電気メッキによる量子ポイントコンタクト作成とコンダクタンスの量子化
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Transcript 電気メッキによる量子ポイントコンタクト作成とコンダクタンスの量子化
メッキを用いたナノコンタクトの製作と
量子化されたコンダクタンス及びBMRの測定
理学部四回生 布山美慕
参考文献
• A.Umeno et al.,Appl.Phys.Lett.86,14103(2005)
• A.F.Morpurgo et al.,Appl.Phys.Lett,74,14(1999)
• 小野嘉之著,量子力学的”オームの法則”
• 高木春光,授業実践『ヨードチンキとビタミンCで金
メッキ』
• N.Grcia et al,Phys.Rev.Lett,82,14(1999)
• S.Yuasa et al,Science,297,234(2002)
• J.M.D.Coey et al.Phys.Rev.B,64,020407(2001)
• 勝本信吾責任編集、パリティ編集委員会編,メゾスコ
ピック村のアリス
• 福山秀敏編,メゾスコピック系の物理
実験の概要
実験
1.ヨードチンキを用いた金メッキによるコンダクタン
スの量子化実験
2.ニッケル線のナノコンタクトでの磁化実験
1.ヨードチンキを用いた金メッキによるコンダ
クタンスの量子化実験
金線を断線しメッキによっ
て再度接続する。その際メッ
キ速度を制御し接続を数原子
単位にすることで金線のコン
ダクタンスを量子化する。そ
のままメッキを続け量子化さ
れたコンダクタンスが接続部
分の原子数に対応する値を示
しながら変化する様子を観測
する。
2.ニッケル線のナノコンタクトでの磁化実験
強磁性体であるニッケ
ルで、メッキを用いて
コンダクタンスが量子
化される程度のナノコ
ンタクトを作成し、磁
場をかけ磁化させる。
磁場の方向が結合を挟
んで平行反平行のとき
のコンダクタンスの違
いを観測する。
理論
1.コンダクタンスの量子化
2.ナノ接合における
Ballistic Magnetoresistance(BMR)効果
Ballistic領域…電子が不純物などによる散乱を受けず
に運動する領域。
平均自由行程以下のナノコンタクトは
Ballistic領域。
MR効果…磁気抵抗効果
磁場をかけることで抵抗が変化する効果。
1.コンダクタンスの量子化
電子の存在領域
領域1,2
電子溜め
電気化学ポテンシャルの差
あり
その間の領域
量子ポイントコンタクト
(QPC)
電子のエネルギー
y
x
運動量が p~p+dp の間にある状態の数はスピンの自由度を含め2dp/h。
電流 I は電子の電荷、状態の数、速度をかければ良いから、
は
を満たす p の値
Vが小さければ第二項は無く、コンダクタンスは
因子 2 はこの図の場合の伝導に寄与する分散曲線の数。
よってコンダクタンスは
の整数倍に量子化。
2.ナノ接合における
Ballistic Magnetoresistance(BMR)効果
強磁性体に磁場をかけると一
定の磁場以上で磁化しスピン
が偏極する。また逆向きの磁
場をかければスピンを逆向き
に偏極することができる。ナ
ノコンタクト中での不純物な
どによるスピンの散乱を無視
できるならナノコンタクトを
挟んで磁場が平行か反平行か
によってコンダクタンスが変
化することになる。
実験方法
実験1
ヨードチンキを用いて金メッ
キをしながら金線間の抵抗
値を測定する。電圧の制御
でメッキ速度をコントロー
ルして数原子単位での架橋
を起こしコンダクタンスの
量子化を見る。そのまま
メッキを続け量子化された
コンダクタンスが接続部分
の原子数に対応した値を示
すことを観測する。
実験 2
硫酸ニッケルを用いて
ニッケルメッキをしなが
らニッケル線間の抵抗値
を測定する。コンダクタ
ンスの量子化が観測され
たところでメッキを止め
両方のコイルに電流を流
す。電流の向きを反転さ
せることでニッケル線に
かかる磁場の方向を逆転
させコンダクタンスの変
化を観測する。
実験結果
実験1
時間に対してコンダクタンスを量子化した単
位で示したもの。2,3,4,5,の値が見られる。
メッキのためかけた電圧は650mV。
16000〜19200、850mVでメッキ。
20〜25までの量子化が見られる。
1.1Vでメッキ。
整数値からずれた値での階段。
いくつかの原子による単純な並列でない回路かもしくは散
乱が考えられる。
2480〜2750,850mVでメッキ。
16と18を繰り返す。
原子が着いたり離れたりしている?
実験1の結果のまとめと考察
•
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•
•
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•
最初に設定した簡易な実験条件でコンダクタンスの量子化が観測され
た。
電圧の逆転によって金線を再び断線させることはできたがコンダクタ
ンスの量子化は観測できなかった。
一定の電圧でメッキしていても原子単位での付着と剥離が繰り返され
るなどしてコンダクタンスが振動することが有る。
以上からニッケル線でもサンプルの断線とメッキ速度の制御がうまく
いけば同じ条件でのコンダクタンスの量子化、即ちナノコンタクトの
作成が可能だと考えられる。
メッキの電圧をかける為の回路の中もコンダクタンスの測定の為の電
流が流れている可能性がある。
もし電圧の制御によってコンダクタンスの振動を起こすことができれ
ばエレクトロニクス分野の部品として有用。
実験結果
実験2
650 mVでメッキ。
4,5,6,14,21の量子化。
前のデータと同じ。
接続の瞬間。
しかしコンダクタンス1ではなく2で飛んでいる。
750 mVでメッキ。
24,25,27,29,32,34,38が見られる。
一つの準安定状態が20秒程。
850 mVでメッキ。
18,22,24,30に量子化。
一つの準安定状態が300秒程。
実験2のまとめと考察
• ニッケル線を試料にしたメッキでもコンダクタンスの量子化が
観測された。
• しかし金線での実験よりもメッキ速度の制御が難しく、また準
安定状態が金より不安定だと考えられる。
• そのため量子化を確認するのみに終わってしまい、磁場をかけ
る実験が行えなかった。よって磁気抵抗の観測実験は行えな
かった。
• 量子化を確認し磁場をかける時間を確保するには電圧の制御だ
けでなく試料の断線状態が重要。金線よりメッキ速度の制御が
難しい以上より精密な試料作りが望まれる。
実験1,2を通じてのまとめと考察
• 手作業による簡単な実験条件でコンダクタンスの量子化の観測
は可能。
• しかし試料作り、メッキともに条件に曖昧さが残るため再現性
は無く、実験2のニッケル線では安定したナノコンタクトの作
成はできなかった。
• BMRなどの理論や研究結果が確立されていない分野ではこの
メッキによる実験で結果が出ても実験条件が曖昧なために確か
にBMRが観測されたといえない恐れが有る。
• ナノコンタクトをメッキ技術で作成するなら試料、メッキ液、
電圧、試料の設置条件を精確に定めて行うことが必要。又実際
にどのような構造で原子が架橋していくのか、他のナノコンタ
クト製造方法との比較が必要。