Transcript 第10回

第3章 経済学からみた政府
総合3年 菅野谷 純
政府の二類型
• 1 公共の利益を追求
=社会的厚生関数の最大化
民主主義国家の前提と言える。
構成するアクターの目的はそれだけか?
• 2 政府も合理性が支配
経済主体としての政府も合理性が支配
行動を対象とする新制度学派のような
経済学の枠組みを政府に適用
政治学で定義される政府観
行動原理
組織構造
1.公共の利益
モデル
①有機体モデル
②慈悲深い君主モデル
2.合理性
(1)統制された組織構造
③官僚による捕獲モデル
④利益団体による捕獲モデル
⑤リヴァイアサン・モデル
⑥強制モデル
(2)混成的な組織構造
⑦競争モデル
各モデル詳細(1)
• ①有機体モデル
多数派支配により少数派権益が抑圧される。
• ②慈悲深い君主モデル
公共の利益あるいは社会的厚生関数の最大
化を目的。むしろ君主より全知全能的存在。
• ①&②
政府は単一の集合的な選好や需要(社会厚
生関数など)を把握している共通のフレーム
各モデル詳細(2)
• ③官僚による捕獲モデル
自らの利益のために行動するエイジェントで
ある官僚に支配される。
• ④利益団体による捕獲モデル
選挙の際の支持母体であるレントを追求。
各モデル詳細(3)
• ⑤リヴァイアサン・モデル
政府は独占的地位を合理的に活用。
実質的には専制的な政治が行われる。
• ⑥強制モデル
政府の独占は強制力に基づく執行で、国家を
離れる自由はない。
• ⑤&⑥
単純に政府を「完全に統制された組織体」と
する。
各モデル詳細(4)
• ⑦競争モデル
合理的な個人により構成される競争形社会。
三権分立を基本とする近代民主主義の政治
理念であり、権力が分散しているだけでなく
相互に抑制と均衡を前提とする。
• 総評
「政府の行動基準」を”Common Goods”とみ
るか”Self Interest”とみるか。
経済学からみた政府観
• 伝統的な新古典派による政府
=②「慈悲深い専制君主モデル」
政府の市場への介入は正当化される。
政府は全知全能。
→政府もまた、私的な経済動機をもつ人たち
により構成、運営されている。
→「政府の失敗」を前提とした経済理論
≒「新制度学派」「公共選択論」
新古典派と異なる「経済理論」
• 「合理性」
通常の市場経済でみられる「合理性」を政府
にも適用(③④の捕獲モデル参照)。
→NPM論を支える理論的バックボーン
• 求められる整理
「政府の機能と役割」…政府と民間の境界線
「政府をどのように統制するか」
• 参考
1)公共の利益…慈悲深い君主モデル
→新古典派
2)合理性…捕獲モデル、競争型モデルなど→新制度学派
新制度学派によるアプローチ
• NPMとは…
公的部門に民間企業の経営理念・手法を可
能な限り導入しようという新しい公共経営理
論。
• 理論的根拠(新しい制度経済学)
1)プリンシパル・エイジェント理論
2)取引コスト理論
合理性に基づく行動を契約、義務、忠誠心な
どが支配的な領域まで拡張を試みる。
プリンシパル・エイジェント理論
• 特徴
依頼する側、される側の両者とも利己心が支
配的。情報の不完全性、非対称性により忠実
な義務の遂行を行わせるのが困難。
• システム上の工夫
1)不確実性の是正 ex)情報公開
2)補償や制裁、モニタリング
→市場型システム自体のもつコストが増大
取引コスト理論
• 特徴
「さまざまな種類の取引に最適な形態」に
着目。
• コスト
「不確実性」「情報の非対称性」「限られた合
理性」「生物資源の特殊性」「取引への参加
者数」などの相違
→最適解を導くよりも、前例の踏襲など確実
性の高い選択を好む傾向がある。
最適な取引形態
• 市場メカニズムの活用例
生物資源の特殊性が小さく、
取引コスト(不確実性)が小さく、
モニタリングが容易でコストも小さく、
潜在的な供給者数がかなり存在する場合。
ex)ごみ収集、街路や公共施設の清掃、クリーニング、給食サービス
• 内部取引が望ましい例
権威、規則、規範が厳格、長期的な取引関係
ex)外交・国防・治安維持のような古典的国家の機能、危険物(核廃棄物
など)の輸送、租税の徴収
組織内取引が望ましくないケース
• 組織の肥大化に伴う非効率
組織内の調整コスト、情報の歪みや不完全
性、形式主義の横行など管理・運営上のコス
トが加速度的に増大
• 組織内の「取り込み」の可能性
企画・立案部門<執行部門(情報優位)
執行部門に有利な政策決定がされる可能性
新しい制度派経済学による処方箋
• 手順
外部取引の法が組織内取引よりも望ましい領域を、
財・サービスの特性から分離。
弊害が小さくなるような「契約型システム」の対象領
域と導入手法を示す(第1章)。
• 各パターン
国営企業の民営化
広義の民営化(民間委託・バウチャー制度)
エイジェンシー
内部市場(擬似市場)