講演に使うPPT - LLC制度研究会

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米国版LLCの紹介
ケインズ先生、どうやら貴方の「紙幣を壺に詰めて…」政策は、
21世紀のInnovation政策には効き目がないようですが…
齋藤旬
株式会社ニコン
コアテクノロジーセンター 技術戦略部
兼
東京大学 先端科学技術研究センター
http://www.llc.ip.rcast.u-tokyo.ac.jp
@ 2006.07.12 インターオプト’06
光産業ベンチャービジネスセミナー rev9
1
あらまし
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
問題の所在
「Innovationが不可欠な時代の到来」の認識@米国
2020年レポート → パルミサーノレポート → ACI教書
Innovationの主役は誰か?
Schumpeter MarkⅠ、MarkⅡ、そして?
Innovation四段階変容
死の谷、ダーウィンの海、悪魔の川、安定事業
米国LLC制度の紹介
Corporate会計 と Partnership会計
私の考えるInnovation三条件
人的資本、Risk Capital、米国版LLC
公共政策のInnovation
アル・ゴア Sr.からアル・ゴア Jr.
『1993年の変』
ケインズ公共政策は、21世紀のInnovation政策には通用しない。
“Pyramid Building” 「お金を壺に詰めて何処かに埋め・・・」
まとめ
2
問題の所在(1/12)
まず財務省 HP の
『債務残高の国際比較(対 GDP 比)』
www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/007.htm、
そして日本の借金時計 www.takarabe-hrj.co.jp/clock.htm を御覧頂きたい。日本では 1990 年代は「失
われた 10 年」といわれ、毎年繰り出す 30-40 兆円規模の景気刺激策は不発。というよりむしろ“更な
る景気悪化”を招いたとさえいえる。現在、日本の債務残高は 1992 年に比べ 2 倍強の 770 兆円あまり、
GDP の 1.6 倍程度となってしまった。しかし、目を欧米に転じてみれば、1990 年代にこれほどの失策
を犯した国は無いことが分かる。そして更に、欧州リスボン戦略、米国パルミサーノレポート等の21
世紀の Innovation 政策作りが欧米では行われている一方で、日本においては、90 年代のこの失策のキ
チンとした考察も無いまま、第三期科学技術基本計画が打ち出された、と筆者は思う。果たして、我が
国は有効な Innovation 政策を打ち出せているのだろうか?
3
問題の所在(2/12)
債務残高の国際比較(対GDP比)
科学技術基本計画
第一期;17兆円
第二期;24兆円
第三期;25兆円
果たして、我が国は
有効なInnovation政策を
打ち出せているのだろうか?
4
問題の所在(3/12);
欧米のInnovation政策
リスボン戦略
パルミサーノレポート
5
問題の所在(4/12);
パルミサーノレポート8頁
『実施要請 イノベートか、さもなくば退位か』
……
今、アメリカはユニークでデリケートな歴史的転換点に遭遇している。前代未聞の変化が二つ
起きた。一つは「グローバル競争の性質に起きた変化」
、もう一つは「イノベーションそのものの性質に
起きた変化」
、これらによってこの歴史的転換点はもたらされた。
1. 世界は劇的に変化し、益々相互に結びつき、そして競争し合うようになった。経済相互依存性が増
す一方で、アメリカは「一極大国」という居心地の悪い地位を占めることになった。このことが歴
史的に見て如何に珍しい事なのか、そしてこれがどんなチャンスと危険をもたらすのかを、キチン
と認識することが重要である。ライバル達または潜在的ライバル達からは勿論のこと、ひょっとす
ると、アメリカ自身がどの様にこの地政的現実の扱いを選択するか、によって更に大きなチャンス
と危険がもたらされるだろう事を、キチンと認識しなければならない。
2. 「どこで、どの様に、そして何故、Innovation が起きるのか」は流動的である。地理的にも産業
種的にも、また、その速さ、インパクト、そして更に「だれが Innovation を起こすのか」さえ、
定まったものは無い。各分野で、競技場は地ならしされており、Innovation の障害となるものは
取り除かれている。たとえ何時 Innovation が起こったとしても、それは必ず経済と社会の機能の
仕方に変化をもたらす。例えば、価値の創出の仕方も、成功の度合いの計測方法も、競争優位性の
再編成の仕方も変化する。21世紀においては、これら変化のスピードは益々加速する。この新た
な時代を生き延びるためには、次のようなことは不十分、否、むしろ非生産的とさえ言える。即ち、
現行の刺激策、政策、マネジメント戦略を単純に強化すること、また、組織構造と教育カリキュラ
ムに付加的な改良を加えること、これらは不十分、否、むしろ非生産的とさえ言える。
6
問題の所在(5/12);
Innovation unaccountability
• 欧州:
『将来の経済成長をもたらしてくれる産業分野・技術
を予測することはnotoriously difficult』
欧州産業審議委員会委員長ダービー氏(2001年)の発言
• 米国:
「どこで、どの様に、そして何故、Innovationが起き
るのか」は流動的である。地理的にも産業種的にも、
また、その速さ、インパクト、そして更に「だれが
Innovationを起こすのか」さえ、定まったものは無い。
パルミサーノレポート8頁 『実施要請 イノベートか、さもなくば退位か』より
欧米に、
『Innovationとは、得体の知れないものだ』
という認識。
7
問題の所在(6/12);
科学技術には“客観性”が
あるはず?誰にでも理解できるはず?
そうは言っても、
• 確かに。だが“新奇”を扱うのがサイエンス。
• 従って、事前には一般性がない。
• 一旦広まれば、多くの人が“真実”と認めるが。
例外) ベルグソン;相対性理論。米国ユタ州;進化論。
• つまり、客観性があるのに予測可能性が無い。
• 例えば、日本ではよく聞く「Innovation計画」とい
う言葉は、矛盾する言葉だ。
• 何故なら、「計画通り事が進めば、それは
Innovationでは無い」はず。
• 「予想外の良い事が起きる」、それがInnovation。
8
問題の所在;(7/12)
• どうやら、欧米には、
『Innovation is internally accountable,
but externally unaccountable.』
つまり
• 『イノベーションとは内部の者から見ると、
“なるほど”と思えるものだが、外部の者から見ると、
“得体の知れないもの”だ。』
という、
• “荒唐無稽かつ融通無碍”というか
“サイエンスの極意”というか、
そういった様な認識がある。
http://www.llc.ip.rcast.u-tokyo.ac.jp/Column%20mokuji.htm
9
問題の所在(8/12);
http://www.meti.go.jp/policy/tech_promotion/index.html
2004年5月24日経済産業省作製
10
問題の所在(9/12);
印象;まるでイノベーション打ち出の小槌があるかの様な・・・
11
問題の所在(10/12);
主題; Innovation unaccountability
• Innovation is
internally accountable,
but externally unaccountable.
accountable
━ 【形】
Ⅰ 〔人に〕〔…について〕説明する義務があって; 責任があって 〔to〕 〔for〕
You are accountable (to me) for what you have done.
君は自分のしたことについて(私に)責任を負っている[説明する義務がある].
Ⅱ 説明できて, 会計可能な, もっともで 〔for〕
His excitement is easily accountable (for). 彼の興奮は容易に説明できる.
unaccountable
━ 【形】
Ⅰ 説明できない, 会計不可能な, わけのわからない, 奇妙な, 不可解な
for some unaccountable reason 何かわけのわからぬ理由で
Ⅱ 〔人に〕〔…について〕 (弁明の)責任がなくて, 責めを負わない 〔to〕 〔for〕
12
問題の所在(11/12)
• どうやら、日本には、今のところ
Innovation unaccountabilityの
認識は無い。
• その様な状態で、果たして我が国は、
有効なInnovation政策を
打ち出せているのだろうか?
13
問題の所在(12/12)
Innovationの定義
• パルミサーノレポートによれば、
「Innovationとは、発明と洞察の積集合であり、
社会的経済的“価値”を創造すること」である。
• 洞察。Insight
• つまり“理詰め”では為し得ない、との認識。
• → unaccountability
発明・洞察を必要としない。
社会的経済的“価値”を創造する
とは言えない。
14
21世紀型Innovation探し
とかけて、Innovationと説く
•
とかけて、Innovationと説く。
“その心は?”
は、内部の者から見れば、
「accountable」と感じられるが、
外部の者から見れば、
「unaccountableなもの」であるから。
• 例) 人工光合成による二酸化炭素削減、
室温超伝導、火星の地球化計画
X線によるナノメーターサイズ半導体回路形成
15
「Innovationが不可欠な時代の到来」
認識@米国
America’s Task
For the past 25 years, we have
optimized our organizations for
efficiency and quality. Over the
next quarter century, we must
optimize our entire society for
innovation.
(page 7)
2004年発行
2020年レポート
中国脅威論
2005年発行
→ パルミサーノレポート →
従来型産業はいずれ中国に
とられる。Innovation産業を
柱に据えなければならない。
2006年発行
ACI教書
ACIは毎年、5900億円の研
究開発投資と、1兆円の研究
開発促進減税を行う。
2007年の政府予算では、
16兆円の研究開発投資を行
う。
06年2月2日 (ACI) より
16
Innovation型の産業とは?
A) 拡大再生産タイプ
例)液晶産業
B) イノベーション タイプ
例)半導体露光装置産業
成長
税 引 後 利 益 v.s. 成 長 率
液 晶 パ ネル 産 業 の 年 あたり
成 長 率 (% )
80
B社
●
台湾
70
韓国
60
50
R
40
2
●
E社
●
D社
●G社
●F社
= 0.9998
C社
●
●
30
20
N社
A社
●
日本
H社
I社
●
●
10
0
0
5
10
15
20
一 枚 あ た り税 引 き後 利 益 / パ ネ ル 単 価 (301ドル ) (% )
事業拡大準備金
因子は「資金」のみ。
因子は「資金」と「イノベーション力」。
17
Schumpeter MarkⅠ、MarkⅡ、そして・・・
Schumpeter MarkⅠ
(若き日のシュンペータが提唱)
 アントレプレナーが新たなアイデアや製品、プ
ロセスをもって参入し、新たな会社を設立して、
established firmsに挑戦する
 イノベーション活動の主役は個々の発明家
Schumpeter MarkⅡ
(晩年のシュンペータが提唱)
 大企業が自社研究所を駆使し、得意な技術領
域での知識を蓄積することによってイノベー
ションを推進する
 イノベーション活動の主役は、大企業、つまり
established firms
1883-1950
出典 http://sv021.rieti.go.jp/jp/publications/dp/05j010.pdf
18
Innovationの主役は誰か?
個々の発明家、大企業、そして・・・
1883-1950
1900年
2000年
人的資本
In n o va tio n
米国版
LLC
エジソン
マルコーニ
グラハム・ベル
R isk
C a p ita l
米国版LLCの場を利用した
人的資本とRisk Capitalの
Closely heldな
Non arm’s length collaboration
19
MarkⅢ?
11頁 経済にまつわる一つの逆説
20世紀も終わろうとしている今、米国経
済は以下の様な逆説的な状況に直面し
ている。即ち、科学研究は、経済成長を
刺激するものとして従来より大きな存在
になってきている。そのうえ世界市場に
おける米国の競争優位の源でもある。
研究所はその優位を維持するのに欠か
せない制度のハズだ。それなのに主要
企業は研究所を縮小する方向に動いて
いる様に見える。
?
20
21世紀型Innovationは四段階変容する
Risk Capital
『997粒の麦もし死なずば・・・』
益
Venture Capital
IPOed Capital
×
主な死因;
External Accountability
を準備できなかった。
×
Break
even
●
ゼロ
損
死の谷
×
主な死因;
環境変化
ここまで辿り着くのは「0.3%」
(“千三つ”の経験則)
仲間内の世界
non arm’s length
主な死因;
ダーウィンの海
第2弾ロケット
点火不良
に使われた右図を元に作製した。
他人行儀の世界
arm’s length
← →
悪魔の川
時間
安定事業
IPOないしBuyout
21
Arm’s Length
(用語集;QuickTaxWeb
親密さを排除できる距離
より)
• Arm’s length transaction;
個々の利益のために行動する人々の間での取引
a transaction between persons in which each acts in their own self-interest.
• Non-Arm’s length transaction;
“関係性”例えば、一つの家族、血縁や結婚や(法的
または事実上の)養子縁組で繋がった人々の様な関係
性をもった人々の間で行われる取引
Non-arm's length transactions include transactions between people who are related, such as
members of a family, or anyone connected by blood relationship, marriage, or adoption (legal or in
fact).
22
日本のVenture資本は米国の15分の1
日本のVC残高は1兆円、
米国は27兆円。
GDP比換算すると、
日本は米国の15分の1のVC規模
といえる。
(出典) 経済産業省:“平成15年度ベンチャーキャピタル等投資動向調査について”、
http://www.meti.go.jp/policy/economic_industrial/press/0005243/0/040525vc.pdf
23
日本は安定志向
Debt/Equity(融資金/出資金)で見ると、とても融資金が多い。
日本はこの安定志向が直らない限り、Venture事業Risk事業には資金は回らないだろう。
24
米国LLC制度の紹介
図 2 C o rp o ra te と P a rtn e rs h ip の 比 較
C o rp o ra te
P a rtn e rs h ip
所 有 権 主 体、契 約 主 体、裁 判主 体、会 計 主 体
○
○
○
○
所 有 権 主 体、契 約 主 体、裁 判主 体、会 計 主 体
○
○
○
×
有限責任
( S olve n c y M a rg in を 使 う 旧 型 )
P a rtn e rs h ip ; 無 限 責 任
LLC
; 新型の有限責任
会計
B /S ,P /L
フ レ キ シ ブ ル な P a rtn e rs h ip 会 計
課税
法 人 毎 に 課 税 。税務会計上の損金と
パ ス ス ル ー 課 税 。 非 ・独 立 企 業 税 制
( N o n a rm ’s le n g th ta xa tio n )
法人格
L ia b ility
持分譲渡性
益 金 は 独 立 企 業 原 則 に則 って算 出 され る。
F re e ly T ra n s fe ra b le
■ 証券市場性有り → 公開可能
■ 所 有と経営 の分 離が 進 む
T ra n s fe ra b le
しか し
証券市場性無し
■ 閉鎖的運営企業
■ 所 有と経営 の分 離は 進ま ない
G o in g C o n c e rn
G o in g C o n c e rn
非 G o in g C o nc e rn
出 資 、 リタ ー ン
C o n trib u tio n in C as h
D is trib utio n in C as h
C o n trib u tio n in k in d
D is trib utio n in k in d
会社の目的
営利目的
W he th e r o r n o t fo r P ro fit
契約不完備性
当 事 者 達 に とっても 第 三 者 に とっても、
同 じ程 度 に 完 備 性 が 達 成 され てい る。
T ra n sa ctio n
A rm ’s le n gth tra n sa c tio n
取引
日本にはPartnership型は存在しない。
先日出来た日本版LLC、日本版LLPは、
B/S,P/L義務があり、Corporate型である。
営 利 目 的 ま た は 、非 営 利 目 的
当 事 者 達 は 、信 頼 関 係 に あ る。契 約 関
係 と捉 えれ ば 、不 完 備 であ る。
N o n -a rm ’s le n gth tra ns a c tio n
(独 立 企 業 間 取 引 )
(非 独 立 企 業 間 取 引 )
b e tw e e n C o rp o ra te s
in a P a rtn e rs h ip
米国にはCorporate型とPartnership型の会社類型がある。
両者は大きく異なるが、LLCはPartnership型に分類される。
詳しくは、
電気学会誌2006.6月号
25
米国版LLCを一言で言えば
有限責任を組み込まれたPartnership
• 親密的運営事業体;Closely Held Firm
• つまり、「事情が分からない者は口を出すな!
出資をするな!ましてや融資などするな!」
• 米国版LLCは、内部の者から見れば「なるほど」
と思えるが、外部の者から見ると「得体が知れな
い」。
• US-LLC is internally accountable,
but externally unaccountable.
• Close Friends(親友達)で営む事業体。
26
外部者が理解できる形の“会計“
を行う義務が無い。
会社法
Accounting Triangle
Corporate会計
証券 B/S, P/L
取引法
税法
会社法
Partnership会計
証券取引法
税法
もし日本にPartnership制度があったなら、ホリエモンは
逮捕されなかったかも知れない・・・
27
Corporate Accounting v.s. Partnership Accounting
「役務」などの無形財産を、任意の値付けで、
全ての金額は、裁判所の選任する検査役等に
よる監査・鑑定ないしMarket fair valueによって、 「資本」に組み込むことが出来る。
確定できなければならない。
負債
Debt
資産
Cashable
Asset
資本 Capital
負債
Debt
資産
Cashable
Asset
利益 Profit
費用
Cost
収入
Revenue
五大勘定科目を使う。
Aさんの資本
Bさんの資本
Cさんの資本
利益 Profit
収入
Revenue
費用
Cost
資本勘定、しかもPartner
ごとの資本勘定しか無い。
28
事業の形態遷移
事業 =お金の出し手 + 実動企業
“お金の出し手”の形態遷移
損
益
時間
益
← →
零
損
実働企業の形態遷移
時間
Nonlisted
Partnership
Listed
Corporate
29
しばしばPartnershipのことを
Vehicle(乗り物、伝達手段)と呼ぶ
実動企業の形態遷移
時間
Nonlisted
Partnership
Listed
Corporate
IPO;
Corporate成り
Initial Public Offer
世に認められる
経営を誰かに任す
30
Innovationのパルミサーノ三条件
人的Innovation
Talent
レポート11頁
The human dimension of innovation
ファイナンスの
Innovation
The financial dimension of innovation
Innovation
Infrastructure
Investment
典型的な
“論点先取”
Petitio Principii;結論が
前提に含まれてしまって
いるために、論証のよう
でいて論証になっていな
い議論
Innovatorsを支援する物理的政策的な仕組み
(注意!) 所謂「箱もの」とか「従来型の政策減税」とかでは無い様だ。例えば、
44頁58頁には「Research Partnership」という概念が出てくる。これは一体何?
31
私の考えるInnovation三条件
(論点先取を出来るだけ避けて)
パルミサーノレポート流に言えば、「Innovationを
起こしてくれるTalentを人的資本という」
人的資本
(ここだけはどうしても論点先取になってしまう?)
“お 金 の 出 し 手 ”の 形 態 遷 移
R is k C ap ita l
V e n tu re C a p ita l
IP O e d C a p ita l
Innovation
米国版
LLC
Risk
Capital
時間
Externally unaccountable (外部から見れば“得体の知れない”)
な事業体に、「有限責任」と「税制優遇」を与える。
「普通の人から見ると“メチャクチャな事”をドンドンやってみよう。みんなで支援するから。 」
32
パルミサーノレポートの云う
「ファイナンスのInnovation」
とは何か?
• 22カ所に「Tax」の文字→Finance Innovation要素
• Innovation促進のための税制・財政策の三候補;
1. 重点分野に助成金

「分野を絞ることは困難」
Innovation unaccountability
従ってN.G.
2. 重点分野の法人税負担率軽減

法人税≒利益×税率 従ってInnovationの様な赤字事業は
元々課税額=ゼロである。法人税負担軽減は恩恵にならない。
3. LLC税制

Innovation支援してくれる高額所得者に、赤字をプレゼント
→節税をプレゼント 次スライドに具体例
33
高額所得者に節税をプレゼント
20億円出資
Innovation
LLC
赤字
他所で得た所得と相殺して
節税できる。
ちなみに、Corporateに出資すると・・・
20億円出資
Innovation
Corporation
赤字
税金を払わなくて良い。
34
Risk Capitalを引き出すLLC税制
つまり
“お金持ちに税務会計上の赤字をプレゼントする。”
• 例えばゲイツ氏に100億円の課税所得があると
すると、それに税率(例えば50%)を
かけた50億円が個人所得税額であり、
税引所得;50億円となる。
• しかし、ゲイツ氏が「有望」と考えるInnovativeな
死の谷R&Dを行うLLCに、例えば20億円を出資し
たとすれば、その20億円は丸々赤字として、ゲイツ
氏にパス・スルーされ、ゲイツ氏の課税所得額は
80億円となる。それに税率(50%)をかけた40億円
が個人所得税額であり、税引所得;40億円となる。
• この時、「税金を60億円払ったが、その内20億円
の使い道をゲイツ氏は指定できた。」と解釈出来る。
35
Corporateに出資すると、赤字が
出資者にパス・スルーされない。
20億円出資
Innovation
Corporation
赤字
税金を払わなくて良い。
元々、死の谷事業は、納税しない。国としての税収額に変化はない。
20億円出資
Innovation
LLC
赤字
他所で得た所得と相殺して
節税できる。
国としての税収額が減る?
“The less, the more”のパラドクスが
起こる場合もある。
36
1993年2月、米国において
公共政策のInnovationが始まった。
Silicon Valleyの社長達に、
「情報スーパーハイウエイ構想」を
アル・ゴアが話し始めたところ、
社長達から猛反対にあった。
37
インターステイトハイウェイ計画 1956年から
v.s.
情報スーパーハイウェイ計画 1993年から
アル・ゴア シニア
アル・ゴア ジュニア
どちらも公共投資政策だが、実は資金調達方法が違った。
全米ハイウェイ計画
財税赤字を増やしてでも公金投入
情報スーパーハイウェイ計画
?
38
アル・ゴア・ジュニアの誤算 1
• 父子ともに上院議員経験者であり、しかも“時には市場経済介
入も辞さない”米国リベラリズムの宗家である民主党所属のゴ
ア父子には、名前が同じという以外にも共通点がある。
• ゴア・シニアは、インターステイト・ハイウエイ建設の主導者で
あり、ゴア・ジュニアは、「情報スーパーハイウェイ構想」、即ち
NII(National Information Infrastructure)の主導者である。
• つまり父子とも、“自由の国”;米国にとっては、 “出来れば避
けたい経済介入”の主導者という点が共通している。
• しかし、ゴア・シニアの計画が「財政赤字を増やしてでも公金投
入」という従来の公共政策スタイルでスンナリと実行されたの
に対し、ゴア・ジュニアの計画は、IT産業サイドから「チョット
待った」が掛かった。
39
アル・ゴア・ジュニアの誤算 2
• 以下の話、今から12,3年前、日本オラクル主催のマルチメディ
アに関する講演会で聞いたのだが、少し脚色を加えてお伝えす
ると…。
• 93年、副大統領になったゴア・ジュニアが、シリコンバレーの真
ん中にあるシリコン・グラフィックス社のホールに、IT産業の社長
会長達を集めて、大々的にNII計画の宣伝を始めたところ、経営
者達から「行政が“資源配分”を指図する従来スタイルの公共投
資政策は止めてくれ。」と声が上がったというのだ。
• 曰く、「時には砂漠のど真ん中に光ファイバーを敷設した方がビ
ジネスになることもあるのだし、バス規格だって、今はISAバスが
標準規格だが、そういうlegacyを一気に捨てて、次のバス規格
の技術開発に果敢にシフトするような決断も必要になったりする
のがIT産業だ。そういうことは役所のヒトには良く分からないだろ
うし、「説明しろ」といわれても「ビジネスセンスだ」としか言いよう
がない。兎に角、民間の資源配分の才を信じてくれ。」
• と、生粋の自由主義者達の発言が経営者達から相次いだそうだ。
40
日本だったら・・・
• 日本の産業サイドだったら、行政サイドがお
金をくれるという話に、こうまで強い意見を言
えるだろうか。
• 「下手に刃向かわないで、兎に角理解しても
らえる「企画書」を書いて、お金をもらっておこ
う。」と考えるのがオチといったら、怒られそう
でとても言えないが。
• 日本の行政サイドも、 「それではTax Payer
や有権者が許さない。彼等への説明責任を
果たしてくれ。」 と言うかも知れない。
Innovation unaccountabilityの概念には思い
も寄らずに・・・
41
米国の会社数の推移
データ出所;米国内国歳入庁 Tax Stats at a Glance
型の会社。
600
500
400
会社数(単位;万社)
Partnership
万
1993年。
米国で
突然に
見直された
米国LLC総数の推移
データ出典;米国IRS『Partnership Returns, 2003』等
100
速報値
黒字LLC
赤字LLC
Corporate型
Partnership型
300
日本のバブル期
米国経済の絶好調期
200
100
1,091,502社
80
60
Calender年
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
0
1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003
カレンダー年
0
1987
20
1986
40
1985
米国LLC社数(万社)
120
www.irs.gov/taxstats/article/0,,id=102886,00.html
42
2,5 00
米 国 '9 2~ '00 の クリントン政 権 時 代 に 個 人 所 得 税 収 が 倍 増
出 典 U S C o n g re s s io n a l B u d g e t D a ta
冷 戦 終 結 → 国 防 費 削 減 と相 まって、
’98年 に は 財 政 赤 字 ゼ ロが
達 成 され た 。
パススルー課税によって、
黒字LLCの2重課税、
即ちLLC側と出資者側
との2重課税は防止さ
れるし、赤字LLCの負
の所得は、出資者にパ
ススルーされ、出資者側
に“節税効果”を生む。
いずれにせよ、税収は
減るはずだが、、、
1,5 00
1,0 00
M isc ella n eo u s R e c eip ts
C usto m s D uties
E sta te an d G ift T axe s
E xc ise T a xe s
S o cia l Insu ra nc e T a xe s
C orp o ra te In co m e T a xe s
5 00
In divid ua l In c om e T axe s
120
米国LLC社数(万社)
西暦
The magic formula of LLC
“The less, the more.”
100
2 00 4
2 00 2
2 0 00
1998
1 99 6
1 99 4
1 9 92
19 9 0
1 98 8
1 9 86
1 9 84
19 8 2
19 8 0
1 9 78
1 9 76
19 7 4
1 97 2
1 9 70
1968
19 6 6
1 96 4
0
1 9 62
米 国 歳 入 (ビリオン・$ )
2,0 00
米国LLC総数の推移
データ出典;米国IRS『Partnership Returns, 2003』等
速報値
黒字LLC
赤字LLC
1,091,502社
80
60
40
20
0
1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003
カレンダー年
43
一般会計税収の推移
70.0
内閣府 http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kihon/haihu02/sankosiryo1-9.pdf
(名目GDP;%)
財務省 http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/009.htm
60.0
一般会計税収(兆円)
財政赤字
50.0
40.0
30.0
20.0
税収
10.0
0.0
1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006
年度
公共投資の推移 (「内閣府の国民経済計算年報」平成17年度版)
45
40
「失われた10年」の
90年代、日本は徒に
公共投資を増やしたが、
税収は減り続け、
財政赤字は膨らんだ。
いたずら
公共投資(兆円)
35
30
25
20
公共投資
15
10
5
0
1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003
年度
44
ケインズの公共政策
1883年-1946年
128頁
もし大蔵省が古い壺に銀行券をつめ、そ
れを廃炭坑の適当な深さのところへ埋め、
次に都会のごみで表面まで一杯にしておき、
幾多の試練を経た自由放任の原理に基づ
いて民間企業にその銀行券を再び掘り出さ
せる(もちろん、この権利は銀行券の埋めら
れている地域の借地料の入札によって得ら
れるものとする)ことにすれば、もはや失業
の存在する必要はなくなり、その影響のお
かげで、社会の実質所得や資本資産もおそ
らく現実にあるよりもはるかに大きくなるで
あろう。もちろん、住宅やそれに類するもの
を建てる方がいっそう賢明であろう。しかし、
もしそうすることに政治的、実際的困難があ
るとすれば、上述のことはなにもしないより
はまさっているであろう。
いいえ、ケインズ先生。 21世紀の世界では、それは国の借金を増やすだけです。
45
まとめ
1. 日本以外の先進国、つまり欧米においては、
★Innovation unaccountability
★「21世紀はInnovation 必須の時代」
が認識されている。
2. 日本以外の先進国、つまり欧米においては、
「新型Innovationが必須の時代」に合わせた
新型の公共政策が開発され展開されている。
3. 日本では、
★Innovation unaccountability
★ 「21世紀はInnovation必須の時代」
の認識は無く、従って、新型の公共政策も
いまだ展開されていない。
46
大企業は技術革新にambivalent
例) NTTにとって、アナログ回線資産価値を下落させる“デジタル革命”は、
“起こらないで欲しいこと”?
(アナログ回線不良資産が6000億円@2004年)。
48
主要税源;米=個人所得、欧=消費税、日本=・・・
所得・消費・資産等の税収構成比の国際比較(国税+地方税)
(注)
1. 日本は平成17年度(2005年度)予算ベース、諸外国は、OECD ''Revenue Statistics 1965-2003''による。
2. 所得課税には資産性所得に対する課税を含む。
3. 四捨五入の関係上、各項目の計数の和が合計値と一致しないことがある。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/016.htm
49
Innovation LLC税制が
日本に根付かない二つの理由
20億円出資
Innovation
LLC
赤字
他所で得た所得と相殺して
節税できる。
国としての税収額が減る?
“The less, the more”のパラドクスが
起こる場合もある。
1. 脱税に使われる。悪用される。
2. 強者救済に税金が使われるのはおかしい。
50
同様の意見がここにも
『自由はどこまで可能か リバタリアニズム入門』
•
83頁の『有限責任は不要』には賛成しかねるが、以下の主張には賛同する。
• 115頁の
『公共事業が非効率だということ
は、今の日本では広く認められる
ようになってきたが、それでも公
共事業の大規模な削減を主張す
る代わりに、「もっと必要性のある
公共事業」(それがITであれ、福
祉事業であれ)への転換を主張
する人は多い。だがそれは、別
の形での予算ばらまきを提唱す
るに等しい。』
51
2002年ノーベル経済学賞
行動ファイナンス理論;不確実な状況で、ヒトはどの様に判断や決定を下すか
冒頭の概要から; 「反転効果」の説明
We discuss the cognitive and the psychophysical
determinants of choice in risky and riskless
contexts. The psychophysics of value induce
risk aversion in the domains of gains and risk
seeking in the domain of losses. …
我々は、認知心理学および心理物理学の立場から、リスク
の有る場/無い場における選択決定因子について検討する。
価値に関する心理物理学によって、「ヒトは、儲けの領域では
リスク回避的だが、損失の領域ではリスク愛好的である」こと
が分かる。…
高額所得者に節税をプレゼント
Daniel Kahneman
1934-
20億 円 出 資
Innovation LLC税制の
バックボーンかも知れない
In n o va tio n
LLC
赤字
パ ス ・ス ル ー
他 所 で得 た所 得 と相 殺 して
節税できる。
赤字
『997粒の麦もし死なずば・・・』 52
日本の研究費は世界一だが、
民間による“基礎研究費”が足りない
研究費に占める企業の基礎研究費は、日本2000年度4.2%、米国2000年5.8%
講談社刊 『理系白書 この国を静かに支える人たち』 p.248 より
53
http://www.meti.go.jp/policy/tech_promotion/minkankenkyuukaihatunosiennsesaku.pdf
54