば当 度数
てはまる
る。
調整済み残差
3 当てはまる
度数
調整済み残差
4 とてもよく当てはまる 度数
調整済み残差
度数
合計
効果量=.222
gender3 NTILES of GENDER
1低
2中
3高
35
29
18
62.5%
40.8%
32.1%
3.2
-.9
-2.3
13
33
20
23.2%
46.5%
35.7%
-2.4
2.3
-.1
6
7
14
10.7%
9.9%
25.0%
-1.0
-1.5
2.6
2
2
4
3.6%
2.8%
7.1%
-.4
-.8
1.2
56
71
56
100.0%
100.0%
100.0%
表9
合計
82
44.8%
66
36.1%
27
14.8%
8
4.4%
183
100.0%
27
Q2_3 ヒールの高い靴(5cm以上)を一週間にどの程度はきますか。 * gender3
Q2_3 ヒールの 1 週に0回
高い靴(5cm以
上)を一週間に
どの程度はきま
2 週に1,2回
すか。
3 週に3,4回
度数
調整済み残差
度数
調整済み残差
度数
調整済み残差
4 週に5回以上 度数
合計
調整済み残差
度数
効果量=.202
gender3 NTILES of GENDER
1 低
2 中
3 高
34
36
17
60.7%
51.4%
30.4%
2.3
.8
-3.1
13
18
16
23.2%
25.7%
28.6%
-.5
.0
.6
3
9
14
5.4%
12.9%
25.0%
-2.3
-.4
2.8
6
7
9
10.7%
10.0%
16.1%
-.4
-.7
1.1
56
70
56
100.0%
100.0%
100.0%
表10.
合計
87
47.8%
47
25.8%
26
14.3%
22
12.1%
182
100.0%
28
Q1_8 異性の目を意識した服を選ぶ。 * gender3
Q1_8
1 当てはまらない
異性の
目を意
識した
服を選 2 どちらかといえば当
てはまる
ぶ。
3 当てはまる
度数
調整済み残差
度数
調整済み残差
度数
調整済み残差
4 とてもよく当てはまる 度数
調整済み残差
度数
合計
効果量=.221
gender3 NTILES of GENDER
1 低
2 中
3 高
41
49
26
73.2%
69.0%
46.4%
1.8
1.3
-3.2
12
19
18
21.4%
26.8%
32.1%
-1.1
.0
1.1
3
3
9
5.4%
4.2%
16.1%
-.9
-1.6
2.6
0
0
3
.0%
.0%
5.4%
-1.2
-1.4
2.6
56
71
56
100.0%
100.0%
100.0%
合計
116
63.4%
49
26.8%
15
8.2%
3
1.6%
183
100.0%
表11.
29
結果
 女性性と考えられる服装のうちはやりの服
装はジェンダー・アイデンティティと関係しな
かった。→流行要因はpartial outしなければ
ならない。
 具体的項目ではなく、あいまいな聞き方をし
たほうがはっきりとジェンダー・アイデンティ
ティと関係する。
30
17.考察①
 なぜ、男女平等主義という考え方は、ファッ
ションに影響を与えないのか?
 ジェンダー・アイデンティティによって説明さ
れてしまう。
31
18.考察②
 ジェンダー・アイデンティティ(自己の性の受
容度)がファッションに影響を与えるのはな
ぜか?
 自分の性を受けとめず、男に生まれたかっ
たと考える人は、スカートやワンピースを好
んで着ることはない。
32
19.考察③
 平等主義的性役割態度とジェンダー・アイデ
ンティティが負の相関関係になったのはな
ぜか?
 フェミニンなファッションをし、昔ながらの結
婚観や職業観をもつ「お嫁系」女性の存在。
33
20.考察④
 CATDAP02の結果から何が言えるか?
 ジェンダー度が高い女性ほどフェミニンな
ファッションをし、逆にスニーカーを履くなど
のラフな格好はしない。
 自己の性を受けとめている女性は、大人の
女性であり、大人の女性のイメージである
ファッションが好まれる。
34
 流行の問題
21.かまやつ女
 三浦展(2005)『下流階級』光文社新書
 youth003 増殖するかまやつ女
 →らしさの崩壊
 <->CanCam
35
22.結論
 女性がフェミニンなファッションをするかどう
かは、個人の考え方や価値観は影響せず、
大人の女性に成熟しているかが影響する。
また、この女性たちには、大人の女性を連
想させるファッションが好まれる。
 マーケティングにおいて、彼女たちが求める
大人の女性像を知り、それをファッションとし
て実現させていくことが重要であると考える。
36