激変大学院サバイバル 村上祐子 国立情報学研究所 ありそうな会話? • 「育児がもうすぐ一区切り。生活のためにも、 学歴を生かすためにも、経験を生かしたしご とをみつけなくちゃ」 • 「 育児ばかりやってきたやつが即戦力になる わけないじゃないか。単純労働のパートがせ いぜいだ」 • 「せっかく学歴があるのに、低賃金パートしか ないなんて…」 研究者の伝統、家の伝統とかけて • 社会的捏造ととく。 • どちらも意外と歴史はない • プロ・研究者はせいぜい19世紀から • 日本の家制度(結婚による改姓)も意外と最 近 • それなのに「それが普通」?

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Transcript 激変大学院サバイバル 村上祐子 国立情報学研究所 ありそうな会話? • 「育児がもうすぐ一区切り。生活のためにも、 学歴を生かすためにも、経験を生かしたしご とをみつけなくちゃ」 • 「 育児ばかりやってきたやつが即戦力になる わけないじゃないか。単純労働のパートがせ いぜいだ」 • 「せっかく学歴があるのに、低賃金パートしか ないなんて…」 研究者の伝統、家の伝統とかけて • 社会的捏造ととく。 • どちらも意外と歴史はない • プロ・研究者はせいぜい19世紀から • 日本の家制度(結婚による改姓)も意外と最 近 • それなのに「それが普通」?

激変大学院サバイバル
村上祐子
国立情報学研究所
ありそうな会話?
• 「育児がもうすぐ一区切り。生活のためにも、
学歴を生かすためにも、経験を生かしたしご
とをみつけなくちゃ」
• 「 育児ばかりやってきたやつが即戦力になる
わけないじゃないか。単純労働のパートがせ
いぜいだ」
• 「せっかく学歴があるのに、低賃金パートしか
ないなんて…」
研究者の伝統、家の伝統とかけて
• 社会的捏造ととく。
• どちらも意外と歴史はない
• プロ・研究者はせいぜい19世紀から
• 日本の家制度(結婚による改姓)も意外と最
近
• それなのに「それが普通」?
Ubiquitous problem
• 大学院生・ポスドクだけではない
• アカデミアだけ見てはならない
• ポスドク問題の本質は
「ダイバーシティ・マネジメント」
アカデミアだけではない
• 大学の外でも、若手は「はまっている」
– ふつうのひとたち
• 「これまで部下なしの40歳」
• 「フリーター30歳」
• 構造改革途上:組織の懐が心もとない
– 「資格はあっても就職先は?」弁護士
– 「ひとがいない!」勤務医
• 以前から労働市場外・最近改善の兆し??
– 女性
基本戦略
• 現状分析
ダメ
• 「怒り」の表明:怒りと反発を生む。
今の「ポスドク
問題」の扱いは、
「女の敵は女」
の時代のフェミ
ニスム運動に
似ている。
研究者に限らず
•
•
•
•
目標設定
資源配分:資源は有限!
リターン
再配分
Juggling
将来の自分に投資するなら、
今、何を買う?
56
('
81)
58
('
83)
60
(
'85)
62
平 ('8
成 7)
元
('8
9)
3
('9
1)
5
('9
3)
7
('9
5)
9
(
'97)
11
(
'99)
13
(
'01)
15
(
'03)
17
('0
5)
和
昭
研究者数
900,000
800,000
700,000
600,000
500,000
400,000
300,000
200,000
100,000
0
大学全体
公的機関
非営利団体
企業
• 人工知能学会
Happy academic life
大学をめぐる状況変化
• 大学の位置づけの社会的変化
– 「教育と研究は一体というこれまでの考え方から
脱却」
– 「組織からチーム・個人へ」
• 大学進学率・大学院進学率:その背後にある
のは?
教員と大学院生
180,000
160,000
140,000
120,000
大学教員数
修士授与数
博士授与数
100,000
80,000
60,000
40,000
20,000
-
1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
文部科学統計
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/002/002b/koumoku.html
教員と大学院(1965-2005)
180,000
160,000
140,000
120,000
大学教員数
修士授与数
博士授与数
100,000
80,000
60,000
40,000
20,000
0
1965
1970
1975
1980
1985
1990
1995 2000 2005
文部科学統計
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/002/002b/koumoku.html
職階別人数
70,000
60,000
50,000
40,000
30,000
20,000
10,000
19
90
19
91
19
92
19
93
19
94
19
95
19
96
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97
19
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19
99
20
00
20
01
20
02
20
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04
20
05
20
06
0
文部科学統計
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/002/002b/koumoku.html
学長
副学長
教授
助教授
講師
助手
岡本の公式
• A: 1年に空く独立したポジション
=[X: 独立した研究室の数]/[Y:独立した
研究者の平均在籍年数]
B:1年に新しく加わる人数
=[N:1研究室が1年あたりに新たに取る学
生の平均数]x[X:独立した研究室の数]
C:新人が将来独立できる確率
=A/B
=「X/Y」/[NxX]
引用元:「大隅典子の仙台通信」
=1/[NxY]
http://nosumi.exblog.jp/
教員の任期制の導入状況(大学数)
文部科学省「大学における多様な人材の採用等について」より抜粋
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/027/siryo/06021607/032.htm
教員の任期制の導入状況(適用教員数)
文部科学省「大学における多様な人材の採用等について」より抜粋
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/027/siryo/06021607/032.htm
戦略以前に
• 「明日は我が身」の共有
• とにかく明るく生き延びる。
• 自分は次の時代の恩恵にあずかれないかも
しれないが、あきらめないことが貢献。
• とりあえず、どうしよう?
人の助けを借りよう
•
•
•
•
指導教員
大学
外部機関
サポートグループ
最大最強のリソース:指導教員
• ロールモデル
• キャリア・コンサルタント
• そして、もちろん学問上の指導!
• 先生本人の経験は通用しなくても観測は貴重
大学:手近な支援機関
• 大学院改革の飴と鞭
– 各種GP
– COE
• 就職支援は大学の仕事のうち
– ビジネス交流会
• 大学間連携
– UCEE:8大学の大学院生の就職支援用SNS
海外に出よう
• 学内制度利用:国際交流センター
– ダブル・ディグリー
• 学外奨学金:政府、民間財団…
• 準備は1年以上かかる
– 煩雑な出願手続:今後のためには良い練習!
(宝くじよりは)
ローリスク・ハイリターン
至れり
尽くせり
修了後
• 就職:ビザの問題
– 自国民優先採用条項
– アメリカの場合、学位取得後1年は猶予期間
• 労働ビザ:人数制限あり。ただし教育職枠あり
• 国家奨学金の罠
• 帰国
– 次はどうする?
– 単位互換による卒業>再適応しやすい
職安に行ってみよう
• ビジネス実務研修
– マナー
– 面接
– 履歴書の書き方
• 他の参加者の観察
もし「労働市場に大学院生
の声が反映されていない」
のなら、乗り込んでいこう!
サポートグループ
• 「愚痴→しずむばかり」ではサポートではない
• 問題の共有
– 現状の把握
– これからおこる(かもしれない)こと
• 一番印象深かった言葉:「常勤取るのが一番
大変だけど、そのあとも楽じゃないわ」
研究職につけたとして
• 機関による差
• 大規模 vs 小規模, 総合大学 vs 単科大学
• 大学 vs 研究所:今後はどうなるかわからない
– 研究に専念できる
– 資金が潤沢
– 人事・管理がきつい<機関の説明責任、予算獲得
研究者評価のからくり
• インパクトファクター
論文評価の適正化
★インパクトファクターを論文その
ものの評価として利用することは、
問題点が大きく、避けることが適切。
(文部科学省 科学技術・学術審議会 学術分科会 研究環境
基盤部会 学術情報基盤作業部会「学術情報基盤の今後の在
り方について(報告)」 )
そもそも何?
インパクトファクターの定義
• 雑誌タイトルの掲載論文について、直近2年
の平均被引用数
• トムソンのデータベースに入っている雑誌掲
載論文について、直近2年のトムソンのデータ
ベース掲載雑誌論文からの被引用数の平均
定義より
• 2年より前の引用は考慮されない
• トムソンデータベース以外での引用は考慮さ
れない
• 論文単位のものではない
– 研究者個人のものでもない
研究者個人の被引用指標:既存
のさまざまな提案
• H-index:「その研究者が公刊した論文のうち、
被引用数がh以上であるものがh以上あるこ
とを満たすような数値」
– 一発屋はh-indexが1
• G-index:「その研究者が公刊した論文のうち、
被引用数がh以上であるものがh2以上あるこ
とを満たすような数値」
Publish or Perish:Google Scholar使用
例:"shimizu hajime author:hshimizu: all"
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Papers:725,
Citations:2661,
Years:241,
Cites/year:11.04,
Cites/paper:3.67/0.0/0,
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hI-norm:10,
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AWCRpA:74.09
清水 肇
大学院理学研究科・理学部
附属原子核理学研究施設
例:"SAITO Riichiro author:r-saito:
all",
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Papers:126,
Citations:1159,
Years:46,
Cites/year:25.20,
Cites/paper:9.20/0.0/0,
Cites/author:337.46,
Papers/author:37.35,
Authors/paper:4.25/4.0/6,
h-index:11,
g-index:33,
hc-index:10,
hI-index:3.27,
hI-norm:9,
AWCR:103.23,
AW-index:10.16,
AWCRpA:29.88
齋藤 理一郎
大学院理学研究科・理学部
物理学専攻
どの指標を使うにしろ
• 単独の指標では判断できない
• 分野間の比較は無意味
– (たとえ「物理」の中であっても!)研究活動の行
動様式が違う
実際にはインパクトファクターの
「合計」すら用いられることもある
(無意味)
蛭(ニーチェ「ツァラトゥストラ」 )
• 「蛭の脳が私の全世界」
– 研究者の偏狭さを皮肉
古今東西、研究者ってそんなもの?
新陳代謝:研究内容、研究手法
• サヴァティカル
• 研究成果の短期回収
• 「生産性を維持するには、5年に1度は居場所
か研究分野を変えることだ」
研究と生活?
• 西村肇「科学としての研究、職業としての研
究」現代化学2007年10月号
– 「プロの研究者に科学の研究ができるか?」
– 優先順位とすりあわせ
• 自分の関心
• 社会の関心
ライフワークバランス
• 研究職には関係ない?
• 聖職者・アマチュア→プロフェッショナル
– 普通の人が普通に仕事として研究をする
時代
• 研究者の健康:常勤と任期制
– Nakao-Yano (2006)
– 錦谷・中尾・矢野(2006)
– 日本経済新聞2007年11月13日夕刊第12面
研究第一としても
• 使えるものは全部使う
– 公的制度
– 民間サービス
– 私的コネクション
管理能力のうち
Happy academic life:プライベートカード
無所属の時間
• 研究者の王道キャリアとしては避けたいが
• やむをえないことも
– 留学直前
– 帰国直後
– 出産・育児
• なにがおこる?
• なににつかう?
Moving target!
• 大学院で身につける「はず」なのは
– 専門知識
– 研究スキル
どちらが重要?
ひとりではない
• Multi-person juggling
– 落ちてくる場所の予測
– 受ける立場を見越して投げる
怒りによって物事を正す
ことはできない
怒りは反発とさらなる
怒りを増幅させる
• ダイバーシティ・マネジメントとして
• 明日は我が身