脳腱黄色腫

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Transcript 脳腱黄色腫

例②
××病院
TEAM ××
氏名① 氏名② 氏名③
【症例】 51歳、男性
【主訴】心電図異常
【既往歴】統合失調症(25歳時)
【現病歴】20歳台より肘、膝関節に皮下腫瘤を認めてい
たが、経過観察となっていた。その後徐々に増大してき
たことから平成X年当院皮膚科を受診し、切除術の方針
となった。術前評価の心電図にて異常を認めたため当科
へ紹介となった。
【家族歴】父:心筋梗塞、高血圧、兄:高血圧
【生活歴】飲酒:なし、喫煙:なし、アレルギー:なし
身体所見
身長:159.0㎝, 体重:64.0㎏, BMI:25.3㎏/m2
血圧:121/77mmHg, 脈拍:72回/分(整), 体温:37.2℃
頭頚部:血管雑音聴取せず,頸動脈怒張なし
心音:Ⅰ・Ⅱ音亢進・減弱なし,Ⅲ・Ⅳ音聴取せず,
心雑音なし
呼吸音:正常肺胞音,ラ音聴取せず
腹部:平坦・軟,腸蠕動音亢進・減弱なし,圧痛なし
四肢:浮腫なし,肘関節・膝関節・踵部に皮膚腫瘤あり.
診察所見
肘、膝関節に皮下腫瘤を認めた。
検査所見
CTR:47%
I,aVL:Invert T、V1~4:QSパターン.
現時点で思いつく診断は?
入院時検査所見
<血算>
WBC 5400 /µl
Hb 16.1 g/dl
Ht 47.6 %
Plt 24.0万 /µl
<凝固>
PT-INR 0.99
APTT 29.4 sec
<生化学>
TP 7.4 g/dl
Alb 4.7 g/dl
BUN 9 mg/dl
Cre 0.73 mg/dl
UA 5.7 mg/dl
Na 141 mEq/l
K
3.8 mEq/l
Cl 103 mEq/l
T-Bil2.0 mg/dl
AST 21 IU/l
ALT 14 IU/l
γ-GTP 34 IU/l
LDH 232 IU/l
CPK 169 IU/l
冠動脈造影検査
RCA:有意狭窄なし。LAD:Seg.6 100%(Collateral flow from RCA4PD)
LCX:Seg.11 50%、Seg.12 50%、Seg.13 90%
身体所見
両側アキレス腱の肥大を認めた。
若年発症のMIの原因は?
追加検査所見
<脂質>
T-chol 185 ㎎/dl
TG
259 ㎎/dl
LDL-chol 105 ㎎/dl
HDL-chol 38 ㎎/dl
<アポリポ蛋白>
A-Ⅰ
120 ㎎/dl(119-155)
A-Ⅱ
27.3 mg/dl(25.9-35.7)
B 112 mg/dl(73-109)
C-Ⅱ
5.1 ㎎/dl(1.8-4.6)
C-Ⅲ
14.4 mg/dl(5.8-10.0)
E 5.6 mg/dl(2.7-4.3)
<神経学的検査>
神経:MMSE 14/30,HDS-R 11/30,指鼻指試験拙劣,
振戦あり
頭部MRI(T2WI)
(b)
びまん性萎縮あり。両側黒質、両側歯状核に高信号域あり。
その他の所見
泡沫細胞
を認めた。
<追加脂質>
コレスタノール 16.0μg/ml(正常値:2μg/ml以下)
最終診断は?
コレスタノールとは?
cholesterol
4-cholesten-3-one
5α-cholestan-3-one
cholestanol↑↑
7α-hydroxycholesterol
7α-hydroxyl-4-cholesten-3-one
5β-cholestane-3α,7α-diol
Cholesta-4,6-dien-3-one
5β-cholestane-3α,7α,27-triol
3α,7α-difydroxy-5βcholestanoic acid
Chonodeoxycholic acid
所見のまとめ
• 特に既往のない中年男性で冠動脈疾患を認めた。
• 高血圧症、糖尿病、脂質異常症といったリスクファク
ターを認めなかった。(LDL-C:正常範囲)
• コレスタノール高値を示した。
• アキレス腱の肥厚を認めており、病理にて泡沫細胞あ
り。
• 頭部MRIにて脳萎縮を認め、MMSE,HDS-Rでも低下を認
めた。
• 追加情報として、母親も同様の症状あり。初老性白内
障も認めた。
脳腱黄色腫(Cerebrotendinous xanthomatosis)
 知能低下,小脳失調,白内障,全身の腱および神経組織の黄色腫を
特徴とする常染色体劣性遺伝性疾患.
 疾患の本態はミトコンドリアの27-hydroxylaseの欠損による胆汁酸の
合成障害.
 世界中で140症例以上の報告があり,本邦では約55例と最も多い.
 中枢神経を含む全身にコレステロールとコレスタノールが蓄積し,多
彩な症状を呈し,心血管系の障害を来す症例の報告も散見(約10%)
される.
 治療はケノデオキシコール酸の内服であるが,ウルソデオキシコール
酸もコレスタノールの形成を抑制する作用があり治療に用いられる.
日本臨床;111-114
本症例の経過、まとめ
• ケノデオキシコール酸の内服を開始し、現在も外
来にてフォロー中である。
• 高血圧、糖尿病といった冠動脈リスクファクターが
ないにもかかわらず冠動脈疾患を有している症例
であった。LDL-C高値を認めないがアキレス腱肥厚
等脂質異常症の所見を認めた場合、本疾患も念
頭に置く必要がある。
診断
→脳腱黄色腫症
(Cerebrotendinous xantomatosis)