A 子どもの育ちを支える保育

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Transcript A 子どもの育ちを支える保育

現代の家庭に必要な「保育」とは
楽しい実習
にするために
A 子どもの育ちを支える
B 親の子育てを支える
せいがの森保育園
平成26年7月4日
東京家政大学
実習で体験してほしいこと
• 子どもはこんなに○○○たがっている!こと
• 没頭しているとき、熱中しているとき、寛いでいるとき
などの様子を体感してほしい。
• 子どものためにあれこれ考えていると、自然と、もっと
こうしてあげようかな、という気持ちが湧き起こるかど
うか。それが保育の意図、願いの大本。
• 子どもを理解しようと努力している保育士の姿に触れ
てほしい。
• そのための保育士のプロとしての心構えなどに接す
ることができれば、貴重な経験になるでしょう。
では保育士は何をしている?
• 保育している!
もっと具体的には?
• 養護と教育を一体的に行っている!それって具体的
には何をしているの?
• 手遊び、読み聞かせ、紙芝居、歌遊び・・まさか!!
遊びと生活の中の援助って何?
• 生命の保持・情緒の安定・5領域・子育て支援?
• どう考えればいいんだろう?
• こども理解⇒計画⇒実施⇒振り返り??
養成校で学ぶ内容を実習という実践で生かしてほしい
A 子どもの育ち
を支える保育
①保育者の専門性「見守る」意味
• 子どもが自立(自律)すると、大人の手がいらなく
なる。逆にケアや教育の側に回る。
• 人間には心の安全基地が必要。赤ちゃんはすぐ
そばに。大人もそれぞれに心の拠り所が必要。
• 子どもが自ら育とうとする自発性を保障しようと
すると見守ることになる。しっかりと受け止めて、
手を離せば自ら歩みだそう、動き出そうとするの
が子どもだから。
安全感の輪 保育者は安全基地
心の育ちをスライドショーで
• 子どもの自立していく姿を感じてください。
• 安全基地としての保育者が子どもから離れて
いくことを感じてください。
• 距離は離れていても、しっかりと信頼関係が
あること、子どもと大人の間に強い絆がある
ことを忘れないでください。
• 「お父さん、お母さん、ぼく、やってみるから見
守っててね」これが自発性を見守るという子ど
もの権利に関する条約の第6条。
環境構成とは生活の場づくり
• 人間であるためには、持って生まれた資質
(遺伝子・本能)と、それを取り巻く環境(自然
と社会)の両方でなりたつ。
• 環境の方は、より好ましいものをデザインでき
る。変えることが出来る。これが教育の役割
であり、本質。
• 人・物・空間が織りなす状況のこと。両親がア
メリカ人でも日本語の環境で育てば日本語を
話すようになるように。
二つの要素の相互作用
後成的(エピジェネティック)
遺伝
本能
秘めた力を最大
限に引き出す
環境
教育の可能性
エデュケーショ
ンの本義
人間は本来的に人的に多様な環境で
育ってきた
• 子どもを知識や技能を教え込む「対象」として
扱うとき、一様な発達の子どもたちを集めた
方が「やりやすかった」。大人にとって。
• 明治以降の学校制度は、年齢別の学年制度
を採用した。富国強兵で早く欧米に追いつく
必要があった。敗戦後も同様の状況が続い
た。
• しかし、人類は600万年間もの間、異年齢の
中で育ってきた。親も生物学的親だけではな
く、親類、村中の人々が関わってきた。
乳幼児にとっても多様で異なる年齢
の人的環境が好ましい
• 赤ちゃんが相性のあう大人を選べるように
• 赤ちゃん同士が刺激し合うことができるように
• どの年齢の子にとっても、同年齢、少し下、か
なり下、そして少し上、かなり上の人がいた方
がいい。モデル。憧れ。貢献。自信。
• 子ども文化が育つ。遊びの文化。刺激し合い
学び合うことができる。年を越えて伝承されて
いく。壮大なブロック、コマ回し、将棋、生き物
の飼育、マフラーあみ、行事など。
まずは子どもの姿に目を向けて
• ゼロからのスタートではありません。すでに保育
所の生活が展開されている最中に、みなさんが
参加していくことになります。すでに営まれてい
る生活の中に、みなさんが入っていくのです。そ
の生活を理解することから実習は始まります。
• どんなこどもたちが、どんな生活環境で生活して
いるのか理解しましょう。オリエンテーション大切。
• そのうえで、配属されたクラスのなかで、どのよ
うな実習をしていくか、それぞれの園によって差
があります。
• たとえば保育原理は次のような流れを想定しま
す。
「保育の過程」にみられる判断
また新たに生起した
状況のなかで、子ど
もの行為や育ち(学
び)をどう読みとり振
り返るか
省察・
評価
どんな環境を準備
あるいは再構成し実
践するのか
乳幼児
理解
判断
保育の
実践
子どもの姿や関わり
からどんな意味をよ
みとるのか
指導計
画
その姿からどんな援
助内容が必要なの
かの予想
例1 すごろくのサイコロに注目
運動会のすごろくであそぶ4歳
児クラスの子が3人
6までのサイコロを振って数えて
いる
遊びの中の学びを発展させたい
さあ、どうなるだろう?
もっとほかのサイコロ
づくりになるかも!!
省察・
評価
正四面体のサイコロ
じゃなくて、面がもっ
と多いサイコロだっ
たら??
乳幼児
理解
すっげー、6と6!
1,2,3,4・・・12!
この姿からな
にかアイデア
を思いつきま
すか?
判断
保育の
実践
指導計
画
この姿から話し合って
みました!先生同士
で。ゾーン日誌。
先生と相談してOK!
例2「氷ができた!つめたい」
「保育の過程」にみられる判断
????
子どもの
願いは?
やってみ
らたどう
だった?
ペットボトル?ばけ
つ?色水?場所
は?何人やりたが
る。明日の朝の気
温は?
判断
何をどう
準備す
る?
水が凍ったことに強
い興味をもっている
なあ!どうしたいの
かな?子ども「これ
でやってみたい」
先生の
意図は
別の物で凍らせたら
どうなるかな。水以
外のものも興味もつ
かな?
保育の専門性とは?
5つの知識や技術および判断
● 保育を実践しな
がら「子どもの学び
や経験の意味」を省
察できること
● 「子どもの育
ち」と「自らの保
育」の振り返り
遊びの展
開力
倫理観に
裏付けら
れた判断
生活援助
人間関係
の構築
環境構成
発達援助
専門性を発揮する構造
成長・発達・学び
生活・遊び
環境構成・人間関係
実践は料理や演奏の如くすすむ
デイリープログラムがある。遊びや食事や睡眠の時
間はリズムを持ってやってくる。
遊びの内容は子どもが選び、作りだす。思わず遊び
たくなるような環境を用意しておく。どんな様子で遊
び出すかは予測できない。
例:砂、ザル、スコップ ⇒ 食べ物?
ある程度の予想ができる。 その前の経験、生活の
流れがあるから。きっと、こうしておけば、こういうこ
とをやりたがるだろう。
こどもの興味・願い・発現するまえの心情。どう出合
わせるのがいいのか。例:近所にアイスクリーム屋
さんができた。話題にしている。
自らの保育(A)の振り返り
• 心情・意欲・態度としての「教育のねらい」がどのよう
に実現されていたか、そのプロセスを理解
• 環境とかかわって経験していることが「教育の内容」
だが、5領域から見直してみよう。
• 5つの専門的な知識や技術および判断の実際をまと
めてみよう。
• 専門性を支える人間性や倫理観が具体的にどう表
れているか、保育士のプロとしての心構えなどに接
することができれば、貴重な経験になるでしょう。
自らの保育(B)とは? ⇒ 親の子育て支援
B 親の子育て
を支える保育
帰りたくないよ~
7月1日夕方のこと。お母さんがお迎えに来
たけど、○○くんは泣いて何かを訴えてい
た。
(保)あれ、○○くん、どうしたんですか。とお
母さんに話しかける。
(母)最近、もう完全に反抗期なんですよ。家
でもこんな感じで・・
(保)あ、そういうことですね。お母さん大変で
すね、それは。でも○○くん何か訴えている
みたいだけど・・何か理由が必ずあるものだ
から・・
(母)まだ、遊びたいって。帰りたくないんです
よ。(どうしたらいいんだろう)
(保)何して遊びたいのかなあ。まだやりたい
ことがあるのかなあ。
(母)お絵描きしたい!って。
(保)そう、○○くん、お絵描きか!じゃあ、
ちょっとまってて、お絵描きの紙持ってきてあ
げるから。・・・・はい、どうぞ。お家でできる
よ。
(母)うわあ、よかったねえ。すご~い、もう、
その気になっている。ばいばい、だって(笑)
B 親の子育てを支える「子育て支援」
・子育て支援とは、人類ほんらいの子育て環境
(伝統的社会)から学ぶことが多い。核家族に
なり専業主婦だけの子育ては弊害が多い。親
の兄弟姉妹が近くにいないので助け合えない。
社会で子育てを担う新しい仕組みが必要になっ
ている。
・保育園自体が、本来は子育て支援である。保
育園は「社会的な親」「社会的親類」といってよ
い。
・お互いのパートナーであってどちらも大切な協
働関係にある。
親の子育てを支える
• 園生活の様子を伝え、家庭生活の様子を知る。
お互いに理解し合うパートナーシップ
• 環境によって子どもの姿は異なる。家と園では様
子がちがう。どうしてだろう。
• 子どものをよく知っているのは親。でも発達をよく
知っているのは保育者。
• 保護者支援で発揮される専門性は、子どもの育
ちを支える専門性の「応用」。
• 受容と共感。情報提供。モデルの提示。相談支
援。専門的知識の分かりやすい説明など。
環境構成と人間関係の構築
• 課題保育は、その他の時間が豊かになるような
もの。他の時間も今を最も良く生きるために。
• 課題保育の時間を体験すると、人生が豊かにな
るように。
• 新しい歌を覚えた→家で親子で歌いたい
• おいしかったから家でも作って!
• 親子の会話を促すお便りのコメント。「今日は宝
物を見つけたようです。何を見つけたのか聞いて
あげてください。」
親と一緒に保育する
• 保育園は託児の場所ではありません。ただ預かっ
ているのではありません。生活の主体者。
• 家庭でも保育園でも、こどもにとって24時間の生
活が「福祉を増進する」するように。
• 毎日の連絡や連携、情報提供、親子関係の提案、
保育参観や保育体験、個人面談、就学に向けた支
援・・・
(補足)保育の全体像をおさえよう
• ヒトから人へ
– ホモ・サピエンスの子育てに学ぶ アロマザリング
– ソーシャルネットワーク(マイケル・ルイスなど)
• 子育て(支援)>保育>養護と教育>学校教育
• 保育士の業務=保育+保育指導
– 子どもの育ちと親の子育てを支える+やさしい社会をつく
る(ソーシャルアクション)
– 保育指導 ≒ 家庭支援論+保育相談支援+相談援助
(保育ソーシャルワーク)
• 保育者の専門性=人間性・倫理観・6つの専門性
+???
• 保育教諭は「子育てにやさしい社会をつくる先生でも
ある」 その価値を実現する知識と方法をもつ専門家
現代の家庭に必要な保育の構造
保育を分かち合う (協働する)
⑥保護者の養育力の向上
⑦地域で助け合う子育て環境
社会的親の複層化
(5つの専門性)
発達援助
↑
生活・遊びの展開
↑
環境構成・関係構築
① 園の保育を伝える
⑤成長の喜びを共有する
子ども
④家庭同士がつながる
発達経験の質
保育者
園
③家庭関係が安定する
保護者
家庭
② 家庭の状況を理解する
保育相談支援・・・5つの専門性をいかした「保育指導」を含む *児童福祉施設すべて
保育相談支援技術・・・支持・承認・解説・情報提供・助言・行動見本・体験提供など
保育ソーシャルワークの基本・・・受容、信頼関係、自己決定、秘密保持など
① 保育の営みを伝える
• 入園相談見学時の理念・方針の説明
– ホームページ4カテゴリー 園のしおり
• 日々の保育を伝えあう
– 24時間のお便り帳
シピどうぞ
献立表 今日のポイント レ
• 定期的な保育参観 保育参加 保育体験
• 年2回の個人面談 家庭と園の経験の違い
• 行事を通じて子どもの育ちを伝える
– 運動会(健康・人間関係・表現を中心に)
– おたのしみ会(人間関係・言葉・表現を中心に)
– 成長展(全領域)
個人面談記録より
② 家庭の状況を理解する
・児童票や各種のアセスメント票を用いて
・毎日の対話のなかで信頼関係を育てる
・保護者のねがいに丁寧によりそい受容する
・年2回の保育アンケート
・第三者評価機関による保護者意向の把握
③親子の安定した関係づくり
• 安心・安全な保育園生活 親のアイデンティ
ティを支える(ワーク・ライフ・バランス)
• 月2回のケース会議 発達の専門家交えて
• 行事による望ましい親子関係の提案
– 春の親子遠足 散歩コースを親子で楽しむ
– 夕涼み会 親子でお店めぐり・盆踊り・食事会
– 運動会 親子競技 親子レクリエーション
– 自主映画上映会 花火大会(保護者主催)
– 成長展 子どもの育ちをクイズで当てる
④家庭同士のつながり
•
•
•
•
春の保護者懇談会 親同士のつながり
春の親子遠足 家族同士の対話と昼食
父親の会「でこぼこ」の活動 家族ぐるみで
父親保育の打ち上げ懇談 家族ぐるみで
• 炊出し訓練やもちつきなどの行事参加を通じ
た家庭同士の親睦
• 卒園を迎える親たちによる記念のCDづくりが
定期的な懇親会へ発展
⑤成長の喜びを共有する
• 年2回の個人面談 担任による発達経過記
録とエピソードによる
• 年1回の成長展 ドキュメンテーション(子ど
もの作品、写真記録、担任コメントなど)によ
る成長物語
• 誕生会 その日にお祝い 月ごとに保護者招
いたレクリエーション
• 卒園式 保育証書は園から子どもへ、子ども
から親へ「おめでとう」「ありがとう」の手渡し
⑥保護者の養育力の向上
•
•
•
•
•
•
•
<保護者>
保育参観・個人面談・保育参加など
保護者の幼小連携 PTAやおやじの会へ
地域運営学校や青少年育成活動への参加
<地域の子育て家庭>
小中高大学生の保育体験の受け入れ
中学校で子育て広場 中学生の授業での赤ちゃ
ん体験
• 地域の子育て家庭支援は「ゲストからスタッフ
へ」 ヘルプセルフグループの育成
• ゆうゆうサポーター養成講座の受講
⑦社会的親の複層化
• 地域の複数の中間組織が有機的につながる
点から線、線から面、面から立体へ
• NPOゆうゆうサポート
• NPO子育て教育支援センター(CEセンター)
• 小中学校3校が一体の地域運営学校
– 乳幼児教育から学校教育へつながる合同の地域
教育憲章をつくろう!
• 地域防災組織づくりと園の連動
B 親と一緒に何をしているか
• 園が大切にしたい子育て文化の価値(例:一人
ひとりのかけがえのなさ・真正に向けた探究・
多様な他者と共感する暮らしづくり)の実現に
向けたコミュニティづくりのなかで、そのための
知識や方法を共有すること。それが保護者と共
に家庭生活・園生活を作り上げることになる。
• あなた(保育者)は何をしているのですか
(例)ドラッガー「この第三の人こそ、マネー
ジャーである」
実習は学びの総仕上げ
・教育の目的は「人格の完成を目指し、平和で民主的
な国家及び社会の形成者」の育成。
・保育の目標 「子どもが現在を最も良く生き、望まし
い未来をつくり出す力の基礎を培う」。
・保育は「専門性を有する職員が、家庭との緊密な連
携の下に、子どもの状況や発達過程を踏まえ、保育所
における環境を通して、養護及び教育を一体的に行う
こと」。
・養護は「生命の保持」と「情緒の安定」。
・教育のねらいは心情・意欲・態度。
・教育の内容を捉える視点としての5領域(健康・人間
関係・環境・言葉・表現)
保育の基本(まとめ)
• 養護と教育が一体となった営み。
• 教育のねらいは心情・意欲・態度
• 保育者は安全基地になること。環境構成とセット
であること。保育者の見守る距離感。
• 教育の内容は5領域。自信と自律。
• 子ども主体の保育。子どもを保育の対象として
みない。主体者として生活をともにする。
• 自発的な遊びとしての活動を大切にする。
• 子ども同士の関係の中で育つものが大きい。
• 24時間の連続した生活をとらえる。保護者支援
につながる。
保育の質へのアプローチ(補足)
保育所保育指針7章のパラダイム
学び合う環境の醸成
保育所の活性化
保育の質
「関係論的状況論」のパラダイム
より善い文化的実践へ
地域コミュニティの質向上
保育の質
職員全体の専門性
保育所の自己評価
子が育つ環境の向上*
育ちの物語を当事者が共有
職員の一人ひとりの専門性
子どもの育ち
保育士等の自己評価
自己評価
(子どもの育ちと自らの保育)
自己評価
(子どもの経験と環境との関係の読み取り)
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