「反転授業の実践報告:「英語学講義I」

Download Report

Transcript 「反転授業の実践報告:「英語学講義I」

山梨大学 大学教育センター反転授業公開研究会
2014/09/24 (於: 山梨大学 甲府キャンパス)
反転授業の実践報告:
「英語学講義I」
小林 亜希子
(島根大学)
[email protected]
1. 問題意識
1.1. 英語学講義I
・生成文法理論の基礎
・履修資格: 3年生~ (ゼミの選択に影響)
・問題① 学生の理解度に大きな差がある
・問題② 一度休むとついて行けない
∵積み上げ式,専門用語
2
1. 問題意識
※教科書より
「まず,語彙配列からtheとboardを取り出し,2つを併合
することにより,boardを中心とする構成素,すなわち名
詞句 (noun phrase: NP) が形成される。(中略) (16) にお
いてNPの中心となる語彙項目,ここではN board のこと
をNPの主要部 (head) と呼ぶ。逆に,NP the board はNを
中心として大きくなった構成素であるので,Nの投射
(projection) であるという。(中略) NP, VPなどの構成素の
範疇記号を節点 (node),そこから延びている線を枝
(branch) と呼ぶ。」
(田中智之 (2013) 『統語論』 東京: 朝倉書店. pp.9-11)
3
1. 問題意識
1.2. 前年度 (2013年度) の試み
• パワーポイント(パワポ)を利用
• そのファイルをクラウドに保存
 学生が復習,自習できるように
4
1. 問題意識
pp. 10-11 用語
節点 (node)
VP
枝 (branch)
構成素
V
resign
PP
NP
P
from
D とN が併合(Merge)
D
the
Nが投射する
NP = 名詞句
N
board
NPの主要部
(Head)
5
1. 問題意識
1.3. 試みの結果
• 学生にはおおむね好評
• パワポ操作に気を取られる
• パワポ,黒板,教科書,配付資料・・・面倒くさい!
• パワポだけでは自習しにくいかも
パワポのファイルに,
音声を付けて
保存できたら・・・
6
2. 2014年度の試み
2.1. 授業の流れ
回
内容
1
イントロ
2~6
第1章
7~9
第2章
10, 11
第3章(前半)
12~14
第3章(後半)
15
まとめ
16
期末テスト
反転
✔
✔
7
2. 2014年度の試み
2.2. 反転部分の進め方
※授業前
パワポ作成+録音
1つのファイルは5分程度で,練習問題を付ける。
1回の授業で2~3のファイル+解答。
アップロード
「島根大学Moodle」の,この授業のサイトへ。
学生に通知
※学生はアカウントとメルアドを登録ずみ。
※スマホでは視聴しにくいので,wmvとpptxのみ
視聴し,練習問題を解いておく。
学生が予習
※パワポの紙資料も一応配布している。
※いつログインしたかは,教員側から見える。
8
2. 2014年度の試み
2.2. 反転部分の進め方
※授業当日
(学生が登校)
※学生はいつ来てもよい
「復習問題」を配布
※できたら提出して帰ってよい
見回り,助言など
でき具合をチェック,間違いを指摘,質問に答える
視聴してこなかった
学生は別室で視聴
※自宅ネットの不具合で視聴できなかった
学生1名(2回)のみ
9
3. 反転授業の様子
10
3.5.1 英語における受動文
生成文法での説明: 他動詞文の派生(復習)
(55) a.
θ基準
TP
Case付与とAgree
T’
T
[Past]
[3.sg]
EPP
vP
NP
Mary
t2 2
主
残置affixフィルター
v’
v
VP
V
t1 1
take
(Agent,
✔ Theme)
✔
NP
pictures
of John 対
11
3.5.1 英語における受動文
練習問題1. 次の文の tree を書きなさい。
※ (a), (b) は§3.3(前半)の練習問題2を参照。
(a) The door was opened.
(b)A wallet was put on the desk.
(c) The politician will be arrested by the police.
(d) That the earth was flat was once believed.
(once はvP付加詞。that 節はCPとし,下は省略)
12
3. 反転授業の様子
13
4. 授業の成果
4.1. 期末テスト
大問
配点
内容
[A]~[E]
46点
1章
[F]~[H] と選択問題
54点
2~3章
反転部分に関わる問題
※ 自筆の紙1枚(B4) のみ持ち込み可,とする。
14
4. 授業の成果
※期末テストのサンプル
[A] 下線を引いた単語の範疇 を答えなさい。
[B] 次の文のうち,主節動詞の項 に下線を引きなさい。
[C] 下線を引いた付加詞 のθ役を答えなさい。
[D]~[G] 樹形図を書きなさい。
(選択問題) 複雑な文の樹形図を書く。
授業で学んだルールを
正しく用いて句の構造を
示す。
15
4. 授業の成果
4.2. 2013年度との比較①
履修登録者
登録しただけ
2013
36
2014
17
6
3
0
途中でドロップアウト
2
受験者
28
1.75
受験者の平均欠席回数
(テスト寝坊1)
13
1.19※
※反転を視聴しているのに授業は欠席=0.5回欠席とカウント
16
4. 授業の成果
4.2. 2013年度との比較 ①
17
4. 授業の成果
4.2. 2013年度との比較 ①
グループ統計量
成績
年度
N
平均値
標準偏差
平均値の
標準誤差
2013
28
78.57
15.99
3.02
2014
13
83.96
7.28
2.02
独立したサンプルのt検定
2013年度と2014年度の成績を比較した結果,統計的に
有意な差は見られなかった。
18
4. 授業の成果
4.3. 2013年度との比較 ②
※ [A]~[E] (通常授業)と,[F]以降(反転授業)の成績を分けて
分析してみる。
[A]~[E]
[F] 以降
19
4. 授業の成果
4.3. 2013年度との比較 ②
グループ統計量
A_E_sum
F_select_sum
年度
N
平均値
標準偏差
平均値の
標準誤差
2013
2014
2013
2014
28
13
28
13
34.86
35.88
43.71
48.08
7.60
5.90
9.99
2.93
1.44
1.64
1.89
.81
独立したサンプルのt検定
2013年度と2014年度の成績を比較した結果,
A-Eまでの得点では有意な差は見られなかったが,
F-Hと選択問題の得点では,有意な差が見られ,2013年度よりも
2014年度の方が得点が高かった。
20
4. 授業の成果
4.4. 考察
・反転部分での成績は向上
・成績のバラつきが縮小
↓
「底上げ」効果あり?
21
5. その他の気づき
5.1. 良かった点
・理解の遅かった学生にはメリットあり
問題が自力で解けるようになる
教員や友だちに質問しやすい
・ドロップアウト組の消失
・学生たちの協力?
選択問題の選び方に偏りがあった
試験前に,グループで質問に来る
・応用問題に言及する時間的余裕
22
5. その他の気づき
5.2. 考えるべき点
・「できる学生」への対応
問題が30分でできて手持ちぶさたに,協働の姿勢△
ボーナス問題の
設定
・慣れてくると,全体的に中だるみ感?
できない学生も遅く来る,資料を持参しない,など
・授業の「ライブ感」は?
・「その場の理解」≠「理解の定着」
多くが授業直前に視聴
数回前に解いた問題を覚えていないことも
・どういう部分を反転にすべきか?
今回は,特に難しいところは反転しなかったが・・・
23
Thank you!
※謝辞
今回の反転授業は,森朋子先生,七田麻美子先生,鹿住大助先生からのご指導と
ご助言があってこそ実施できたものです。島根大学反転プロジェクトメンバー間の意見
交換からも多くのアイデアをいただきました。また,学生アンケートや成績の分析では,
本田周二先生のお手を煩わせました。温かくサポートして下さった多くの方々に感謝
申し上げます。
24