5.費用と供給

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費用関数(Cost function)
例
• 食パンをグラム売りするとする。
• 一定の質のパンを100kg作る
– 燃料の選択などで、費用が違う
– 最小の費用が、100kgの費用関数
費用関数
• 単一の生産物を作るのに必要な最小の費用
C  y
• 単にCで表すことも多い
費用の決定要因
• 生産量
• 投入などの価格・・中級の経済学で扱う
– 電気料金
– 小麦の価格
• 釜を変える・・・長期の問題
費用関数について
• 増加的
– y2>y1C(y2) >C(y1)
• 固定費用(fixed cost)
– FC=C(0)
– 生産が0でも必要な費用
• 変動費用または可変費用
– VC(y)= C(y) - C(0)
– 固定費用以外の費用
限界費用(marginal cost)
C 100  x  - C 100
limx0
 C ' 100
x
• パンをほんの少し余計に作るときの単位あた
り必要な追加的費用
• 一般的にはC’(y)
費用曲線
• 費用関数のグラフ
例 1
• 限界費用は、一定(c)、固定費用0
費用
cy
生産量
例 2
• 限界費用は、一定(c)、固定費用c0>0
費用
c y+c0
c0
生産量
例 3
• 限界費用は、逓増的、固定費用c0>0
費用
生産量
限界費用逓増
• 「限界費用逓増の法則」(the Law of
Increasing Marginal Cost)
• パン焼き工場や釜は、当面変えることができ
ない (短期)
• 無駄なパン粉がいる
• パン職人に超過勤務手当てがいるかもしれ
ない
• etc etc
限界費用逓増と収穫逓減
• 投入をすべて二倍にしても、産出が二倍にな
らない
• 小麦粉を二倍にして、職人を二倍にしても、
パンが二倍でき ない
• 釜も工場も何でも二倍にすれば、パンは、二
倍でき る
• この場合は、収穫一定(constant return to
scale) ・・・新古典派の世界
• 経済全体の収穫逓減は、マルサスの世界
平均費用
• 生産量一単位あたりの費用が平均費用
総費用
平均費用 
生産量
C  y
AC  y  
y
C  y
ここで再び
大きくなる
この傾きが
平均費用
ここで最小
になる
y0
y * y1
平均費用
=
y
限界費用
平均費用と限界費用の関係
• 平均費用の最低点を限界費用が通る
• 次の右の図が単位あたりの図で、基本的
総費用
限界費
用
平均費
用
平均
費用
限界費
用
限界費用
平均費用
平均可変費用
平均固定費用
生産量
この絵は、
必ず
マスターするこ
と
注意点
• (総)費用、平均費用、限界費用のいずれも、
生産量によって異なる。
• この意味で、各々は、 (総)費用関数、平均費
用関数、限界費用関数である。
• 平均費用の最低点で、平均費用と限界費用
が一致するというのは、「平均費用関数を最
小にする生産量が独立変数のとき、平均費
用関数と限界費用関数が一致する」というの
が正確な表現
総費用
平均
費用
限界費
用
限界費
用
平均費
用
数式による説明
• 限界費用より平均費用が小さいか等しいか
大きいかにしたがって、平均費用が逓減す
るか、一定か、逓増するかを示す
• 前の図に対応
• 式では、以下の関係
d  AC  x 
MC  x  § AC  x  
§ 00
dx
• 数IIIの微分公式を使うと、以下の一発で出る
d  AC  y  C '  y  C  y 

- 2
dy
y
y
C  y 
1
 C '  y  
y
y 
1
 C '  y  - AC  y 
y
• 数IIIの微分は、数IIまでの問題と違って、以
下の二つの公式を組み合わせて、体力で計
算するだけなので、工夫と閃きが必要な数II
までと違ってとても易しい
積の微分
 f  x g  x'  f '  x g  x  f  x  g '  x 
合成関数の微分
 f  g  x'  f '  g  x g '  x
d  AC  y  d  C  y   d  1

 
   C  y 
dy
dy  y  dy  y

積の微分を使う
 f  y  g  y '  f '  y  g  y   f  y  g '  y 

1
f  y  , g  y  C  y
y
 d 1
 1

  C  y    C ' y 

 dy  y 
 y
 d 1
 1

  C  y    C ' y 

 dy  y 
 y
d  1  d -1
1
-2
  y   -1  y   - 2


dy  y  dy
y
3
2
2
1
y
'

3
y
,
y
'

2
y
,
 
 

 -1
y
'


y
,  -1
 
 1 
 1

  - 2 C  y    C ' y 

 y 
 y
d  AC  y   1 
C  y 
 C '  y  
dy
y
y 
1
 MC  y  - AC  y 
y
d  AC  x 
MC  x  § AC  x  
§ 00
dx
直感的な説明
• 昨日までの打率より今日の打率が高いと、
(平均)打率が上がる
• 昨日までの平均点より、いい点を取ると平均
点は、上がる
平均固定費用と平均可変費用
• (総)費用=固定費用+可変費用
C  y   FC  VC  y 
• 生産量で割る
• 平均費用=平均固定費用+平均可変費用
FC VC  y 
AC  y  

 AFC  y   AVC  y 
y
y
限界費用
平均費用
平均可変費用
平均固定費用
生産量
直角双曲線
限界費用曲線と個別企業の供給
曲線
• 完全競争市場では、「限界費用曲線が供給
曲線になる」
競争企業の行動
• (製品)価格 p
• 完全競争市場で与えられている
• 生産量 y
• このとき、売上ないしは、収入は p y
• 利潤はP(y)  p y-C (y)
• 次の図を参照
(総)収入は、原点を通
る傾きが価格の曲線
C  y価格と限界費用が等しいとき、利

潤が最大になる
py
収入と費用が等しいと
きは、利潤は0
FC
各生産量で、収入と費
用の差が利潤
P  y0 
P  y
y*
y収入曲線の傾きと費用曲線の傾き
0
y
が等しいとき、利潤が最大になる
命題
• 「競争企業が利潤を最大化するときは、価格
は、限界費用と等しくなる。」
数式による説明
• 利潤
P  y   py - C  y 
• 最大化の必要条件は、微分して0
P ' y  p - C ' y  0  p  C ' y
• 価格=限界費用
• 最大化の十分条件は、二階微分が負
P " y   -C " y   0  C " y   0
• 限界費用は、逓増する
限界費用
右下の図
限界費用の下の
A
面積も可変費用
p1
平均費用
d 固定費用
VC  x  MC  x
dx
D
F
O
平均可変費用
B
C
E
p0
y0
y1
VC  y  - VC  0 
可変費用y
VC  y    MC  x dx
0
右上の図
操業停止点
これだけ
赤字にな
る。
市場
この価
価格
格以
上なら
生産を
続ける
生産を止めると
さらにこれだけ
赤字が増える。
p2
p*
y2
限界費用
=供給だ
とこれだ
け作る
競争市場の供給曲線
• 価格を与えられたとして、各企業の供給の和
S  p   S1  p   ...  Sm  p 
• 産業の供給
1番目の企業
2番目の企業
3番目の企業
市場(産業)
費用曲線(復習)
限界費用
ここでは、限界
総費用
費用と平均費用
費用 が一致する
この傾きが一番小
これだけ作るのに
さい
傾きは、一単
位(限界的に)
ここでは、限界費用
余分につくるの
と平均費用が一致
に必要な費用
限界費用は、
平均費用の
全部で、こ
最小点を通る
する
れだけか
かる。
原点結ぶ直線の傾き
原点からの傾き
=
平均費用
は、一単位あた
りの生産費
平均費用
総費用曲線の傾き
生産量
限界費用
短期平均費用曲線と長期平均費用曲線
費用
もっと設備が大きい
より多い生産量に対応し
設備が少し増やす
た短期平均費用曲線
長期平均費用曲線
各生産量に対応した設
少ない生産量に対応した
少し多い生産量に対応し
備を選ぶ
短期平均費用曲線
た短期平均費用曲線
設備が小さい
短期平均費用
曲線の包絡線
生産量
短期平均費用曲線と長期平均費用曲線
一部の投入しか変えれ
少ない生産量に対応した短期
少し多い生産量に対応した短 ないので、長期平均費
費用 もっと多い生産量に対応した短
平均費用曲線
期平均費用曲線
用曲線より高い
期平均費用曲線
この生産量で、一部の投入は、固定
もっと多い生産量で、一部の
少し多い生産量で、一部
し、残りの投入のみを変化させる。
投入は、固定し、残りの投入
の投入は、固定し、残りの
のみを変化させる。
投入のみを変化させる。
すべての投入を調整し
て、費用を最小化する。
長期の平均費用曲線
生産量
一部の投入しか変えれ
ないので、長期費用曲
線より高い
短期総費用曲線と長期総費用曲線
短期限界費用曲線は、これ
総費用
もっと多い生産量
で、一部の投入は、少ない生産量に対応した短期
この生産量で、一
少し多い生産量で、
固定し、残りの投
部の投入は、固定
総費用曲線
一部の投入は、固
入のみを変化させ
し、残りの投入の
もっと多い生産量
定し、残りの投入
る。
みを変化させる。
に対応した短期総
のみを変化させる。
費用曲線
すべての投入を調整し
て、費用を最小化する。
少し多い生産量に
対応した短期総費
用曲線
長期の総費用曲線
生産量
短期限界費用曲線と長期限界費用曲線
総費用
長期費用曲線と短
長期費用曲線と短
長期費用曲線と短
期費用曲線が一致
期費用曲線が一致
期費用曲線が一致
する点を取る。
する点を取る。
する点を取る。
傾きが一致する。
傾きが一致する。
長期限界費用は、短期限界費用
と一致する。
傾きが一致する。
長期限界費用は、短期限界費用
長期限界費用は、短期限界費用
と一致する。
と一致する。
生産量
この短期平均費用曲線
では、
別の短期平均費用曲線
長期費用曲線と短
を1つ取る
期費用曲線が一
短期限界費用曲線は、これ
費用
致する生産量では
対応する短期限界費用曲線
短期限界費用
=
長期限界費用
短期平均費用曲
線を1つ取る
対応する短期限界費用曲線
短期限界費用曲線と長期限界費用曲線
長期限界費用
は、ここを通る。
長期限界費用
長期限界費用曲線
は、ここを通る。
長期費用曲線と短
長期平均費用曲線
期費用曲線が一
致する生産量では
短期平均費用曲線の底を通る。
短期限界費用 長期限界費用
は、ここを通る。
生産量
=
長期的に収穫一定の場合
少し多い生産量に対応した短
少ない生産量に対応した短期
費用
もっと多い生産量に対応した短
期平均費用曲線
平均費用曲線
期平均費用曲線
長期平均費用曲線
生産量
平均費用に対応した設備に増やすと
少ない生産量に対応した短期
この平均費用に対応した設備とする。
平均費用曲線 少し多い生産量に対応した短
もっと多い生産量に対応した短
長期均衡では、ここになるというお話
期平均費用曲線
期平均費用曲線
費用
競争価格がこの水準だと
産業の長期均衡
• 条件
•
この生産量が経
参入が生じて価格
これだけ儲
済全体の需要と
が下がる
かる
比べて小さい 長
期
これだけ儲かる
• 完全競争
• 帰結
平
競争価
•
参入・退出が自
均
格がここ• 単位あたり
費
由
長期的にここで落ち着く
まで落ち の生産費
対応する短期限界費用曲線
用
ると
曲
用が最小
収支均衡
線
で、効率的
する
供給曲線
生産量
前の話のもっともらしさ
• 投資の決定より参入の決定が容易と仮定
• 何故、最初から大きい設備投資をしないか
• 他にもいろいろ話が作れる
Contestable Marketの理論
• Sunk Costがなくて
• Hit end run strategy(ひき逃げ戦略)が可能
• つまり、既存企業が値段を下げたら退出でき
る。
• このとき、企業が少数でも、費用最小の生産
が実現する
• 価格決定より参入退出決定が早いという仮
定は、もっともらしくない。
• 訪問介護や看護は、contestableに近い?