気液2相型アルゴン光検出器 による暗黒物質探索
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Transcript 気液2相型アルゴン光検出器 による暗黒物質探索
日本物理学会 2015 年 第 70 回 年次大会
@早稲田大学 早稲田キャンパス
2015 年 3 月 23 日(月)
23pCC-3
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ANKOK実験 1:
気液2相型アルゴン光検出器
による暗黒物質探索
早大理工 藤崎薫
五十嵐貴弘, 加地俊瑛, 川村将城, 木村眞人, 鈴木優飛,
田中雅士, 中新平, 横山寛至, 寄田浩平, 鷲見貴生
気液2相型アルゴン光検出器
PMT
PMT
気相
2次蛍光(=S2)
Anode
-
e-ee-
液相
PSD
> 3 kV/cm
S1減衰時間
Fast: ~ 6 ns
Slow: ~1.5 μs
↑Drift
ER
1次蛍光(=S1)
Cathode
PMT
NR
~ kV/cm
e-e- e
DM
PMT
DM, n → 原子核反跳 (NR)
e, γ → 電子反跳 (ER)
PMT
PMT
PMT
PMT
液体アルゴン
0
1μs
S2/S1
NR
入射
→ 密度 1.39 g/cm3 沸点 -186℃
シンチレーション光
→ 真空紫外 ~128 nm
39Arのβ線
2/11
(1Bq/kg @大気Ar)
4μs
3μs
2μs
液相
S1
5μs
気相
S2
drift
time
time
drift time
ER
入射
time
ANKOK実験の物理目標
DarkSide50 (2014)
1400kg×days
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Arによる~10GeV WIMP探索
+ 2014
Results
→ ENR< ~20keVnrの信号検出が必要条件
↓ 50GeV WIMP
PandaX(2014)
←10GeV WIMP
ENR < ~20keVnr
光量最大化
ER事象除去能力の評価と向上
その他背景事象の詳細理解
First result from DS-50
arXiv:1410.0653 (2014.Oct)
DS-50との比較考察
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DS-50 : 世界最高感度のAr2相型実験
DS-50 : PSD vs 光量
WIMP search signal region
f90 : PSD parameter
(39Ar:ER事象が支配的)
DAMA
WArP(2007)
100kg・days
− : NR signal eff
CoGeNT
(2013)
DS-50 (2014)
1400kg・days
LUX 2013
光量 (pes)
DS-50のPSD分布
80 < S1 < 85pes
(閾値~40keVnr)
NR eff ~ 10%
f90
ER事象の染み出しによりエネルギー閾値が制限
< ~20keVnr の達成には、
→ PSD分散の理解・抑制が重要
• 物理プロセス詳細理解 (dE/dX依存等)
• 検出器特性の影響 (PMT応答等)
• 解析手法改善 (photo-countig等)
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ANKOK開発戦略チャート
光量
検出器応答
BG理解
検出光量向上
(TPB蒸着・反射材の最適化)
S1 PSD能力評価
2013末
S1,S2基礎特性の理解
(電場依存性など)
環境中性子
測定(LAr)
2014秋学会
光量最大
化
PSD分散の理解
(高QE PMT)
2相型光量向上
現在
2015~
時間
環境中性子
測定(液シン)
α線による内部
BGの見積もり
大光量2相検出器特性理解
物理感度のある2相型検出器
1相小型
(~0.2kg)
簡易2相
(~0.5kg)
1相小型
(~0.4kg)
大光量2相
(~0.4kg)
検出器
検出光量最大化の取り組み
目的
R6041-506
- 検出光量の最大化
変更点
DS-10 (null
E)
- LAr用高QE-PMTの導入
QE 25%
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R11065
ANKOK
2014年10月
QE 34%
DS-50 (200V/cm)
1相型検出器を構築し、各種γ線源により光量を評価
22Na
57Co
内部:TPB蒸着
有効質量 0.36kg
(φ74mm, H60mm)
511keV
122keV
WArP
137Cs
ArDM
662keV
22Na
1274keV
Jan 2013年 Dec/Jan 2014年 Dec
→ 世界最高レベルの検出光量の達成
2相型検出器の改良
2014年秋の2相型検出器
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2015年1月の2相型検出器
テフロンユニット構造
10cm
PMT
10cm
石英
Reflector + TPB
ガスアルゴン
Grid
石英+ITO電極
取り出し電場
光量算出
Grid
液体アルゴン
ドリフト電場
Reflector + TPB
ITO
石英
S2が出ない
(少ない)事象に
見えてしまう
10cm
• ふちのあるGrid × 5枚(反射率 <
~60%)
•
検出器径
> PMT径
反射回数の増加に伴う光量の減少
S2不感領域の存在
6.4cm
PMT
課題を解決するデザイン
• 透明電極膜ITO(Indium Tin Oxide)
の 電 極 へ の 採 用 (10nm 厚 、 吸 収 損 失 率
<1%)
新しい2相型検出器の光量評価
137Cs
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(γ:662keV)による絶対光量評価 : 電場なし
今回:2015年1月
5.2pes/keVee
(分解能 σ~3.0%)
低光量2相型
2014年8月
(~1pe/keVee)
検出器改良により、2相型での大幅な光量増加を達成
→ 検出器特性の理解に関しては続く講演にて
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LAr中の不純物の影響
不純物
発光量 電子寿命
O(~ppm)の不純物(O2,N2など)により、
光量 (主にS1 slow成分)が減衰する
対処
酸素・水
減少
激減
フィルター (~ppb)
窒素
減少
影響なし
未対処
O2,H2Oはドリフト電子の寿命測定から数ppb
→ 減衰の主成分はN2と想定
窒素純度とS1 slow時定数の関係
2014年10月 : τ = 1.5
2015年1月 : τ = 1.0
Slow時定数 τ [μs]
S1平均波形
1
v
10-1
10-2
10-3
10-1
v
先行研究(WARP)
v
arXiv:0804.1217
1
10
2014年10月 2015年1月
102
103
窒素濃度 [ppm]
→ O(~ppm)のN2の混入が見込まれる
窒素純度の対策と期待される効果
窒素純度悪化の可能性
ANKOKテストスタンド
•初期純度 → 商用LArタンク中の不純物測定
•充填時における混入→ 窒素フィルター導入
LArタンク中の窒素残存量の
測定結果 → < 50ppb を保証
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ガス循環
PURERON GP-10
LArタンク
105cm
30 cm
10L/min : 400℃で運転
→ 運用準備は完了:次期Runから導入予定
S1 fastによる光量比較(137Cs)
窒素純度改善による効果
純度の影響が少ないS1 fastにより光量を比較
→ 検出器構造の効果の見積もり
時定数の効果のみで 1.0→1.5us に改善出来ると、
(0.3+0.7)/(0.3+0.7×1.0/1.5) = 1.3
→ 30%の改善 (5.2→ 6.8 pes/keVee)
7~8 pes/keVee が期待される
大光量1相
(~10pes/keVee)
大光量2相
~80%
ここまでのまとめ
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ANKOK実験:
小型で高感度な検出器を用いた低質量WIMP探索実験
高QE PMTの導入を行い大光量1相型検出器を構築
→ 検出効率最大化に一定の目処 (世界最高レベル)
構造を改良し、2相型検出器の大光量化に成功
(ITO電極、TPB蒸着、高QE PMT導入の基礎技術の確立)
→ 窒素純度改善によりさらなる光量増加が期待される
→ フィルターによる窒素除去体制の準備は完了
引き続く講演にて、
• 大光量2相型検出器の特性理解
• 背景事象の測定とシミュレーションによる理解
• S2発光機構の理解及びMPPCを用いた分解能向上への取り組み
これらを踏まえた今後の課題と展望が発表される。