第10回講義資料(12月16日分) - 京都大学 大学院経済学研究科・経済学部

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Transcript 第10回講義資料(12月16日分) - 京都大学 大学院経済学研究科・経済学部

2008年12月16日
ビジネスとしての資産運用業
ピムコ ジャパン リミテッド
取締役社長
高野
真
略歴:
高野
真
ピムコ ジャパン リミテッド 取締役社長
2001年10月ピムコジャパンリミテッドに入社。PIMCO JAPAN入社以前は、1987年4月大和証券入社とともに大和総
研へ出向。1990年より米国へ出向、ノーベル経済学賞を受賞したハリーマルコービッツ氏とともに資産運用モデ
ルの開発にあたった後、92年に帰国し、株式ストラテジスト業務を担当。96年10月よりストラテジストチーム
ヘッド。97年10月にゴールドマン・サックス・アセット・マネージメントに転じ、投資顧問部門全般のマーケ
ティングヘッドを務める。1999年11月より執行役員 企画調査室長を兼務。2002年4月より現職。資本市場全般に
関する論文・著書多数。92年度証券アナリストジャーナル賞受賞。日本ファイナンス学会理事、ファイナンス稲
門会代表幹事を兼務。日経新聞(VEIWPOINT)、日経NET(経済羅針盤)などのコラムを定期的に執筆。早稲田大
学大学院理工学研究科博士前期課程修了。
0
本日知ってもらいたいこと
Investment Management is….
 an ever growing industry
 entertaining
 all about theory
1
目次
1.
金融危機の現状とその影響
2.
成長する資産運用業
3.
投資の王道とは
4.
運用会社経営モデル
2
Retu_700_72
1.金融危機の現状とその影響
3
金融システム危機: 進化
2007年
2008年第1四半期
2008年第2四半期
2008年第3四半期
サブプライム危機
流動性危機
資本再構築と
インフレ懸念
金融システム危機
 市場のコンフィデンス悪化
には歯止めがかからず
 サブプライム・ローン担
保証券の損失が表面化
 低格付資産の売却、大幅
な銀行資産の評価損が発
生
 銀行システムに対する不
信感、銀行の融資問題が
顕在化
 ヘッジファンド等の流
動性枯渇
 金融機関の資本再構築
ニーズにより、新規発
行債券利回りが上昇
 ベア・スターンズ破綻
をきっかけに、大規模
なレバレッジ解消の動
きが発生
 伝統的なロング・オン
リーの投資家がクレ
ジット市場に回帰
 信用度の高低を問わな
い「投げ売り」
 各国中央銀行は景気重
視からインフレ対策重
視にシフト
 インフレ対策よりも景気対
策が優先に
 ファニーメイ・フレティー
マックは政府管理下に
 リーマン・ブラザーズが破
産申請し、メリルリンチは
が買収される
 AIGに対して、政府は850億
ドル規模の融資で救済
 米国財務省は市場の混乱に
対して金融安定化法案を
策定
4
3cs_intl_review_
想定外の事象が現実に…
 世界経済および金融市場の長期的な構造変化が起こりつつある
– 規制強化と政府介入の拡大
– 市場のボラティリティーが高まり、混乱が継続する中においては、投資計画策定が複
雑化
 市場流動性の逼迫により投資目的の達成が困難なものに
 投資家および運用者ともにダイナミックなマクロ経済環境の変化に適応していかざるを得
ない
今後の長期的構造変化にどのように立ち向かっていくべきか?
5
恐怖指数(VIX)で見る金融危機
 大規模な資金の巻き戻しが引き起こした100年に一度の危機
 適正価値の議論、経験則は意味を持たない市場 → 投資機会を生む
 その機会を生かせるのはリアルマネーの投資家のみ
– 個人など、借入(レバレッジ)に頼らない投資家
6
ケーススタディ:レバレッジ投資の是非
Web search by “投資用ワンルーム” “高田馬場” = スカイコート高田馬場第3
投資の仕組み
詳細
物件価格
管理費
修繕積立金
家賃
自己資金
借り入れ
レバレッジ
12,900,000
6,000
1,000
75,000
1,000,000
11,900,000
13
借り入れコスト
借り入れ金利
金利後収入
レバ後利回り
2.50%
297,500
518,500
51.85%
利回りと投資倍率
表面利回り
ネット利回り
6.98%
6.33%
5年後投資
10年後投資
20年後投資
投資倍率
8,073,726
8
65,185,044
65
4,249,089,952
4249
 レバレッジのコントロール
 ポイント
– 安定して高い家賃収入(期待収益率)
– 自己資金以下への物件価値の下落
– 長期の投資 (時間分散)
– 借入の期間とロール
– より安い借り入れ金利(低コスト)
– 収益とコストの関係
– 大きなレバレッジ
77
2.成長する資産運用業
8
貿易立国から投資立国へ
経常収支=貿易収支
+
所得収支
+
その他
貿易収支=輸出・輸入の収支
所得収支=海外への投資から得られる配当・利子収入
単位:兆円
日本の貿易収支と所得収支の推移
18.0
貿易収支
16.0
14.0
12.0
10.0
8.0
6.0
所得収支
4.0
2.0
2007年の所得収支:
16兆3,267億円
2007年の貿易収支:
12兆3,223億円
0.0
1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007
出所:財務省,米国商務省計算分析局

所得収支対GDP比3.22%(米国:0.59%)
9
期待される債権大国から運用大国への脱皮
 対外証券投資は2007年末で約288兆円、うち219兆円が中長期債券
 外貨準備の殆どは米国債
(%)
日米英の対外資産収益率
6.0
5.0
4.0
日本
米国
3.0
英国
2.0
1.0
0.0
1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007
(備考)対外資産収益率=投資収益受取/対外資産残高
(出所:財務省、米国商務省計算分析局、英国統計局)
 貿易収支の縮小を賄うのは投資の収益、それを拡大するには…
1.
金融機関バランスシートの海外分散投資の促進
2.
窓口を通じた投資信託販売の拡大による個人貯蓄の海外投資
10
PERCEPTION GAP
ものづくり国日本とサービス大国米国
Global 500 グローバル企業時価総額ランキング
米国企業上位10社
グローバル グローバル
ランク
ランク
2008/9
2008/6
1
3
4
5
6
8
10
15
17
18
1
6
8
11
18
17
20
13
15
45
(グローバルランキングで上位100社に入った米国企業は合計40社)
社名
セクター
株価 $ 総合市場価値
(単位10億米ドル)
エクソンモービル
ゼネラル・エレクトリック
マイクロソフト
ウォルマート
プロクター・アンド・ギャンブル
バークシャー・ハサウェイ
ジョンソン・エンド・ジョンソン
シェブロン
AT&T
JPモルガン・チェース
石油精製
77.7
一般産業
25.5
ソフトウェア、コンピューター・サービス
26.7
一般小売業
59.9
家庭用品、住宅建設
69.7
損害保険業
130,600.0
製薬、バイオテクノロジー
69.3
石油精製
82.5
固定電話会社
27.9
銀行
46.7
403.3
253.6
243.6
235.6
211.4
202.9
193.6
169.4
164.5
160.5
グローバルランキングで上位100社に入った日本企業
グローバル グローバル
ランク
ランク
2008/9
2008/6
23
56
70
72
94
25
61
102
79
75
出所:Financial Times
社名
セクター
トヨタ自動車
三菱UFJフィナンシャル・グループ
NTTドコモ
日本電信電話
任天堂
自動車および自動車部品製造業
銀行
携帯電話会社
固定電話会社
娯楽用具
11
株価 $ 総合市場価値
(単位10億米ドル)
41.3
8.4
1,581.5
4,417.7
406.0
142.2
91.7
70.9
69.5
57.5
3.投資の王道とは
12
投資とギャンブルはどこがちがう?
100賭けた時のギャンブルの期待配当値
宝くじ
47
公営競技
75
ルーレット
95
スロットマシーン
96
パチンコ
97
ブラックジャック
96~102
 ギャンブルが勝てない理由
 投資が勝てる理由
– 期待値がマイナス
– 期待値がプラス
– 大数の法則
– 大数の法則
– スキルの余地がない
– スキルの余地が大きい
 目的:資金を増やすこと
 目的:余暇
13
マンハッタン島のマジック
 アインシュタイン曰く『複利は20世紀最大の発見だ』
 マンハッタン島は1626年に24ドルでインディアンから購入
 マンハッタン島の価値は1兆ドル
 24ドルを8%の複利で運用していれば1300兆ドル
 単利であれば9875ドル
14
効き始めた分散投資の効用 – 理論的整理①
 無相関資産の組み合わせ効果
互いに独立し無相関でかつ
期待収益率やリスク量が等しい
複数(N種類)の資産に等しく投資
すると、その期待収益率は変わらず、
リスクは√N分の1になる。
15
分散投資の効用 – 理論的整理②
 主要資産クラス間の相関係数(過去7年)
日本短
期債
日本債
券
日本株
式
米国債
券
あり
あり
あり
なし
為替ヘッジ
米国モ
ーゲー
ジ債
あり
グロー
バル債
なし
ハイイ
ールド
債
あり
エマー
ジング
債
あり
世界株
式
なし
日本短期債
1.00
日本債券
0.71
1.00
日本株式
▲ 0.16
▲ 0.33
1.00
米国債券
0.13
0.15
0.06
1.00
米国モーゲージ
債
0.23
0.29
▲ 0.26
0.03
1.00
グローバル債
0.13
0.25
▲ 0.05
0.78
0.13
1.00
ハイイールド債
0.05
0.05
0.28
▲ 0.02
0.07
▲ 0.04
1.00
エマージング債
0.10
0.21
0.16
▲ 0.01
0.43
0.02
0.61
1.00
世界株式
0.01
▲ 0.05
0.45
0.35
▲ 0.43
0.26
0.42
0.23
1.00
期待収益率
リスク
0.49
0.39
1.52
1.94
4.76
15.06
5.59
8.35
2.45
2.66
9.32
8.51
4.31
7.19
8.42
7.17
7.07
16.22
2007年11月30日現在 PIMCO作成
16
分散投資の効用 – 理論的整理③
長期投資の時間分散効果
長期投資の効果は、
時系列相関の無い資産を
N年間投資すると
そのリスク量は√N分の1になる。
長期投資家は長期投資効果を享受できる
17
資産運用ビジネスにおける3つの分散
運用対象
地域
運用方法

債券

国内

アクティブ

株式

海外(米国・欧州)

インデックス

ローン・リース

エマージング・マーケッツ

クオンツ

不動産・会員権

ヘッジファンド

エネルギー・穀物

逆張り

デリバティブ

バイ・アンド・ホールド
18
分散投資から現在の状況をどう見るか?
 長期投資によりイベントリスクは排除される
 中途半端な分散がもたらすリスク
 リアルマネーが長期投資を可能にする
 リアルマネー時代における資産運用業の優位性
19
4.運用会社経営モデル
20
資産運用業界の顔ぶれ
コア資産運用会社
独立系
銀行・証券系
PIMCO
ウエスタン・アセット・マネジメント
フランクリン・テンプルトン
ウエリントン・マネージメント
フィデリティ
ブラックロック
バークレイズ・グローバル・インベスターズ
JPモルガン
モルガンスタンレー
ドイツ銀行
野村證券
ゴールドマン・サックス
その他の資産運用会社
金融機関系列
ニッチ・特化型
AIG インベストメンツ
ニューヨーク生命保険会社
ハートフォード生命
アクサ
住友信託銀行
中央三井アセット信託銀行
ロゲー・グローバル・パートナーズ
ルーミス・セイレス
ブリッジウォーター・アソシエイツ
アシュモア・インベストメント・マネジメント
ピクテ
ストーン・ハーバー・インベストメント・パートナーズ
ファンド
プライベート・エクイティ
ヘッジファンド
カーライル・グループ
KKR
ブラックストーン
ゴールドマン・サックス
JPモルガン
ファースト・クワドラント
アボット・キャピタル
オークツリー・キャピタル
GE アセット・マネジメント
PIMCO
マン・インベストメンツ
ゴールドマン・サックス
UBS グローバル
ブラックロック
ブリッジウォーター・アソシエイツ
出所: Pensions & Investments、PIMCO
21
グローバル運用会社ランキング
預かり資産残高トップ15
運用会社
預かり資産残高
(百万米ドル)
1
バークレイズ・グローバル・インベスターズ
$1,941,441
2
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ
$1,893,771
3
FMR Corp. (フィデリティ)
$1,540,100
4
ブラックロック
$1,427,543
5
バンガード
$1,294,207
6
JPモルガン・アセット・マネジメント
$1,184,941
7
PIMCO
$829,467
8
DB アドバイザーズ / ドイチェ・アセット・マネジメント
$811,698
9
AIG インベストメンツ
$758,211
10
アライアンス・バーンスタイン
$716,571
11
ウエスタン・アセット・マネジメント
$624,057
12
クレディ・スイス・グループ
$593,956
13
フランクリン・テンプルトン・インベストメンツ
$580,176
14
モルガン・スタンレー
$571,318
15
ウエリントン
$550,468
2008年6月現在
出所: Evestment Alliance
22
資産運用ビジネスの特徴
 サービスよりも物作りのカルチャー
– 付加価値
– ビジネスを取った後が重要
 儲かるビジネスモデル
– 売り上げの自己増殖機能
– 高い限界利益率
 商品の質をもたらす要因
– プロセスが結果を生む
– 人材の質が重要
23
資産運用ビジネスで勝つために
 一貫したアルファを生み出すプロセス
(分散と独自のアルファ)
 顧客資産増加を第一に考えるWIN-WINビジネスモデル
 石橋をたたいても渡らないコンプライアンスカルチャー
 そして….人に投資を
24
エピローグ:いま、個人的に関心のある事
 資金大国であっても資産運用大国とならないリスク
– 広い意味での金融機能の空洞化
– 国内証券市場の地盤沈下
 金融危機の金融ビジネスに与える影響
– 投資銀行
– パッシブ
 100年に一度のチャンス
– BACK
TO
THE BASICS
– 既存ビジネスの崩壊
 成長する中国・インドをどのようにビジネスにつなげるのか
25