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経済学部・国際経済学科・新保 博彦ゼミ
08E146 金田 隆司
08E615 梁
佳維
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目 次
1 なぜ、この国が世界を揺るがしているのか。
1.1 粉飾決算の発覚によるユーロの暴落
1.2 ギリシャ債の高リスク化
2 ギリシャ危機発生原因。
2.1 EU加盟基準を満たしていないギリシャ
2.2 ギリシャのずさんな政策
2.3 ユーロ導入による負担増加
3 ギリシャ政府の対応およびEUの対策。
3.1 ギリシャ政府の対応
3.2 EUとIMFの緊急支援
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はじめに:世界に波紋を与えたギリシャ危機
2009年10月に発生したギリシャ金融危機が世界
経済に与えた影響は、計り知れないものとなってしまっ
た。巨大な財政赤字が表面化されたため、債務不履行の
不安からギリシャ国債が暴落した。通貨ユーロ安も極端
に進みまで世界経済市場は大混乱した。
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1 なぜ、この国が世界を揺るがしているのか
1.1粉飾決算の発覚によるユーロの暴落
出所:YOMIURI ONLINE 為替動向
09年まで安定していたユーロが10年の粉飾決算発覚後、大暴落を始めた。10年1
月12日に欧州委員会がギリシャ財政を不安視し、「
ギリシャは信用できない 」
という厳しい評価を発表。10年2月8日までに円に対し、最大10%の大幅下落。
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ユーロ暴落のきっかけは、
政権交代による旧政権の粉飾決算 にある。
2009年10月、ギリシャにおいて5年ぶりに政権交代が行われ、新政権下で旧政権が
行ってきた財政赤字の隠蔽が明らかになった。従来、ギリシャの財政赤字は、国内総
生産(GDP)の4%程度と発表していたが、実際は12.7%に膨らみ、債務残高も国
内総生産の113%にのぼっていた。(現在は13.6%に訂正されている)
対GDP比赤字率
0
-2
2006
2007
2008
2009
-4
-6
対GDP比赤字率
-8
-10
-12
-14
出所:在ギリシャ日本国大使館HP
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1.2 ギリシャ債券の高リスク化
ギリシャの国債およびギリシャの金融機関が発行している金融債はユ
ーロ圏の投資家が多数保有しており、不良債券化された場合の損失は
計り知れないものとなる。
下記の表は主なEU加盟国がギリシャ債券の保有額を示したものであ
る。
EUの加盟国
ギリシャの債券保有額
フランス
7兆1000億円
ドイツ
3兆8900億円
オランダ
1兆800億円
ポルトガル
9400億円
アイルランド
7800億円
イタリア
7700億円
出所:週刊東洋経済 2010.6.5
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巨額債務の発覚によって、ギリシャ経済に対する信用不審が高まった
だけでなく、ギリシャへの投資が不良債券化される可能性が浮上した。
米大手格付け会社S&Pはギリシャ国債を一気に「A-」から「BBB+」
までに格下げを行った。(BBB+は高リスクヘッジを持つ債券である)
ギリシャ国債の格付け
S&P(米)
A - ⇒ BBB
+
フィッチ(英)
BBB+ ⇒ BBB
-
ムーディーズ(米)
A2
⇒ A
1
出所:BIS
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政権交代での粉飾決算の発覚と同時にギリシャ債の不良債権化の問題も派生
した。よって、ギリシャだけの問題ではなくなり、EU全体の問題に発展してし
まったのである。
この現状に対して、元IMFギリシャ担当のエコノミスト、現在慶応義塾大学
教授の白井早由里氏(以下白井氏略)が「 欧州の様々な銀行は色々
な形で投資をしている。ギリシャの金融機関に融資をしてい
る上、社債も多数購入している。ギリシャへの投資が不良債
券化されると、更なる信用緊縮が起こってしまう恐れがある
」と指摘している。
(経済番組・モーニングサテライト2010年
5月14日放送より)
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2 ギリシャ危機発生原因
1.1 EU加盟基準を満たしていなかったギリシャ
EUには、連合圏内と共通通貨ユーロの安定性を保つために、様々な条約が制定され
ている。それはEUに加盟する場合でも同様である。しかし ギリシャは条約に中でも特
に重要な「収斂基準」の第2項をほとんど満たしていなかった。
経済収斂基準
1.物 価
2.財 政
3.為 替
4.金 利
過去1年間、消費者物価上昇率が消費者物価上昇率の最も低い3カ国の平
均値を1.5%より、上回らないこと。
過剰財政赤字状態でないこと。(財政赤字GDP比3%以下、債務
残高GDP比60%以下)
2年間、独自に切り下げを行わずに、深刻な緊張状態を与えることなく欧
州通貨制度の為替相場メカニズムの通常の変動幅を尊重すること。
過去1年間、長期金利が消費者物価上昇率の最も低い3か国の平均値を2%
より多く上回らないこと。
出所:外務省HP「EUにおける通貨統合」
EUに加盟するためには、財政赤字をGDP比で3%以下に抑えなければならない。
実際にギリシャは今までにどれほどの財政赤字を抱えてきたのか、次のグラフに記し
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1970年~2009年ギリシャの財政赤字率
出所:OECD economic outlook
このグラフは、1970~2009年までのギリシャの財政赤字率を表したものである。
80年代~09年までの間、たったの2度しか基準を満たしていないことが明確に示さ
れている。通常、同比率が3%を超えれば危険信号。5%を超えれば、対外的なデ
フォルト危機がいつ発生しても不思議ではない水準だ。
出所:週刊東洋経済
2010年6月5日
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2.2 ずさんな政策
ギリシャがここまで大きな赤字を生み出した主な原因として、異常なまでに好待遇な
給与と年金給付があげられる。このことは、ギリシャの公的年金給付水準を表す対年
収比表を見れば、一目了然である。比較対照として、ドイツと日本を取り上げた。
%
出所:OECD ギリシャ公的年金給付水準 (対平均年収比)
白井氏は「リーマンショック発生後の不況時、08年と09年のギリシャの給与伸び率は
5%であった。それに対し、ドイツは-1%である。輸出大国のドイツですら、給与の伸
び率を抑えている状態であるにも関わらず、ギリシャは異常なまでに高い。」と指摘した。
出所:経済番組・モーニングサテライト2010年
5月14日放送
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2.3 ユーロ導入による負担増加
ユーロ(Euro)とは、現在、ヨーロッパ領域内の22カ国で導入されている共通通貨で
ある。この22カ国の内、16カ国がEU加盟国である。1999年1月1日発足した経済通
貨同盟(EMU)によりユーロの枠組みが制定された。ギリシャは2002年1月1日に
ユーロを公式に採用することになった。
出所:YOMIURI ONLINE(マネー・経済面2007年1月15日)
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単一通貨を導入することで国と国の国境を越えて、人と物の流通が盛
んになる。また、ユーロ圏では通貨交換が不要になり、企業間のコスト
削減に繋げることが出来る等様々なメリットがある。
これらの恩恵を受け、経済発展するはずであったギリシャは、なぜ現
在のような深刻な経済的危機に陥ってしまったのだろうか。
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ユーロ加盟国に足並みをそろえることが出来ないギリシャ
「国の体力が違うのにユーロという同一通貨を持つEUの構造問題が浮き彫りになっ
た」と白井氏は指摘した。国の体力の違いとは、ドイツのようにインフレ率が低く、競争
力のある貿易黒字国もあれば、ギリシャやスペインのように恒常的にインフレ率が高く、
競争力が弱い貿易赤字国も存在しているということをあらわしている。
ギリシャとドイツのインフレ率推移
ギリシャとドイツの国際収支比較
出所:IMF-World Economic Outlook
インフレ率の高い国は、金融引き締めや金利を上げることでインフレ率を下げることが
出来るが、ギリシャにはそれが出来なかった。欧州中央銀行(ECB)が、ユーロ使用国
の金利を一律に設定しているからである。白井氏は、「国の体力が違うのに通貨と政
策金利は一緒。そもそもこの政策自体に無理がある」と述べた。(日本経済新聞出版14
3 ギリシャ政府の対策およびEUの対応
3.1 ギリシャ政府の対策
安定成長計画
1.財政赤字
09年対 GDP 比 12.7 %の財政赤字を、 10年 8.7 %、 11 年 5.6 %、 12
年 2.8%まで削減する。
2.政府債務
08年対GDP比99.2%から09年は113.4%となったが、今後も暫く上昇し、10年
120.4%、11年 120.6%と予測され、12年初旬より債務減少となる。
3.2010年
歳入増加項目
4.2010年
歳出削減項目
5.その他
新課税率導入、新規不動産税、酒・煙草等増加、脱税取締り、公共投資計画等
に対する EU ファンドから など 様々な政策により合計56 億7千万ユーロ収入
が計画されている。
政府関連給与10%削減、年金の政府助成縮小、公務員雇用凍結、公的機関契
約雇用者削減、運営経削減などにより合計20億6千万ユーロ削減が計画されて
いる。
経済成長率は09年の-1.2 %以降、10年-0.3%、11年1.5%、12年1.9%、13年
2.5 %と見込んでおり、失業率は、09年9.0 %から 10 年 9.9 %、11年及び12年
には10.5%まで増加し、13年から緩和され10.3%と予想されている。
絶対実行しなければならない!
出所:在ギリシャ日本大使館HP
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3.2 EUとIMFの緊急支援
莫大な財政赤字が発覚したギリシャは、もう自国だけでは経済的危機を乗り越えること
は出来ないと判断し、EUとIMFに支援を求めた。EUとIMFがギリシャの経済危機を踏
まえて2010年5月にギリシャに合計
7.500億ユーロ(約85兆円)
の緊急
支援を行うことを正式に決定した。ただし
EUの条約には「
」とい
救済禁止条項
う項目が存在している。
EUとIMFの緊急支援
EUから
6割
IMFから
4割
救済禁止条項
原則:「お互いの債務は負わない」
約51兆円
(4500億ユーロ)
約34兆円
(3000億ユーロ)
しかし
第122項
「自然災害や制御不能時」は例外
出所:テレビ東京 モーニングサテライト
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終わりに:新たに現された問題について
実は、ユーロ圏ではギリシャ以外にもアイルランド、スペイン、ポルトガルも巨額の財
政赤字を抱えている。ギリシャの二の舞になるような事態を防ぐべく、早急な対策が求
められる。
EU加盟国財政赤字のGDP比(一部)
出所:NHK HP 解説委員室
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