10/27講義資料

Download Report

Transcript 10/27講義資料

日本と東アジア経済専題研究(一)
日本與東亞經濟專題(一)
1
今日の内容
第4章 物価と市場経済
Ⅰ.2. 資産価格の激動
Ⅰ.4. デフレ、インフレの経済学
Ⅰ.5. 価格政策の再構築
2
Ⅰ.2. 資産価格の激動
●フロー(flow)の価格とストック(stock)の価格
(1) 財やサービスなどの価格(消費者物価や卸売
物価など)をフローの価格という。
(2) 株価、債券、土地などの資産価格をストックの
価格という。
⇒フローの価格とストックの価格を区別する理由
は?
⇒これらの価格の決定メカニズムが異なるから。
3
予備知識
●価格と物価の違い
(1) ここの財、サービスの市場取引価値を価格という。
(2) 物価とは、一国の支出額=価格×取引量の各年にお
ける変化を表す指標である。
(3) 09年の消費者物価指数(基準年:2000年)
=(Σ(09年の価格×00年の消費量))
/ (Σ(00年の価格×00年の消費量))×100
⇒09年の消費者物価指数は、基準年(00年)と同じ消費量
を消費するためにどれだけ余分にお金を出さなけれ
ばならないかを示す。
4
予備知識
●練習問題 基準年の00年のりんごの価格は、80円、
消費量は40個、みかんの価格は70円、消費量は
160個とする。09年のりんごの価格を120円、みか
んの価格を100円とする。
09年における消費者物価指数を計算してください。
⇒消費者物価指数が100より大きければ、基準年より
も多くのお金を出さなければ、00年と同じ量を消費
できないということになる。すなわち、インフレ。
⇒消費者物価指数が100より小さければ、基準年より
も少ない金額で、00年と同じ量を消費できる。すな
わち、デフレ。
5
予備知識
●信用創造のメカニズム
(1) マネーサプライとは、民間部門(企業、家計)が持
つ現金、金融機関が持つ日銀当座預金の合計。
(2) 日銀が金融政策によってマネーサプライを増やす
と、金融機関は日銀当座預金から引き出して民間
部門に貸し出す。
(3) すると、民間部門から預金として資金が還流してく
る。
(4) 一部を法定準備金として日銀口座に残して、残り
を再び民間部門に貸し出すことができる。
(5) このような過程を繰り返すことによって、当初のマ
ネーサプライの何倍もの信用(債権債務の関係)が
創造されて行く。
(6) これを信用創造のメカニズムという。
6
Ⅰ.2. 資産価格の激動
●フロー(flow)の価格の決定メカニズム
個々の消費財の価格は、需要と供給が一致するところ
で決まる。
●デフレの要因
(1) 供給面の要因
安価な輸入財の流入や企業の技術革新、流通の合理
化等による物価の下落。
(2) 需要面の要因
不景気で需要が低迷すると物価が下落する。
(3) 金融的要因
⇒8頁
7
Ⅰ.2. 資産価格の激動
●デフレの要因
(3) 金融的要因
①企業や個人が持つ現金や金融機関が持つ預金の合計をマ
ネーサプライという。マネーサプライが減少すると、物価は下
落する。
②景気が悪いとき、銀行が不良債権を抱えるため、企業への
貸し出しが減少し、信用創造のメカニズムが働かず、マネー
サプライが減少する。この結果、物価が下落する。
③景気が悪いと、企業は設備投資を控えるので、資金の借入
が減少し、信用創造のメカニズムが働かず、マネーサプライ
が減少する。この結果、物価が下落する。
8
Ⅰ.2. 資産価格の激動
●資産価格の決定メカニズム
(1) 消費者物価などのフローの価格と株価、地価
などのストックの価格を区別する理由は、それ
らの決定メカニズムが異なるから。
(2) 経済学では、資産価格は資産から得られる資
産収益(Income Gain)の割引現在価値に等し
いと考える。
⇒資産価格=各期の資産収入の割引現在価値
9
予備知識
●割引現在価値
(1) 10000円持っているとしよう。預金金利は1%であ
る。このとき、一年後の貨幣価値は、10,100円と
なる。
(2) このように現在の貨幣額から将来の貨幣価値を
計算することを複利計算という。
(3) では、一年後に10,000円を手に入れるためには、
現在いくら預金すればいいでしょうか?
⇒10,000円/(1+0.01)≒9,900円
(4) このように将来の貨幣額から現在の貨幣価値を計
算することを割引計算という。
10
予備知識
●資産価格の計算
⇒資産価格=各期の資産収入の割引現在価値
⇒P=d/(1+r)
P:資産価格、d:資産収入、r:利子率
●資産価格の決定
(1) 金利がrの資産を購入し、一年後にd円の資産
収入を得るためには、P円の支払って資産を購
入しなければならない。
(2) このように資産価格が決まると考える。
11
予備知識
●財価格で評価した資産価格の計算
(1) 金利で計算した資産価格は、P=d/(1+r)によって
決まる。
(2) 現在購入する財を現在財、将来購入する財を将
来財という。
(3) 現在財の価格をp、将来財の価格をqとすると、資
産収入を将来の価値で評価すると、q×dとなる。
(4) これを現在財の価格を測定単位として現在の価
値で評価すると、(q×d)/pとなる。
(5) これより、財価格で評価した資産価格は、
P=d/(p/q)となる。
12
予備知識
●金利の決定
(1) Keynesの流動性選好説によると、金利は、貨幣市場の需
要と供給が一致するように決まる。
(2) ここでは、異時点間の金利決定メカニズムを考える。
金利で計算した資産価格:P=d/(1+r)
財価格で評価した資産価格:P=d/(p/q)
(3) これより、1+r= p/qとなる。
(4) すなわち、金利は現在財と将来財の相対価格で決まる。
(5) 現在財の価格が上昇し、将来財の価格が下落するとき、金
利が上昇し、資産価格が下落する。
(6)現在財の価格が下落し、将来財の価格が上昇するとき、金
利が下落し、資産価格が上昇する。
13
Ⅰ.2. 資産価格の激動
●フローの価格とストックの価格の乖離
(1) 1981年の日経平均株価(225種)の平均は、7511
円。
(2) 89年には、3万4043円となり、4.53倍にも膨らん
だ。
(3) 90年を基準年(100)とすると、81年の卸売物価指
数は、112.4であった。
(4) 89年には、98.0へと下落した。
⇒第二次オイルショック以降、ストックの価格は上昇す
る一方、フローの価格は下落した。
⇒1980年代の日本の物価問題の特徴。
14
Ⅰ.2. 資産価格の激動
●資産インフレから資産デフレへ
教科書138頁 図4-3
(1) 1987年10月19日の月曜日(ブラックマンデー)に
世界の株価が暴落。
(2) 翌20日には、一日で3836円下落。率にして
14.9%も下落。当時史上最大の下落。
(3) 88年3月には、ブラックマンデー直前の水準まで
回復。年末には3万円台に。
(4) 89年も株価は上昇傾向となる。
(5) 90年のイラクのクウェート侵攻以降、株価が下落。
15
予備知識
●通貨の分類
(1) 通貨は、現金通貨、預金通貨、準通貨(定
期性預金、外貨預金など)、譲渡性預金
(CD:Certificate of Deposit)などからなる。
(2) M1=現金通貨+預金通貨
(3) M2=M1+準通貨
(4) M2+CD=M2+譲渡性預金
16
Ⅰ.2. 資産価格の激動
●過剰流動性インフレ
(1) マーシャルのk
M2を名目GDPで割った値をマーシャルのkという。
(2) 83年度末のM2は約267兆円、同年度の名目GDP
は約286兆円。
(3) マーシャルのkはいくらですか?
⇒k=267/286=0.93
(4) 資産インフレのピークにあたる89年度には、
k=472/415≒1.13。
(5) M2と名目GDPの成長率が等しいとき、適正な貨
幣成長と考える。
17
Ⅰ.2. 資産価格の激動
●過剰流動性インフレ(続き)
(6) 83年度から89年度までの名目GDPの成長率は、
(415-286)/286×100≒45%。
(7) 83年度のM2は、267兆円であるから、これが89年
度まで45%の成長率で成長したら貨幣量は適正で
あるといえる。
(8) 適正な貨幣量はいくらですか?
⇒267兆円×(1+0.45)≒387兆円
⇒したがって、89年度のM2は、その約85兆円が過剰
流動性であったことになる。
18
Ⅰ.4. デフレ、インフレの経済学
●インフレの要因
(1) 供給面の要因
原油などの資源価格や中国の賃金率の上昇に
よる輸入財の高騰による物価の上昇。
(2) 需要面の要因
景気の過熱で需要が拡大すると物価が上昇す
る。
(3) 金融的要因
19
Ⅰ.4. デフレ、インフレの経済学
●インフレの要因
⇒(続き)
(3) 金融的要因
①名目GDPの成長率よりも貨幣の成長率が高
いとき、過剰流動性インフレが発生する。
②貨幣が適正な量を超えると、物の価値が貨
幣よりも高くなり、物価が上昇する。
20
Ⅰ.5. 価格政策の再構築
●調整インフレ論
(1) マネーサプライ(通貨供給量)を増やしても金利が
低下しない状態を流動性の罠という。
(2) 経済が流動性の罠にあるとき、金融政策を行って
も金利低下による投資拡大を望めない。
(3) Krugman(1998)は、物価を上昇させることによっ
て実質金利を下落させ、流動性の罠からの脱却を
提案した。
⇒実質金利↓=名目金利ーインフレ率↑
21
Ⅰ.5. 価格政策の再構築
●調整インフレ論
(1) Krugmanが主張するような調整インフレは実行さ
れなかった。
(2) 調整インフレのメリットは、債務者の債務負担を軽
減させ、不良債権処理を促進させること。
(3) また、実質金利の下落によって、企業の借入費用
を軽減させること
(4) さらに、通貨価値の下落によって円安となり、外貨
建てでの生産費用が安くなるなどがある。
22