Transcript 岩本一成
コアセミナー(2007.06.21) ~WinBEST-KITを用いた 細胞周期のシミュレーション~ 生物資源環境科学府 生物機能制御学講座 担当:岩本一成 本日の内容 細胞周期について~役割・制御機構~ WinBEST-Kitを用いた細胞周期のシミュレーション 細胞周期について 細胞の分裂 (Mitosis) G2/M checkpoint 細胞分裂の ための準備期間 M G2 G1 S DNA複製のため の準備期間 G1/S checkpoint DNAの複製 (Synthesis) 細胞周期の役割は、正常な細胞の増殖や細胞の分化など 多岐にわたる。 細胞周期の異常は、細胞のがん化の原因の一つである。 細胞周期の進行は、厳密に制御されている。 細胞周期エンジン サイクリン(Cyclin)とサイクリン依存性キナーゼ(CDK) ~細胞周期を進行をコントロールするリン酸化酵素 車に例えると、“アクセル”の役割を果たす 不活性化状態 不活性化状態 CDK Cyclin 活性化状態 不活性化状態 P CDK 結合 Cyclin P CDK リン酸化 Cyclin~A, B, C, D, E, Fなどが存在 CDK~1, 2, 3, 4などが存在 Cyclin リン酸化 P P CDK Cyclin CyclinとCDKが結合するペアは 決まっている。 CDKインヒビター CDKインヒビター(CKI) CDKに結合し、その活性を抑制する。 車に例えると、“ブレーキ”の役割を果たす。 活性化状態 不活性化状態 CKI P P CDK Cyclin CDK 結合 CKI~p16, p21, p27などが存在 CKI Cyclin チェックポイント機構 チェックポイント~細胞周期が次のステップに進行するときに、 ミスやエラーがないかどうかを監視している機構 ミスやエラーがあった場合は、細胞周期の進行の停止を引き起こす。 G2/M チェックポイント M G1 細胞周期 G2 S G1/S チェックポイント これらのチェックポイ ントは、主にDNAの損 傷を監視している。 がん抑制遺伝子p53 Normalized nuclear fluorescence p53~DNAの損傷をチェックポイント機構に伝達する化学種 Mdm2~p53を阻害する化学種 DNA Damage p53 Mdm2 p53 Mdm2 1.0 0.5 0 12 24 time (h) p53は振動様のダイナミクスを示す。*1 各チェックポイントへ 活性化 阻害 *1 Geva-Zatorsky N et al., Mol Syst Biol., vol.2, 2006 G1期からS期への移行 G1期からS期への移行は、G1/Sチェックポイントにより監視 細胞増殖因子など p16 TGF-βなど p27 DNA Damage p21 p53 CDK4 CDK2 CDK2 CycD CycE CycA Mdm2 P P P RB P P P P 活性化 阻害 解離 RB E2F リン酸化 inactive form E2F active form G1 phase / E2F が活性化する遺伝子群 • DNA polymerase α 活性化 • Cdc6 • MCM3 and so forth S phase 細胞周期のS-phaseへの進行には、E2Fが重要な役割を果たしている。 G1/Sチェックポイント DNA Damage p21 p53 CDK2 CDK2 CycE CycA Mdm2 P P P RB P P P P 解離 RB E2F inactive form リン酸化 E2F 活性化 阻害 active form DNA damageがp53を活性化し、p53は、p21の合成を促進する。 p21は、CycE/CDK2およびCycA/CDK2の活性を抑制し、Rbのリン酸化を阻害する。 その結果、E2Fの活性化が阻害され、S phaseへの進行が遅延する。 G1/Sにおける各化学種のダイナミクス Level Protein Standardized Standardized protein level [-] [-] G1/S期におけるサイクリンA, Eの典型的な発現パターン 1.20 aCycA/CDK2 1.00 aCycE/CDK2 0.80 CyclinA 0.60 0.40 CyclinE 0.20 0 0 5 10 15 20 25 30 35 40 time [-] [-] time サイクリンEが発現した後に、サイクリンAが発現する。 G2期からM期への移行 G2期からM期への移行は、G2/Mチェックポイントにより監視 DNA Damage 14-3-3 p53 Cdc25 p21 preMPF P CDK1 Mdm2 MPF P P CDK1 P CycB M期へ CycB inactive form active form Wee1 活性化 阻害 細胞周期のM-phaseへの進行には、MPFが重要な役割を果たしている。 G2/Mチェックポイント DNA Damage 14-3-3 p53 Cdc25 p21 preMPF P CDK1 Mdm2 MPF P P CDK1 P CycB M期へ CycB inactive form active form Wee1 活性化 阻害 DNA damageがp53を活性化し、p53は、p21および14-3-3の合成を促進する。 p21はCycB/CDK1(MPF)の活性を抑制し、14-3-3はCdc25の活性を抑制する。 その結果、MPFの活性化が阻害され、M-phaseへの進行が遅延する。 G2/Mにおける各化学種のダイナミクス G2/M期におけるMPFの典型的な発現パターン MPF CycB/cdk1(MPF)の発現によりM期へ進行する。 チェックポイントの効果~G1/S Standard protein level (-) 1.2 DNA damage無し 0.8 0.6 0.4 p53 0.2 0 1.2 Standard protein level (-) CycE CycA 1 0 500 1000 1500 2000 p53 1 DNA damageが発生した場合、 DNA damage有り 0.8 CycEおよびCycAの発現が遅延する。 0.6 0.4 CycE 0.2 0 0 500 1000 Time (-) CycA 1500 2000 p53が振動様のダイナミクスを示す。 チェックポイントの効果~G2/M 1.4 1.2 1.0 M期開始 0.8 0.6 Wee1 0.4 DNA damageが発生した場合、 p53 0.2 0.0 aMPF 0 1000 2000 3000 4000 1.4 MPFの発現が遅延する。 p53が振動様のダイナミクスを示す。 1.2 p53 1.0 0.8 0.6 aMPF 0.4 Wee1 0.2 0.0 0 1000 2000 3000 4000 細胞周期シミュレーション G1期からS期への移行とG2期からM期への移行の シミュレーションをWinBEST-Kitを用いて行う。 下記のアドレスにアクセスして、 WinBEST-Kit用のファイルをダウンロードしてください http://www.brs.kyushu-u.ac.jp/~kazunari-i/coresemi/ g1s.bkw g2m.bkw coresemi_070621 G1/Sモデル G2/Mモデル 今日の講義資料 リンクを右クリックして、“対象をファイルに保存”をクリック G1/Sモデル cycD cycD P CDK4/6 DNA damage signal cycD cycD p21 P CDK4/6 CDK4/6 p21 p53 p21 p27 p16 I p27 Mdm2 P P cycD p27 P cycA p27 P CDK4/6 cycE p27 CDK2 CDK2 P cycE cycE mdm2 cycE p21 CDK2 CDK2 P CDK2 cycE cycA p21 CDK2 CDK2 cycE P Rb E2F P Rb E2F cycA CDK2 P rb P Rb cycA P e2f Rb P cycA CDK2 P E2F X cycA Reversible flux Irreversible flux Activation Inhibition 化学種28個、キネティックパラメータ77個から構成 G2/Mモデル : Interaction : Synthesis : Degradation : Flux DNA Damage (+) (+) (+) ATR (-) p53 (+) (+) Chk1 (+) Chk1P (-) (+) I Mdm2 (-) (+) (+) aCdc25 aCdc25Ps216 (+) 14-3-3 (+) (+) iCdc25 iCdc25Ps216 iCdc25Ps216/14-3-3 (+) p21 (+) (+) (+) Wee1 (-) preMPF Wee1P aMPF (+) (+) p21/aMPF 化学種18個、キネティックパラメータ46個から構成 シミュレーション条件 G1/Sモデル calculation time: 4000 secぐらい “signal”の値を0.000、0.003、0.005に設定 主にCycE, CycA, p53のダイナミクスに注目 余裕のある人は、他の化学種のダイナミクスも見てください G2/Mモデル calculation time: 4000 secぐらい “signal”の値を0.000、0.003、0.005に設定 主にMPF, Wee1, p53のダイナミクスに注目 余裕のある人は、他の化学種のダイナミクスも見てください G1/Sシミュレーション DNA damageなし DNA damageあり p53 CycE p53 CycE CycA CycA DNA damageが発生するとサイクリンEおよびAのピーク時間が遅延した。 →細胞周期の進行が一時的に停止した。 G2/Mシミュレーション DNA damageなし DNA damageあり p53 MPF Wee1 MPF Wee1 p53 DNA damageが発生するとMPFのピーク時間が遅延した。 →細胞周期の進行が一時的に停止した。