ガンマ線バースト偏光X線観測用小型衛星「燕」の開発 斉藤

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Transcript ガンマ線バースト偏光X線観測用小型衛星「燕」の開発 斉藤

ガンマ線バースト偏光X線観測用小型衛星「燕」の開発
斉藤孝男、有元誠、片岡淳、倉本祐輔、谷津陽一、古徳純一、五十川知子、河合誠之(東工大理)、
今井勝俊、宮元径、矢部秀幸、飯沼大、船木勇佑、臼田武史、藤原謙、桝本晋嗣、尾曲邦之、浅見正、宮澤航、松永三郎(東工大工)
第12回衛星設計コンテスト 設計大賞受賞
大学規模の小型衛星開発
小型衛星のメリット
河合研究室では、工学部松永研究室と共同で小型衛星開発を行っている。2003年6月
に松永研究室が開発し打ち上げた第1号機「CUTE-I」は純粋な工学技術実証のための衛
星であり、現在までに予定されていたミッションを全てクリアし、なお順調に稼動中である。
そして現在は工学と理学の共同開発衛星「CUTE-1.7」を、来年度の打ち上げを目指して
開発中であり、現在までに理学と工学の統合試験をクリアしている。 「CUTE-1.7」は、荷
電粒子検出器としてAPDを搭載予定である。APDは次期X線天文衛星であるNeXTに搭
載予定の検出器であり、宇宙での動作実証試験とともにSAAなどの荷電粒子帯の調査を
行う予定である。
さらに我々はこの2つの衛星の次の衛星として、本格的なサイエンスを目指せる小型衛
星、CUTE-II「燕」の設計を行っている。「燕」は30×30×20cm、20kgの衛星で、硬X線偏
光検出器と、高速姿勢制御デバイスを用い、ガンマ線バーストを含めたX線天体の偏光を
捕らえることを目標にしている。
 開発するための時間が短い(~2年)
→新しい技術の使用が可能。
→大型衛星用技術の宇宙実証にも使える。
 開発コストが少なくて済む。
→大学単位での開発が可能。
→学生の教育用としても利用可能。
NeXT衛星
2010年以降
APD搭載を検討中
CUTE-II「燕」
30×30×20cm、20kg
小型衛星による
サイエンス
CUTE-1.7
10×20×10cm、2kg
来年度打ち上げ予定
理学センサーを搭載
CUTE-I
10×10×10cm、1kg
2003年6月打ち上げ
純粋な工学技術実証
「燕」の目標:ガンマ線バーストを含めた硬X線天体の偏光観測
X線での偏光観測は1970年代の1例のみ。
(かに星雲、ブラッグ反射を用いた軟X線の観測) →硬X線は皆無!
さらに将来ミッションについても、
大型衛星のミッションはいずれも2012年以降。
気球観測が2007~8年を予定
→観測時間が短いため、ガンマ線バーストのような
突発天体には向かない。
小型衛星は開発期間が短く、長期の観測が可能!
突発天体の偏光を観測するには、
① あらゆる方向に偏光検出器を配置する
→検出器の数が膨大になるので小型衛星には向かない
② 発生を検知する検出器と偏光検出器を分け、発生を検知する
と同時に位置を算出し、その方向に迅速に姿勢を変更する
→迅速な姿勢変更が課題
よって、②の方法を選び、バースト位置検出器と高速姿勢制御デバイス
であるCMGを用いることにする。
バーストが起こっていないときには、定常天体の観測が可能
1. バースト発生
2. 発生検出・方向計算
4. 検出後、10秒以内に
観測開始
3. 高速姿勢変更
各検出器の概要
ガンマ線バースト位置検出器
硬X線偏光検出器
中央のプラスチックシンチレータ&PMT
+周囲のCsIシンチレータ&APD×8
で構成
エネルギー閾値を50~300keV
PMTとAPDの同時計数をする
→高エネルギー粒子のバックグラウンドを軽減
また、プラスチックシンチレータを擂鉢上の形状に加工
→散乱光子の自己吸収を抑える
この検出器で偏光度20%のかに星雲を観測した場合、
約60時間で3σの精度で偏光検出が可能である。
CsIシンチレータ&APD×5
衛星の偏光検出器面と反対の面以外の
合計5面に配置
入射X線
APD
ガンマ線バーストが発生すると、その方向を向いた
検出器が高いカウントレートを示し、その他は低い
値を示すので、その重みから約10°の精度で位置
を算出する。
PMT
10秒
高速姿勢制御デバイス
1
まとめ
0.75
Quaternion
0.5
コントロールモーメントジャイロ(CMG)
0.25
0
-0.25
-0.5
-0.75
-1
0
3軸トルカを形成すると特異点が発生
→従来はその領域に達しない範囲で使用
(出力小)
4つのCMGを用いて特異点回避動作を行うことに
より、本来の性能を引き出して高速な姿勢制御が
可能になる。
4
6
8
Time [sec]
10
12
14
姿勢角(quaternion)
従来法 1
回避動作 3
Anguler Velocity [rad/s] .
CMGはジャイロの回転数ではなく、その角運動
量ベクトルの方向を変えてトルクを生み出すもの
である。
2
0.02
0
-0.02
-0.04
-0.06
-0.08
-0.1
-0.12
-0.14
-0.16
-0.18
-0.2
0
2
4
6
8
10
12
14
Time [sec]
角速度
角運動量包絡域と
特異点 黒河,1987
シミュレーションの
結果。およそ10秒以
内に90°姿勢変更
が終了している。
今回、ガンマ線バーストを含めた突発天体
の偏光観測を目的にした小型衛星CUTE-II
「燕」の概念設計を行い、第12回衛星設計コ
ンテストにおいて設計大賞を受賞した。我々
河合研究室と松永研究室では、この衛星を
設計段階で終わらせず、2006年度中の打ち
上げを目指して今後も開発を進めていくつも
りである。
特に検出器部分の最適化がまだであるた
め、今後その開発も進めていきたい。