テレビ時代の記憶 ーテレビ世代の少女たちー

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Transcript テレビ時代の記憶 ーテレビ世代の少女たちー

インターネット世代のテレビ・コミュニティ
ー大学生のテレビ視聴ー
1.はじめに
2.大学生のテレビ視聴―進行する「パーソナル化」
3.若者たちによるテレビ視聴の共有プロセス
4.テレビ+多メディア時代の「公共的記憶」の可能性
5.多メディア時代のテレビの役割
1.はじめに
「インターネット世代」=2008~2012年に大学生
・生育期・成長期からインターネットを情報収集に利用。
・テレビとインターネットが共存するメディア環境。
・幼少期にテレビ接触の基本的なスタイルを身に着けた
後にインターネットに出会った世代とは、テレビ接触
のスタイルが異なる。
・興味関心を他者と共有する際のコミュニケーション行
動が変化しつつある。
<調査概要>
2008年調査
協力者 首都圏在住の大学生18名
男子10名、女子8名
手続き エスノグラフィ調査
(参与観察+インタビュー)
2012年調査
協力者 長崎県在住の女子大学生10名
手続き グループインタビュー
2.大学生のテレビ視聴
―進行する「パーソナル化」
(1)視聴スタイルのパーソナル化
1970年代後半から1980年代半ば
個人視聴の増加(上村, 2003)
←家庭でのテレビ受像機の複数台所有
←居住条件の変化(個室の増加)
←家族人数の減少、ひとり暮らしの増加
現代の若者の個人視聴化も進んでいる
成長すると見たい番組が家族と一致しないことが多くなる
別室で自分の見たい番組を視聴
複数台所有
タイムシフト視聴
家族共用・自分専用の
レコーダーに録画
家庭内のテレビ受像機とその関連
機器の充実が個人視聴を後押し
インターネッをト通じた動画共有サービスの利用
・動画共有サイトの利用率8割
・テレビ番組視聴経験9割
・テレビ番組の視聴が目的5割以上
個人視聴をする理由
・自分の好きな番組は一人で見たいから。
ドラマ
・一人で見る方が楽しいから。
・集中して見たいから。
バラエティ
・邪魔されたくないから。
「テレビがあるから団欒が生まれる」時代の終焉
「テレビがあるから家族がそれぞれ自室で過ごす」時代へ
(2)情報取得のパーソナル化―メディアの並行利用
テレビ番組における情報の取捨選択
すきま時間の発生
テレビ視聴とインターネットの並行利用
独立した利用
相補的な利用
(3)番組選択のパーソナル化
―「みんな基準」から「わたし基準」へ
大学生たちは「テレビを見なくなった」という。
これは「テレビを見ていない」ということではない。
「専念視聴していない」
「ながら視聴の比率が大きい」
「流行・トレンドに合わせたテレビ視聴をしていない」
「内容」と「出演者」が視聴番組の選択基準
かつては自分を取り囲む他者(友人)が番組の選択基準
友達とテレビの話はしない←生活スタイルの多様化
テレビは今や友人との話題の共通項ではない
3.若者たちによる
テレビ視聴の共有プロセス
若者たちは、
「わたし基準」で視聴した番組を見て、自己完結し満足
インターネット上に集まりテレビの話題を共有する
テレビを視聴しながら、その番組についてインターネット上
でコメントしたり、つぶやいたりする(48%)
コメントするのはツイッター(78%)
対象番組は、音楽(30%)、お笑い(29%)
ドラマ(28%)、アニメ(26%)
ツイッターに書き込むのは、
番組視聴時の感情
番組の実況
オンタイム視聴時の
並行利用
誰かと視聴している番組を共有したい
• インターネットの世界ならば容易に共有相手を確保で
きる。
• 盛り上がり、共感、疑似的な共視聴が目的。
自分の好きなものについて深くしり
• 関心によって自分が所属するコミュニティを決める。
たいという欲求に基づく行動
自分と異なる見方をしている人の意見を知りたい
• 他の人はどのような見方をしているのか知る。
4.テレビ+多メディア時代の
「公共的記憶」の可能性
現代の若者は、さまざまなメディアを介してどのように他者とコ
ミュニケーションをとり、「記憶の共有」を行うのだろうか。
東日本大震災時に九州に居住していた女子大学生10名へのイ
ンタビュー調査から考える。
テレビ以外
テレビ
(号外、ツイッター、他者)
テレビによる記憶の共有
×
テレビ
インターネットによる記憶の共有
全体像の把握、出来事の共有
5.多メディア時代のテレビの役割
若者のテレビ視聴のパーソナル化が進行中
視聴経験は自己完結しない。
テレビ視聴経験について、他者と意識や記憶を共有しよう
とする動きは持続している。
興味関心ごとに細分化
されたインターネット上
のコミュニティ
多メディア時代におけるテレビの役割とは
日本国民全体が関心を持つような大きな社会的出来事に
おいては、テレビが重要な役割を果たすだろう。
全体像を映像のインパクトと共に伝えテレビが公共的記憶
を形成するだろう。
テレビこそ、それぞれのコミュ
テレビというマス・メ
ニティの構成員たちの結び目
ディアが成立する
となる話題を、同時に、一斉に、
コミュニティの規模
安定した質で届けることができ
るメディア
娯楽においてテレビが果たす役割は相対的に縮小するだ
ろう。
娯楽についての話題の共有は、インタネット上の細分化さ
れたコミュニティで行われつつある。
人々が誰かとコミュニケー
ションするために求めてい
るコミュニティの規模
参考文献
志岐裕子・村山陽・藤田結子 (2009). 若者のテレビ視聴とメディ
ア並行利用行動―大学生のエスノグラフィ調査から メ
ディア・コミュニケーション(慶應義塾大学メディア・コミュニ
ケーション研究所), 59, 131-140.
上村修一 (2003). テレビ視聴の変遷 NHK放送文化研究所(編)
テレビ視聴の50年 日本放送出版協会 pp. 112-135.