Transcript 講義資料
日本経済入門 日本と東アジアの成長と貿易 アジア研究所 小山直則 1 今日学ぶこと (1) 3.1. 供給曲線 ⇒費用の概念について学ぶ。66-72ページ。 (2) 3.3. 利潤最大化行動と供給曲線 (3) 4.2. 応用例 ⇒米の価格支持政策は評価できるのか? 2 第3章 費用の構造と供給構造 ●費用の構造 図3-3 ⇒企業の生産費用には、 可変費用と固定費用が ある。 ⇒固定費用とは、供給量 がゼロでも発生する費 用である。 ⇒可変費用とは、供給量 の拡大とともに発生す る費用である。 3 第3章 費用の構造と供給構造 ●ソニーの損益計算書 (2010年3月31日、単位 百万円) ⇒経済理論の費用は、会 計上の費用とは異なる が、売上原価が可変費 用に相当する。 ⇒販売費及び一般管理費 が固定費用に相当する。 4 第3章 費用の構造と供給構造 ●販売費及び一般管理費の例 (1) 企業が工場・機械等の資本設備を維持するため に掛かる費用(資本賃貸料、減価償却費、固定資 産税など)。 (2) 企業経営生じる一般管理費(生産活動に直接的に 従事しない経理・販売・仕入・労務等の部門で発 生する費用や重役・職員への報酬)。 ⇒これらの費用は、供給活動がなくても発生する固定 費用である。 5 第3章 費用の構造と供給構造 ●売上原価の例 (1) 生産活動に直接的に従事する労働者への 賃金。 (2) 原料費、運送費、在庫保存費用など。 ⇒これらの費用は、供給活動に伴って発生する 可変費用である。 6 第3章 費用の構造と供給構造 ●総費用曲線 図3-3 ⇒左上の図に総費用曲線 が描かれている。 ⇒C0は供給量がゼロでも 発生する固定費用を表 す。 ⇒供給量が拡大するにつ れて、可変費用が拡大 するので総費用が拡大 している。 7 第3章 費用の構造と供給構造 ●平均費用 図3-3 ⇒平均費用とは、生産物 一単位当たりの費用で ある。 ⇒平均費用 =総費用/供給量 ⇒左図では、OF線、OE 線、OD線の傾きが平 均費用を表す。 8 第3章 費用の構造と供給構造 ●規模の経済性 図3-3 ⇒供給量X2までは、平均 費用は供給量の拡大と ともに低下している。 ⇒すなわち、供給量の拡 大とともに製品一単位 当たりの固定費用が分 散されているためであ る。 9 第3章 費用の構造と供給構造 ●平均費用曲線 図3-3 ⇒左下には、平均費用と 供給量の関係を表した 平均費用曲線が描か れている。 ⇒供給量X2まで規模の 経済性が働くため、平 均費用は低下している。 10 第3章 費用の構造と供給構造 ●平均費用曲線 図3-3 ⇒しかし、供給量がX2を 超えると、生産効率(生 産性)が低下し、平均費 用が上昇し始める。 ⇒供給量がX2を超える領 域では、規模に関して 収穫逓減となり、供給 量X2までは規模に関し て収穫逓増となってい る。 11 第3章 費用の構造と供給構造 ●限界費用 図3-3 ⇒供給量を一単位拡大さ せたときに追加的に生 じる費用を限界費用と いう。 ⇒限界費用は、総費用曲 線の接線の傾きによっ て表させる。 12 第3章 費用の構造と供給構造 ●限界費用 ⇒左上の総費用曲線の 接線の傾きは徐々に大 きくなっている。 ⇒すなわち、供給量の拡 大とともに追加的な可 変費用が拡大している からである。 13 第3章 費用の構造と供給構造 ●限界費用曲線 図3-3 ⇒限界費用と供給量の関 係を描いた曲線を限界 費用曲線という。 ⇒左上の総費用曲線では、 追加的な可変費用は 徐々に拡大しているの で、限界費用曲線は右 上がりとなっている。 14 第3章 費用の構造と供給構造 ●平均費用と限界費用 ⇒X2までは規模の経済 性が働いているので、 生産単価(平均費用)の 方が追加的な可変費 用(限界費用)よりも大 きい。 ⇒X2以上生産すると、追 加的な可変費用が生 産単価を上回り、生産 効率が低下する。 15 3.3. 利潤最大化行動と供給曲線 ●限界費用曲線 ⇒供給量がS1のとき、S1 からMC曲線で直角に 曲がり、縦軸に読むと 限界費用がp1円である ことがわかる。 ⇒S*のとき、限界費用は p1円よりも高い。 16 3.3. 利潤最大化行動と供給曲線 ●限界収入曲線 ⇒企業が標準化製品を生 産する場合、企業には 価格支配力がない。 ⇒企業はprice takerなの で、企業が追加的に財 を供給した場合の収入 (限界収入)はp1円であ る。 ⇒したがって、この企業の 限界収入曲線は水平と なる。 17 3.3. 利潤最大化行動と供給曲線 ●利潤最大化条件(図39) ⇒企業は追加的に財を供 給するとp1円の収入が 得られる。 ⇒企業は追加的に財を財 産したとき、p1円以上 の追加的な費用(限界 費用)が発生すれば、 追加的な供給拡大をし ないであろう。 18 3.3. 利潤最大化行動と供給曲線 ●利潤最大化条件(図39) ⇒企業は追加的に財を供 給するとp1円の収入が 得られる(限界収入)。 ⇒企業は追加的に財を財 産したとき、p1円よりも 小さな追加的な費用 (限界費用)が発生すれ ば、追加的な供給拡大 をするであろう。 19 3.3. 利潤最大化行動と供給曲線 ●利潤最大化条件(図39) ⇒したがって、合理的な企 業は、追加的な収入と 追加的な費用が等しく なり、 価格p1=限界費用 となるところで供給量を決 定する。 20 3.3. 利潤最大化行動と供給曲線 ●利潤最大化条件(図39) ⇒この価格=限界費用と いう条件を利潤最大化 条件という。 ⇒企業は、市場価格が与 えられたとき、限界費 用曲線に沿って供給量 を決定する。 21 経済全体の供給曲線の合計 22 4.2. 応用例 ●米の市場 ⇒曲線BDは米の需要曲 線、AS曲線は米の供 給曲線を表す。 ⇒市場メカニズムにおい ては、市場価格はいく らになりますか? 23 4.2. 応用例 ●米の市場 ⇒日本政府が以前、p1円 で米を買い上げ、消費 者にp2円で販売する価 格支持政策を行ってい た。 ⇒p1のときの米の供給量 はいくらですか? ⇒p2のときの米の需要量 はいくらですか? 24 4.2. 価格支持政策は評価できるのか? ●需要曲線の二つの読 み方 (1) 通常、需要曲線は縦 軸から横軸方向に読 む。価格がp2のとき、 X2だけ需要する。 (2) 横軸から縦軸に読む と… 25 4.2. 価格支持政策は評価できるのか? ●需要曲線の二つの読 み方 (2) 横軸から縦軸に読む とX2だけ需要する場 合、消費者は最大p2 円支出してもよいとい う支払い意思額 (willing to pay)がわ かる。 26 4.2. 価格支持政策は評価できるのか? ●消費者余剰とは? ⇒したがって、需要曲線 の下側の面積は、消 費者の支払い意思額 の合計を表す。 27 4.2. 価格支持政策は評価できるのか? ●消費者余剰 ⇒消費者の支払い意思額 から購入費用 を差し引いたものを消費 者余剰という。 ⇒消費者余剰 =支払意思額ー購入費 用 28 4.2. 価格支持政策は評価できるのか? ●消費者余剰 ⇒米の需要量がX2のとき の消費者余剰は左図 のどの領域で表され ますか? 29 4.2. 価格支持政策は評価できるのか? ●生産者余剰 ⇒利潤=収入ー可変費 用ー固定費用 ⇒生産者余剰 =利潤+固定費用 =収入ー可変費用 ⇒米農家の収入から可変 費用を差し引いたもの を生産者余剰という。 30 4.2. 価格支持政策は評価できるのか? ●米農家の収入 ⇒価格がp1円のときの農 家の収入は左図のど の領域で表されます か? 31 4.2. 価格支持政策は評価できるのか? ●供給曲線の下側の面 積 ⇒供給曲線は、企業の限 界費用曲線の水平和 である。 ⇒限界費用は、企業の追 加的な可変費用を表 すから、供給曲線の 下側の面積は、可変 費用の合計を表す。 32 4.2. 価格支持政策は評価できるのか? ●生産者余剰 ⇒米の価格がp1円のとき、 米農家の生産者余剰 は左図のどの領域で 表されますか? 33 4.2. 価格支持政策は評価できるのか? ●問題 価格支持政策がある場合 とない場合とでは、総 余剰(=生産者余剰+ 消費者余剰)はどちら が大きいですか? 34