Transcript クールノー
2014年度 初級ミクロ経済学 クールノー・モデル 担当 古川徹也 [email protected] 2014/12/22 1 寡占と複占 売り手が少数ではあるが複数の場合を寡占と 呼ぶ。 とくに2つの場合,複占(duopoly)と呼び, ミクロ経済学ではとくに重要なモデルであ る。 複占では以下の3つのモデルがよく用いられ る。 (1)クールノー・モデル(数量競争) (2)ベルトラン・モデル(価格競争) (3)シュタッケルベルク・モデル(数量競争, 先導者,追随者のあるゲーム) 2014/12/22 2 5.1 クールノー・モデル 需要側は逆需要関数 P( X ) 10 X で表現され る。 x A , xB 供給側は企業AとBの2つ。同質的な財を生産 しているので,各企業の生産量 を足し合 わせることができる。 C ( xi ) xi 両企業の費用関数は同一で, とあらわ される。 2014/12/22 3 クールノー・「ゲーム」 プレイヤーは企業Aと企業Bの2人。 戦略は,各企業の生産量 xA , xB 利得は各企業の利潤。すなわち, i P( X ) xi C ( xi ) である。 各企業は相手の生産量を観察せずに意思決定 をするから,同時手番の,戦略型ゲームであ ると見なせる。したがって用いる均衡概念は ナッシュ均衡である。 2014/12/22 4 各企業の利潤 各企業の利潤は,以下のように求められる。 i P( X ) xi C ( xi ) (10 X ) xi xi (10 ( x A xB )) xi xi 逆需要関数の関係を通じて,利潤が自分の生産 量だけでなく相手の生産量にも依存している。 2014/12/22 5 クールノー・ナッシュ均衡 ナッシュ均衡:「相手の行動を与件として,最適反 応を行っている」ということが,すべてのプレイ ヤーについて成立している。 クールノー・モデルでは,以下の3つのことと同 様。 (1)相手の生産量を与件として,利潤を最大にする生 産量を求める(最適反応関数を求める)。 (2)各企業の最適反応関数を連立方程式として解く。 (3)(2)の解となる生産量は,どちらの企業につい ても「相手の生産量を与件として,最適反応を 行っている」という条件を満たすはずだから, ナッシュ均衡となっている。 この解をクールノー・ナッシュ均衡と呼ぶ。 2014/12/22 6 最適反応関数の導出 最適反応関数は,各企業の利潤を自らの生産量 で偏微分してゼロとおくことで得られる。 A 10 ( x A xB ) x A 1 0 ① x A B 10 ( x A xB ) xB 1 0 ② xB ①②を連立方程式として解くことにより,クー ルノーナッシュ均衡を求めることができる。 2014/12/22 7 最適反応曲線 xB 9 企業Aの最適反応曲線 xA 9 xB 2 4.5 企業Bの最適反応曲線 xB 4.5 2014/12/22 9 xA 2 9 xA 8 クールノー・ナッシュ均衡 xB 企業Aの最適反応曲線 3 企業Bの最適反応曲線 3 2014/12/22 xA 9 等利潤線の考え方 xB 5 2 4 6 8 10 xA 5 同じ数値例のもとで,それぞれ利潤が2,5,10,15, 20となる生産量の組合せ 2014/12/22 10 最適反応曲線 xB 5 2 4 6 8 10 xA 5 等利潤線の頂点をつなげた線が最適反応曲線 2014/12/22 11 クールノーナッシュ均衡の問題点 xB 8 6 4 2 2 4 6 8 10 xA 2 4 6 クールノー・ナッシュ均衡での利得よりも,両方にとって よくなる戦略の組合せがある。→囚人のジレンマ 2014/12/22 12 繰り返しクールノー・モデル 囚人のジレンマの状況が繰り返されるとき, 「両者とも協力的な行動をとる」が部分ゲー ム完全均衡となる場合がある。 クールノー・モデルのような場合でも,両者 の利得を最大にするような戦略の組合せが暗 黙のうちに選ばれることがある(「暗黙のカ ルテル」)。 フォーク定理:プレイヤーが将来のことを十 分重視する(割引因子が十分に大きい)とき, 「毎回両者ともに協力的な行動をとる」が部 分ゲーム完全均衡となる。 2014/12/22 13 フォーク定理のポイント 「協力的な行動をとらないと罰を与える よ!」という戦略を両者がとり,また両者に とって罰が十分に効果的であれば,協力的な 行動からはずれない。 しかし,いくつか問題がある。 (1)「罰を与える」に説得力があるのか?(空 脅しになっていないか)。 (2)罰を与えそこなったり,間違って罰を与え たりしないか。 そのような問題を避けられるとき,フォーク 定理が成立する。 2014/12/22 14