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日本と東アジア経済専題研究(一) 日本與東亞經濟專題(一) 1 今日学ぶ内容 第4章 物価と市場経済 Ⅰ.2. 資産価格の激動(続き) Ⅰ.4. デフレ、インフレの経済学 Ⅱ.2. 価格の理論 2 Ⅰ.2. 資産価格の激動 ●フローの価格とストックの価格の乖離 (1) 1981年の日経平均株価(225種)の平均は、7511 円。 (2) 89年には、3万4043円となり、4.53倍にも膨ら んだ。 (3) 90年を基準年(100)とすると、81年の卸売物価 指数は、112.4であった。 (4) 89年には、98.0へと下落した。 ⇒第二次オイルショック以降、ストックの価格は 上昇する一方、フローの価格は下落した。 ⇒1980年代の日本の物価問題の特徴。 3 Ⅰ.2. 資産価格の激動 ●資産インフレから資産デフレへ 教科書138頁 図4-3 (1) 1987年10月19日の月曜日(ブラックマンデー)に世 界の株価が暴落。 (2) 翌20日には、一日で3836円下落。率にして14.9%も 下落。当時史上最大の下落。 (3) 88年3月には、ブラックマンデー直前の水準まで回 復。年末には3万円台に。 (4) 89年も株価は上昇傾向となる。 (5) 90年のイラクのクウェート侵攻以降、株価が下落。 4 予備知識 ●通貨の分類 (1) 通貨は、現金通貨、預金通貨、準通貨 (定期性預金、外貨預金など)、譲渡性預 金(CD:Certificate of Deposit)などからな る。 (2) M1=現金通貨+預金通貨 (3) M2=M1+準通貨 (4) M2+CD=M2+譲渡性預金 5 Ⅰ.2. 資産価格の激動 ●過剰流動性インフレ (1) マーシャルのk M2を名目GDPで割った値をマーシャルのkという。 (2) 83年度末のM2は約267兆円、同年度の名目 GDPは約286兆円。 (3) マーシャルのkはいくらですか? ⇒k=267/286=0.93 (4) 資産インフレのピークにあたる89年度には、 k=472/415≒1.13。 (5) M2と名目GDPの成長率が等しいとき、適正な 貨幣成長と考える。 6 Ⅰ.2. 資産価格の激動 ●過剰流動性インフレ(続き) (6) 83年度から89年度までの名目GDPの成長率は、 (415-286)/286×100≒45%。 (7) 83年度のM2は、267兆円であるから、これが 89年度まで45%の成長率で成長したら貨幣量は 適正であるといえる。 (8) 適正な貨幣量はいくらですか? ⇒267兆円×(1+0.45)≒387兆円 ⇒したがって、89年度のM2は、その約85兆円が過 剰流動性であったことになる。 7 Ⅰ.4. デフレ、インフレの経済学 ●インフレの要因 (1) 供給面の要因 原油などの資源価格や中国の賃金率の上昇 による輸入財の高騰による物価の上昇。 (2) 需要面の要因 景気の過熱で需要が拡大すると物価が上昇 する。 (3) 金融的要因 8 Ⅰ.4. デフレ、インフレの経済学 ●インフレの要因 ⇒(続き) (3) 金融的要因 ①名目GDPの成長率よりも貨幣の成長率が 高いとき、過剰流動性インフレが発生す る。 ②貨幣が適正な量を超えると、物の価値が 貨幣よりも高くなり、物価が上昇する。 9 Ⅰ.5. 価格政策の再構築 ●調整インフレ論 (1) マネーサプライ(通貨供給量)を増やしても金利 が低下しない状態を流動性の罠という。 (2) 経済が流動性の罠にあるとき、金融政策を 行っても金利低下による投資拡大を望めない。 (3) Krugman(1998)は、物価を上昇させることに よって実質金利を下落させ、流動性の罠から の脱却を提案した。 ⇒実質金利↓=名目金利ーインフレ率↑ 10 Ⅰ.5. 価格政策の再構築 ●調整インフレ論 (1) Krugmanが主張するような調整インフレは実 行されなかった。 (2) 調整インフレのメリットは、債務者の債務負 担を軽減させ、不良債権処理を促進させるこ と。 (3) また、実質金利の下落によって、企業の借入 費用を軽減させること (4) さらに、通貨価値の下落によって円安となり、 外貨建てでの生産費用が安くなるなどがある。 11 Ⅱ.2. 価格の理論 ●インフレギャップ 図4-10 教科書159ページ 図の見方 (1)縦軸は総需要の規模、横軸は総供給の規模を表 す。 (2)45度線は総需要と総供給が一致する財市場の均 衡条件を表す。 (3)①と②の直線は総需要線を表す。 (4) 生産要素を完全雇用して実現できる総供給の規 模が300兆円と仮定され、これを完全雇用GDPとい う。これを超えて生産することはできない。 (5)A点で45度線と総需要線が交わるとき、完全雇用 GDPが実現される。 12 Ⅱ.2. 価格の理論 ●インフレギャップ 図4-10 教科書159ページ (1) 総需要線が②であるとき、総供給300兆円 に対して総需要の規模は330兆円であり、 超過需要となっている。 (2) 総需要が完全雇用GDPを超えている分を インフレギャップという。 (3) インフレギャップがあるとき、インフレーショ ンが進行する。 (4) Keynesはインフレギャップの下での物価上 昇の状態を真正インフレーションと呼んだ。 13 Ⅱ.2. 価格の理論 ●フィリップス曲線 図4-11 教科書160ページ (1) 労働者の賃金率が伸縮的に調整されれば、 雇用量は調整されていく。 (2) 賃金率の調整が伸縮的であるかどうかをど のようにして把握できるのか? (3) 賃金率の変化と失業率の変化の関係を見 ればわかる。両者の関係を表したものをフィ リップス曲線という。 14 Ⅱ.2. 価格の理論 ●フィリップス曲線の傾き (1)フィリップス曲線の傾きが垂直に近いほど、 賃金調整は伸縮的である。 (2) 水平に近いほど、賃金調整は伸縮的ではな い。 ●アメリカのフィリップス曲線 図4-15 164頁 (1) 消費者物価上昇率=賃金上昇率と考えると、 賃金上昇率と失業率の間に明確な負の相関 関係がない。 15 Ⅱ.2. 価格の理論 ●日本のフィリップス曲線 図4-16 165頁 (1) 消費者物価上昇率=賃金上昇率と考えると、賃 金上昇率と失業率の間に明確な負の相関関係が ある。 (2) 80年代までフィリップス曲線は垂直に近く、賃金の 伸縮的な調整によって雇用が調整されたと考えら れる。 (3) しかし、80年代後半以降、水平に近くなった。すな わち、賃金率がほとんど低下しない中で失業率が 上昇した。 16 Ⅱ.2. 価格の理論 ●貨幣数量説 (1) 物価と貨幣量の関係に関する仮説。 (2) 貨幣量×流通速度=物価×取引量 流通速度:貨幣の受け渡しの回数 物価×取引量:名目GDP 取引量:実質GDP (3) 貨幣量=k×名目GDP k:マーシャルのk 17 Ⅱ.2. 価格の理論 ●貨幣数量説 貨幣量×流通速度=物価×取引量 において、流通速度と取引量が一定であるとき、 貨幣量が2倍になると、物価も2倍になる。 ●貨幣量と物価の正比例関係はない 例 日本の通貨供給量(M2+CD)は1965年から 82年まで約10倍になっているが、物価は3倍 弱しか上昇していない。 18 Ⅱ.2. 価格の理論 ●FriedmanのX%ルール (1) 貨幣数量説の式から、 貨幣量の増加率 =マーシャルのkの増加率+物価上昇率+実質GDP 成長率 が得られる。 (2) アメリカ経済の過去の分析から、マーシャルのkは 年率1%、実質GDP成長率は年率3%だから、物価 上昇率をゼロに保つ貨幣量の増加率は4%となる。 (3) このように貨幣量の成長率を一定に保つ政策を X%ルールと呼ぶ。 19 20