Transcript 光と磁気の現象論(2)
大学院物理システム工学専攻2004年度
固体材料物性第7回
-光と磁気の現象論(2)-
佐藤勝昭
ナノ未来科学研究拠点
復習コーナー
第6回に学んだこと
光と磁気の現象論(1)
円偏光と磁気光学効果
光と物質の結びつき
誘電率テンソル
質問コーナー(1)
誘電率テンソルの対角とは何ですか(M)
A:添え字がxx, yy, zzのように対角線上に来るものを
対角成分、xy, yz, zxのように対角線上にないものを
非対角成分といいます。
異方性がある場合の誘電率テンソルはどのよう
に考えればよいのでしょう(H)
A: 1軸異方性があり、対称軸に平行な磁化がある場
合は、等方性の場合と同じですが、任意の方向を向
いているときは、全ての非対角成分が有限の値をとり
ます。
質問コーナー(2)
偏光の本をちらっと見た程度なのですが、偏光を
ジョーンズベクトルと?ベクトルの2種類で表すこ
とができると書いてあったような気がするのです
が。(O)
A:ジョーンズベクトルとストークスベクトルでしょう。光
学の世界では、これらの標記がよく使われます。いく
つもの光学素子の組み合わせのとき、素子に対応す
るジョーンズ行列、ストークス行列の積で表されるの
で形式的にきれいだし便利です。でも、意味がわから
なくなるといけないのでここでは、その表記法は用い
ません。
質問コーナー(3)
誘電率テンソルの量をどのように測定するのです
か。(M)
A: 対角成分は普通のオプティクスで、n、κを求め、
εxx’=n2-κ2, εxx”=2nκによって求めます。非対角成分に
ついては、回転角θ、楕円率ηと光学定数n,κとを用い
て計算で求めます。
これについては、あとで触れます。光と磁気改訂版
p58 問題3.12
質問コーナー(4)
電子分極の周波数領域では比透磁率は1とでき
るとのことでしたが、ワニエ励起子生成の場合は
どの領域ですか(I)
A: 非磁性半導体の励起子を考えている限り、比透
磁率は1として扱うことができます。磁性半導体でも、
バンドギャップ領域では、強磁性共鳴の周波数(GHz
領域)より十分周波数が高いので比透磁率は1です。
第7回に学ぶこと
光の伝搬とマクスウェルの方程式
固有解:波動解、固有値:複素屈折率
ファラデー配置の場合の固有値と固有状態
2つの固有値と対応する固有状態(円偏光)
フォークト配置の場合の固有値と固有状態
磁気誘起の複屈折
ファラデー効果の現象論
ファラデー効果と誘電率テンソル
マクスウェルの方程式
光の電界ベクトルをE 、電束密度ベクトルをD 、磁界ベク
トルをH、磁束密度ベクトルをB、電流をJとすると、次の
関係が成立する。
B
rot E
t
D
rot H
J
t
(3.17)
(SI単位系)
マクスウェル方程式をEとHで表す
簡単のため, J=0と置く。[伝導電流を分極電流
(変位電流)の中に繰り込む]
BとH、DとEの関係式
B μ0 H
D~
ε ε0 E
を代入して、式(3.17)は次のように書き変えられる。
H
rot E 0
t
E
~
rot H ε 0
t
(3.18)
誘電率テンソル
平面波の解を仮定する
波数ベクトルKとして
E E0 exp(it ) exp(iK r )
H H0 exp(it ) exp(iK r )
(3.19)
ここにE0,H0は時間や距離に依存しない定数ベクトルで
ある。この式を式(3.18)に代入すると、
K E ωμ0 H
~
K H ωε ε0 E
となる。
固有方程式
両式からHを消去し、固有
方程式として
2~
(E K )K K E ( / c) E 0
2
(3.20)
が得られる。問題3.1参照
KH K
1
0
( K E)
1
0
K K E ~ 0 E
問題3.1 式(3.19)を式(3.18)に代入して式(3.20)を導け。
A (B C) (C A)B (B A)C
ただし、ベクトル積の公式
を
利用せよ。
K E ωμ0 H からHを消去することにより
K H ω~
ε ε0 E
KH K
1
0
( K E)
1
0
K K E ~ 0 E を得る
ここで上の公式を利用して
K K E (E K )E (K K )E
( E K ) K K E ( / c) 2 ~
εE 0
2
が導かれた
が導かれるので
( E K)K K E ( / c) 2 ~
εE 0
2
を解く
この式を解いてKの固有値と対応する電界ベクト
ルEの固有関数を求めよう。ここで複素屈折率N、
すなわち、N=n+iを導入する。ここにnは屈折率、
は消光係数である。媒質中において波数Kは
K N / c n / c i / c で表される[1]。
[1]波数Kは2π/λ’となる。ここに’は媒質中での波長
で、媒質中での光速をc’とすると
と表される。媒
質中での光速c’は屈折率をnとするとc/nで与えられる
から、K=n/cである。ここで屈折率を拡張して複素屈
折率N、すなわちn+iを導入すると、
K N / c n / c i / c
となる。
波数ベクトルの向きに平行で長さがNであるよう
な屈折率ベクトルNを用いると、(3.19)の第1式は
E E0 exp{i(t N r / c)}
(3.21)
となり、固有方程式(3.20)は
N 2 E (E N)N ~E 0
(3.22)
によって記述できる。以下では、2.3に述べた2つ
の配置(ファラデー配置とフォークト配置)について
固有値を求める。
ファラデー配置の場合(=0)
磁化がz軸方向にあるとして、z軸に平行に進む波(N //z)
に対して式(3.21)は
E E0 exp{i(t Nz / c)}
と表される。固有方程式(3.22)は
N 2 xx
xy
0
xy
N 2 xx
0
0 E x
0 E y 0
zz E z
と書ける。この方程式がE0の解をもつためには、上式
においてEの係数の行列式が0でなければならない。こう
して次の永年方程式を得る。(問題3.2参照)
永年方程式
N 2 xx
xy
0
xy
0
N 2 xx
0 0
0
zz
(3.25)
これより、N2の固有値として2個の値
N2 xx i xy
を得る。
(3.26)
これらの固有値に対応する固有関数は、
E0
N
E
(i ij) exp{i(t
z)
2
c (3.27)
E+、E-は、それぞれ、右円偏光、左円偏光に対応する。
固有関数は円偏光
フォークト配置の場合
N2の固有値として
2
2
および N 2
xy
2
zz
N1 xx
xx
という2つの解を得る。 N1およびN2に対応する固
有関数は
N
E1 A exp i t 1
c
x xy i xx j
N
E2 B exp i t 2 x k
c
(3.33)
となり、複屈折を生じる。(コットンムートン効果)
3.3のまとめ
光の伝搬をマクスウェルの方程式で記述すると,
磁化された等方性物質の屈折率Nは N2 xx i xy
で与えられる2つの固有値をとり,それぞれが右
円偏光および左円偏光に対応する.(ここに,εxx
は誘電テンソルの対角成分,εxyは非対角成分で
ある.)もし,εxyが0であれば,円偏光は固有関数
ではなく,磁気光学効果は生じない.
左右円偏光に対する光学定数の差と誘
電率テンソルの成分の関係
磁化と平行に進む光の複素屈折率の固有値は
式(3.26)
N2 xx i xy
N n i , N n i
n n
置き換え n n n ; ; n 2 ; 2
n
1
1
N n
i
(n i ) (n i ) N N
2
2
2
2
ここに N N N n i
2
2
n
; xx 2n
その結果 xx
xy n n xy nn
を得る
複素ファラデー回転角
ΔnとΔκをεxyを使って表す。
xy n xy
n xy xy
n 2 2 ; 2 2
n
n
ΔNに書き直すと
N n i
i(n i )( xy i xy )
n
2
2
i xy
xx
複素ファラデー回転角
F n i N → F
2c
2c
i xy
2c xx
磁気光学の式(続き)
Nˆ Nˆ Nˆ x x i x y x x i x y i
xy
xx
Nˆ
i x y
F
xx
(xy1) M
i
(xx0) 12 (xx2) M 2
磁気光学効果には対角・非対角両成分が寄与