Transcript 統計力学の基礎
2005年6月2日 統計力学の基礎 計算科学科4年 橋 知史 統計力学とは 系のミクロの物理法則を基に、 マクロの性質を導き出すための学問 • 例えば1モルの気体の粒子の動き(位置や運動量など)を 運動方程式を解いて求めるのは到底無理 • 解いてもあまり意味がない 位相空間 古典力学では、 粒子の状態は 運動量 p 座標 を指定することで決まる。 位相空間 ( p, q) を考える 1粒子系の位相空間をμ空間、 多粒子系の位相空間をΓ空間という q 確率密度 ( p, q) から ( p dp, q dq) の範囲にある確率を考え、 f ( p, q)dpdq として位相空間の確率密度を定義す ると物理量の期待値が計算できる。 f ( p, q) を分布関数という 粒子が多数の場合 粒子が多数の場合、位相空間は ( p1, p2 ,, pN , q1, q2 ,, qN ) 位相空間の体積 d dp1dp2 dpN dq1dq2 dqN ただし、粒子数 N とする エルゴート仮説 温度Tが一定でも、いろいろな系の状態がある。 系の状態を集めたものがアンサンブル エルゴード仮説: アンサンブル平均=長時間平均 すなわち、時間平均を取る代わりに確率平均で 置き換えることができる。 アンサンブルの種類 ミクロカノニカルアンサンブル: エネルギー、粒子数が一定の系の集団 カノニカルアンサンブル: 粒子数は一定であるが、エネルギーは一定でない。 温度が一定の系。 グランドカノニカルアンサンブル: 粒子数も内部エネルギーも一定でない。 化学ポテンシャルと温度が一定。 ミクロカノニカルアンサンブル エネルギーE(E<H(p,q)<E+ΔE),体積V ,粒子数N を 持つ孤立系を考える(Hはハミルトニアンといい、全エネ ルギーをp,qで表した関数) この系が熱平衡状態になっていると考えると、特定の 微視的状態が他の微視的状態よりも大きな実現確率を 持つだろうと考えるべき積極的な理由がない そこで次の等重率の原理を考える。 等重率の原理 孤立系の熱平衡状態では Eが同じなら実現確率は等しい 微視的状態の実現確率がこのように一定 の値になるアンサンブルをミクロカノニカル アンサンブルと呼ぶ 位相空間においてEとE+ΔEの等エネルギー面を 考えた場合、それに挟まれる体積内の状態が 実現される確率は体積に比例する。 p E E E 実際にはもっと次元が大きく、 粒子数N、で3次元なら、 p,q合わせて6N次元 q 分配関数 エネルギーのやり取りがあるカノニカル分布では エネルギーがEになる確率は E exp( ) kBT に比例する (高温ではどのエネルギーも 同程度、低温では低いエネル ギーが確率高い) Zを規格化因子とすると物理量Aの期待値は Ei 1 A Ai exp( ) Z i kBT Ei Z exp( ) kBT i Ai は状態iでの物理量Aの値 を分配関数と呼ぶ 分配関数の性質 • 色々な量の平均を出す時の規格化因子 • 微分を用いると様々な物理量の期待値が得られる。 例えば log Z 1 K BT E Z exp( i ) kBT i (E ) exp(E ) i i i Z E とおくと 一般の物理量に対してはハミルトニアンに-aAをつけて Z (a) exp( (Ei aAi )) i d log Z (a) A d (a ) a0 とすれば求まる。 参考文献 • 物理学基礎シリーズ 4 熱・統計力学 宮下誠二 培風館 • http://soliton1.ph.sci.toho-u.ac.jp/sm.pdf • http://www.ph.sophia.ac.jp/~tomi/kougi_no te/stat_phys.pdf