アバランシェフォトダイオード(APD)とは

Download Report

Transcript アバランシェフォトダイオード(APD)とは

アバランシェフォトダイオードを用いた撮像検出器の開発
斎藤 孝男、片岡 淳、五十川 知子、谷津 陽一、倉本 祐輔、河合 誠之(東工大理)
アバランシェフォトダイオード(APD)とは
アンガーカメラの試作と試験
5cm
アバランシェフォトダイオードは内部に電荷増幅機能を持つ光検出
器である。特徴として、
① ノイズの影響を受けにくく、エネルギー閾値及び分解能が良い
② 光電子増倍管(PMT)に比べ量子効率が良い
③ 消費電力、大きさが小さく、衝撃にも磁場にも強い
ということが挙げられ、宇宙などの過酷な環境下での使用を考えたと
きには非常に有利であるといえる。そのため、光電子増倍管に代わ
る新たな光検出器としての可能性をもっている。我々はこのAPDを
用いた、撮像検出器の開発を行っている。
hν
APD
PMT
e-
5mmAPDと5cmCsI(Tl)結晶を用いて、
4chおよび5chアンガーカメラを試作し、
2003年11月と2004年5月に高エネルギー
加速器研究機構(KEK)においてビーム照
射試験(70keV)を行った。5chアンガーカメ
ラは4chのものに中心にもう一つAPDを加
えたもので、これによる性能の変化を調べ
た。
5cm
結果
射影した位置分解能(FWHM)が、
5~15mm(4ch) → 3~11mm(5ch)と、
かなり改善されたことがわかる(右図)。
+
-
X線偏光の観測
大きさの比較
なだれ増幅
%
コンプトン散乱を起こすと、光子の散乱方向に異方性があることが
(1)式から分かる。このことを利用し、散乱光子の異方性を位置検出器
で検出する偏光計の開発を行った。散乱体に透過型のSi製APDを用
いて反跳電子も検出することにより、散乱イベントのみを検出し、バック
グラウンドを軽減できるように改良した。
E
100
APD
50
PMT
APDの内部構造
0
量子効率
nm
アンガーカメラ
位置分解能を向上させるためには
検出器を小さく、たくさん敷き詰めな
ければならない。しかし検出器を増や
すとその分読み出しに必要な回路が
増えてしまう。そのため、回路数を減
らすためにγ線カメラとして利用されて
いる「アンガーカメラ」の原理を利用し
た。
アンガーカメラは一つの大きなシン
チレータ結晶を複数のPMT検出器で
読み出し、検出器からの信号の重み
平均を取ることで位置を算出している。
・・・(1)
偏光ビーム
X
線
光
子
70keV
透過型
APD
APD
CsI
偏光観測の原理とKlein-仁科の微分散乱断面積の式
NaI
PMT
アンガーカメラの原理
アンガーカメラの特徴として
① 少ない検出器数で高い位置分解
能が期待できる
② 検出器の同時計数を行うことで
個々の検出器からのノイズをほ
ぼ全て落とすことができる
X線写真
といったことが挙げられる。
我々はこのアンガーカメラのPMTをAPDに置き換えることで、
小型で高分解能な撮像検出器の開発を目指している。
結果
右上図が得られたイメージである。しかし、
(1)式より、θの小さなとき、つまり中心付近で
は異方性が現れにくいのでその部分を取り除
いて右下図のようにするとくっきりと表れている
ことがわかる。
この透過型APDを用いれば、将来的には硬X
線ミラーの焦点面に置くことで、偏光の観測を行
うことができると考えられる。
Q  22.8%
硬X線ミラー
撮像検出器
透過型APD
また、取得したスペクトルも分解能、閾値と このAPDの上に1.6mm角CsIシンチレータを下図
のように置き、コリメータを通してX線を照射するこ
もに良い性能を示していることが分かる。
より良い分解能のために、浜松ホトニクス社と共
とでデジタルなイメージの取得を行った。それによ
同で32ch APD arrayを開発し、その性能評価を
り、以下のようなデジタルイメージの取得に成功し
行った。その結果、増幅率、ダークカレント、容量
た。
ともに非常に良く揃った個性を示している。
32ch APD arrayの性能評価
2500
2000
1500
1000
1.2
500
4
増幅率のばらつき ~3%
1
g h
f
e
d
a b c
0
500
400
55Fe+テストパルスのスペクトル
1.0
300
分解能@5.9keV 6.9~8.7%、閾値 ~0.6keV
200
100
32ch APD array
[nA]
10.0
ダークカレント
ID ~ 1.5 nA
4
0.8
1
チャンネル
[pF]
20.0
容量 ~ 10 pF
10.0
5.0
0.0
0.0
チャンネル
57Coのスペクトル
チャンネル
分解能@122keV 12.5~15.2%、
閾値 10~20keV
h
e f g
d
c
a b
0
まとめと今後の課題
4ch、5chアンガーカメラを製作し、その性能を調べ
た。また、透過型APDと組み合わせることでバックグ
ラウンドの少ない偏光計を作ることに成功した。
今後は32ch APDarrayを用いたアンガーカメラの製
作を行うとともに、読み出しシステムの効率化(アナロ
グVLSIの利用や、抵抗分割法など)を行う予定である。