第12,13回講義の内容

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Transcript 第12,13回講義の内容

個体と多様性の
生物学
第10回 神経伝達とその修飾
和田 勝
東京医科歯科大学教養部
伝導と伝達
2)軸索を伝導して
1)ここで活動電
位が発生
3)ここから伝達
物質を放出
シナプスの構造
シナプスは、シナプス前膜、シナプス間隙、
シナプス後膜から構成されている
神経伝達物質の放出
神経軸索末端まできた電気的信号によって、
どうして神経伝達物質アセチルコリンの放出
がおこるのだろうか
いくつかの膜タンパク質が関わっている
順を追って説明していこう
伝達物質の放出 1
インパルスが軸索末端に到着
伝達物質の放出 2
電位依存型Caチャンネルが開い
てCaイオンが流入
伝達物質の放出 3
シナプス小胞がシナプス前膜と融
合して開口分泌で伝達物質を放出
伝達物質の放出 4
神経伝達物質アセチルコリンはシ
ナプス間隙を拡散し、受容体と結合
伝達物質の放出 5
受容体は開口し、Naイオンが流入
伝達物質の放出 6
アセチルコリンは分解され、小胞
膜はリサイクルされる
神経伝達物質の放出
神経軸索末端まできた電気的信号によって、
神経伝達物質アセチルコリンの放出がおこる
シナプス前膜から放出されたアセチルコリ
ンはシナプス間隙を拡散して、シナプス後
膜のアセチルコリン受容体と結合する
アセチルコリン結合から活動電位
アセチルコリン
受容体
アセチルコリン結合
電位依存型
Naチャンネル
電位依存型Na
チャンネル開
チャンネル開
このサイクルを
繰り返す
Naイオン流入
活動電位発生
電位変化(小)
電位変化
電位依存型Naチャンネルと
アセチルコリン受容体
どちらもNaイオンを通すチャンネルを有す
電位依存型Naチャンネルは、電位変化で
開口し、アセチルコリン受容体はアセチルコ
リンが受容体に結合すると開口する
電位変化の影響を受けず、アセチルコリン
の量に比例して開口し、全か無かの反応で
はなく、段階的反応
リガンド連結型受容体
一般的に、アセチルコリンのように受容体
に結合できる分子をリガンドと呼ぶ
リガンド連結型受容体は、チャンネルである
とともに受容体という、二重の性格
1)リガンドに対する特異性
2)チャンネルとしてのイオン選択性
アセチルコリンの分解
アセチルコリンはシナプス間隙でアセチルコリン
エステラーゼによって分解される
上:分子全体、右:酵素部分
アセチルコリン受容体
それでは、アセチルコリン受容体の本体は?
ダイバーのための
海水魚図鑑より
いきなりシビレエイが出てきたが、、
アセチルコリン受容体
シビレエイの電気器官からmRNAを取り出し、
cDNAをつくり、アミノ酸配列を推定
電気器官:筋細胞の特殊化した電
気細胞が、積層電池のように重なっ
て高電圧をつくれる
アミノ酸の疎水性の度合いを計算して、横軸に
アミノ酸番号を、縦軸に疎水性度をとってプロッ
ト、こうしてタンパクの構造を推定
アセチルコリン受容体
アセチルコリン受容体
4回膜貫通型のモノマーが、5つ会合した五量
体である
サブユニットは、α、β、γ、δからなり、αは2個で
、α2βγδという構造
サブユニットαにアセチルコリン受容部がある
アセチルコリンが2個、結合できる
アセチルコリン受容体
アセチルコリン受容体の性質
パッチクランプ法による
終板電位
ナトリウムイオンが流入すれば電流が流れ、局
所的に電位が脱分極に向かう
ガラス電極を終板のシナプス後膜側に刺入して、
この電位変化を測定することができる
この電位を終板電位(endplate potential、EPP)
という
EPPは活動電位とは異なり、全か無かの法則に
はしたがわない
シナプス後電位
ニューロンが次のニューロンとシナプスをつくる
場合も、終板電位と同じように、シナプス後膜側
に微小な電位が発生する
この電位をシナプス後電位(postsynaptic
potential、PSP)という
リガンドの種類によっては、塩素イオンを通して
膜電位を過分極側に振ることもある
シナプス後電位
●Naイオンを通して膜電位を脱分極側に
興奮性シナプス後電位(EPSP)
●塩素イオンを通して膜電位を過分極側に
抑制性シナプス後電位(IPSP)
シナプス後電位
EPSPの
時間的加算
シナプス後電位
EPSPの
空間的加算
シナプス後電位
IPSP
シナプス後電位
EPSPとIPSP
の加算
シナプス入力の統合
1つのニューロンは、他のニューロンからの多
数のシナプスを、細胞体部と樹状突起上につく
っている
これらの入力は、時間的、空間的に加算されて
軸索丘ヘ伝えられ、軸索丘で閾電位を越えれ
ば、活動電位が発射される
シナプス後電位は段階的だが、軸索丘では全
か無かの反応→アナログデジタル変換
シナプス入力の統合
3)軸索を伝導して
1)ここで多数の
シナプス入力が
統合
2)ここで活動電
位が発生
4)ここから伝達
物質を放出
シナプス入力の統合
EPSPはナトリウムイオンチャンネルが開くため
IPSPは塩素イオンチャンネルが開くため
どうしてその様な差が生じるか?
リガンド依存性チャンネル
リガンド依存性チャンネルは、チャンネルで
あるとともに受容体という、二重の性格
1)リガンドに対する特異性
2)チャンネルとしてのイオン選択性
リガンド依存性チャンネル
アセチルコリン ナトリウムイオンチャンネル 開口
EPSPが発生
GABA 塩素イオンチャンネル 開口
IPSPが発生
シナプス電位と活動電位
EPSP、IPSPの総和は段階的シナプス電位
軸索丘で閾電位を越えれば活動電位が発生
次のニューロン(あるいは筋肉などの効果器)
へ伝えられる
介在ニューロン
もっとも単純な神経系は、感覚ニューロンと
運動ニューロンからなる
神経系が発達すると感覚ニューロンと運動
ニューロンの間に、介在ニューロンが入る
中枢神経系は介在ニューロンの集合で、こ
こでいろいろな処理が行なわれる
感覚ニューロン
介在ニューロン
運動ニューロン
介在ニューロン
介在ニューロンの数が増え、介在ニューロン
同士が複雑な連結をするようになる
介在ニューロンによる神経回路が、中枢神
経系内につくられる
特定の神経回路が定型的行動パターンに
対応する
早いシナプス伝達
さて、すでに話したように、アセチルコリンや
GABAは、リガンド連結型受容体と結合
受容体に結合すると、チャンネルが開いてシ
ナプス後電位を発生
これを早いシナプス伝達という
早いシナプス伝達
早いシナプス伝達に関わる主な伝達物質
アセチルコリン
γアミノ酪酸(γ-aminobutyric acid、GABA)
グリシン(glycine)
グルタミン酸(glutamic acid)
このうち、アセチルコリンとグルタミン酸は興
奮性、GABAとグリシンは抑制性
グルタミン酸受容体
パッチクランプ
の結果
4個結合するら
しい
Naイオンを通
す
GABA受容体
Clイオンを
通す
早いシナプス伝達
ここまでは早いシナプス伝達のお話
早いシナプス伝達は、比較的単純
神経系の多様なはたらきを作っているのは、
もう一つのシナプス伝達様式があるから
遅いシナプス伝達
アセチルコリンの発見
カエルの心臓をリンガ
ー液中に入れ、迷走神
経を刺激すると心拍数
が下がる
リンガー液を別のカエ
ルの心臓に作用すると
、この心臓の拍動は抑
制される
迷走神経から液性物
質が分泌される
遅いシナプス伝達
この物質がアセチルコリンであると同定される
神経筋接合部にアセチルコリンがあることが確
認され、神経伝達物質であると認定される
神経筋接合部でのアセチルコリンのはたらきは
これまで話したとおりである
それでは、このアセチルコリンがどうやって心
臓の拍動を抑制するのだろうか
アゴニストとアンタゴニスト
薬理学ではいろいろな薬物を使い、生理反応
を代替できるか、あるいは阻害するかという研
究をおこなう
代替できる薬物をアゴニスト(agonist)、阻害す
る薬物をアンタゴニスト(antagonist)と言う
アゴニストは受容体に結合して本来の作用を
起こすことができるが、アンタゴニストは受容体
に結合はするが、本来の作用は起こさず、場
所を塞いでしまう
アゴニストとアンタゴニスト
アセチルコリンの場合
神経筋接合部では、アゴニストはニコチン、ア
ンタゴニストは矢毒であるクラーレ
心臓の迷走神経では、アゴニストはムスカリン、
アンタゴニストはベラドンナの成分であるアトロ
ピン
アセチルコリンのアゴニスト
ここで回転できるので両方の受容体に結合
ニコチン受容体と
呼ぶ
ムスカリン受容体と
呼ぶ
ムスカリン受容体
アセチルコリンが迷走神経の節後繊維から
放出されて抑制的にはたらくのは、アセチル
コリンがムスカリン受容体と結合するため
この受容体は、ホルモン受容体のところで
述べたGタンパク質連結型受容体
ヒトムスカリン受容体(青い部分は膜貫通ドメイン)
1
61
121
181
241
301
361
421
1
MNNSTNSSNN
FLFSLACADL
RYFCVTKPLT
FSNAAVTFGT
VKPNNNNMPS
ITQDENTVST
VARKIVKMTK
VWTIGYWLCY
11
SLALTSPYKT
IIGVFSMNLY
YPVKRTTKMA
AIAAFYLPVI
SDDGLEHNKI
SLGHSKDENS
QPAKKKPPPS
INSTINPACY
21
FEVVFIVLVA
TLYTVIGYWP
GMMIAAAWVL
IMTVLYWHIS
QNGKAPRDPV
KQTCIRIGTK
REKKVTRTIL
ALCNATFKKT
31
GSLSLVTIIG
LGPVVCDLWL
SFILWAPAIL
RASKSRIKKD
TENCVQGEEK
TPKSDSCTPT
AILLAFIITW
FKHLLMCHYK
41
NILVMVSIKV
ALDYVVSNAS
FWQFIVGVRT
KKEPVANQDP
ESSNDSTSVS
NTTVEVVGSS
APYNVMVLIN
NIGATR
51
NRHLQTVNNY
VMNLLIISFD
VEDGECYIQF
VSPSLVQGRI
AVASNMRDDE
GQNGDEKQNI
TFCAPCIPNT
60
120
180
240
300
360
420
ムスカリン受容体
副交感神経迷走神経
末端から放出
心臓のアセチルコリン
(ムスカリン)受容体と
結合
Gタンパク質を活性化
Kチャンネルを開く
交感神経と副交感神経
副交感神経である迷走神経の節後繊維から
放出されたアセチルコリンが、心臓に抑制的
にはたらくのは、ムスカリン受容体と結合する
ため
それでは、交感神経が興奮性にはたらくのは?
交感神経の節後繊維からはノルアドレナリンが
分泌される
交感神経の心臓への作用
交感神経の節後繊維からはアドレナリンが
分泌される
心臓ではアドレナリンは受容体に結合し、ア
デニル酸シクラーゼを活性化してcAMPを産
生する
アドレナリン受容体β1(青い部分は膜貫通ドメイン)
1
11
21
31
41
51
1 MGAGVLVLGA SEPGNLSSAA PLPDGAATAA RLLVPASPPA SLLPPASESP EPLSQQWTAG
61 MGLLMALIVL LIVAGNVLVI VAIAKTPRLQ TLTNLFIMSL ASADLVMGLL VVPFGATIVV
121 WGRWEYGSFF CELWTSVDVL CVTASIETLC VIALDRYLAI TSPFRYQSLL TRARARGLVC
181 TVWAISALVS FLPILMHWWR AESDEARRCY NDPKCCDFVT NRAYAIASSV VSFYVPLCIM
241 AFVYLRVFRE AQKQVKKIDS CERRFLGGPA RPPSPSPSPV PAPAPPPGPP RPAAAAATAP
301 LANGRAGKRR PSRLVALREQ KALKTLGIIM GVFTLCWLPF FLANVVKAFH RELVPDRLFV
361 FFNWLGYANS AFNPIIYCRS PDFRKAFQGL LCCARRAARR RHATHGDRPR ASGCLARPGP
421 PPSPGAASDD DDDDVVGATP PARLLEPWAG CNGGAAADSD SSLDEPCRPG FASESKV
60
120
180
240
300
360
420
交感神経の心臓への作用
cAMPはPKA(Aキナーゼ)を活性化し、心
臓ではPKAは電位依存性カルシウムチャン
ネルを開くことによって、興奮しやすくして心
臓の鼓動を早めている
心臓に対する交感神経系と副交感神経系
の拮抗的なはたらきは、このような仕組みで
達成されている
自律神経系と運動神経系
シナプスは薬物の作用点
伝達物質の受容体は毒や薬物の標的であ
り、これを利用すると薬を開発することがで
きる
クラーレはニコチン受容体に作用して、筋肉
を弛緩させるが、ムスカリン受容体には作
用しないため、心臓には影響しない
シナプスは薬物の作用点
向精神薬は、中枢のシナプスに作用する
benzodiazepin “tranquilizers”やbarbiturate
drugsは、GABAとともにそれぞれ異なる受
容部に結合し、低いGABA濃度でチャンネ
ルを開くように作用し、GABAの作用を増強
する
シナプスにおける伝達
早いシナプス伝達は信号を伝える
早いシナプス伝達には興奮性伝達と抑制性
伝達がある
遅いシナプス伝達もある
遅いシナプス伝達によって、信号の伝わり方が
修飾される
伝達の修飾
リガンド依存型チャンネルによる早い伝達
は、チャンネルとリンクしていない細胞表面
受容体により修飾される
このような遅い効果は神経修飾(neuromodulation)とも言う
交感神経のところで述べたように、Gタン
パク質連結型受容体を介している
Gタンパク質の作用の仕方
● Gタンパク質はアデニル酸シクラーゼを活性
化、あるいは不活性化し、cAMPのレベルを調
節。cAMPはPKA(Aキナーゼ)を活性化し、チャ
ンネルをリン酸化
● Gタンパク質はイノシトールリン脂質系を活
性化し、これがPKC(Cキナーゼ)を活性化し、
カルシウムイオンをストアサイトから放出。これ
らがチャンネルをリン酸化
● Gタンパク質は直接あるいは間接的にイオン
チャンネルを開閉
平滑筋
ここでちょっと平滑筋の話
平滑筋は血管、消化管、膀胱、子宮などの内
蔵器官の管壁を構成し、血管の太さ、消化管運
動(蠕動運動)、膀胱や子宮などの泌尿生殖器
の機能などの調節、瞳の大きさの調節など、多く
の生体反応に重要な役割をはたす
平滑筋は、骨格筋と違って不随意筋で、自律
神経の支配を受けている
平滑筋
ヒト十二指腸の平滑筋(http://www.med.toho-u.ac.jp/anat1/anatomy/t13.html)より
平滑筋
平滑筋の特徴
平滑筋にもアクチンとミオシンがあり、中間径フ
ィラメントによって細胞膜と結合。Z膜もT管系も
なく、dense bodyによってアクチンフィラメントの端
が束ねられている
筋小胞体の発達は悪く、カルシウムイオンは筋
小胞体からも放出されるが、大部分はカルシウ
ムチャンネルを通って細胞外から流入
平滑筋の特徴(2)
交感神経系のアドレナリンと、副交感神経系の
アセチルコリン(ムスカリン様)の二重支配を受け、
細胞内メッセンジャーがチャンネルタンパク質を
修飾して、カルシウムイオン濃度が調節される
トロポニンは存在せず、ミオシンが修飾される。
カルシウムイオンはカルモジュリンと結合し、カル
シウムイオン-カルモジュリン複合体となって、ミ
オシン軽鎖キナーゼを活性化し、ミオシンをリン
酸化してアクチンと結合できるようにする
平滑筋の特徴(3)
平滑筋の中には、他の信号分子の修飾を受け
るものがある
たとえば子宮の平滑筋は、脳下垂体神経葉の
オキシトシンによって収縮
ということは、子宮の平滑筋には、オキシトシン
の受容体がある
このようなメカニズムで平滑筋は複雑な反応をお
こなう
中枢神経系での修飾
このような修飾は中枢神経系でもおこっている
特にモノアミンが重要
アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、
オクトパミン、ヒスタミン、セロトニンなど
たとえば、ノルアドレナリンは橋の青斑核に細胞
体のあるニューロンの伝達物質
中枢神経系での修飾
中枢神経系での修飾
ラット脳内のアドレナリン作動性ニューロンの走行
中枢神経系での修飾
ラット脳内のドーパミン作動性ニューロンの走行
中枢神経系での修飾例
カエルの交感神経節
節後ニューロン
3種類のEPSP
ニコチニック受容体
LHRHの受容体
ムスカリニック受容体
Late, slow EPSPはLHRHで
電気刺激に
よるEPSP
LHRHを与え
る
Late, slow EPSPはLHRHで
電気刺激によ
る反応の後で
も、LHRHのア
ンタゴニストに
よってEPSPは
抑制される
AchとLHRHの関係