①マリア・ミース 「主婦化」

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Transcript ①マリア・ミース 「主婦化」

ジェンダー、近代、産業革命
(女性の)経済活動への参加:
先進国~途上国
キーワード:経済活動、労働市場、無償労働
• 「経済活動」、「労働」の意味と労働市場への男女
参加開始
• 無償労働への男女従事の時代(伝統社会、工業
化前)
• 有償労働への変化
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ジェンダー、近代、産業革命
労働者階級と産業革命キーワード:
産業革命→出稼ぎ→安価な労働→生計の「補助」→女
性・子供労働→母子保護法→女性の「退場」
• 産業革命の初期:安価な女性・子供労働への需要
– もはや農業社会の家の近辺で働くのではなく、工場へ
出稼ぎに行かなければならない
• 産業革命の中期~現在:次世代の労働力を守るための
「有閑主婦」の需要 ⇒ 母子労働保護法
• 女性の次世代の労働力を育てるための労働市場からの
「退場」 ⇒ 「女性が家の外で働かない方いい」という
近代ジェンダーイデオロギーの発生
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「女性の経済活動への参加:世界経済の展開とジェンダー」
≪有償労働・無償労働、公式経済・非公式経済≫
• 男女問わず「無償労働」(unpaid work)」とは
– フォーマルな労働市場の外部で行われ、国の就業や所
得統計に反映されない(または過少評価される)活動。
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「女性の経済活動への参加:世界経済の展開とジェンダー」
「無償労働」の定義:
①家族・世帯内・地域社会での無償労働
– 例)家事労働(子供・高齢者の世話、家族の食事
の準備)、ボランティア活動(環境保護、助け合い
など)
②家族・世帯内の自給生産労働、インフォーマ
ル・セクターの労働
– 例)農業、食糧生産、家族経営による自家消費用
の財・サービスの活動、インフォーマル・セクター
にて自営業の家族従業者の労働
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ジェンダー、近代、産業革命
先進国のジェンダー・発展途上国のジェンダー
キーワード:経済単位としての世帯、輸出志向経済、
有償労働
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•
•
•
先進国の「理想的な家」形態と途上国の世帯との差異
途上国の資本経済への移行と輸出志向経済
先進国の市場への安価な販売のため、安価な労働力
資本経済への移行と男女労働役割区別の始まり:
– 内~外の区間
– 有償労働~無償労働の価値区別
– 職場での時間~「プライベート」の時間
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グローバルな労働力の「女性化」?
植民地制度による資本経済の中のジェンダー変化・
消費主義の中のジェンダー変化
1. 小規模商業(地域市場)制度から、
国内外市場のための産業制度への変化
2. 土地や自然から必需品を生産する制度から、
労働の交換による賃金で生活する制度への変化
3. 共同体が求める天然資源の見方から、工業生産が求め
る原料の見方への変化
4. 伝統社会が求める必需品から(先進国の)消費社会が
求める贅沢品の生産への変化
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グローバルな労働力の「女性化」?
植民地統治による途上国の分業やジェンダー変化:
1. 現地の結婚習慣や3世代家族構造から、核家族構造へ
2. 女性の外での仕事への従事から、「主婦」仕事へ
(発展途上国の「主婦化」)
3. 農業労働による男女役割区別から、世帯内分担へ
4. 現地の女性も意思決定を持つ社参加型村社会から、
ヨーロッパからの統治支配者の下での女性使用人へ
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グローバルな労働力の「女性化」?
先進国の開発計画における途上地域にあわない3つの前提
1.世帯の構造(大人2人、子供2-3人)
2.世帯は経済単位であり、生計・資源をめぐる
世帯内の意思決定は平等であるはず
3.世帯内(分担=)分業:男は生計の担い手、
女は家内労働全般
上記の3つは理想的な世帯形態のみを反映する。
西洋諸国でも日本でも例外的である。
世帯の理想的な形態を支える諸体系~その国の
法律制度・教育制度・マスメディア・家族計画プログラム
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グローバルな労働力の「女性化」?
地域所得を向上するための先進国型開発計画の問題点:
プランテーションでの余剰生産に従事する世帯の形やニーズ
世帯の「理想的な」形態は、先進国の
家庭内ジェンダー役割・分担を自然化していく。
例:男は家の外,女は家の中で働く。
しかし、発展途上国の女性は、家族に主な労働力
や生計への貢献を提供している。このことが以前
の開発計画に認められなかった。
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ジェンダーと開発計画:
先進国の理想的な世帯構成を再作成する計画 I
近代の核家族と女性労働に関する前提
• 核家族=2世代+子供2人
• 世帯主=男
• 世帯主でない人の労働は無償であるか、価値の
低い労働として見なされる
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農村部における国際分業とジェンダー
理想論による「家族構造」以外の世帯が多い。
58歳の祖母と16歳の孫。日雇い農村労働に従事する祖母も、一
日30バーツしか稼げない日もある。食料の余分を孫のために
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控え、自分が食べるのは2日間で一回。
国際市場のための生産への変化や
理想論による「家族構造」以外の世帯
小作農の日雇い労働に従事した母。一月で、約15日分の仕事が入手
できる。教育受けていない女性としては、一日に30バーツ(約80円)を
受けた。それに自分以外に、障害者の祖父母や子供二人の生計を担
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おうとした。
国際分業、ジェンダー、開発。
裁縫で(右の)二人を支持
ビーズ細工で3人を支持 他家の家事で二人を支持
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ミースによる新国際分業と開発:
多国籍企業と開発機関の戦略
New IDL=新国際分業(脱植民地時から)
1.先進国の工場の閉鎖、同企業の工場の途上国での
設置(+ 同じ先進国のマネジメント付)
↓
2.工業化による途上国の経済変化: 自給持続生産から、
国際市場のための輸出型生産への変化
↓
3.自己消費可能な品の生産・購入制度から、
輸出先の先進国の必需品や贅沢品生産への変化
↓
4.先進国における消費者の要求を満たすため、
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最も安価な生産過程、労働力、物価が優先されてしまう
国際分業とジェンダー:
新国際分業と性別変化 I: 先進国
先進国における女性の「主婦化」
1. 男性は家族の土台としての資本所得役割を大事にする
2. 従って、男性の仕事は家の外、女性の仕事は家の中
3. 家の中の者は「主婦」とされる。先進国では、一つの
主な役割は家族のための消費することとなる。
4. 先進国の市場は商品過剰や商品競争による機能する。
商品市場では、主婦(=消費者)は必需品だけではなく、
多様性のある商品を繰り返して買わなければならない。
(過剰生産は 、品で溢れる、浪費する消費生活を招く)
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国際分業とジェンダー:
新国際分業と性別変化 II: 発展途上国
途上国の女性・男性
労働者階級の女性が果たす三重の役割
1. 再生産労働:労働力(となる人的資源)の再生産と維持
=だんな、老人、子供の世話、食料の準備、看病
2. 生産労働:現金又はそれに相当するものを得るための
労働
3. コミュニティ管理とコミュニティ政策:居住地の社会関係
の管理と支持。
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女性は働かなかったか? ~ 生産労働と家庭生活
「市場経済」が社会を覆い尽くしてから、家事労働は—
つづき
• 「再生産労働」と呼ばれて来た活動:
– 近代経済のために地域・国が要求する労働力を生む
(供給する)・その命を支える・教育を与える
– 夫や子供の毎日の職業(勉強も含む)を可能にする。
• 子供を中心とする「家族」と同じ場所で「働く」こととなる。
– この「家庭」という場所は「愛情と安らぎ」があるはずの場所
– 家族と一緒に「自分」の時間を過ごす。
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国際分業とジェンダー:途上国の女性の「主婦化」
新国際分業と性別変化~開発途上中の女性労働
先進国による「男性の所得を補助するはずの女性労働」
vs。 先進国が求めるモノの生産
1.都市部での女性生産労働:
• 大企業・メーカー(電気商品、被服など)
• 工芸品、食品加工、インフォーマル・セクター(内職)
2.農村部での女性生産労働:
• 自分の農地でもはや自分の必需品を生産するのではなく、
アグリビジネスや輸出経済による換金作物生産 ・
プランテーション(モノカルチャー)制度などで働く
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国際分業とジェンダー:
新国際分業と性別の変化II:途上国
先進国による男女役割とその途上国への移転
• 男性は夫、父としての定義づけによる家父長制を強化するが、
低賃金労働に従事するから「生計を担える」家父長とならない
• 男性の仕事は家の外、女性仕事は家の中という理想が移るが、
収入の必要で女性の二重労働(生産労働+家族労働)が登場
• 家父長としての男性の賃金は家族を支持する賃金であるはず
が、低賃金・季節によるだけの賃金の現実との相違が登場
• 「主婦」としての女性賃金は補助賃金であるはずから、
世帯全員に配分する・支持する金額ではない
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国際分業、ジェンダー、開発
まとめ
• 途上国の有償労働者は主に自分の必需品ではなく、 先進国が
購入するものを生産する(自分の低賃金でそのモノを買えない)。
• 途上国の男性賃金労働(有償労働)は主に出稼ぎ、 換金作物、
小規模土木(=インフラ建設)などとなり、これらに従事するために
家族を村に残す。
その結果、
女性だけが家族の支えとなってしまう。
• 女性労働は主な労働力として認められないために、
補助労働として低賃金以下の報酬で生計を担おうとする。
その結果、
世帯、共同体が貧困化して行く。
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「女性の経済活動への参加:世界経済の展開とジェンダー」
女性も男性も以前から労働市場に参加してきたが
…
≪生活水準、社会的・経済的地位≫
• 「生活水準の向上は・・・社会的・経済的地位の
向上につながるのだろうか」(p179)
• 「開発によってもたらされる所得の増大は、自動
的に労働力率の上昇につながるわけではない」
(p180)
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開発計画の中の「主婦」の二つの意味
主婦1?
「主婦」2
先進国で消
費する
「主婦」のレッテ
ルが付けられた
「主婦」
途上国で働く人
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日本の産業革命:炭鉱労働
炭車をひく馬(貝島管牟田炭破) 明治35年撮影 福岡県鞍手郡香井田村
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昔は女性も上半身裸で働いていた
明治時代の製糸工場内部
三重県 津市
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