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・前回の授業の補足説明
各国の国債保有者構成(%):2014Q1orQ2
中央銀行
銀行
保険・年金
家計
海外
日本
20%
33.5
34.3
2.4
4.1
米国
21.9
2.9
8.8
6
48.3
ドイツ
0.2
24
ギリシャ 8.8
イギリス 25.6
金融機
関9.3
10
62.2
26.1
0.8
71.4
2.1
28.7
1
・日本の国債保有構造:海外との比較
• 外国の保有割合が極端に小さい
– 日本の金利が低いため。日本はこれまで国内資金余剰
であり海外資金に依存せずに国債の国内消化が可能
– 今後も可能か?
– ユーロ圏は同一通貨のためユーロ圏内の外国(為替リ
スクがない)の保有が大きい
– 米国は基軸通貨国のため外国の保有が大きい
• 外国の米国国債保有の7割が外国政府(外貨準備として保
有)、日本政府も約1兆2000億ドル保有
2
• 外国の保有割合は小さい方が良いのか or 大
きい方が良いのか?
– 米国やドイツの外国保有割合の高さは、米国やド
イツに対する海外からの信頼の高さの現れ
• 米国:基軸通貨国としての米国
• ドイツ:ユーロ圏内で最も経済が安定しているドイツ
– ギリシャの外国保有割合の高さは、国内資金不足
と金利の高さのため
• 投機にさらされやすい←外国の投資家(特にヘッジファ
ンド)は資金の動きが速い
– e.g. 米国ヘッジファンド・サードポイント(運用資産130億ドル)は、
ギリシャがデフォルトした後買い時と考え、ギリシャ国債を大量
購入、数カ月で5億ドルの利益を獲得
3
○国債のリスク
• 財政破綻リスク(信用リスク)
– 国の財政が破綻して、国債の元利が支払われなく
なるリスク
• 価格変動リスク
– 財政破綻リスク以外の要因で、国債価格が変動す
るリスク
• 金利情勢の変化:金融政策の変化、インフレ率の変化、
海外(特に米国)の金利変化
• 市場の需給変動や混乱
4
・各国の国債格付け:2014年11月現在:
→記号のある国は→の前は2013年12月
S&P
Moody’s
政府純債務・GDP
比2013→2014
日本
AA-
Aa3 (=AA-)
134→137.8%
米国
AA+
Aaa (=AAA)
80.4→80.8
ドイツ
AAA
Aaa
56.1→53.9
フランス
AA
Aa1 (=AA+)
84.7→88.1
ギリシャ
B-→B
Caa3→Caa1 (=CCC+)
169.7→168.8
Baa3→Baa2 (=BBB)
60.5→65.6
Aa1 (=AA+)
82.5→83.9
スペイン
イギリス
BBB-→BBB
AAA
・S&P, Moody’s
IMF, Fiscal Monitor Oct. 2014
・ギリシャ国債:2012年3月デフォルト
53.5%の額面減額、1070億ユーロの国債が削減
・日本の消費税の10%への税率引上げ先送りの影響
国際的格付会社Fitchは、日本国債の格付けを見直す(現在A+)
5
・Moodysによる日本国債格付引下げ
• Aa3(AA-)→A1(A+) への引下げ2014.12.1
• 格付引下げの理由
• 財政赤字削減目標達成の不確実性の増大
– 赤字削減目標:プライマリー・バランス(国債の利払い・発行
償還を除いた財政収支)の赤字を2015年度までに2010年度
比半減、2020年度までに黒字化
• デフレ脱却・経済成長促進政策の不確実性
– アベノミクスの効果(特に第3の矢「成長戦略」の実現可
能性・効果)に関する不確実性の増大
• 日本国債の低金利安定性に対するリスク増大
6
・債券価格と債券の利回り:
利回りの計算
• 利回り
– 投資家側から見た金利
– 流通利回り:既発行の債券を流通市場で購入した場
合、受け取ることのできる金利
– 流通利回りの水準は、その時の経済全体の金利水
準とその債券の特性(元利返済の確実性、満期まで
の期間等)によって決まる。
• 発行金利と流通利回りとの関係
– 流通市場で成立している利回りに準じて新規発行債
券の発行金利が決められる
• 利回りの計算方法:単利と複利
– 単利:利子が利子を生むこと(孫利子)を計算に入れない
– 複利:利子が再投資され、利子を生むとして計算
7
• 例: 残存期間T=5年、表面金利クーポンC=4円(債券発
行時に約束されている毎年の支払い利子、クーポン)、
満期時に額面100円償還(表面金利4% ) 、債券の現
在時点での市場価格P=96円
• 投資家がこの債券に新規に投資した場合の利回り
は?
• 単利の(最終)利回りrs
•
•
•
•
•
•
=1年当りの受取収入/投資金額
=(利子+年当り償還差益) /投資金額
={表面金利+(償還価格-市場価格)/残存期間}
÷市場価格
={4+(100-96)/5}/96=0.05(5%)
一般式
:①式
8
・
・国債価格が下落(上昇)すると、利回りは上昇(低下)する
(複利でも同じ): ①式より
・C/P ↑
・利回りrs↑
・ 国債価格P↓
・償還差益(100-P) ↑
・この関係は、因果関係ではなく、同じ事態を価格面と利回り面という
別々の面から表現したもの。
・複利の利回りrc
96=4/(1+rc)+ 4/(1+rc)2 + 4/(1+rc)3
+ 4/(1+rc)4+104/(1+rc)5 : ②式
から求められる rc が複利利回り。
rc ≒0.049 、4.9%
・複利利回り:
満期までに債券から生じるすべてのキャッシュ・フローの現在価値(②式の右
辺)が、その債券の市場価格P(②式の左辺)と等しくなる割引率rcのこと
9
・金利と債券価格
– 金利の上昇
– → 新規に投資する投資家は高い利回りを享受
できる
– → 既発債は相対的に低利回りのため、債券の
魅力低下
– → 既発債の価格が下落
– → 上昇した金利と既発債利回りが等しくなるま
で、既発債価格が下落
10
・金利変動と債券の残存期間
– 債券の残存期間:満期までの期間
– デュレーション:金利の受け取りも含めた投資資金
の平均回収期間
– 債券の残存期間・デュレーションが長い
– → 低利回りの期間が長い
– → 債券の魅力がより大きく減退
– → 債券価格の下落が大きい
11
・地域銀行・信用金庫の抱えている国債価格変動リスク
・銀行の保有債券の平均残存期間の推移:業態別
・地域銀行や信用金庫は、大手行と比べて保有国債の
残存期間が長く、より大きな価格変動リスクを抱えている。
日本銀行『金融システムレポート』2014年10月
12
・なぜ、地域銀行・信用金庫は期間の長い国債を保有しているのか?
⇒期間の長い国債が利回りが高い。
他の収益機会が相対的に少ない地域銀行・信用金庫は
国債投資でより高い収益を確保する必要がある。
日本国債のイールドカーブ(利回り曲線)
2014年
%
/標準
/標準
/標準
2012.10.1
/標準
2013.10.1
2014.11.18
/標準
/標準
1年
2年
3年
4年
5年
6年
7年
8年
9年
10年 15年 20年 25年 30年 40年
残存期間
・財務省「国債金利情報」
13
• アベノミクスによるイールドカーブの全体的低下
• 地域銀行・信用金庫への影響
– →収益を従来通りに維持するには、より残存期間の
長い国債に投資する必要がある。
– →より大きな国債価格下落リスクを抱える
14
・日銀が抱える国債価格変動リスク
翁邦雄『日本銀行』ちくま新書p.260
・金利が上昇していく局面では、
・日銀の量的緩和第2弾でこのリスクは拡大
⇒日銀の信認が損なわれる恐れ
15
第2章参考文献
• 財務省『債務管理レポート』2014年版
• 日本銀行『金融システムレポート』2014年10月
• 小幡績『ハイブリッド・バブル:日本経済を追い
込む国債暴落のシナリオ』ダイヤモンド社
2013年
• 翁邦雄『日本銀行』ちくま新書 2013年
16