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大気物理学IV —中層大気(成層圏・中間圏)の気象学—
対流圏の気象と対比をすると理解しやすいかも
対流圏は水が絡んだ条件つき不安定大気
新進の大学士たちは気圏のいちばんの上層
きらびやかな氷窒素のあたりから
すてきな化石を発掘したり
−宮沢賢治−
成層圏は:
鉛直方向に安定大気 —> 波動的な振る舞いが卓越
地球大気ではオゾン層があること—>太陽放射が直接に影響し、
対流圏とは異なる独自の風系をなしている。
1章: 基礎方程式と場の形
-時間の相も含めて-
大気の物理場のありようを眺め、対流圏から中層大気にひろげること
ー>私の話は、流体の方程式による解釈という方法(とくに線形の式との対応)
対流圏での対流とか高低気圧 ー> 重力波とか惑星波動に対応
2章: 成層圏の大循環について、東西平均した成層圏のありよう
対流圏と異なる、成層圏特有の風が吹いている
大循環の整理と問題点
赤道域と中高緯度の違い — > 赤道で
、中緯度はコリオリが卓越
2sin 
0
—>東西方向に非—様な擾乱が重要であり、様々な面白い現象が起っているので、
素過程の理解へ

3章: 大気波動の性質
4章: 波と平均流の相互作用の基礎
2003年9月11日のオ
ゾンホール(全オゾン
の分布)
5章: Rossby 波動(惑星波動)について
6章: 重力波
7章: 中層大気中の傾圧不安定や順圧不安定、Kelvin-Helmholz不安定
8章: 熱帯:対流圏界層、赤道波、慣性不安定
9章: 準2年振動と半年振動について
10章: 成層圏突然昇温をめぐって
11章: オゾンホール
12章: 捕捉波と内部境界
13章: 大気潮汐
第1章:基礎方程式と場の形
-時間の相も含めて-
1−1:基礎方程式
あヽいヽな せいせいするな
風が吹くし
-宮沢賢治夏季の海面気圧場(hPa)を示す、高気圧や低
気圧が場として表現
運動にからむ基礎方程式を述べることにします。詳しくはHolton の
An Introduction to Dynamic Meteorology 等を参照。式だけ書い
ておきます.中層大気も連続体近似として、流体力学の方程式に
よって流体の運動を表現する。
基本の式が数個である
<−>水や化学成分をあつかうと個々の物質の連続の式が成分と
して増えていく
ー>大気を連続媒体と見なして場の変化の方程式を作る。そこで
は,大気の運動を表す流体の速度が必要である。これは v = v
( x, y, z, t ) と表され、場の関数である。さらに2つの熱力学量が必
要である。例えば圧力 p = p ( x, y, z, t ) と密度 ρ = ρ( x, y, z,
t ) が必要である。この5つの量で流体の状態は完全に決定される
と書いてある。温度 T = T ( x, y, z, t )は状態方程式から決まる。
中層大気までは空気はよくまざっていて、1つの密度(または温度)、
圧力でいいであろう。
ー>オゾンなどは別に
2002年9月
25日の全
オゾン分
布
大気化学成分の1つであるオゾンなども場の関
数として現すとわかりやすいかも?
2002年は変動パターンが通常と異なる
方程式: <ーこれの変形をつかって説明したい
大気は浅い
連続の方程式は質量の保存則を述べたもの。すなわち、ある体積中の流体
の質量 ρdV の単位時間あたりの変化はその体積中に流れこむ(又は流
れでる)質量流速に等しい。場の量の式で表すと、

(1)
 div (  v )  0
t
運動方程式は種々の近似をして以下のよう。
d
は流体粒子に作用
dt
(2)
du uv
1 p
 tan  
2vsin   Fx
dt a


x

(3)
dv u2
1 p

tan  
 2u sin   Fy
dt
a
 y
(4)
dw
1 p

g Fz
dt
 z
ハリケーンElena, 1985/9/2
理想気体(大気)の状態方程式、 R = 287 J / kg / K
RT
p   RT  
熱力学の方程式:
気象学では種々の非断熱過程(例えば潜熱放出や放射による)が重要
cp
これらが流れについての基礎方程式である.非線形の方程式なので、
解くときは数値計算。講義では線形的な理解が主に
p
 g
z
dT
dp d' Q


dt
dt
dt
  T(
断熱運動では温位が保存される。cpは定圧比熱( = 1004 J / kg / K )
通常の大気大循環モデルでは(4)を静力学平衡
にして、式を解いている。
(5)
(6)
p0 R / cp
)
p
変形して->
cp
dlnT
dln p
dln d'Q
R
 cp

dt
dt
dt
Tdt
Log-p座標系での運動方程式:
水平Scale が10km程度の対流や内部重力波については鉛直方向の加速度もきちんと考慮した方程式で議論するが、
数10km程度以上では基本場といわず擾乱についても静力学平衡の式をつかう。擾乱についても静力学平衡がなりた
つ時、圧力座標がよく用いられる。
対流圏のみの議論ではp−座標系が用いられるが、中層大気の議論では有限の範囲に閉じ込めた p−座標系ではわかり
にくい。圧力は高さに対してexp 的に減少するので次のような log-p 座標系を導入する( Holton参照 )。
dz
H dp
w
 p
z   Hln(p / p 0)
dt
dt
ここでp0 は基準圧力(1000mb=100kPa)、H = R T0 / g で T0 は全球平均の温度である。
u
u u
u uv tan

u v w 
 2v sin  
t
x
y
z
a
x
v
v
v
v uutan

u v w 
 2usin  
t
x
y
z
a
y
  RT
H
z
u  v  w  w 0
H
x
y
z
dQ
  u   v  )   wN2  R dt
(
H cp
t
x
y z
N2 
R T
R T
(

)
H z
cp H
水平圧力項が簡単、高度場の鉛直微分が温度に比例する、連続

の式が密度変化を考慮した非発散の形、熱力学の鉛直項が浮力
振動数の2乗の形になっている。
観測で評価されたN2=浮力振動数2の値の図:
対流圏と成層圏の値で、上が成層圏で下が
対流圏、成層圏の方が値が大きい。Tsuda et
al., JGR, 1991
成層圏は水がほとんどない安定な大気
ー>振動する
ー>その振動が空間的に広がる波動が重
要となる
1−2:大気の基本的な構造と方程式との関係
高度
図は、圧力,密度、(および温度)で、地球の標準大気と
呼ばれる平均的な鉛直構造を示している.
圧力p,密度ρについて高さとともに exp(-z/H) 的に減
少
静力学平衡と理想気体の状態方程式から
中間圏
p
p
p
 g  
g
z
RT
H
—>密度は中層大気において薄くなる—>擾乱の速度
の振幅が:

鉛直伝播可能な波のときは、
中層大気
u v w w


 0
x y z H
のために線形の擾乱の振幅は
z
exp(
)exp(imz)

2H
のようになる。ここで、Hはスケールハイト、mはある実数
で、擾乱の速度はexp的に大きくなる

波に伴う温度の振幅も同様に大—>波が壊れるように
なる(wave breaking)
Q波に伴う鉛直温度勾配 dT’/dzが大きくなり、対流
のおこる条件である乾燥断熱減率 -g/cpをこえる
成層圏
全球平均の温度構造
地表は約290Kになっていて,それから温度勾配は約
6.5K/km程度でー様に減少
<ー 対流圏
この領域では水とからんだ対流が起こる
<ー約11kmまで(全球平均で)
熱帯域では16kmくらいまで高度とともに線形的に減少
している
T(z)=T(0)−Γz
—>この式を、熱帯対流圏の高度を熱力学的に決める
ことに使ってみよう(Held, 1982)
中層大気
11〜20kmはほぼ等温的な層になっている.ここから
を成層圏ー>より高い層は高度とともに温度上昇
対流圏と成層圏の境界は対流圏界面と呼ばれる、2℃
/km以下の温度減率がおこる最低のlevelが対流圏界
面:極域では約9km,赤道域では約16km.緯度によ
り高度が異なることー>それぞれのでき方の問題
約50km〜約85kmは中間圏高度、高さとともにゆるや
かに温度降下
ー>極端には等温大気=N2一定
基本状態を緯度方向にも広げてみる
緯度/高度を決めて,東西方向に地球を—周した平均の
図:93年の1月の平均を示す。
圏界面
実線が温位θを、点線が温度である。
緯度で異なる対流圏界面の高さ
図から想像できるように、
大きい(より安定)、
d
dz
N2  g
は成層圏で

ln 
z

対流圏/成層圏の区分の概念図:物理過程がのっ
ている。
熱帯域と中高緯度とは力学過程が異なる様相
物理的には温位の方が断熱で力学的に保存則をみ
たす点で重要
ー>
d /dt0
断熱運動のとき、
とすれば流体は等温位
面を動くであろう。
図 ー>中緯度で対流圏と成層圏がcrossしている。
Holton et al. (1995, Rev. Geophys.)から
一方、熱帯対流圏では
d ー>例を
Q
dt
wsat は飽和水蒸気の混合比である.
熱帯対流圏圏界面高度決定の大雑把な話:
Held(1982, J. Atmos. Sci.)による
Lは水蒸気の凝結熱で2.5x10(6)J/kg とする
微分として鉛直成分のみを考えると
dT
1 Rdp
L


dwsa t  0
T
cp p
c pT
dT
RT dp
dwsa t

L
0
dz
p dz
dz
dp  gdz
dT
RT
dwsa t
cp

g  L
0
dz
p
dz
d
(c T  gz  Lwsa t )  0
dz p
cp
夏の降水の全球分布、Hack et al., 1998, J. Climate か
ら

対流圏の熱帯域では、図のように、多くの降水がある。一
方、成層圏では水蒸気は少ない。
ー> 熱帯域の対流圏圏界面高度について
水蒸気の凝結熱で乾燥大気のエネルギ−が変化すると
き、単位質量あたりをかんがえると、熱力学の式は(左
辺が非断熱加熱)
 Ldwsat  c p dT  dp  c p dT 
 c p T(
dT
1 Rdp
d

)  cpT
T
cp
p

RT
dp
p
cpT  gz  Lwsatは飽和湿潤静的エネルギ−
(
cpT  gzは乾燥静的エネルギー
)
この式をもとに熱帯域 圏界面の高さを評価する.
保存的な量を用いた鉛直方向のみ
ー> 運動が陽に出ず、平衡状態の議論である
(また、放射のことも考慮されていない)
式がなりたつとして,tropopauseの高さでは水が無視されると仮定
すると,
下端では→ p
←圏界面では
sat
p
c T  Lw  c (T z)gz
Tはz=0の温度で,大気温度は
高度の式として
z

の割合で減少するとしよう.
Lwsat
Lwsat

g
(g  c p )
cp (
 )
cp
( 2.5x10(6)x2x10(-2)/10(3)/3.3=15 km)
となる.L=2.5x106,
湿潤対流による高度
wsat−2=20g/1kg程度,
=2x10
=6.5K/kmとする
z=15kmとなり,もっともらしい数値にはなる。(ただし、結果を
使った議論である)
運動や放射を含む大循環モデル(Thuburn and Craig, 1997,
J.A.S.)では表面温度につよく依存と書いてある。(矛盾はしない)
中緯度は
が半分?とすれば,8km程度の高さにはなる(右
w
sat
図の実線で高度が低い)。
→ 中緯度では傾圧不安定のPotential Vorticity 一様の力学が重
要と言われている
傾圧不安定によ
る高度
1−3:線形論との対応を
成層圏の中に多く存在する波動は、このような方
程式をもとに解釈されることが多い。詳しい議論が
地球流体力学とか、気象学で行われているであろ
うから、ここでは、重力波とか、Rossby波動が含ま
れていることのみを述べておこう。
鉛直構造のありようを話した。実際は運動と関係しながら、構
造が決定されるであろう。
私の講義では、中層大気の運動の様子(水平方向にも広が
る)をおもに議論したい。
前節で示したように、中層大気は鉛直方向に安定。そこで、安
定な基本の場があって、それに付け加えて、大気の運動が起
きるとすれば、その運動はもとに戻るように働き、基本場の周
りを運動するであろう。
ー>もとの方程式を線形化して議論すると理解しやすい。
例えば、静力学平衡で、log-圧力座標の場合、安定大気で
の擾乱の線形方程式は以下のようである(強制力のない
homogeneous形である)。
u  fv   
t
x
v  fu   
t
y
  R T
z
H
   N 2 w  0
t z
u  v  w
x
y
z
南北方向には、ある緯度を基準にして
f  2sin  2sin0 
 f 0  y

2 sin
(
) a
a
 0
のようなβ平面近似は分かりやすい。
方程式は線形で、大気の安定度を表すN2は正
の定数と考える。東西方向、および鉛直方向に
は一様な場になっているので、物理でよく使わ
れるように、下記のような解を仮定して考える
exp(ikx imz it)exp(
0

 exp(
一様な東西風 Uが吹いている時も、Doppler shift
を考慮すれば、同じ議論が適用できる。
z
)
H
U

x

z
)
2H
k, m, ωはそれぞれ、東西波数、鉛直波数、振
動数であり、時間や空間の周期性が仮定され、
その構造や振る舞いが議論される。
熱帯域対流圏の東西非一様な擾乱への適用:
熱帯域対流圏の大きなスケールの擾乱 ー>その擾乱が、けっこう線形波動的に見えている <ー>
線形波動論との対応を見ておこう
Brightness temperatureの統
計
 対流活動の指標
Ricciardulli and Garcia, 2000,
JASから
上が定常成分、下が標準偏差
を示す、84年冬
 このようなデータを時間・空
間的に解析してみると変動成
分が見えてくる。
 解析すれば、それがどん
な変動でどんな形をしている
か?
ー>データを時間と空間でフーリエ解
析すれば、波動的成分が取り出せるで
あろう。
時間、空間で変動している擾乱の、線形波動による表現を考える:
考え方:南北のモードとしての赤道波動に分離する
y
sin




球面上の線形運動方程式で、赤道 β- 平面の近似をおこなう。
とし、 a
2
  a
を導入する。ここで、β
=
2.29 x 10 -11 s-1m-1 である。ここでは、Forcingについては考えない。
方程式:
連続の式と熱力学の式から,

u  yv   
t
x
v  yu   
t
y
 (u)   (v)   ( w)  0
x
y
z
 (  )  wN 2  0
t z
u v 1 


(w)
x y  z
u v 1    



(
( ))  0
x y  z N 2 t z
左辺の1、2項が水平の演算子,第3項は鉛直の演算子になっていて,それらが等しいから変数分離定数を通して比例関
係にないといけないであろう(変数分離可能)。そこで,


u  
u( x, y, t)
 (z)
  
 
 ( x, y, t)


の形とすれば,水平運動方程式はそのまま,

u
u
v
t

x


y

yv
 

yu

 
u
v
1

1

)
( 02
 ( z))  

y
0  ( z) z N z
gh
( ) x
t
1
連続の式と熱力学の式は
(
のようになる。方程式の左辺は水平演算子のみ、真ん中は鉛直演算子のみで、それらが比例定数を通じて等しい式のよ
うになる。
それぞれの式は



( )  gh(
(u) 
(v))  0
t
x
y
1 
  ( ( z))   1 ( z)
( 02
0 z N z
gh
h
となる.上式で は等価深さ(変数分離定数)、
の浅水方程式の連続の式と同じ形をしている.
N2が一定ならば、鉛直方向に
m2 
1
4H 2
N2

h
の深さ
z
exp(imz)exp( として、
)
2H

1
gh
のような関係になる。このように、分離定数が波の鉛直波

長に対応する。
浅水波の問題として赤道波の分散式をもとめる
( Matsuno, 1966, JMSJ ):
u  y v    ( )
t
x
v  yu    ( )
t
y
 ( )  gh(  (u)  
t
x
y
赤道β面での浅い海の波の様子、ただし上図で
は H が平均深さになっている。
(v))  0
圧力偏差が海の表面の凸凹に対応
exp(ikxiの形を仮定すると(南北方向は係数βy
t)
があるので後で)
vのみの式に変形すると
d 2v  2
k
 2 2 
2
 

k 
y v  0
dy2
gh

gh


y
le  ( gh)1/ 4  1/ 2
le
d 2v
( gh)1/ 2  2 2 k
2
 (  )v  0  
(  k  )
d 2

gh

(調和振動子に対するシュレディンガー方程式と同じ形)
の式が導かれる。y=∞でゼロなる解をもとめる。境界条件を
満たすためには、トビトビの固有値になる ー>
(gh)1/ 2  2
k

(  k 2  )  2n 1(n  0,1,...)

gh

赤道波全体の分散式の図:n=-1はv=0の解
v 0 exp(
慣性重力波

西に伝わる波

Rossby-重力波
Rossby波
v1 exp(
2
2
2
2
)H0 ()  exp(
)H1()  exp(
2
2
2
2
)
)2
左図からわかるように振動数ωの大きい(早く
振動する)重力波と、地球回転からでてくる
Rossby波は分離している
赤道域ではコリオリの項が小さくなるので、
ゆっくりしたRossby波と早い振動数をもつ重力
波が合体したRossby-重力波という波動が存
在する。
Kelvin波
東に伝わる波
慣性重力波
横軸は東西波数、縦軸は振動数。n は南北の波数、大きくなるほ
ど南北の構造は複雑になる。この図ではω負が東進波
nにより、赤道に関しての対称性が交代して、n
偶数がvの対称、u等の反対称、nが奇数だと、
vは反対称をもつ
観測の解析と対応させてみよう:
南北風についての解析で、左が140-150E、右が165170Eで、上から、10-7.5N、赤道、7.5—10Sの範囲のス
ペクトル解析
夏の 3.1 - 5.4 日周期変動成分の強度水平分布
対称
反対称が強い
南北風は対称的
165-170Eでは、数日周期で振動しているよう、
西の方はあまりピークが見えない
ー>振動的でないよう
太平洋上の擾乱:太平洋の西域と中央域(スペクトル
がはっきり)は異なったもののようである.
aがTbbで、b: 赤道に関して対称成分を北半球に、反対称
成分を南半球に、 c(下図)は南北風、Takayabu and
Nitta, 1993から
5.5N〜4.5Nにおける経度時間の図、180Eあたりは、
繰り返しが西に伝播している波動のよう、time filter
はかかっている。
温度、風のデータから擾乱の構造をみると、理論から
予想されるような、Rossby-重力波のようと言われて
いる
n=0, k=0.5の西向き波動(Rossby-重力波)の
水平構造(Matsuno, 1966)
西風で高圧偏差
赤道ケルビン波について(分散図の n = -1):
東西の運動方程式から、
(1)
u
t
 yv  
 
x
同様に南北方向の線形の運動方程式は

v  yu    
t
y
v=0とすると、東西方向は2次元重力波の方程式
と全く同じである。南北方向の運動方程式は地衡

風バランスの方程式(コリオリ力と圧力傾度力が
バランス)となる。
yu    
y
赤道ケルビン波の水平構造
鉛直方向には、非圧縮性でN が一定の時、
 
u w
 N 2w  0

0
t z
x z
exp(ikx it  imz)  exp(ikx ikct imz)
波の形を仮定すると(1)から

i u  ik
とすると、分散式は

だから南北の運動方程式は

y   


y
これを積分してy-方向の構造のみをみると

k
k
2
  exp( 2 y )
N
m
  ck、構造は

k

南北にガウス
分布
ここで k > 0 ,ω > 0 ならば東方伝播の波であり、このとき
は y が無限のとき0に収束。一方 ω < 0 のとき波は西方
伝播の波となるが、y が無限のとき振幅は無限となり物理
的ではないので西方伝播のKelvin波は存在しない。
細い矢は波にともなう風(u, w)、Highは高圧偏差、
Warmは正の温度anomalyを示す。位相は東、下向き
である(太い矢)。
下部熱圏におけるKelvin波:Garcia et al., JAS, 2005、
2002 June-Julyの温度
〜120km
中間圏界面
成層圏界面
〜14km
夏半球
m=1のケルビン波の振幅、位相の緯度高度断
面図、周期3-3.7日帯のもの
東向き
K
赤道上での東西波数m=1のシグナル
時間高度断面図:m=1のケルビン波
1−4:中緯度での大規模擾乱
スケールの大きな擾乱は、ゆっくり変動する
ゆっくり時間変化する時、流体力学の方程式で水平方向はコ
リオリの項が重要になってくる。
1971-90年平均の1月、300hPa等圧面高度(中緯
度が相対的に高気圧で極域が低圧となっている)、
図中の数値はΦ/gの値である。
そのとき、地衡風となり、運動方程式で時間微分等の部分を
落とすと、
 fv  

x
fu  

y
北半球
y
9000m
x
地衡風のゆっくりした時間的変化は次のorder
の話しになる
ー>準地衡風運動として、Rossby波動が現れ
る
y方向の上式と、図(では上の方がyが増加するとす
る)の対応をみてみよう。 yが増加するにつれ圧力は
減少しているので、右辺は正に対応する(図の気圧
傾度力)。一方 f は正で図によると東(xの正方向)に
風が吹いており、つじつまがあい、風速として地衡風
バランスで値が決まる。
このような擾乱は成層圏でどうなる?
—> 対流圏で作られた各種の擾乱は条件が整うと、
鉛直に伝播する。これが成層圏大循環に大きな影
響をあたえる。
中・高緯度の中層大気大規模擾乱
図は10mbの水平断面図(等圧面高
度)を示す。地球規模の波動的擾乱
(惑星波、Planetary wave 又はロス
ビー波、Rossby wave )をみることが
出来る。
対流圏の高気圧低気圧擾乱と比べ
てスケールが大きい。
補足図に夏の場を示しておこう。ほと
んど丸いことに注意
ー>線形波動論の適用は5章で
図:7月平均の10mbの温度分
布 ー>
図:1979年1
月26日の10
mbのHeight図。
北極からみた
図である。
1−5:惑星大気の成層圏
成層圏の普遍性みたいな事を見ておくこと、および気
象力学の方法で議論できること
火星について:CO2が主成分ー>力学的には熱容量を
かえる、また密度が小さい
火
星
大
気
の
鉛
直
温
度
構
造
図には乾燥断熱温度減率線 dT/dz = ーg/Cpも描
かれてあるが、その線よりは緩やかになっている。
下層のずれは大気中に存在するDustの加熱といわれ
ている
成層圏は等温的か 火星には地球におけるオゾン
層がない。
松田、惑星気象学より、火星の砂嵐の写真、火星の
対流(Dust の斑点)みたいなものが見えている。
成層圏での温度構造が鉛直に波的になっている。火
星大気も波に満ち溢れているよう。<-波の力学が
重要であろう。
金星大気についての温度鉛直構造
金星の風:高さとともに東西風が強化し、成層圏で
高速となっている
金星の下層における鉛直温度分布をみると,断熱減
率に近い温度低下をしている.モデル実験によると、
金星の下層は対流調節が起こっているよう( Ikeda,
2006 )
火星と同様、金星の成層圏らしきところは等温的に
なっている。また、金星成層圏でも波的な構造が見え
る。大気潮汐のようである(金星の一昼夜は117(地
球)日)
木星大気の温度構造
地球に似た対流圏−成層圏的な構造をしている.
木星成層圏の高温は:CH4や浮遊粒子の太陽放射吸収(島崎,
松野)