今後の日本の金融システム

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Transcript 今後の日本の金融システム

○今後の日本の金融システム
• 大きな方向性:市場型金融システムの要素を強化
する
• 理由
– ①家計金融資産の蓄積→資産運用手段の多様化の必
要性
– ②事業における新しい挑戦の必要性→多様な投資家か
らの資金調達
– ③銀行へのリスク集中の緩和
• 証券化、クレジット・デリバティブ、シンジケートローンとローンの
売買
– ④日本の企業は内向きになりやすい→コーポレート・ガバ
ナンス強化が必要
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アメリカ家計資産保有GDP比
2007
2005
2003
2001
1999
1997
1995
1993
1991
1989
1987
1985
1983
1981
1975
1965
1955
家計資産保有GDP比
倍
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
日本家計資産保有GDP比
2
・クレジット・デリバティブ:債務不履行発生時に元利返
済を肩代わりしてもらう
島義夫・河合祐子
『クレジット・
デリバティブ入門』
日経新聞社 p.86
・世界のクレジット・デリバティブ市場の近年の急拡大
想定元本:4.5兆ドル(2004.6)
→51兆ドル(2007.6):3年間で11.4倍
日本もこの間:10.4倍、8128億ドル、世界の1.6%(2007.6)
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• こうした市場型の方向への動きの中で、市場型
システムのマイナス面をどう抑制していくか?
– 取引が短期的視野になりやすい
– 市場の不安定性と市場の動きに振り回される危険
性
– →市場の質・洗練度を高めていく努力
• サブプライム問題では、商品内容について投資家側に
情報不足
• 同じ株式市場でも、先進国に比べて途上国では市場の
ムード・流れによって左右されやすい
• 金融市場、特に株式市場での取引がより長期的な視点
から行われるよう投資家の洗練度が高まる必要性
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• 第1章参考文献
– 「日本の家計の金融資産選択行動」 『日本銀行調
査月報』1999年11月号
– 池尾和人『銀行はなぜ変われないのか』中央公論
社.第3章 2003
– 池尾和人編『市場型間接金融の経済分析』日本評
論者社 2006
– 白石渉『金融のワンストップ・ショッピング』清文社.
第5~7章 2005
– 北原徹「金融システムの市場化:アメリカと日本」『月
刊資本市場』2007.6月号
5
第2章.情報生産
1.情報生産とは?
• 情報生産とは?
– 貸出先・投資先についての調査・分析・審査(本章の対象)
– 金融市場は金融資産の価格(金利・株価・為替レート)を形
成し、その情報を発信
• 情報生産の必要性
– 不確実性:将来どうなるかは不確定
– 情報の非対称性:貸手は借手のことを借手自身ほどには
知らない
• 事前的情報生産と事後的情報生産
– 貸出・投資決定前の調査・分析と貸出・投資後のモニタリ
ング
6
2.銀行の情報生産
• 銀行の内部信用格付
– 信用格付:信用度に応じた債務者のランク付け
• 内部格付:銀行内のリスク管理のための格付
• 外部格付:外部への信用情報提供のために格付会社や信用情
報提供業者によって行なわれる格付
– 不良債権問題・担保主義への反省
→信用リスク管理体制の強化の必要性
→内部信用格付制度の導入
7
「信用格付を活用した信用リスク管理体制の整備」
『日本銀行調査月報』2001年10月号
8
9
・財務定量(財務スコアリング)モデル:統計的に貸倒れと相関が高い財務指標
を抽出、それらの指標をウェイト付け等をすることで点数化するモデルを構築
・貸出の最終的決定の際には、取引関係の深さや取引採算も考慮される。
・格付の見直しは、年度決算を基に年1回実施するのが普通
・個別格付に関して、営業・審査部署と与信監査部署との判断が異なる場合、
与信監査部署の判断が優先する(営業優先によるリスク増大の危険を防止)
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– 純資産額:(時価評価後の実質的な)自己資本
– 流動比率=流動資産/流動負債
– 自己資本比率=自己資本/総資産
– 経常利益=営業利益ー営業外損益(支払利子等)
– 経常収支比率=(売上高+営業外収益)/(営業
費用+営業外費用)
– 有利子負債返済年数=有利子負債残高/(経常
利益+減価償却)
– インタレスト・カバレッジ・レシオ=(営業利益+受
取利息・配当金)/支払利息
– 増収率:売上の伸び率
– 増益率:利益の伸び率
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3.格付会社の情報生産
• 格付けrating:
– 発行される債券のデフォルト・リスクを専門的立場から評価
し、リスクの程度に応じて債券をいくつかのランクに区分け
し、投資家に情報として提供すること。
– デフォルト(or信用)リスク
• 貸出相手の経営悪化により貸出金の元利が回収できなくなるリスク
– BBB(Baa)以上:投資適格、 BB(Ba)以下:投機的
– 代表的格付会社:S&P(スタンダード・プアーズ)、ムー
ディーズ、R&I (格付投資情報センター)
– 銀行の情報生産:生産された情報は自らの貸出業務・銀行
業務の中で活用
– 格付会社の情報生産:生産された情報は投資家に提供さ
れ、投資家が投資の際に活用
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格付投資情報センター『格付けQ&A』日本経済新聞社 2001
13
「信用格付を活用した信用リスク管理体制の整備」
『日本銀行調査月報』2001年10月号
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• 格付けが高い(低い)
⇒信用リスクが小さい(大きい)と投資家に判断
される
⇒安い金利で債券が発行できる(高い金利でし
か債券が発行できない)
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・格付けと債券発行金利
日本証券経済研究所『現代日本の証券市場:2006年版』p.95
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– 社債発行スプレッド=社債発行金利-国債金利
– ここでの国債金利とは、国債流通利回りのこと
– 流通利回り:投資家がある時点で(流通)市場で
債券を購入し、償還まで保有した場合の利回り
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○格付けの手法
• デフォルトリスク:事業リスク面+財務リス
ク面
• 事業リスク:
– 事業遂行の結果として得られる収益に関する
リスク(収益が生み出せないリスク)
• 事業リスクの規定要因:(1)産業特性、(2)
対象企業の収益力の水準と安定性
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• (1)産業特性
–
–
–
–
①市場規模・トレンド・変動性
②競争状態
③需要者・供給者との関係
④規制・保護の存在
• (2)対象企業の収益力の水準と安定性
–
–
–
–
–
①売上規模・シェア・成長性
②販売力・ブランド力・技術力・製品開発力・コスト競争力
③売上構成
④コスト構造
⑤事業戦略・経営陣・経営組織
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• 財務リスク:
– バランスシートの負債・資本面の要因から債務
返済が妨げられるリスク
• 財務リスクの規定要因
– 資本負債構成、実態に近いバランスシートの
作成して検討
– 借入金・社債の返済時期・契約内容
– 巨額の投資やM&A
– 金融機関との関係
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格付投資情報センター『格付けQ&A』日本経済新聞社 2001
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・自動車会社の格付け
格付投資情報センターR&I 2008年4月30日現在
General Motors: B /Negative
Ford
: B /Negative
Chrysler
: B /Negative(1年前はBBB)
S&P (スタンダード・アンド・プアーズ)
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・シティの格付け引き下げ:Moody’s
Aa1
→Aa2 (07年11月5日)
→Aa3 (07年12月13日)
→ Aa3:outlook,negative (08年4月18日)
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○ストラクチャード・ファイナンスSF格付
• 従来の格付対象:事業会社、金融機関、公的
機関
• 1980年代の証券化の発展に伴い証券化を
対象とする格付(SF格付)が始まる
– 現在、世界の主要格付会社の収益の5割以上が
SF格付によるもの
• SF格付の特徴
– 証券化の対象資産のキャッシュフローの分析
– 特別目的会社SPC・サービサー等の証券化の仕
組の安定性の分析
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○証券化の仕組
サービサー
債権譲渡
住宅
ローン
借入証書
住
宅
ロ
ー
ン
負
債
資
本
・
債(
不
務足
者主
体
)
銀行・ノン
バンク
ローン元利金
の回収・管理
住
宅
ロ
ー
ン
(
資
産
担
保
証
券
SPC(特別 )
目的会社)
・Special Purpose Company
・Asset Backed Security
A
B
S
証
券
市
場
投(
余
資剰
家主
体
)
25