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生命科学特論B
第4回 神経伝達方式の違いと行動の変容
和田 勝
東京医科歯科大学教養部
シナプス入力の統合
3)軸索を伝導して
1)ここで多数の
シナプス入力が
統合
2)ここで活動電
位が発生
4)ここから伝達
物質を放出
チャンネル連結型受容体
チャンネル連結型受容体は、チャンネルで
あるとともに受容体という、二重の性格
1)リガンドに対する特異性
2)チャンネルとしてのイオン選択性
チャンネル連結型受容体
アセチルコリン、ナトリウムイオンチャンネル、開口
EPSPが発生
GABA、塩素イオンチャンネル、開口
IPSPが発生
シナプス電位と活動電位
EPSP、IPSPの総和は段階的シナプス電位
軸索丘で閾電位を越えれば活動電位が発生
次のニューロン(あるいは筋肉などの効果器)
へ伝えられる
介在ニューロン
もっとも単純な神経系は、感覚ニューロンと
運動ニューロンからなる
神経系が発達すると感覚ニューロンと運動
ニューロンの間に、介在ニューロンが入る
中枢神経系は介在ニューロンの集合で、こ
こでいろいろな処理が行なわれる
感覚ニューロン
介在ニューロン
運動ニューロン
介在ニューロン
介在ニューロンの数が増え、介在ニューロン
同士が複雑な連結をするようになる
介在ニューロンによる神経回路が、中枢神
経系内につくられる
特定の神経回路が定型的行動パターンに
対応する
早いシナプス伝達
さて、すでに話したように、アセチルコリンや
GABAは、チャンネル連結型受容体と結合
受容体に結合すると、チャンネルが開いてシ
ナプス後電位を発生
これを早いシナプス伝達という
早いシナプス伝達
早いシナプス伝達に関わる主な伝達物質
アセチルコリン
γアミノ酪酸(γ-aminobutyric acid、GABA)
グリシン(glycine)
グルタミン酸(glutamic acid)
このうち、アセチルコリンとグルタミン酸は興
奮性、GABAとグリシンは抑制性
AMPA型グルタミン酸受容体
パッチクランプ
の結果
4個結合するら
しい
Naイオンを通
す
GABA受容体
Clイオンを
通す
早いシナプス伝達
ここまでは早いシナプス伝達のお話
早いシナプス伝達は、比較的単純
神経系の多様なはたらきを作っているのは、
もう一つのシナプス伝達様式があるから
遅いシナプス伝達
アセチルコリンの発見
カエルの心臓をリンガ
ー液中に入れ、迷走神
経を刺激すると心拍数
が下がる
リンガー液を別のカエ
ルの心臓に作用すると
、この心臓の拍動は抑
制される
迷走神経から液性物
質が分泌される
遅いシナプス伝達
この物質がアセチルコリンであると同定される
神経筋接合部にアセチルコリンがあることが確
認され、神経伝達物質であると認定される
神経筋接合部でのアセチルコリンのはたらきは
これまで話したとおりである
それでは、このアセチルコリンがどうやって心
臓の拍動を抑制するのだろうか
アゴニストとアンタゴニスト
薬理学ではいろいろな薬物を使い、生理反応
を代替できるか、あるいは阻害するかという研
究をおこなう
代替できる薬物をアゴニスト(agonist)、阻害す
る薬物をアンタゴニスト(antagonist)と言う
アゴニストは受容体に結合して本来の作用を
起こすことができるが、アンタゴニストは受容体
に結合はするが、本来の作用は起こさず、場
所を塞いでしまう
アゴニストとアンタゴニスト
アセチルコリンの場合
神経筋接合部では、アゴニストはニコチン、ア
ンタゴニストは矢毒であるクラーレ
心臓の迷走神経では、アゴニストはムスカリン、
アンタゴニストはベラドンナの成分であるアトロ
ピン
2種類の受容体
ここで回転できるので両方の受容体に結合
アゴニストを使うことによって、アセチルコリンの受
容体に2種類あることがわかった
ムスカリン受容体
アセチルコリンが迷走神経の節後繊維から
放出されて抑制的にはたらくのは、アセチル
コリンがムスカリン受容体と結合するため
この受容体は、ホルモン受容体のところで
述べたGタンパク質連結型受容体だった
ヒトムスカリン受容体(青い部分は膜貫通ドメイン)
1
61
121
181
241
301
361
421
1
MNNSTNSSNN
FLFSLACADL
RYFCVTKPLT
FSNAAVTFGT
VKPNNNNMPS
ITQDENTVST
VARKIVKMTK
VWTIGYWLCY
11
SLALTSPYKT
IIGVFSMNLY
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AIAAFYLPVI
SDDGLEHNKI
SLGHSKDENS
QPAKKKPPPS
INSTINPACY
21
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IMTVLYWHIS
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KQTCIRIGTK
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ALCNATFKKT
31
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FKHLLMCHYK
41
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FWQFIVGVRT
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NTTVEVVGSS
APYNVMVLIN
NIGATR
51
NRHLQTVNNY
VMNLLIISFD
VEDGECYIQF
VSPSLVQGRI
AVASNMRDDE
GQNGDEKQNI
TFCAPCIPNT
60
120
180
240
300
360
420
ムスカリン受容体
副交感神経迷走神経
末端から放出
心臓のアセチルコリン
(ムスカリン)受容体と
結合
Gタンパク質を活性化
活性化したβγがKチャ
ンネルを開く
自律神経系
黒:交感神経
赤:副交感神経
内蔵や血管へ
両方が分布し、
拮抗的にはた
らく
中枢から神経節までの神経繊
維を節前繊維、神経節から先
の神経繊維を節後繊維
交感神経と副交感神経
副交感神経である迷走神経の節後繊維から
放出されたアセチルコリンが、心臓に抑制的
にはたらくのは、ムスカリン受容体と結合する
ため
それでは、交感神経が興奮性にはたらくのは?
交感神経の節後繊維からはノルアドレナリンが
分泌される
交感神経の心臓への作用
交感神経の節後繊維からはアドレナリンが
分泌される
心臓ではアドレナリンは受容体に結合し、ア
デニル酸シクラーゼを活性化してcAMPを産
生する
アドレナリン受容体β1(青い部分は膜貫通ドメイン)
1
11
21
31
41
51
1 MGAGVLVLGA SEPGNLSSAA PLPDGAATAA RLLVPASPPA SLLPPASESP EPLSQQWTAG
61 MGLLMALIVL LIVAGNVLVI VAIAKTPRLQ TLTNLFIMSL ASADLVMGLL VVPFGATIVV
121 WGRWEYGSFF CELWTSVDVL CVTASIETLC VIALDRYLAI TSPFRYQSLL TRARARGLVC
181 TVWAISALVS FLPILMHWWR AESDEARRCY NDPKCCDFVT NRAYAIASSV VSFYVPLCIM
241 AFVYLRVFRE AQKQVKKIDS CERRFLGGPA RPPSPSPSPV PAPAPPPGPP RPAAAAATAP
301 LANGRAGKRR PSRLVALREQ KALKTLGIIM GVFTLCWLPF FLANVVKAFH RELVPDRLFV
361 FFNWLGYANS AFNPIIYCRS PDFRKAFQGL LCCARRAARR RHATHGDRPR ASGCLARPGP
421 PPSPGAASDD DDDDVVGATP PARLLEPWAG CNGGAAADSD SSLDEPCRPG FASESKV
60
120
180
240
300
360
420
交感神経の心臓への作用
cAMPはPKA(Aキナーゼ)を活性化し、心
臓ではPKAは電位依存性カルシウムチャン
ネルを開くことによって、興奮しやすくして心
臓の鼓動を早めている
心臓に対する交感神経系と副交感神経系
の拮抗的なはたらきは、このような仕組みで
達成されている
自律神経系と運動神経系
シナプスは薬物の作用点
伝達物質の受容体は毒や薬物の標的であ
り、これを利用すると薬を開発することがで
きる
クラーレはニコチン受容体に作用して、筋肉
を弛緩させるが、ムスカリン受容体には作
用しないため、心臓には影響しない
シナプスは薬物の作用点
向精神薬は、中枢のシナプスに作用する
benzodiazepin “tranquilizers”やbarbiturate
drugsは、GABAとともにそれぞれ異なる受
容部に結合し、低いGABA濃度でチャンネ
ルを開くように作用し、GABAの作用を増強
する
シナプスにおける伝達
早いシナプス伝達は信号を直線的に伝える
早いシナプス伝達には興奮性伝達と抑制性
伝達がある
遅いシナプス伝達もある
遅いシナプス伝達によって、信号の伝わり方が
修飾される
伝達の修飾
リガンド依存型チャンネルによる早い伝達
は、チャンネルとリンクしていない細胞表面
受容体により修飾される
このような遅い効果は神経修飾(neuromodulation)とも言う
交感神経のところで述べたように、Gタン
パク質連結型受容体を介している
Gタンパク質の作用の仕方
Gタンパク質はアデニル酸シクラーゼを活性
化、あるいは不活性化し、cAMPのレベルを調
節。cAMPはPKA(Aキナーゼ)を活性化し、チャ
ンネルをリン酸化
Gタンパク質はイノシトールリン脂質系を活
性化し、これがPKC(Cキナーゼ)を活性化し、
カルシウムイオンをストアサイトから放出。これ
らがチャンネルをリン酸化
Gタンパク質は直接あるいは間接的にイオン
チャンネルを開閉
筋組織の種類と特徴
骨格筋
あり
早い
随意
多数
心筋
あり
中間
不随意
1つ
平滑筋
なし
遅い
不随意
1つ
収縮の制御
神経
自立的ただ
し神経に
よって修飾
神経、ホル
モン、伸展
細胞同士が
ギャップ結
合で連結?
いいえ
はい
はい
横紋は?
収縮の早さ
随意?
細胞あたり
の核の数
骨格筋の構造
骨格筋の構造
暗帯
明帯
骨格筋の収縮
刺激
電気信号はT管を伝わって筋小胞体へ
筋小胞体からのカルシウムイオンの放出
放出されたカルシウムイオンがトロポニンに
結合
トロポミオシンが変形してアクチンフィラメントの
ミオシン結合部位の露出
ミオシン頭部がアクチンフィラメントへ結合
サイトゾールのATPがミオシン頭部へ結合
ミオシン頭部が曲がってアクチンフィラメントを
手繰りこむ
平滑筋
平滑筋は血管、消化管、膀胱、子宮などの内
蔵器官の管壁を構成し、血管の太さ、消化管運
動(蠕動運動)、膀胱や子宮などの泌尿生殖器
の機能などの調節、瞳の大きさの調節など、多く
の生体反応に重要な役割をはたす
平滑筋は、骨格筋と違って不随意筋で、自律
神経の支配を受けている
平滑筋
ヒト十二指腸の平滑筋(http://www.med.toho-u.ac.jp/anat1/anatomy/t13.html)より
平滑筋
平滑筋の特徴
平滑筋にもアクチンとミオシンがあり、中間径フ
ィラメントによって細胞膜と結合。Z膜もT管系も
なく、dense bodyによってアクチンフィラメントの端
が束ねられている
筋小胞体の発達は悪く、カルシウムイオンは筋
小胞体からも放出されるが、大部分はカルシウ
ムチャンネルを通って細胞外から流入
平滑筋の特徴(2)
交感神経系のアドレナリンと、副交感神経系の
アセチルコリン(ムスカリン様)の二重支配を受け、
細胞内メッセンジャーがチャンネルタンパク質を
修飾して、カルシウムイオン濃度が調節される
トロポニンは存在せず、ミオシンが修飾される。
カルシウムイオンはカルモジュリンと結合し、カル
シウムイオン-カルモジュリン複合体となって、ミ
オシン軽鎖キナーゼを活性化し、ミオシンをリン
酸化してアクチンと結合できるようにする
平滑筋の特徴(3)
平滑筋の中には、他の信号分子の修飾を受け
るものがある
たとえば子宮の平滑筋は、脳下垂体神経葉の
オキシトシンによって収縮
ということは、子宮の平滑筋には、オキシトシン
の受容体がある
このようなメカニズムで平滑筋は複雑な反応をお
こなう
中枢神経系での修飾
このような修飾は中枢神経系でもおこっている
特にモノアミンが重要
アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、
オクトパミン、ヒスタミン、セロトニンなど
たとえば、ノルアドレナリンは橋の青斑核に細胞
体のあるニューロンの伝達物質
中枢神経系での修飾
中枢神経系での修飾
ラット脳内のアドレナリン作動性ニューロンの走行
中枢神経系での修飾
ラット脳内のドーパミン作動性ニューロンの走行
中枢神経系での修飾例
カエルの交感神経節
節後ニューロン
3種類のEPSP
ニコチニック受容体
GnRHの受容体
ムスカリニック受容体
Late, slow EPSPはGnRHで
電気刺激に
よるEPSP
GnRHを与え
る
Late, slow EPSPはLHRHで
電気刺激によ
る反応の後で
も、GnRHのア
ンタゴニストに
よってEPSPは
抑制される
AchとGnRHの関係
動物の行動
生まれつき備わった行動(生得的行動)
学習による行動
遺伝的に決まって
いない?
高等動物だけ?
遺伝的に決まっている
神経回路が存在
ホルモンなどによる
動機付け
信号刺激により解発
生得的行動と
解発
無効
有効
信号刺激(鍵刺激)
生得的行動の解発
中枢神経系内にはプログラム発生器がある
これが鍵刺激によって解発される
生得的行動の解発
鍵刺激
鍵刺激
検出機構
プログラム
発生器
行動
鍵刺激
検出機構
プログラム
発生器
行動
生得的行動・学習による行動
生得的行動(innate behavior)
刷り込み(imprinting)
さえずりの学習(crystalization)
学習や知能によって獲得される行動
どのようなしくみ?
鍵はシナプスの可塑性
生得的行動の修飾例
Kandelによるアメフラシの行動の研究
California sea hare
アメフラシの神経系
アメフラシの行動と腹部神経節
アメフラシの行動
アメフラシは、水管を触ると鰓を引っ込める
繰り返し触っていると、「慣れ(habituation)」
が起こって引っ込めなくなる
頭を叩いたり電気ショックを与えると、「慣
れ」はなくなり、再びよく反応するようになる
(「感度の強化、sensitization」)
「感度の強化」は、電気ショックの大きさに
より、数分から数時間続き、簡単な短期記
憶に相当する
感度の強化
「感度の強化」のとき、運動ニューロンのシナ
プス後電位は大きくなっている
感度の強化
シナプスでの伝達物質放出量は、シナプス
前膜に流入するCaイオンによって調節されて
いる
「感度の強化」がおこるときには、水管から
の感覚ニューロンにシナプスを作る促通性介
在ニューロンがセロトニンを放出
セロトニンは感覚ニューロン軸索末端上の
受容体と結合し、Gタンパク質を介してcAMP
の合成を高め、PKAを活性化し、Kイオンチャ
ンネルをリン酸化して閉状態にする
感度の強化
そのため、静止電位に戻らなくなり、電位
依存性Caイオンチャンネルは開状態を続
け、Caイオンの流入が長く続く、伝達物質
の放出も多くなる
そのため、、伝達物質の放出も多くなる
チャンネルが脱リン酸化されればもとに戻る
記憶のメカニズム
このようなチャンネルの修飾が固定化され
るのが長期記憶。固定化には核へ情報が伝
えられ、タンパク質合成が誘導される
学習による行動の変容
これを模式図で示すと、、
記憶のメカニズム
http://www.cellscience.com/reviews6/Learning-related_synaptic_growth.html
記憶のメカニズ(海馬)
哺乳類では海馬(大脳辺縁系)が重要で
ありことが分かっている
記憶のメカニズ(海馬)
記憶のメカニズ(海馬)
この項東京都老人研HPより(http://www.tmin.ac.jp/medical/09/memory1.html)
NMDA型グルタミン酸受容体
NMDA受容体は、静止膜電位レベルではMg2+が
Ca2+流入口をふさぐように結合している。
グルタミン酸がAMPA受容体を介して主にNa+をシ
ナプス後膜へ流入させる。
AMPA受容体に反復する刺激が入ると、シナプス
後膜が脱分極してNMDA受容体よりMg2+がはず
れ、Ca2+がシナプス後膜に流入する。
Ca2+ はCaMKと結合してチャンネルをリン酸化して
長期間活性化(LTP)。
長期記憶として固定
長期記憶をする場所に移され、遺伝子読み出しを
経て、構造として固定する。
固定化される過程には、さまざまな因子が関与す
る。
ここでは、これ以上は省略する。