心気虚 - Jimdo

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Transcript 心気虚 - Jimdo

病因・病機
佐賀大学漢方研究会
川内豪 富量平
中岡賢治朗 吉田紀子
井樋有紗
指導:岩永智代先生
病因・病機とは?
• 病因 人体に疾病をおこす原因
• 病機 疾病の発生・発展および
その変化の内在的なメカニズム
疾病発生の要素
正気の衰弱
邪気が生体に与える影響
*正気
生体の臓腑・経絡・気血の機能を正常に保ち、
病邪に抵抗し、損傷を回復させる能力
*邪気
各種の発病要因
病因~内因・外因・不内外因~
内因・外因・不内外因とは
・内因
その人の持つ体質
五臓六腑機能の失調
七情が中心 →東洋医学では特に精神面を重視
・外因
体の外から侵入してくるもの
主に気候の変化による
六淫(+疫癘)
・不内外因
外因にも内因にも当てはまらないもの
↓
これらの3つが気血津液にトラブルを起こすと、病気が発生する
外因
~六淫とは~
正気(六気)
五気(寒・暑・燥・湿・風)→一年四季の正常な外環境
+
火(暑≒熱が極まったもの)
六気は本来人体に無害なもの
正気の過不足や、時期を外れた異常な気の出現
邪気
六淫
外感(感染症)の主な素因。人体で内外の環境が失調して
いる時、六淫の感作を受けると発病。
風邪
外感疾病の原因で最も多い。その他の病邪と一緒に人体に侵入することが多い。
営衛を不通にし、外風の病証を発生させる。
寒邪
陰邪。陽気が損なわれるため温煦・推動作用の失調をきたす。気血の凝滞に
よって多くの疼痛症状を引き起こす。
暑邪
陽邪。特性は昇散。昇散によって汗が出すぎると津液を消耗する。しばしば湿邪
を伴う。
六淫(2)
• 湿邪
水の性質を持ち陰邪。下に向かうという特徴があり人体の下部を侵すことが多い。
しばしば脾の運化機能に影響を及ぼし、気機の阻滞を引き起こす。
• 燥邪
人体の津液を最も消耗させやすい。肺を損傷しやすい。
• 火邪
陽邪。上に向かう特徴を持つ。気・津液を損傷しやすい。
・疫癘(えきれい)→六淫よりも強力な感染力と流行性を持つ
例:蝦蟇瘟(がまおん)=流行性耳下腺炎
霍乱(かくらん)=コレラ
天花(てんか)=天然痘
鼠疫(そえき)=ペストなど
内因
主に五臓六腑の機能失調によって起こる。
七情が関与。
七情:喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の7種類の情志(感情)の変動
• 喜~気緩む
喜びすぎると心気が緩み、精神を1つに集中できなくなる。ひどくなると失神や狂
乱などの意識異常が起こる。心を損傷する。
• 怒~気上る
怒りすぎると肝の疏泄機能に異常が生じ、肝気が横逆して上衝する。血が気に
随って逆行すると昏厥(突然倒れる、四肢厥冷、意識不明、人事不省)をおこす。
• 悲(憂)~気消える
悲しみすぎると肺気が弱まり意気消沈するようになる。
七情(2)
• 恐~気下る
恐れすぎると腎気不固になり、気が下にもれて二便の失禁がおこる。
• 驚~気乱れる
突然驚くと心神のよりどころがなくなり、どうしてよいかわからない混乱状態にな
る。腎を損傷する。
• 思~気結す
思慮しすぎると気機を鬱結させ、心を傷め脾を損なう。
不内外因
労逸-過剰な行動
労倦:動かし過ぎて疲労した状態
安逸:じっとしたままで運動不足の状態
飲食失節―飲食の節度が失われたもの
飢飽失常:飢餓→気血の不足
過食→脾胃に負担
飲食不潔:不衛生なものや傷んだものを食べる
→食中毒を起こす
偏食:食事のバランスが悪い
→体内の陰陽バランスを崩す
外傷―打撲、ねんざ、骨折、虫さされ、火傷、凍傷など
→血の流れを一時的に停滞させる
病機
•
•
•
•
•
邪正盛衰
陰陽失調
気血失調
臓腑病機
経絡病機
邪正盛衰
• 邪気vs正気
⇒どのようなバランスか?
⇒虚実の決定
• 状況により、変化する。
• どちらともわかりにくい場合もある。
陰陽失調
• 発病因子により、陰陽の平衡が失調
• 相互関係失調:臓腑・経絡・気血・営衛
• 気機の失調:表裏出入・上下昇降
気血失調
気-機能減退
-運行失調
血-機能減退
-運行失調
津液-津液の不足
-代謝の異常
気血失調
気-機能減退 気虚・気陥
-運行失調 気滞・気逆・気閉・気脱
血-機能減退 血虚
-運行失調 血熱・血瘀
津液-津液の不足 生成不足・消耗過多
-代謝の異常 輸送障害・排泄障害
五臓の病証
心の病証
心の病証
心気虚
心陽虚
心血虚
心陰虚
心火亢盛
概説
心の気の不足
心気虚が長引いた結果、そ
症状
身体所見
動悸,動作時の息切れ,
顔色は淡白,舌は淡,舌苔
眩暈,元気が無い
は白潤,脈は虚弱無力
多くの場合心気虚と同じ。 顔色は晦暗でツヤに乏しい,舌は
れに伴って起こる事が多い。 寒がる,四肢の冷え
胖で淡,舌苔は白滑,脈は微細
心の血の不足
動悸,息切れ,不眠,
顔色は淡白,口唇も淡白,舌は淡
多夢,健忘
舌苔は白滑,脈は細弱
動悸,息切れ,多夢,
頬部が赤い,舌は紅で津液に乏
五心煩熱,潮熱,盗汗
しい,脈は細数
胸中煩熱,不眠,口渇,
顔色が紅潮,舌は光紅,脈は細数
心の陰液の不足
「心火上炎」とも呼ばれる。
大便の乾燥,尿量減少
心の脈が塞がれたり、
心脈痺阻
寒邪が心陽を凝固する
心臓部の苦悶感や疼痛
原因によって様々
精神錯乱
舌苔は厚膩,脈は弦滑
健忘,恍惚,精神錯乱
舌には瘀点や瘀斑が見られ、脈は
事等によって起こる。
痰迷心竅:痰濁により心竅
痰瘀迷竅
が塞がれたもの
瘀血阻竅:瘀血により心竅
が塞がれたもの
渋となる。
熱邪逆心
熱邪が心包を犯したもの
高熱等の熱証,昏迷,
(熱入心包)
で、心竅が塞がれる。
意識障害
肺の病証
肺の病証
肺気虚
概説
症状
身体所見
肺気が虚衰したもので、全身の気虚に伴って
咳嗽,喘息,息切れ,
舌は淡,舌苔は白潤,
現れる事もある。
声に力が無い,寒がる,
脈は虚弱
風邪をひきやすい
肺陰虚
主に熱邪が肺に停滞し、肺の津液を損傷する
乾咳,少量の粘痰,口内
事によって発症する。
乾燥,手足のほてり,盗汗
風寒犯肺 風寒の邪が肺と表を犯したもの。
悪寒,喘息,乾咳,白く
舌は紅,脈は細数
舌は淡紅,舌苔は薄白
て薄い痰,鼻閉
痰飲を有する人が風寒の邪を受ける事によって
飲邪干肺 痰飲が誘発されて肺を犯す。
喘息,咳嗽,白い泡沫状
舌は淡紅,舌苔は薄白
の痰
で水滑,脈は浮あるい
は弦滑
痰湿阻肺 肺の運化機能の低下と水道調節作用の失調
が重なり痰湿が滞留する。
熱邪壅肺 風熱の邪に犯されたり風寒の邪が化熱したり
して熱が肺に鬱積したもの。
燥邪犯肺 主として秋に肺が燥邪の侵襲を受けたもの。
多量の白色痰の喀出,
舌は淡紅,舌苔は白膩,
乾咳
脈は滑
高熱,煩躁,呼吸が粗い,
舌は紅,舌苔は黄,脈は
乾咳,痰は黄色粘稠,便秘
滑数
気道の乾燥症状,傷津の
舌は紅,舌苔は白,脈
症候,喀痰,発熱,軽度の
は数大
悪寒,鼻粘膜等の乾燥
脾の病証
脾の病証
脾気虚
脾陽虚
中気下陥
脾不統血
寒湿困脾
概説
症状
身体所見
脇気の不足により、運化の失調を
食欲不振,腹満感,全身倦怠感,
顔色は萎黄,舌は淡,舌苔
きたしたもの。
浮腫
は薄白,脈は綾弱
脾の陽気が不足する病態で、多く
脾気虚の症状,四肢の冷え,寒に
舌は淡胖,舌苔は薄白,脈
は脾気虚から発展する。
よって悪化する腹痛や下痢
は遅で弱
脾気虚から進展したもので、昇挙
脾気虚の症状,腹部の下墜感,肛門
舌は淡あるいは光紅,舌苔
無力となる。
の下墜感,便意,脱肛,子宮脱,
は薄白,脈は弱あるいは寸
深呼吸を好む
が沈んで尺が浮大無力
脾気虚から進展したもので、統血
出血(鼻出血,下血,血尿,諸種の内
舌は淡,舌苔は薄白,脈は
作用が失われる。
出血,子宮出血,…etc.)
弱
飲食の不摂生や、寒く湿気の多い
腹満感,食欲不振,軟便,悪心,
環境に長期間過ごす事により、脾
嘔吐,頭や体が重い,浮腫,小便
黄疸,舌は淡胖,舌苔は白
の陽気が消耗されて「内湿」を生じ
不利
膩,脈は濡緩
これが脾の運化機能を障害する。
湿熱蘊脾
甘いものや油っこいものの多食、
体や頭が重い,悪心,嘔吐,便は軟
飲食過多、あるいは外来の湿熱
らかいがすっきり出ない,口苦,口渇, 黄疸,舌は紅,舌苔は黄膩,
の邪を感受する事によって、脾の
浮腫,尿量減少
運化機能が失調したもの。
脈は濡数
肝の病証
肝の病証
概説
症状
身体所見
である脾が虚したり、あるいは慢性
眩暈,耳鳴,視力減退,多夢,
顔色はツヤが無い,舌は淡,
の疾病のために血が消耗したりして、
爪の変形,手足震戦,月経量
舌苔は白,脈は弦細
肝に蔵する血が少なくなり、肝が濡養
減少,無月経
腎精が虧損したり、気血生化の源
肝血虚
されなくなった状態。
抑鬱感,イライラ,激しい情緒
肝気鬱結 肝の疏泄機能が失調したもの。
的な反応,胸脇部や少腹部の
舌苔は薄白,脈は弦
膨満感や疼痛や苦しさ
特有の脾胃の病変,吐こうとし
肝気横逆 鬱結された肝気が脾胃の機能を障害
するもの。
ても出ない,頚部の腫瘤,生理
不順,生理痛,月経期の乳房
腫痛や腫瘤
肝気鬱結が進行して化火したり、ある
上半身の熱症,激しい頭痛,
肝火上炎 いは情緒が激しく変動したり、辛辣な
顔面紅潮,眼の充血,耳鳴,
舌は紅,舌苔は黄で乾燥,脈
ものを過食する事によって病的な火を
難聴,口乾,イライラ,不眠で
は弦数あるいは弦滑数
生じたもの。
悪夢を見る,吐血,鼻出血
肝の病証
概説
症状
身体所見
眩暈,耳鳴,顔面紅潮,のぼせ,
肝陽上亢 肝の陰液の不足によって肝の陽気
を制約出来なくなり生じたもの。
頭痛,眼のかすみ,口乾,手足の
舌は紅で少津,脈は弦細数
ほてり,盗汗,動悸,怒りっぽい,
不眠,多夢
肝の陽気が異常変動をきたして風
眩暈,振戦,痙攣,意識障害,
舌は基礎となった病態の状況
四肢麻痺,激しい動悸,耳鳴,
により様々,脈は基本的に弦
病理現象を引き起こしたもの。
不眠,四肢の痺れ
だが病態により異なる
寒邪が肝の経脈に侵入し、肝経の
肝経の支配走行領域の疼痛,少
舌は淡紅,舌苔は白潤滑,
腹脹痛,睾丸墜脹,陰嚢収縮
脈は沈弦あるいは遅
肝風内勤 となり(肝陽化風)、それが様々な
寒滞肝脈 気の流通が障害され、肝の疏泄も
失調した状態である。
甘いもの・油っこいものの過食、飲
胸脇部の脹満や疼痛,腹満感,
酒過度などのより、体内に生じた
食欲不振,悪心,口苦,便秘,
肝経湿熱 内湿が化熱し、あるいは外来の湿
下痢,痒みの強い陰部湿疹,
熱の邪を受けたりして、湿熱が肝や
睾丸の腫脹や疼痛,黄色帯下,
肝の経脈に滞留したもの。
外陰部の痒み
黄疸,舌は紅,舌苔は黄膩
腎の病証
腎の病証
腎陽虚
腎陰虚
概説
症状
身体所見
陽虚の体質、老化による陽気の損耗、
腰や膝がだるい,寒がりで四肢
舌は淡,舌苔は白,脈
慢性疾患による腎の傷害、不節制な
が冷える,精神疲労感,眩暈,耳鳴,
は沈細弱
性生活等で腎の陽気が不足したもの。
インポテンツ,夜間多尿,浮腫,喘息
腎の陰液が不足したもの。
腰や膝がだるい,眩暈,耳鳴,
舌は紅,舌苔は少ない
不眠,多夢,口乾,手足のほてり,
か無苔,脈は沈細数
盗汗,月経過少,無月経
先天的に腎精が不足していたり、後天
腎精不足 的な調節失調によって不足したり、あ
小児:成長発育の遅延,知能障害
成人:早い老化,性機能の減退,
るいは房室過多や長期にわたる病気
知能低下,動作遅延,眩暈,
等で腎精を消耗して生じる。
耳鳴,腰や膝がだるい
幼時に腎気がまだ未成熟であったり、
高齢で腎気が衰弱したり、房室過多
腎気不固 等によって腎精の消耗が激しく、腎精
多尿,頻尿,尿失禁,下痢,早漏,
舌は淡,舌苔は白,脈
早産,腰や膝がだるい,精神疲労
は沈弱
から化する腎気が虚弱で、腎の封蔵・
摂納の機能に障害をきたしたもの。
腎気不足により、あるいは咳や喘息が
腎不納気 長期にわたる事により肺が虚し、腎に
及んで、その封蔵・摂納の機能の低下
をきたしたもの。
咳嗽,喘息,吸気困難
※咳き込むと尿失禁や発汗を見る
場合もある。
舌は淡,舌苔は白,脈
は沈弱
六腑の病機
①胆の病機
②胃の病機
③小腸の病機
④大腸の病機
⑤膀胱の病機
⑥三焦の病機
胆の病機
胆…
・胆汁の貯蔵と排泄
・脾胃の消化と運化機能の補助
・決断
肝により
制御
胆が失調すると
胆汁の分泌・貯蔵・排泄障害、決断力低下
胆虚
胆気不利
【胆の気が虚した状態】
【胆気が疎琉できない状態
】
胃の病機①
胃…
・受納を主る
・水穀を腐熟する
・水穀を小腸に運ぶ(和降)
胃の機能が失調
→胃納呆滞、腐熟機能・和降の障害
胃の病機②
①胃気虚損
【胃気が消耗して虚した状態】
②胃寒内盛
【胃が寒の状態】
③胃火上炎
【胃の鬱熱が盛んで、胃火が上衝した状態】
④胃陰不足
【胃の陰液の不足した状態】
⑤胃絡瘀滞と損傷
【瘀血が胃の脈絡に阻滞した状態】
小腸の病機
小腸…
・水穀の受盛と消化
・清濁の分別
・余剰の糟粕と水分を大腸や膀胱に移動
小腸虚寒
【寒邪の侵入、腎陽不足で温煦機能が低下した状態】
小腸実熱 【小腸に熱がこもった状態】
大腸の病機
大腸…
・糟粕を伝化する
大腸の病機は主に
伝導機能の失調によって起こる。
膀胱病の病機
膀胱…
・尿を貯蔵・排出する
膀胱の病機は排尿異常が主に起こる。
三焦の病機
三焦…
【気と津液の昇降出入の通路】
・気化機能
・臓腑組織間の機能を協調させる
三焦の失調で、
肺の通調機能、脾の運化機能
腎の蒸化機能、膀胱の気化機能
大腸・小腸の伝化機能や吸収機能
肝胆の疎泄機能、水液代謝の異常
により気の流通や津液代謝の失調が起こる
。
経絡病機
• 経絡気血の盛衰
• 運行失調
内生の風・寒・湿・燥・火
• 陰陽・気・血・津液や臓腑の機能失調
⇒六淫外邪が生じたものに類似(内生五邪)
• 内風
• 内寒
• 内湿
• 内燥
• 内熱、内火
病機
•
•
•
•
•
邪正盛衰
陰陽失調
気血失調
臓腑病機
経絡病機
参考文献・URL
• 医学生のための漢方医学(基礎編)/安井廣迪著
/東洋学術出版社/2008
• 簡明 漢方医学/三重大学東洋医学研究会/2006
• 中医入門/秦伯未 原著・岩橋信種 翻訳/谷口書店/2001
• 中医学の基礎/平馬直樹 他3名 監修/東洋学術出版社/2001
• 春月の『ちょこっと健康術』
http://ameblo.jp/harutsuki-ryu/
• 美空堂
http://d.hatena.ne.jp/misoradou/20071206
• 東洋医学 簡単解説
http://shinkyutoyo.blog28.fc2.com/blog-entry-15.html
• HaiPedia 証とは
http://dic.haibis.co.jp/d/%E8%A8%BC.html/1/