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12 貧困・飢餓・ジェンダー 12.1 開発と貧困 12.2 飢餓と飢饉 12.3 開発プロセスにおけるジェンダー 1 12.1a 開発と貧困 開発とは何か • 経済開発(発展):所得の増加で表される経済成 長+長期的な構造変化,質の向上をともなうプロセス • トダロの定義:①生活レベルの向上(所得,食生活, 医療・教育),②人間の尊厳の社会的仕組み,③選 択可能な変数の拡大による自由の増大 • アマルティア・セン 開発の目的・手段 一人ひとりの本質的な自由の拡大:①政治的自由, ②経済的機能と機会,③社会的機会,④透明性の 保証,⑤保護的安全保障 2 12.1b 開発と貧困 貧困をどう解釈するか • 貧困=低所得 必要最低限の食・衣・住 • センの貧困概念 ♪人間らしい生命活動(functionings) を発見し,発現 させ,発揮し,実現する力,可能力=ケイパビリティ (capability 生きる力) 個人や地域によって異なるが,誰 も元来持っている ♪豊かさ:財・サービスの特性,人びとが価値を置く生命活動 の種類,個人個人の可能力が大きな役割を果たす ♪貧困:可能力を発揮できない状況ー「可能力剥奪」 3 12.1c 開発と貧困 開発パラダイムー人間開発 • BHN(Basic Human Needs,人間の基本的必要充足) 医療・保健,教育,食料,水や燃料,住居を重点とする開発 ・人間開発 人びとそのものを開発の手段,目的とする考え ♪ストリーテンの主張: ①人間それ自身が重要,②人間開 発は生産性を高める手段,③健康増進は人口増を抑制する, ④環境保全に役立つ,⑤貧困削減は民主主義と社会安定に 役立つ,⑥市民社会の混乱を減らす. ♪ハク:開発計画における人間の重視 ♪新しいパラダイム:①公平性ー機会の保証,②持続可能 性ー将来世代にも,③生産性,④エンパワーメントー人びとを その自由意志で選択を実行できる社会的な位置におく. 4 12.2a 飢餓と飢饉 飢えと飢餓 • 暫定的な定義 • 飢え(hunger):食物の量が少なく,身体的苦痛を伴う • 飢餓(starvation):深刻な持続的な栄養不良状態で,身 体の不快と苦痛をともなう • 栄養不良undernutrition,栄養失調malnutrition • 食糧不足:一定地域,一定期間,ある価格で食糧の需要量 が供給量を上回る 5 12.2b 飢餓と飢饉 飢饉とは何か • 飢饉(famine):天然災害,戦争・内乱,人口圧力など, 何らかの理由で食糧不足が発生し,多くの人が死に いたる現象 • センの分析:①餓死者の多い地域に食糧の供給・ 貯蔵はあった,②自然災害だけが主原因の飢餓は ない,③飢餓の発生と人口増加は関係ない.真の 原因は,貧困と不平等であり,それを許している経 済・社会システムのせい. 6 12.2c 飢餓と飢饉 基本的請求権(エンタイトルメント) • 中国:栄養水準の改善にも関わらず何回もの飢饉, • インド:1943年ベンガル大飢饉のみ,ただし慢性的栄養不 良.基本食糧の配給など不平等に対処する機能,最貧層へ の就労機会提供メカニズム. • 飢饉の被害者:土地なし農民,貧農,小作人,女性,母親 だけの子どもなど,特定集団・階層 • 基本的請求権(entitlement):経済的・政治的・社会的 および法的に,生を営むための食糧を含む財・サービスに対 する,人が持つ支配力・請求権.飢餓はこれの失敗による. 7 12.3a 開発プロセスにおけるジェンダー 「行方不明」の女性 • 「可能力剥奪」としての貧困: 家族・家庭内での分配における女性の地位 • 世界人口の男女比率:男1vs女1.05 エジプト女0.95,バングラ,中国,西アジア0.94,インド 0.93,パキスタン0.90...合計1億人が行方不明. 男性と同じ扱いを受けなかった. 8 12.3b 開発プロセスにおけるジェンダー 貧困の女性化 feminization of poverty • アフリカ 貧困人口の3分の2が女性 ・劣悪な住環境,栄養不良,疾病,低識字率,過剰労働 ・平均余命の低さ,妊娠中の高死亡率,幼児死亡率 ・ 農村地域で劣化→農村女性の多産・多子 途上国では男子の2倍の時間働き,1/101しか受取らない. ・ 悪循環:①旱魃,借金,人口増による土地への圧力,→②男 性の都市への移動,→③女性戸主家族の増大,→①に戻る. 中央政府の農業政策の無策. 9 12.3c 開発プロセスにおけるジェンダー 女性のエンパワーメント • WID:Women in Development • 性別役割を決めている要因 ①教育・訓練,医療・保健,雇用機会 ②社会的基盤としての,人権(意識と法制度),家族観,宗教 と文化 ・ 労働力(雇用)の女性化 有償の生産活動,つまり労働市場への進出,経済の実質的な 担い手(除く北アフリカ,西アジア) 自由意志で,多くの選択肢を持ち,望ましいものを選ぶ マイクロ・クレジット 10 12.4 貧困・飢餓・ジェンダー むすび • 世銀『貧者の声』 Voices of the Poor 4つのパ ターン ①貧者に多様な衝撃と不利益→貧者の側にも多様 な資産と能力が必要 ②経済政策やショックによる生活不安 ③救済団体や援助組織の働き→マイナスの効果 ④家庭内でのジェンダー格差 ・ 生を生きるための自由の拡大 11